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嵐の前の静けさ
第956話 城壁での攻防戦
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「ゴオオッ!!」
「ぐううっ!?」
「くそ、こいつら何体いるんだ!?」
「抑えろ!!何としても街の中には入れるな!!」
城壁を上り詰めようとしてくるロックゴーレムに兵士達が槍を突き出すが、いくら突こうと岩石の外殻で覆われたロックゴーレムには刃が通らない。
既にロックゴーレムの何体かは城壁を上り詰め、冒険者と戦闘を繰り広げていた。冒険者の中にはロックゴーレムと戦闘した経験がある者も居たが、彼等が戦ってきたゴーレムと比べても今回の敵は戦い方が異なる事に戸惑う。
「ゴオオッ!!」
「くそっ!!また躱したぞ!?」
「な、何なんだよこいつら!!」
「ちょっと、退きなさい!!私の魔法で吹き飛ばしてやるわ!!」
バケツで水を浴びせようとしてきた兵士をロックゴーレムは回避すると、見かねた魔術師の女性が杖を構える。照準を定めてロックゴーレムに向けて砲撃魔法を発動させた。
「フレイムランス!!」
「ゴオッ!?」
魔術師の杖から魔法陣が展開されると、咄嗟にロックゴーレムは腕を交差して片膝を着く。相手の攻撃魔法が発動する前に防御の態勢に入ったロックゴーレムをマホは上空から確認する。
魔法陣から槍状の火炎の塊が発射されると、その攻撃に対してロックゴーレムは正面から受ける。火属性の魔法は火力が高く、並のゴーレムならば吹き飛ばしてもおかしくはない。
「こ、これでくたばってでしょう!?」
「おおっ、これなら……うわっ!?」
「ゴオオッ!!」
ロックゴーレムが爆炎に飲み込まれた光景を見て魔術師は勝利を確信したが、黒煙の中からロックゴーレムは姿を現すと、近くに立っていた冒険者の頭を掴む。
「うぎゃあああっ!?」
「そ、そんなっ!?」
「魔法が……効かないのか!?」
「ゴォオオオッ!!」
火属性の砲撃魔法をまともに受けたにも関わらず、ロックゴーレムは両腕の岩石の外殻が少し剥がれた程度で殆ど損傷はない。それどころか爆炎で加熱した肉体を利用して冒険者の一人を掴む。
過熱した腕に掴まれた冒険者は悲鳴を上げ、高温を放つ岩石を直に当てられたに等しく、ロックゴーレムが手放した時には冒険者は酷い火傷を負っていた。しかもロックゴーレムは倒れた冒険者の背中を踏みつけようとした。
「ゴオオッ……!!」
「ひいいっ!?」
「や、止めろっ!!」
「いやぁっ!?」
仲間を助けようと他の冒険者が動く中、魔術師の女性は悲鳴を上げるだけで何もできなかった。そんな彼等の様子を見てマホは見ていられず、ロックゴーレムに向けて急降下する。
「ふんっ!!」
「ゴアアッ!?」
飛行魔法を発動している状態のマホは周囲に「風の膜」のような物を纏っており、その状態で突っ込めばロックゴーレムに直接触れずに攻撃を行える。ロックゴーレムは予想外の攻撃で城壁から吹き飛ばされて落下してしまい、それを確認したマホは冒険者達に声をかけた。
「大丈夫か、お主等?」
「あ、ああ……」
「ありがとう……けど、君は誰だ!?」
「待って……この人、何処かで見た事が……あっ!?」
自分達を助けてくれたマホを見て冒険者達は戸惑うが、魔術師の女性はマホの事を知っていたのか驚いた表情を浮かべる。そんな彼女にマホは近づき、一言だけ注意を行う。
「魔術師は常に冷静でなければならん、悲鳴を上げる暇があるならば次の行動に移れ」
「え、あっ……は、はい!!」
「うむ、では儂は行くぞ」
仲間の危機に何もできなかった女性にマホは注意すると、彼女は城壁の様子を確認して既にロックゴーレムの大半が乗り込んでいる事を知る。この数を相手にするのはきついが、それでも街を守れるのは彼女しかいない。
冒険者達は野生のロックゴーレムとは異なる戦法に苦戦を強いられ、兵士達に至ってはロックゴーレムと戦う事自体が初めてなので上手く対応できていない。このままでは大勢の犠牲者が生まれる可能性が高く、マホは仕方なく多少の無理を覚悟でロックゴーレムと戦う。
(儂の魔力がどこまで持つか……やるしかあるまい)
ここまでの戦闘でマホは何度も飛行魔法を使用しており、正直に言えば魔力はもう余裕がない。一応は魔力回復薬は持ち込んでいるが、生憎と回復薬と違って魔力回復薬は即効性はない。即ち、魔力が切れればマホはロックゴーレムに対処はできない。
再び杖の先端に風属性の魔力で形成した「渦巻」を纏わせ、戦闘態勢に入ったマホはロックゴーレムの集団と向き合う。しかし、先ほど仲間が城壁から叩き落されたのを確認したロックゴーレム達はマホを警戒し、防御の態勢を取る。
「「「ゴォオオオッ!!」」」
「こいつ等……儂の魔力が切れるまで粘るつもりか」
マホは冷や汗を流しながらロックゴーレムの集団と向き合い、エルマかフィルが援軍に訪れるまで時間を稼ぐしかなかった――
「――回転鋏!!」
「ゴアアッ!?」
「ゴオッ!?」
東側の城壁ではフィルは鎖の魔剣を手にしてロックゴーレムの攻撃を仕掛け、回転を加える事で加速した魔剣を放つ。鎖の先端に取り付けられた刃がロックゴーレムを切り刻む。
鋼鉄の程度の硬度の武器ではロックゴーレムには通じないが、フィルの所有する鎖の魔剣は魔法金属製であるため、ロックゴーレムの外殻であろうと破壊できる。しかし、核を破壊しなければ完全に倒す事はできず、いくら切り刻まれようとロックゴーレムは起き上がって再生する。
「ゴオオオッ!!」
「ちぃっ……しつこい奴等だ」
「も、もう駄目だ!!逃げるぞ!!」
「こんなの勝てっこない!!」
フィル以外の冒険者達はいくら損傷を与えようと再生して襲い掛かってくるロックゴーレムに恐れを為し、中には逃げ出そうとする者もいた。しかし、そんな者達に対してフィルは怒声をあげる。
「諦めるな!!魔物に怯える冒険者が何処にいる!?」
「そ、そんな事を言われても……」
「いいから戦え!!ここで僕達が踏ん張らなければ街の人間に被害が及ぶ!!それでも君達は冒険者か!?」
「くっ……よ、余所者にここまで言われて黙ってられるか!!」
冒険者達はフィルの言葉を聞いて士気が上がり、最後まで諦めずに戦う決意を固める。そんな彼等に対してフィルは内心では後ろめたさを覚えた。
(くそっ……他の黄金冒険者ならここまで苦労する事はなかっただろうな)
王都で活動している黄金冒険者はガオウ、リーナ、ゴウカ、マリン、フィル、そして現在は引退したハマーンを含めると6人存在する。この中で実力順ではフィルは下から数えた方が高い。
仮にこの現場にリーナが居れば蒼月の能力でロックゴーレムを氷漬けにする事ができる。ゴウカに至っては力ずくでロックゴーレムを粉砕し、マリンならば高火力の魔法で対処できると思われた。
残されたハマーンにしろガオウにしろ、フィルよりも上手く立ち回って現在の状況を打破できたかもしれない。そして先日までフィルが敵視していたナイが居たとしたら、彼の腕力ならばロックゴーレムを核どころか肉体その物を粉砕して倒す光景がッ安易に想像できた。
(僕に彼のような力があれば……いや、何を考えているんだ!!)
いくら追い詰められているとはいえ、この場には存在しない人間の助けを求めている事にフィルは自分自身を叱咤する。いくら願ったところでナイ達が戻ってくる事は有り得ず、この状況を打破できるのは自分達しかいない。
「ゴオオッ!!」
「くっ……うおおおおっ!!」
迫りくるロックゴーレムに対してフィルは鎖の魔剣を振りかざし、体力の限界を迎えるまで彼は戦い続ける――
――同時刻、西側の城壁ではエルマは地上に存在するロックゴーレムに目掛けて矢を放ち、彼女は矢を撃ち込む際に必ず矢に魔力を纏わせて放つ。
「いい加減に……くたばりなさいっ!!」
「ゴアッ!?」
「ゴオッ!?」
「ゴガァッ!?」
的確にエルマはロックゴーレムの頭部に目掛けて矢を放ち、彼女の放った矢には風属性の魔力が纏う。標的に矢が的中した瞬間、纏っていた魔力が一気に拡散して衝撃波を生み出す。
エルマの「魔弓術」は実は二つの戦法が存在し、一つ目は風の魔力を渦巻状に矢の先端に纏わせ、削岩機の如く相手の肉体を削り取る「螺旋弾」そしてもう一つは相手に的中した瞬間に魔力を一気に解放して至近距離で衝撃波を生み出す「風爆」この二つを使い分けてエルマはロックゴーレムを追い詰める。
(私は師匠のように魔法は使えない……けど、弓《これ》だけは誰にも負けない!!)
生憎とエルマは師であるマホと比べて魔術師としての才能はなく、その代わりに彼女は子供の頃から鍛えてきた弓の腕には自信があった。彼女は自分の魔法と弓の腕を組み合わせた「魔弓術」を作り出し、それを生かして今まで戦ってきた。
(螺旋弾ならゴーレムの外殻を貫ける……でも、核の位置を正確に掴めないと倒せない)
貫通力が高い螺旋弾ならばロックゴーレムの外殻を破壊する事は容易いが、威力を上げるために攻撃範囲が狭めたせいで核を適確に貫かなければ倒せない。そのためにエルマは攻撃方法を風爆へと切り替える。
(風爆なら内部から衝撃波を発生させてロックゴーレムの肉体を砕ける!!勿論、核を壊さなければ再生するけど……時間は稼げる!!)
エルマは風爆を連発する理由はロックゴーレムを倒すのが目的ではなく、あくまでも時間稼ぎのためだった。彼女の矢がロックゴーレムの肉体に触れる度に衝撃波が発生し、肉体の一部が破損して一時的に戦闘不能に陥る。その間に他の者が戦闘態勢を整えればエルマからすれば十分だった。
「援軍はまだですか!?」
「い、今街から兵士を呼んでいます!!もうすぐ辿り着くはずです!!」
「急いでください!!何時まで持つかどうか……!!」
城壁の兵士の言葉にエルマは早く兵士が訪れる事を願うが、この時に彼女が退治していた地上のロックゴーレムの集団に異変が起きた。
「ぐううっ!?」
「くそ、こいつら何体いるんだ!?」
「抑えろ!!何としても街の中には入れるな!!」
城壁を上り詰めようとしてくるロックゴーレムに兵士達が槍を突き出すが、いくら突こうと岩石の外殻で覆われたロックゴーレムには刃が通らない。
既にロックゴーレムの何体かは城壁を上り詰め、冒険者と戦闘を繰り広げていた。冒険者の中にはロックゴーレムと戦闘した経験がある者も居たが、彼等が戦ってきたゴーレムと比べても今回の敵は戦い方が異なる事に戸惑う。
「ゴオオッ!!」
「くそっ!!また躱したぞ!?」
「な、何なんだよこいつら!!」
「ちょっと、退きなさい!!私の魔法で吹き飛ばしてやるわ!!」
バケツで水を浴びせようとしてきた兵士をロックゴーレムは回避すると、見かねた魔術師の女性が杖を構える。照準を定めてロックゴーレムに向けて砲撃魔法を発動させた。
「フレイムランス!!」
「ゴオッ!?」
魔術師の杖から魔法陣が展開されると、咄嗟にロックゴーレムは腕を交差して片膝を着く。相手の攻撃魔法が発動する前に防御の態勢に入ったロックゴーレムをマホは上空から確認する。
魔法陣から槍状の火炎の塊が発射されると、その攻撃に対してロックゴーレムは正面から受ける。火属性の魔法は火力が高く、並のゴーレムならば吹き飛ばしてもおかしくはない。
「こ、これでくたばってでしょう!?」
「おおっ、これなら……うわっ!?」
「ゴオオッ!!」
ロックゴーレムが爆炎に飲み込まれた光景を見て魔術師は勝利を確信したが、黒煙の中からロックゴーレムは姿を現すと、近くに立っていた冒険者の頭を掴む。
「うぎゃあああっ!?」
「そ、そんなっ!?」
「魔法が……効かないのか!?」
「ゴォオオオッ!!」
火属性の砲撃魔法をまともに受けたにも関わらず、ロックゴーレムは両腕の岩石の外殻が少し剥がれた程度で殆ど損傷はない。それどころか爆炎で加熱した肉体を利用して冒険者の一人を掴む。
過熱した腕に掴まれた冒険者は悲鳴を上げ、高温を放つ岩石を直に当てられたに等しく、ロックゴーレムが手放した時には冒険者は酷い火傷を負っていた。しかもロックゴーレムは倒れた冒険者の背中を踏みつけようとした。
「ゴオオッ……!!」
「ひいいっ!?」
「や、止めろっ!!」
「いやぁっ!?」
仲間を助けようと他の冒険者が動く中、魔術師の女性は悲鳴を上げるだけで何もできなかった。そんな彼等の様子を見てマホは見ていられず、ロックゴーレムに向けて急降下する。
「ふんっ!!」
「ゴアアッ!?」
飛行魔法を発動している状態のマホは周囲に「風の膜」のような物を纏っており、その状態で突っ込めばロックゴーレムに直接触れずに攻撃を行える。ロックゴーレムは予想外の攻撃で城壁から吹き飛ばされて落下してしまい、それを確認したマホは冒険者達に声をかけた。
「大丈夫か、お主等?」
「あ、ああ……」
「ありがとう……けど、君は誰だ!?」
「待って……この人、何処かで見た事が……あっ!?」
自分達を助けてくれたマホを見て冒険者達は戸惑うが、魔術師の女性はマホの事を知っていたのか驚いた表情を浮かべる。そんな彼女にマホは近づき、一言だけ注意を行う。
「魔術師は常に冷静でなければならん、悲鳴を上げる暇があるならば次の行動に移れ」
「え、あっ……は、はい!!」
「うむ、では儂は行くぞ」
仲間の危機に何もできなかった女性にマホは注意すると、彼女は城壁の様子を確認して既にロックゴーレムの大半が乗り込んでいる事を知る。この数を相手にするのはきついが、それでも街を守れるのは彼女しかいない。
冒険者達は野生のロックゴーレムとは異なる戦法に苦戦を強いられ、兵士達に至ってはロックゴーレムと戦う事自体が初めてなので上手く対応できていない。このままでは大勢の犠牲者が生まれる可能性が高く、マホは仕方なく多少の無理を覚悟でロックゴーレムと戦う。
(儂の魔力がどこまで持つか……やるしかあるまい)
ここまでの戦闘でマホは何度も飛行魔法を使用しており、正直に言えば魔力はもう余裕がない。一応は魔力回復薬は持ち込んでいるが、生憎と回復薬と違って魔力回復薬は即効性はない。即ち、魔力が切れればマホはロックゴーレムに対処はできない。
再び杖の先端に風属性の魔力で形成した「渦巻」を纏わせ、戦闘態勢に入ったマホはロックゴーレムの集団と向き合う。しかし、先ほど仲間が城壁から叩き落されたのを確認したロックゴーレム達はマホを警戒し、防御の態勢を取る。
「「「ゴォオオオッ!!」」」
「こいつ等……儂の魔力が切れるまで粘るつもりか」
マホは冷や汗を流しながらロックゴーレムの集団と向き合い、エルマかフィルが援軍に訪れるまで時間を稼ぐしかなかった――
「――回転鋏!!」
「ゴアアッ!?」
「ゴオッ!?」
東側の城壁ではフィルは鎖の魔剣を手にしてロックゴーレムの攻撃を仕掛け、回転を加える事で加速した魔剣を放つ。鎖の先端に取り付けられた刃がロックゴーレムを切り刻む。
鋼鉄の程度の硬度の武器ではロックゴーレムには通じないが、フィルの所有する鎖の魔剣は魔法金属製であるため、ロックゴーレムの外殻であろうと破壊できる。しかし、核を破壊しなければ完全に倒す事はできず、いくら切り刻まれようとロックゴーレムは起き上がって再生する。
「ゴオオオッ!!」
「ちぃっ……しつこい奴等だ」
「も、もう駄目だ!!逃げるぞ!!」
「こんなの勝てっこない!!」
フィル以外の冒険者達はいくら損傷を与えようと再生して襲い掛かってくるロックゴーレムに恐れを為し、中には逃げ出そうとする者もいた。しかし、そんな者達に対してフィルは怒声をあげる。
「諦めるな!!魔物に怯える冒険者が何処にいる!?」
「そ、そんな事を言われても……」
「いいから戦え!!ここで僕達が踏ん張らなければ街の人間に被害が及ぶ!!それでも君達は冒険者か!?」
「くっ……よ、余所者にここまで言われて黙ってられるか!!」
冒険者達はフィルの言葉を聞いて士気が上がり、最後まで諦めずに戦う決意を固める。そんな彼等に対してフィルは内心では後ろめたさを覚えた。
(くそっ……他の黄金冒険者ならここまで苦労する事はなかっただろうな)
王都で活動している黄金冒険者はガオウ、リーナ、ゴウカ、マリン、フィル、そして現在は引退したハマーンを含めると6人存在する。この中で実力順ではフィルは下から数えた方が高い。
仮にこの現場にリーナが居れば蒼月の能力でロックゴーレムを氷漬けにする事ができる。ゴウカに至っては力ずくでロックゴーレムを粉砕し、マリンならば高火力の魔法で対処できると思われた。
残されたハマーンにしろガオウにしろ、フィルよりも上手く立ち回って現在の状況を打破できたかもしれない。そして先日までフィルが敵視していたナイが居たとしたら、彼の腕力ならばロックゴーレムを核どころか肉体その物を粉砕して倒す光景がッ安易に想像できた。
(僕に彼のような力があれば……いや、何を考えているんだ!!)
いくら追い詰められているとはいえ、この場には存在しない人間の助けを求めている事にフィルは自分自身を叱咤する。いくら願ったところでナイ達が戻ってくる事は有り得ず、この状況を打破できるのは自分達しかいない。
「ゴオオッ!!」
「くっ……うおおおおっ!!」
迫りくるロックゴーレムに対してフィルは鎖の魔剣を振りかざし、体力の限界を迎えるまで彼は戦い続ける――
――同時刻、西側の城壁ではエルマは地上に存在するロックゴーレムに目掛けて矢を放ち、彼女は矢を撃ち込む際に必ず矢に魔力を纏わせて放つ。
「いい加減に……くたばりなさいっ!!」
「ゴアッ!?」
「ゴオッ!?」
「ゴガァッ!?」
的確にエルマはロックゴーレムの頭部に目掛けて矢を放ち、彼女の放った矢には風属性の魔力が纏う。標的に矢が的中した瞬間、纏っていた魔力が一気に拡散して衝撃波を生み出す。
エルマの「魔弓術」は実は二つの戦法が存在し、一つ目は風の魔力を渦巻状に矢の先端に纏わせ、削岩機の如く相手の肉体を削り取る「螺旋弾」そしてもう一つは相手に的中した瞬間に魔力を一気に解放して至近距離で衝撃波を生み出す「風爆」この二つを使い分けてエルマはロックゴーレムを追い詰める。
(私は師匠のように魔法は使えない……けど、弓《これ》だけは誰にも負けない!!)
生憎とエルマは師であるマホと比べて魔術師としての才能はなく、その代わりに彼女は子供の頃から鍛えてきた弓の腕には自信があった。彼女は自分の魔法と弓の腕を組み合わせた「魔弓術」を作り出し、それを生かして今まで戦ってきた。
(螺旋弾ならゴーレムの外殻を貫ける……でも、核の位置を正確に掴めないと倒せない)
貫通力が高い螺旋弾ならばロックゴーレムの外殻を破壊する事は容易いが、威力を上げるために攻撃範囲が狭めたせいで核を適確に貫かなければ倒せない。そのためにエルマは攻撃方法を風爆へと切り替える。
(風爆なら内部から衝撃波を発生させてロックゴーレムの肉体を砕ける!!勿論、核を壊さなければ再生するけど……時間は稼げる!!)
エルマは風爆を連発する理由はロックゴーレムを倒すのが目的ではなく、あくまでも時間稼ぎのためだった。彼女の矢がロックゴーレムの肉体に触れる度に衝撃波が発生し、肉体の一部が破損して一時的に戦闘不能に陥る。その間に他の者が戦闘態勢を整えればエルマからすれば十分だった。
「援軍はまだですか!?」
「い、今街から兵士を呼んでいます!!もうすぐ辿り着くはずです!!」
「急いでください!!何時まで持つかどうか……!!」
城壁の兵士の言葉にエルマは早く兵士が訪れる事を願うが、この時に彼女が退治していた地上のロックゴーレムの集団に異変が起きた。
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