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最終章
第1085話 その頃の獣人国では……
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獣人国の宰相のシバイは王国に送り込んだ間諜から送り届けられた報告書を受け取り、その内容に頭を悩まされる。またしても王国はとんでもない事を仕出かした。
「数百のマグマゴーレムの討伐の成功、それに超大型のゴブリンキングの討伐に成功だと……いったい、あの国の戦力は何なのだ!!」
報告書を読み終えたシバイは苛立ちを隠せずに羊皮紙を机の上に叩き付け、彼は頭を抱えてしまう。世界異変によって魔物が活性化して問題を引き起こしているのは実は王国だけではなく、他の国々でも似たような被害が多発している。
巨人国で土鯨が現れたのも世界異変が原因である事は間違いなく、獣人国の方でも竜種級の魔物の出現はまだ確認されていないが、各地で大型の魔物が出現している。一応は冒険者ギルドと協力して問題の対応を行っているが、それでも被害を最小限に収めるのが原因で根本的な解決には至っていない。
「おのれ、おのれおのれ!!いったい何故、こんな事に……!!」
王国は自国内の問題を解決したという報告にシバイは頭を掻きむしり、少し前までは彼は王国を攻め入る算段を企てていた。しかし、その計画が狂い始めたのは王国の宰相であったシンが死亡したのが切っ掛けだった。
シバイはシンと手を組み、彼の管理する白面を利用して王国から情報を得る。その代わりにシバイは獣人国に暮らす子供達を誘拐し、それを王国に送り込む。誘拐した子供達は特殊な訓練を受けさせて暗殺者に育て上げ、彼等を制御するために特別な毒を仕込む。そして白面の暗殺者が誕生し、お互いの国の情報を共有する。
しかし、数年前にシンが死亡してから白面は実質的に解散し、昔のように王国の情報を手にするのは難しくなった。更には火竜の首が届けられた一件で国王は王国に恐れを為して敵対するよりも同盟関係を維持する事に拘る。
「あと少しで私は王になれたというのに……あの英雄さえいなければ!!」
シバイの真の目的は軍隊を王国に派遣させ、国を乗っ取った後に国王を暗殺して自分が王位に就く予定だった。だが、彼の計画はこうなっては完全に頓挫し、もう取り返しは付かない。
彼の計画ではシンも途中で裏切り、彼を亡き者にするはずだった。しかし、そのシンが自分が事を起こす前に自決し、更には弟のシャドウも討ち取られた。それもこれも全て「貧弱の英雄」なる存在のせいであり、彼は机を叩き割る勢いで拳を繰り出す。
「何が英雄だ!!くそぉおおおおっ!!」
英雄《ナイ》さえ存在しなければ少なくともシバイはここまで追い詰められる事はなかった。実は彼は自分の立場を保つのも怪しく、そもそも彼は宰相に昇格できたのはシンの協力があってこそだった。
彼はシンと協力していたお陰で王国の有益な情報を掴み、それを利用して獣人国の宰相の地位にまで上り詰めた。しかし、現在ではシンがいなくなった事で情報の提供元を失い、今の所は宰相の座にいるが彼を貶めようとする人物は数多くいる。
「……もう、手遅れか」
この数年の間にシバイは一気に老け込み、実年齢以上に彼は年老いたような姿をしていた。最近は体調も悪く、彼は咳き込みながら座り込む。
「……あの英雄さえいなければ」
気が狂ったようにシバイは虚ろな瞳で天井を見上げ、同じ言葉を何度も繰り返した――
「数百のマグマゴーレムの討伐の成功、それに超大型のゴブリンキングの討伐に成功だと……いったい、あの国の戦力は何なのだ!!」
報告書を読み終えたシバイは苛立ちを隠せずに羊皮紙を机の上に叩き付け、彼は頭を抱えてしまう。世界異変によって魔物が活性化して問題を引き起こしているのは実は王国だけではなく、他の国々でも似たような被害が多発している。
巨人国で土鯨が現れたのも世界異変が原因である事は間違いなく、獣人国の方でも竜種級の魔物の出現はまだ確認されていないが、各地で大型の魔物が出現している。一応は冒険者ギルドと協力して問題の対応を行っているが、それでも被害を最小限に収めるのが原因で根本的な解決には至っていない。
「おのれ、おのれおのれ!!いったい何故、こんな事に……!!」
王国は自国内の問題を解決したという報告にシバイは頭を掻きむしり、少し前までは彼は王国を攻め入る算段を企てていた。しかし、その計画が狂い始めたのは王国の宰相であったシンが死亡したのが切っ掛けだった。
シバイはシンと手を組み、彼の管理する白面を利用して王国から情報を得る。その代わりにシバイは獣人国に暮らす子供達を誘拐し、それを王国に送り込む。誘拐した子供達は特殊な訓練を受けさせて暗殺者に育て上げ、彼等を制御するために特別な毒を仕込む。そして白面の暗殺者が誕生し、お互いの国の情報を共有する。
しかし、数年前にシンが死亡してから白面は実質的に解散し、昔のように王国の情報を手にするのは難しくなった。更には火竜の首が届けられた一件で国王は王国に恐れを為して敵対するよりも同盟関係を維持する事に拘る。
「あと少しで私は王になれたというのに……あの英雄さえいなければ!!」
シバイの真の目的は軍隊を王国に派遣させ、国を乗っ取った後に国王を暗殺して自分が王位に就く予定だった。だが、彼の計画はこうなっては完全に頓挫し、もう取り返しは付かない。
彼の計画ではシンも途中で裏切り、彼を亡き者にするはずだった。しかし、そのシンが自分が事を起こす前に自決し、更には弟のシャドウも討ち取られた。それもこれも全て「貧弱の英雄」なる存在のせいであり、彼は机を叩き割る勢いで拳を繰り出す。
「何が英雄だ!!くそぉおおおおっ!!」
英雄《ナイ》さえ存在しなければ少なくともシバイはここまで追い詰められる事はなかった。実は彼は自分の立場を保つのも怪しく、そもそも彼は宰相に昇格できたのはシンの協力があってこそだった。
彼はシンと協力していたお陰で王国の有益な情報を掴み、それを利用して獣人国の宰相の地位にまで上り詰めた。しかし、現在ではシンがいなくなった事で情報の提供元を失い、今の所は宰相の座にいるが彼を貶めようとする人物は数多くいる。
「……もう、手遅れか」
この数年の間にシバイは一気に老け込み、実年齢以上に彼は年老いたような姿をしていた。最近は体調も悪く、彼は咳き込みながら座り込む。
「……あの英雄さえいなければ」
気が狂ったようにシバイは虚ろな瞳で天井を見上げ、同じ言葉を何度も繰り返した――
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