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最終章
第1013話 久々の闘技場と英雄の実力
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ガオウの案内の元、獣人国の武芸者は特等席にて試合を観戦する事ができた。彼等はガオウと共に最前列の席に座って試合場を観察していると、闘技場内に視界の声が響く。
『お待たせしました!!これより、特別試合を開始いたします!!まずは最初に出場するのは巨人国から訪れた猛者、ダイゴロウ選手の入場です!!』
「「「おおおおおっ!!」」」
試合場の城門が開かれ、姿を現したのは巨人族の中でも大柄な体格の男性だった。その背中には巨大な棍棒を背負い、甲冑を身に着けていた。その姿を見た獣人国の挑戦者は震え上がり、威圧感を感じ取って只者ではないと見抜く。
「な、何だあいつは……」
「ダイゴロウだと……思い出したぞ!?確か、巨人国の黄金級冒険者だ!!」
「黄金級だと!?」
「へえっ……噂には聞いていたが、相当に強そうだな」
ダイゴロウは他国にも知れ渡る程の高名な冒険者である事が判明し、しかもガオウと同じく黄金級の冒険者だった。ガオウもダイゴロウを一目見ただけで只者ではないと悟り、身に着けている装備も一級品だと見抜く。
試合場に入場したダイゴロウは背中の棍棒を抜くと、対戦相手が出てくるのを待ち構える。その威風堂々とした姿に観客は圧倒され、武芸者たちも冷や汗を流す。
「ま、まさかあのダイゴロウがこの国にいるとは……」
「なんという大きさだ!!」
「噂だとトロールを殴り殺した事もあるそうだぞ……」
「確かにこいつはやばそうだな……だが、坊主の敵じゃねえ」
「な、何を言っているんだ!?」
ガオウの発言に他の武芸者は動揺を隠せず、ダイゴロウの姿を見てもガオウが全く動じていない事に戸惑う。そんな慌てふためく武芸者たちを無視してガオウはナイが出てくるはずの城門に視線を向けると、司会が紹介を行う。
『続きまして……皆さん、お待たせしました!!貧弱の英雄、いや我が国の誇る英雄!!ナイ選手の入場だぁあああっ!!』
「「「うおおおおっ!!」」」
先ほどのダイゴロウが現れた時よりも大きな歓声が上がり、試合場の城門が開かれて二つの大剣を背負った少年が現れる。その姿を見た途端、武芸者は呆気に取られた。
「な、何だあれは……」
「あれが英雄だと!?」
「まだ子供ではないか!!」
ナイを始めて見た獣人国の武芸者たちは呆気に捉れ、試合場に現れたのは只の人間の少年にしか見えなかった。武器や装備は一級品だと思われるが、それでも少年の方はとても一流の武人とは思えない。
対戦相手のダイゴロウもナイの姿を見て困惑した表情を浮かべ、本当に彼が噂に聞く「貧弱の英雄」なのかと不思議に思う。その一方でナイの方はダイゴロウを見上げて驚きの声を上げた。
「うわ、でかっ……どうも、初めまして。ナイと言います」
「う、うむ……初めまして」
『おおっと!!ここで両選手お辞儀を行いました!!最初の挨拶は大切ですからね!!』
「「「あははははっ!!」」」
ナイが頭を下げるとダイゴロウも同じように頭を下げ、その姿を見た観客は笑い声をあげる。これからお互いに戦うというのに緊張感を感じさせず、その姿を見た武芸者達は本当にナイが噂の英雄なのかを問い質す。
「ガオウ!!あれがお前の言う英雄か!?どう見てもただの少年ではないか!!」
「全く、わざわざここまで来たのにあんな子供だったとは……」
「うるせえ、黙ってろ……試合に集中しろ」
武芸者はナイの姿を見て落胆するが、そんな彼等に対してガオウは鋭い視線を向ける。ガオウの迫力に他の武芸者は圧倒され、それ以上はナイを侮辱するような言葉は口にできなかった。
試合場ではダイゴロウとナイが向き合うと、審判役の人間が試合場の前に降り立つ。審判を務めるのは闘技場の管理を任されている「アッシュ公爵」であり、アッシュはナイとダイゴロウに試合前の注意を行う。
「今回の試合は相手を戦闘不能に追い込むまで戦ってもらう。降参や逃走は認められない、その代わりに相手を殺すのも駄目だ」
「はい、分かりました」
「うむ……」
「よし、では試合を開始する!!」
「「「おおおおおおっ!!」」」
アッシュが試合開始の許可を出すと、歓声が上がってダイゴロウとナイは武器を抜く。そして司会者の試合開始の合図が下された。
『試合、開始ぃいいいっ!!』
「うおおおおおっ!!」
最初に仕掛けたのはダイゴロウの方であり、彼は棍棒を振りかざすと、勢いよくナイに目掛けて振り下ろす。その攻撃に対してナイは避ける動作を行わず、両手に手にした旋斧と岩砕剣で受け止めようとした。
「馬鹿な!?死ぬ気か!?」
「避けろ!!」
「いいから見てろ馬鹿共!!」
特等席の武芸者達はナイが避けようとしないのを見て焦った声を上げるが、そんな彼等に対してガオウは怒鳴りつける。次の瞬間、試合場に激しい金属音が鳴り響き、何と攻撃を弾き返されたのはダイゴロウの方だった。
「だああっ!!」
「ぬああっ!?」
ナイに目掛けて振り下ろされた棍棒が弾き返され、ダイゴロウは慌てて体勢を整える。一方でナイの方は両手の大剣を突き上げた形で立ち止まり、ダイゴロウと向き合う。その光景を見ていた武芸者達は何が起きたのか分からずに混乱した。
「な、何だと!?」
「馬鹿な、何が起きた!?」
「……弾き返したんだよ。腕力《ちから》でな」
「そ、そんな馬鹿な!?」
ガオウの言葉に武芸者達は到底信じられず、明らかに人間であるナイに巨人族のダイゴロウが「腕力」で負けたなど信じられるはずがない。
ダイゴロウも自分の攻撃が弾かれた事に戸惑い、混乱した彼はもう一度攻撃を仕掛けた。今度は上から振り落とすのではなく、棍棒を横薙ぎに振り払う。
「ぬぅうんっ!!」
「うりゃあっ!!」
『う、受け止めた!?』
横から迫ってきた棍棒に対してナイは両手に持つ大剣を重ね合わせて防御の態勢を取ると、正面から棍棒を受け止める。攻撃を受けた際にナイの身体が押し込まれるが、彼が足元に力を込めると棍棒を止める事に成功した。
ダイゴロウの攻撃を受け止めた光景を見た武芸者達は驚きの声を上げ、ダイゴロウの方も自分の攻撃を二度もまともに受けたナイに驚きを隠せない。これまでに人間の剣士と戦う際、一度だってダイゴロウは力負けはした事はない。しかし、今目の前に立つ人間の少年は巨人族に匹敵する腕力の持ち主だと悟る。
「馬鹿なっ……」
「でやぁっ!!」
「ぐおっ!?」
『弾き返した!!ナイ選手、ダイゴロウ選手の攻撃を物ともしません!!』
「「「ナイ、ナイ、ナイ!!」」」
ナイがダイゴロウの棍棒を弾き飛ばすと歓声が更に上がり、観客たちもナイを応援する。そんな周囲の反応に武芸者達は戸惑い、ガオウの方も面白そうに拍手を行う。
「流石は坊主だ、相変わらずとんでもない馬鹿力だな」
「あ、あり得ん……こんな事、絶対にあり得ない!!」
「八百長だ!!あの巨人族の冒険者と組んでいるんだろう!?」
「馬鹿かお前等は……武芸者の端くれなら今さっきの攻防が演技じゃない事は分かるだろうが」
『ぐうっ……』
ガオウの言葉に武芸者は言い返す事ができず、彼等もナイとダイゴロウの攻防を見てとても演技とは思えなかった。しかし、事実だとしても人間であるはずのナイが巨人族のダイゴロウに匹敵する腕力を誇る事に彼等は納得できない。
「あ、あの少年は何なんだ!?どうして非力な人間の癖にあんな芸当ができる!?」
「もしかして「超人」の異能持ちか!?」
「さあな……そんなの俺が知りたいくらいだ」
「レベルは!?あの少年のレベルはいくつだ!?」
「レベルは公開しているのか!?」
武芸者はナイのレベルがどれほどの数値なのか気にかかり、ガオウに問い質す。しかし、そんな彼等に対してガオウは驚愕の事実を明かした。
「お前等、本当に何も知らないでこの国に来たのか……坊主のレベルは1だ。嘘じゃねえ、俺も確かめた事があるぜ」
「レ、レベル……いちぃいいいっ!?」
「馬鹿な、あり得ん!!」
「で、でたらめを抜かすな!!」
ナイのレベル1であると明かすと武芸者は取り乱し、信じようとはしなかった。レベル1の人間が巨人族の武芸者を相手に互角で戦えるはずがないと彼等は主張する。
しかし、いくら彼等が認めようとせずともナイのレベルが1であるという事実は変わらず、試合場ではナイがダイゴロウに向けて攻撃を仕掛けようとしていた。
(この人は強い!!剛力の技能だけじゃ倒しきれない……なら!!)
ダイゴロウの強さは先ほどの攻撃でナイも把握し、自分も全力で挑まなければ彼に勝てないと判断したナイはテン仕込みの「剛剣」の剣技でダイゴロウに仕掛ける。
「だああああっ!!」
「ぐううっ!?」
『ふ、吹っ飛んだ!!ダイゴロウ選手の巨体が!?』
ナイは旋斧を背中に戻すと岩砕剣を両手で振りかざし、全身全霊の力を込めてダイゴロウの手にしていた棍棒に叩き込む。強烈な衝撃を受けたダイゴロウは棍棒を弾き飛ばされて後方に仰け反り、その光景を見た司会者は驚きの声を上げた。
ダイゴロウが武器を弾かれて隙を見せると、ここでナイは彼に目掛けて突っ込む。俊足の技能を習得しているナイの移動速度は獣人族にも劣らず、ダイゴロウの懐に潜り込んだナイは一瞬だけ「強化術」を発動させ、全力で甲冑に目掛けて刃を放つ。
「どりゃああああっ!!」
「ぐはぁあああっ!?」
甲冑越しにダイゴロウは強烈な衝撃を受け、ナイの放った岩砕剣の刃は彼の甲冑を破壊し、ダイゴロウは試合場に倒れ込む。彼は一撃で白目を剥き、そのまま動かなくなった。その光景を見たアッシュは戦闘続行は不可能だと判断し、試合を終わらせてナイの勝利を宣言した。
「そこまで!!勝者、ナイ!!」
『うおおおおおっ!!』
ナイの勝利が宣言された瞬間に観客は立ちあがり、彼に声援を送る。そんな彼等を見てナイは笑みを浮かべて腕を上げ、一方で特等席の武芸者達は唖然とした表情を浮かべたまま固まってしまう。
『お待たせしました!!これより、特別試合を開始いたします!!まずは最初に出場するのは巨人国から訪れた猛者、ダイゴロウ選手の入場です!!』
「「「おおおおおっ!!」」」
試合場の城門が開かれ、姿を現したのは巨人族の中でも大柄な体格の男性だった。その背中には巨大な棍棒を背負い、甲冑を身に着けていた。その姿を見た獣人国の挑戦者は震え上がり、威圧感を感じ取って只者ではないと見抜く。
「な、何だあいつは……」
「ダイゴロウだと……思い出したぞ!?確か、巨人国の黄金級冒険者だ!!」
「黄金級だと!?」
「へえっ……噂には聞いていたが、相当に強そうだな」
ダイゴロウは他国にも知れ渡る程の高名な冒険者である事が判明し、しかもガオウと同じく黄金級の冒険者だった。ガオウもダイゴロウを一目見ただけで只者ではないと悟り、身に着けている装備も一級品だと見抜く。
試合場に入場したダイゴロウは背中の棍棒を抜くと、対戦相手が出てくるのを待ち構える。その威風堂々とした姿に観客は圧倒され、武芸者たちも冷や汗を流す。
「ま、まさかあのダイゴロウがこの国にいるとは……」
「なんという大きさだ!!」
「噂だとトロールを殴り殺した事もあるそうだぞ……」
「確かにこいつはやばそうだな……だが、坊主の敵じゃねえ」
「な、何を言っているんだ!?」
ガオウの発言に他の武芸者は動揺を隠せず、ダイゴロウの姿を見てもガオウが全く動じていない事に戸惑う。そんな慌てふためく武芸者たちを無視してガオウはナイが出てくるはずの城門に視線を向けると、司会が紹介を行う。
『続きまして……皆さん、お待たせしました!!貧弱の英雄、いや我が国の誇る英雄!!ナイ選手の入場だぁあああっ!!』
「「「うおおおおっ!!」」」
先ほどのダイゴロウが現れた時よりも大きな歓声が上がり、試合場の城門が開かれて二つの大剣を背負った少年が現れる。その姿を見た途端、武芸者は呆気に取られた。
「な、何だあれは……」
「あれが英雄だと!?」
「まだ子供ではないか!!」
ナイを始めて見た獣人国の武芸者たちは呆気に捉れ、試合場に現れたのは只の人間の少年にしか見えなかった。武器や装備は一級品だと思われるが、それでも少年の方はとても一流の武人とは思えない。
対戦相手のダイゴロウもナイの姿を見て困惑した表情を浮かべ、本当に彼が噂に聞く「貧弱の英雄」なのかと不思議に思う。その一方でナイの方はダイゴロウを見上げて驚きの声を上げた。
「うわ、でかっ……どうも、初めまして。ナイと言います」
「う、うむ……初めまして」
『おおっと!!ここで両選手お辞儀を行いました!!最初の挨拶は大切ですからね!!』
「「「あははははっ!!」」」
ナイが頭を下げるとダイゴロウも同じように頭を下げ、その姿を見た観客は笑い声をあげる。これからお互いに戦うというのに緊張感を感じさせず、その姿を見た武芸者達は本当にナイが噂の英雄なのかを問い質す。
「ガオウ!!あれがお前の言う英雄か!?どう見てもただの少年ではないか!!」
「全く、わざわざここまで来たのにあんな子供だったとは……」
「うるせえ、黙ってろ……試合に集中しろ」
武芸者はナイの姿を見て落胆するが、そんな彼等に対してガオウは鋭い視線を向ける。ガオウの迫力に他の武芸者は圧倒され、それ以上はナイを侮辱するような言葉は口にできなかった。
試合場ではダイゴロウとナイが向き合うと、審判役の人間が試合場の前に降り立つ。審判を務めるのは闘技場の管理を任されている「アッシュ公爵」であり、アッシュはナイとダイゴロウに試合前の注意を行う。
「今回の試合は相手を戦闘不能に追い込むまで戦ってもらう。降参や逃走は認められない、その代わりに相手を殺すのも駄目だ」
「はい、分かりました」
「うむ……」
「よし、では試合を開始する!!」
「「「おおおおおおっ!!」」」
アッシュが試合開始の許可を出すと、歓声が上がってダイゴロウとナイは武器を抜く。そして司会者の試合開始の合図が下された。
『試合、開始ぃいいいっ!!』
「うおおおおおっ!!」
最初に仕掛けたのはダイゴロウの方であり、彼は棍棒を振りかざすと、勢いよくナイに目掛けて振り下ろす。その攻撃に対してナイは避ける動作を行わず、両手に手にした旋斧と岩砕剣で受け止めようとした。
「馬鹿な!?死ぬ気か!?」
「避けろ!!」
「いいから見てろ馬鹿共!!」
特等席の武芸者達はナイが避けようとしないのを見て焦った声を上げるが、そんな彼等に対してガオウは怒鳴りつける。次の瞬間、試合場に激しい金属音が鳴り響き、何と攻撃を弾き返されたのはダイゴロウの方だった。
「だああっ!!」
「ぬああっ!?」
ナイに目掛けて振り下ろされた棍棒が弾き返され、ダイゴロウは慌てて体勢を整える。一方でナイの方は両手の大剣を突き上げた形で立ち止まり、ダイゴロウと向き合う。その光景を見ていた武芸者達は何が起きたのか分からずに混乱した。
「な、何だと!?」
「馬鹿な、何が起きた!?」
「……弾き返したんだよ。腕力《ちから》でな」
「そ、そんな馬鹿な!?」
ガオウの言葉に武芸者達は到底信じられず、明らかに人間であるナイに巨人族のダイゴロウが「腕力」で負けたなど信じられるはずがない。
ダイゴロウも自分の攻撃が弾かれた事に戸惑い、混乱した彼はもう一度攻撃を仕掛けた。今度は上から振り落とすのではなく、棍棒を横薙ぎに振り払う。
「ぬぅうんっ!!」
「うりゃあっ!!」
『う、受け止めた!?』
横から迫ってきた棍棒に対してナイは両手に持つ大剣を重ね合わせて防御の態勢を取ると、正面から棍棒を受け止める。攻撃を受けた際にナイの身体が押し込まれるが、彼が足元に力を込めると棍棒を止める事に成功した。
ダイゴロウの攻撃を受け止めた光景を見た武芸者達は驚きの声を上げ、ダイゴロウの方も自分の攻撃を二度もまともに受けたナイに驚きを隠せない。これまでに人間の剣士と戦う際、一度だってダイゴロウは力負けはした事はない。しかし、今目の前に立つ人間の少年は巨人族に匹敵する腕力の持ち主だと悟る。
「馬鹿なっ……」
「でやぁっ!!」
「ぐおっ!?」
『弾き返した!!ナイ選手、ダイゴロウ選手の攻撃を物ともしません!!』
「「「ナイ、ナイ、ナイ!!」」」
ナイがダイゴロウの棍棒を弾き飛ばすと歓声が更に上がり、観客たちもナイを応援する。そんな周囲の反応に武芸者達は戸惑い、ガオウの方も面白そうに拍手を行う。
「流石は坊主だ、相変わらずとんでもない馬鹿力だな」
「あ、あり得ん……こんな事、絶対にあり得ない!!」
「八百長だ!!あの巨人族の冒険者と組んでいるんだろう!?」
「馬鹿かお前等は……武芸者の端くれなら今さっきの攻防が演技じゃない事は分かるだろうが」
『ぐうっ……』
ガオウの言葉に武芸者は言い返す事ができず、彼等もナイとダイゴロウの攻防を見てとても演技とは思えなかった。しかし、事実だとしても人間であるはずのナイが巨人族のダイゴロウに匹敵する腕力を誇る事に彼等は納得できない。
「あ、あの少年は何なんだ!?どうして非力な人間の癖にあんな芸当ができる!?」
「もしかして「超人」の異能持ちか!?」
「さあな……そんなの俺が知りたいくらいだ」
「レベルは!?あの少年のレベルはいくつだ!?」
「レベルは公開しているのか!?」
武芸者はナイのレベルがどれほどの数値なのか気にかかり、ガオウに問い質す。しかし、そんな彼等に対してガオウは驚愕の事実を明かした。
「お前等、本当に何も知らないでこの国に来たのか……坊主のレベルは1だ。嘘じゃねえ、俺も確かめた事があるぜ」
「レ、レベル……いちぃいいいっ!?」
「馬鹿な、あり得ん!!」
「で、でたらめを抜かすな!!」
ナイのレベル1であると明かすと武芸者は取り乱し、信じようとはしなかった。レベル1の人間が巨人族の武芸者を相手に互角で戦えるはずがないと彼等は主張する。
しかし、いくら彼等が認めようとせずともナイのレベルが1であるという事実は変わらず、試合場ではナイがダイゴロウに向けて攻撃を仕掛けようとしていた。
(この人は強い!!剛力の技能だけじゃ倒しきれない……なら!!)
ダイゴロウの強さは先ほどの攻撃でナイも把握し、自分も全力で挑まなければ彼に勝てないと判断したナイはテン仕込みの「剛剣」の剣技でダイゴロウに仕掛ける。
「だああああっ!!」
「ぐううっ!?」
『ふ、吹っ飛んだ!!ダイゴロウ選手の巨体が!?』
ナイは旋斧を背中に戻すと岩砕剣を両手で振りかざし、全身全霊の力を込めてダイゴロウの手にしていた棍棒に叩き込む。強烈な衝撃を受けたダイゴロウは棍棒を弾き飛ばされて後方に仰け反り、その光景を見た司会者は驚きの声を上げた。
ダイゴロウが武器を弾かれて隙を見せると、ここでナイは彼に目掛けて突っ込む。俊足の技能を習得しているナイの移動速度は獣人族にも劣らず、ダイゴロウの懐に潜り込んだナイは一瞬だけ「強化術」を発動させ、全力で甲冑に目掛けて刃を放つ。
「どりゃああああっ!!」
「ぐはぁあああっ!?」
甲冑越しにダイゴロウは強烈な衝撃を受け、ナイの放った岩砕剣の刃は彼の甲冑を破壊し、ダイゴロウは試合場に倒れ込む。彼は一撃で白目を剥き、そのまま動かなくなった。その光景を見たアッシュは戦闘続行は不可能だと判断し、試合を終わらせてナイの勝利を宣言した。
「そこまで!!勝者、ナイ!!」
『うおおおおおっ!!』
ナイの勝利が宣言された瞬間に観客は立ちあがり、彼に声援を送る。そんな彼等を見てナイは笑みを浮かべて腕を上げ、一方で特等席の武芸者達は唖然とした表情を浮かべたまま固まってしまう。
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