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嵐の前の静けさ
第982話 ロランの実力
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「あ、そうだ。ナイさん、もしよかったらマグマゴーレムの核を何個か回収しておいてください」
「え?イリアさんも欲しいの?」
「ええ、ちょっと色々と実験に使おうと思いまして……協力してくれるのなら今度とっておきの薬を上げますから」
「う~ん……まあ、余裕があったら回収しておくよ」
「ナイ君、気を付けてね」
イリアの頼みをナイは引き受けると、モモが心配そうに彼の両手を掴む。そんな彼女にナイは安心させるように頷き、必ず戻ってくる事を約束する。
「大丈夫だよ、ちゃんと戻ってくるからね。それじゃあ、二人とも良い子にして待っててね。ちゃんと他の人の言う事を聞いて大人しくしててね」
「は~い!!」
「いや、私達は子供ですか!!」
小さな子供をあやすようにナイはイリアとモモに別れを告げると、他の者と共にグマグ火山へ向けて出発する。ここから徒歩で移動しなければならず、辿り着くまでの間にナイは熱耐性の装備を取り出す。
(アルトが用意してくれた特製のマント……熱を遮断する効果があると言ってたけど)
魔道具職人を目指すアルトは色々な物を作っており、その中には熱を遮断する機能を持つ魔道具も含まれていた。ナイは赤色のマントを取り出して身に付けると、先ほどまで感じていた熱気が大分抑えられた。
このマントは火属性の耐性を持つ魔物から剥ぎ取られた毛皮を利用されており、マントを身に付けた途端に熱気を遮断する。このマントを身に付けていれば火山の熱気で体力を消耗する事はなく、思う存分に戦えると確信する。
(凄いなこのマント……前に着た奴より性能が高そうだ)
実はナイは知らない事だがアルトはアチイ砂漠に立ち寄った時、熱耐性の強い素材を色々と買い込んでいた。そのお陰で新しい魔道具を作り出し、今回ナイが装備しているマントは「火鼠」という魔獣から剥ぎ取った素材が利用されている。
「アルトもだんだん魔道具職人らしくなってきたな……王子様なのに」
「ナイ君、一緒に頑張ろうね」
ナイは隣から声を掛けられ、振り返ると自分と同じくマントを身に付けたリーナが歩いていた。どうやら彼女もアルトからマントを受け取っていたらしく、既に他の者も熱耐性の装備を身に付けていた。
『ゴウカ、その格好は暑くないの?』
『ふははっ!!こういう時を想定してハマーンが熱耐性の高い甲冑を用意してくれた!!む、いかん……ちょいと催したな。おい、誰か吾輩の甲冑を外してくれ!!これではしょんべんを漏らしてしまう!!』
『……最低』
金属製の甲冑を身に付けているゴウカだが、彼の装備は熱耐性の高い魔法金属で構成されているらしく、特に火山の熱を受けても平気そうだった。むしろ問題なのは彼の場合は甲冑を自力で取り外せない事であり、他の人間に手伝って貰わなければ用足しもできない。
そんなゴウカとマリンのやり取りを見てナイ達は苦笑いを浮かべる中、先頭を移動していたロランが立ち止まった。彼は他の者を制すると、全員が戦闘態勢に入った。
「待て」
「……敵ですか?」
「いや……」
ロランが立ち止まった理由は彼の視線の先に埋まっている岩石であり、慎重にリョフは近づくと武器を取り出す。ロランが愛用する武器は「双紅刃」と呼ばれる武器である。
双紅刃は「両剣」であり、外見は薙刀に近いが普通の薙刀と違う点は柄の両端に刃が取り付けられている事だった。ロランはこの武器を使い、かつて伝説の武人と謳われたリョフと互角に戦った。
リョフとの戦闘で双紅刃は壊れてしまったが、ロランが収監中にハマーンが修復していた。国王はいつの日かロランが大将軍に復帰すると信じて、密かに修理を依頼していた。
「お前達は下がっていろ」
岩石を前にしたロランは双紅刃を構えると、その場で回転させる。その行為を始めて見る人間は驚いた表情を浮かべるが、ナイは彼が双紅刃を回転させる姿を見て背筋が凍り付く。
(あれは……)
かつてナイはロランと戦った事があるから知っているが、ロランの双紅刃は回転させる事に両端の刃が紅色に光り輝く。刃が輝く理由は双紅刃に地属性の魔力が送り込まれ、極限まで魔力を高めると凄まじい破壊力を生み出す。
「はああああああっ!!」
『ぬうっ!?』
「す、凄い!!」
「なんて迫力……!?」
武器を回転させているだけだというのにロランは凄まじい威圧感を放ち、それを目の当たりにした者達は唖然とする。そして彼は岩石に目掛けて踏み込むと、双紅刃を叩き込む。
「があああああっ!!」
まるで猛虎を想像させる雄たけびを上げながらロランは双紅刃の片刃を岩石に叩き付けた瞬間、岩石は粉々に砕け散った。その威力は凄まじく、岩石どころか地面にも亀裂を生じさせ、刃が地中に埋まってしまう。
攻撃を終えた途端に双紅刃に纏っていた魔力が消え去り、それを確認するとロランは満足そうに頷き、双紅刃を背中に戻す。どうやら彼は自分の力が衰えていないのか試しただけらしく、全員に振り返って告げた。
「待たせて悪かったな……行くぞ」
ロランの言葉を聞いて全員が彼の後に続き、グマグ火山に到着する前に彼の実力を見せつけられた者達は心強く思う。ロランが味方ならばどんな困難も乗り越えられるような気がした――
――討伐隊が遂にグマグ火山へ到着すると、そのあまりの変貌ぶりに驚く。火山の火口から煙が上がり、更には火山の麓にはマグマゴーレムの姿がちらほらと見えた。
「こ、これが……グマグ火山!?」
「くっ……なんて熱気だ」
「前に着た時とは全然雰囲気が違いますわ!?」
一年前と比べて火山の雰囲気が一変し、既に麓にまでマグマゴーレムの姿が確認された事に危機感を抱く。以前に訪れた時と比べて明らかに火山の熱気が増しており、熱耐性の高い装備を身に付けていなければまともに歩く事もできない。ナイは念のために火山の熱気で灰を焼かれないようにイリア特製の仮面も付ける準備を行う。
討伐隊は麓に到着するとロランは部隊を分け、ここからは各騎士団と冒険者は分かれて行動するように告げる。無論、別れると言っても各部隊が別々の行動を取るわけではなく、一定の距離を保ちながら移動を行う事を注意する。
「ここからは事前に決めた通り、四つの部隊に分かれて行動してもらう。まずは金狼騎士団、銀狼騎士団、白狼騎士団は別々に行動してもらう。指揮を執るのは各部隊の団長と副団長だ。白狼騎士団は人数が少ないため、冒険者組も参加するように」
「ナイ君、一緒に頑張ろうね!!」
「あ、うん……」
『ほう、少年と一緒の部隊か。これは楽しみだな』
『……よろしく』
白狼騎士団は今回はナイしかいないため、他の冒険者達と組んで行動する事になる。後はロランと彼直属の配下の騎士達、金狼騎士団、銀狼騎士団に分かれて行動し、合計で四つの部隊が火山を登り始めた。
部隊分けをするといっても基本的には各部隊に指示を出すのはロランである事に変わりはなく、勝手な行動はとれない。しかし、先頭になれば各部隊の代表の命令を聞いて戦う事になるため、白狼騎士団の場合はナイが命令を与える立場となる。
「ナイ君、敵が現れた時は僕達に指示を出してね。遠慮しなくていいからね」
「え、でもそれならゴウカさんの方が……」
『吾輩は当てにしない方がいいぞ。どうも昔から集団行動とやらは苦手でな、人に命令するよりもされる方が気が楽だからな。はっはっはっ!!』
『貴方の実力は認めている……言う事には従う』
ゴウカとマリンはナイの命令を受ける事に不満はなく、他人には厳しいマリンもナイの実力は認めていた。しかし、いきなり指示を出してくれと頼まれてもナイは困ってしまう。
(命令しろと言われてもどうすればいいんだろう……とりあえず、やってみるしかないか)
任された以上は全力を尽くすしかなく、ナイは敵が現れた時の事を考えて自分がどのように命令すればいいのか真面目に考えていると、ロランが声を上げた。
「前方からマグマゴーレムの大群が来たぞ!!全員、戦闘準備!!」
「えっ!?」
「もう来たか……行くぞ!!」
「気を抜くな!!」
『よし、我々も行くぞ!!』
まだ考えがまとまらない内にマグマゴーレムの大群が出現し、討伐隊に目掛けて一直線に迫ってきた。マグマゴーレムの数は20体は存在し、山を駆け下りながら迫ってきた。
――ゴォオオオオオッ!!
20体を越えるマグマゴーレムは上から滑り落ちるように迫り、その迫力に討伐隊の者達は気圧されそうになる。それでも部隊を指揮する者達は怯まずに戦闘態勢を整えていた。
「来るぞ!!油断するな!!」
「怯えるな!!お前達は誇り高き戦士達だ!!」
「行きますわよ!!」
「ふっ……」
『よし、誰が一番多く倒せるか競争だ!!うおおおおおっ!!』
ロランは双紅刃を回転させ、バッシュは防魔の盾を構えると、ドリスは彼の隣で真紅を構え、リンは居合の体勢に入る。そしてゴウカはドラゴンスレイヤーを抜き放ち、雄たけびを上げた。
20体のマグマゴーレムが討伐隊へ迫ると、意外な事に最初に攻撃を仕掛けたのはバッシュだった。彼は防魔の盾で転がり落ちてきたマグマゴーレムを受け止めると、上手く衝撃を受け流してマグマゴーレムを地面に倒れさせる。
「ふんっ!!」
「ゴアッ!?」
「流石は王子!!やりますわね!!」
バッシュは見事に正面から転がり落ちてきたマグマゴーレムを受け流し、体勢を崩したマグマゴーレムに対してドリスは真紅を突き出す。彼女の真紅は火属性の魔法槍のため、本来ならば相性は悪い。しかし、それを考慮してドリスは真紅を突き刺す。
「爆槍!!」
「ゴアアッ……!?」
ドリスは柄の部分から火属性の魔力を放出させ、攻撃速度を加速させてランス突き刺す。高速に放たれた真紅はマグマゴーレムの胸元を貫き、見事に核を破壊した。
この攻撃方法ならば直接に相手を爆発させるわけではないため、マグマゴーレムを倒す事ができた。また、他の者達もそれぞれの方法でマグマゴーレムに攻撃を仕掛け、相手を追い詰めていた。
「斬!!」
「ゴアアッ!?」
「ぬんっ!!」
「ゴガァッ!?」
リンは居合の体勢から剣を抜くと、一撃でマグマゴーレムの胴体を切断させた。ロランは双紅刃を振り回し、次々と押し寄せるマグマゴーレムを吹き飛ばす。
「え?イリアさんも欲しいの?」
「ええ、ちょっと色々と実験に使おうと思いまして……協力してくれるのなら今度とっておきの薬を上げますから」
「う~ん……まあ、余裕があったら回収しておくよ」
「ナイ君、気を付けてね」
イリアの頼みをナイは引き受けると、モモが心配そうに彼の両手を掴む。そんな彼女にナイは安心させるように頷き、必ず戻ってくる事を約束する。
「大丈夫だよ、ちゃんと戻ってくるからね。それじゃあ、二人とも良い子にして待っててね。ちゃんと他の人の言う事を聞いて大人しくしててね」
「は~い!!」
「いや、私達は子供ですか!!」
小さな子供をあやすようにナイはイリアとモモに別れを告げると、他の者と共にグマグ火山へ向けて出発する。ここから徒歩で移動しなければならず、辿り着くまでの間にナイは熱耐性の装備を取り出す。
(アルトが用意してくれた特製のマント……熱を遮断する効果があると言ってたけど)
魔道具職人を目指すアルトは色々な物を作っており、その中には熱を遮断する機能を持つ魔道具も含まれていた。ナイは赤色のマントを取り出して身に付けると、先ほどまで感じていた熱気が大分抑えられた。
このマントは火属性の耐性を持つ魔物から剥ぎ取られた毛皮を利用されており、マントを身に付けた途端に熱気を遮断する。このマントを身に付けていれば火山の熱気で体力を消耗する事はなく、思う存分に戦えると確信する。
(凄いなこのマント……前に着た奴より性能が高そうだ)
実はナイは知らない事だがアルトはアチイ砂漠に立ち寄った時、熱耐性の強い素材を色々と買い込んでいた。そのお陰で新しい魔道具を作り出し、今回ナイが装備しているマントは「火鼠」という魔獣から剥ぎ取った素材が利用されている。
「アルトもだんだん魔道具職人らしくなってきたな……王子様なのに」
「ナイ君、一緒に頑張ろうね」
ナイは隣から声を掛けられ、振り返ると自分と同じくマントを身に付けたリーナが歩いていた。どうやら彼女もアルトからマントを受け取っていたらしく、既に他の者も熱耐性の装備を身に付けていた。
『ゴウカ、その格好は暑くないの?』
『ふははっ!!こういう時を想定してハマーンが熱耐性の高い甲冑を用意してくれた!!む、いかん……ちょいと催したな。おい、誰か吾輩の甲冑を外してくれ!!これではしょんべんを漏らしてしまう!!』
『……最低』
金属製の甲冑を身に付けているゴウカだが、彼の装備は熱耐性の高い魔法金属で構成されているらしく、特に火山の熱を受けても平気そうだった。むしろ問題なのは彼の場合は甲冑を自力で取り外せない事であり、他の人間に手伝って貰わなければ用足しもできない。
そんなゴウカとマリンのやり取りを見てナイ達は苦笑いを浮かべる中、先頭を移動していたロランが立ち止まった。彼は他の者を制すると、全員が戦闘態勢に入った。
「待て」
「……敵ですか?」
「いや……」
ロランが立ち止まった理由は彼の視線の先に埋まっている岩石であり、慎重にリョフは近づくと武器を取り出す。ロランが愛用する武器は「双紅刃」と呼ばれる武器である。
双紅刃は「両剣」であり、外見は薙刀に近いが普通の薙刀と違う点は柄の両端に刃が取り付けられている事だった。ロランはこの武器を使い、かつて伝説の武人と謳われたリョフと互角に戦った。
リョフとの戦闘で双紅刃は壊れてしまったが、ロランが収監中にハマーンが修復していた。国王はいつの日かロランが大将軍に復帰すると信じて、密かに修理を依頼していた。
「お前達は下がっていろ」
岩石を前にしたロランは双紅刃を構えると、その場で回転させる。その行為を始めて見る人間は驚いた表情を浮かべるが、ナイは彼が双紅刃を回転させる姿を見て背筋が凍り付く。
(あれは……)
かつてナイはロランと戦った事があるから知っているが、ロランの双紅刃は回転させる事に両端の刃が紅色に光り輝く。刃が輝く理由は双紅刃に地属性の魔力が送り込まれ、極限まで魔力を高めると凄まじい破壊力を生み出す。
「はああああああっ!!」
『ぬうっ!?』
「す、凄い!!」
「なんて迫力……!?」
武器を回転させているだけだというのにロランは凄まじい威圧感を放ち、それを目の当たりにした者達は唖然とする。そして彼は岩石に目掛けて踏み込むと、双紅刃を叩き込む。
「があああああっ!!」
まるで猛虎を想像させる雄たけびを上げながらロランは双紅刃の片刃を岩石に叩き付けた瞬間、岩石は粉々に砕け散った。その威力は凄まじく、岩石どころか地面にも亀裂を生じさせ、刃が地中に埋まってしまう。
攻撃を終えた途端に双紅刃に纏っていた魔力が消え去り、それを確認するとロランは満足そうに頷き、双紅刃を背中に戻す。どうやら彼は自分の力が衰えていないのか試しただけらしく、全員に振り返って告げた。
「待たせて悪かったな……行くぞ」
ロランの言葉を聞いて全員が彼の後に続き、グマグ火山に到着する前に彼の実力を見せつけられた者達は心強く思う。ロランが味方ならばどんな困難も乗り越えられるような気がした――
――討伐隊が遂にグマグ火山へ到着すると、そのあまりの変貌ぶりに驚く。火山の火口から煙が上がり、更には火山の麓にはマグマゴーレムの姿がちらほらと見えた。
「こ、これが……グマグ火山!?」
「くっ……なんて熱気だ」
「前に着た時とは全然雰囲気が違いますわ!?」
一年前と比べて火山の雰囲気が一変し、既に麓にまでマグマゴーレムの姿が確認された事に危機感を抱く。以前に訪れた時と比べて明らかに火山の熱気が増しており、熱耐性の高い装備を身に付けていなければまともに歩く事もできない。ナイは念のために火山の熱気で灰を焼かれないようにイリア特製の仮面も付ける準備を行う。
討伐隊は麓に到着するとロランは部隊を分け、ここからは各騎士団と冒険者は分かれて行動するように告げる。無論、別れると言っても各部隊が別々の行動を取るわけではなく、一定の距離を保ちながら移動を行う事を注意する。
「ここからは事前に決めた通り、四つの部隊に分かれて行動してもらう。まずは金狼騎士団、銀狼騎士団、白狼騎士団は別々に行動してもらう。指揮を執るのは各部隊の団長と副団長だ。白狼騎士団は人数が少ないため、冒険者組も参加するように」
「ナイ君、一緒に頑張ろうね!!」
「あ、うん……」
『ほう、少年と一緒の部隊か。これは楽しみだな』
『……よろしく』
白狼騎士団は今回はナイしかいないため、他の冒険者達と組んで行動する事になる。後はロランと彼直属の配下の騎士達、金狼騎士団、銀狼騎士団に分かれて行動し、合計で四つの部隊が火山を登り始めた。
部隊分けをするといっても基本的には各部隊に指示を出すのはロランである事に変わりはなく、勝手な行動はとれない。しかし、先頭になれば各部隊の代表の命令を聞いて戦う事になるため、白狼騎士団の場合はナイが命令を与える立場となる。
「ナイ君、敵が現れた時は僕達に指示を出してね。遠慮しなくていいからね」
「え、でもそれならゴウカさんの方が……」
『吾輩は当てにしない方がいいぞ。どうも昔から集団行動とやらは苦手でな、人に命令するよりもされる方が気が楽だからな。はっはっはっ!!』
『貴方の実力は認めている……言う事には従う』
ゴウカとマリンはナイの命令を受ける事に不満はなく、他人には厳しいマリンもナイの実力は認めていた。しかし、いきなり指示を出してくれと頼まれてもナイは困ってしまう。
(命令しろと言われてもどうすればいいんだろう……とりあえず、やってみるしかないか)
任された以上は全力を尽くすしかなく、ナイは敵が現れた時の事を考えて自分がどのように命令すればいいのか真面目に考えていると、ロランが声を上げた。
「前方からマグマゴーレムの大群が来たぞ!!全員、戦闘準備!!」
「えっ!?」
「もう来たか……行くぞ!!」
「気を抜くな!!」
『よし、我々も行くぞ!!』
まだ考えがまとまらない内にマグマゴーレムの大群が出現し、討伐隊に目掛けて一直線に迫ってきた。マグマゴーレムの数は20体は存在し、山を駆け下りながら迫ってきた。
――ゴォオオオオオッ!!
20体を越えるマグマゴーレムは上から滑り落ちるように迫り、その迫力に討伐隊の者達は気圧されそうになる。それでも部隊を指揮する者達は怯まずに戦闘態勢を整えていた。
「来るぞ!!油断するな!!」
「怯えるな!!お前達は誇り高き戦士達だ!!」
「行きますわよ!!」
「ふっ……」
『よし、誰が一番多く倒せるか競争だ!!うおおおおおっ!!』
ロランは双紅刃を回転させ、バッシュは防魔の盾を構えると、ドリスは彼の隣で真紅を構え、リンは居合の体勢に入る。そしてゴウカはドラゴンスレイヤーを抜き放ち、雄たけびを上げた。
20体のマグマゴーレムが討伐隊へ迫ると、意外な事に最初に攻撃を仕掛けたのはバッシュだった。彼は防魔の盾で転がり落ちてきたマグマゴーレムを受け止めると、上手く衝撃を受け流してマグマゴーレムを地面に倒れさせる。
「ふんっ!!」
「ゴアッ!?」
「流石は王子!!やりますわね!!」
バッシュは見事に正面から転がり落ちてきたマグマゴーレムを受け流し、体勢を崩したマグマゴーレムに対してドリスは真紅を突き出す。彼女の真紅は火属性の魔法槍のため、本来ならば相性は悪い。しかし、それを考慮してドリスは真紅を突き刺す。
「爆槍!!」
「ゴアアッ……!?」
ドリスは柄の部分から火属性の魔力を放出させ、攻撃速度を加速させてランス突き刺す。高速に放たれた真紅はマグマゴーレムの胸元を貫き、見事に核を破壊した。
この攻撃方法ならば直接に相手を爆発させるわけではないため、マグマゴーレムを倒す事ができた。また、他の者達もそれぞれの方法でマグマゴーレムに攻撃を仕掛け、相手を追い詰めていた。
「斬!!」
「ゴアアッ!?」
「ぬんっ!!」
「ゴガァッ!?」
リンは居合の体勢から剣を抜くと、一撃でマグマゴーレムの胴体を切断させた。ロランは双紅刃を振り回し、次々と押し寄せるマグマゴーレムを吹き飛ばす。
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