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砂漠の脅威
第931話 ドワーフの里
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――回収できるだけのポイズンタートルの素材を運び終えた後、飛行船は次の目的地の前にグツグ火山へ向かう。グツグ火山に暮らす鍛冶師達は山の麓に村を作り、いきなり空を飛ぶ船が下りてきたのを見て村に暮らすドワーフ達は度肝を抜かす。
飛行船から降りてきたバッシュは自分達が王都から訪れた事、そして現在は飛行船でアチイ砂漠に向かっている最中だと伝える。彼はグツグ火山で採掘される火属性の魔石を分けてほしい事を伝えると、鍛冶師達は最初は難色を示した。
「いくらこの国の王子様の頼みと言えど、この火山で採れた物は俺達の物ですよ」
「確かに俺達はこの国に住まわせてもらっているが、こっちだって命懸けで火山から魔石を採掘してるんだ。そんな苦労して手に入れた魔石を無償で引き渡す事はできませんね」
「悪いんだが俺達の魔石が欲しければそれ相応の対価を支払ってもらいたい」
「ふむ……」
話し合いの場にてバッシュは厳つい顔つきのドワーフの鍛冶師達に囲まれ、彼等は相手が王族だからといって遠慮はせず、魔石を引き渡す代わりに相応の対価を求めた。
仮にも一国の王子に対して無礼な態度を取る彼等に王国騎士達は苛立つが、ドワーフという種族は相手が目上の者であろうと自分に利益を与える相手で無ければ敬う事はしない。それを知った上でバッシュは交渉材料として用意した代物を引き渡す。
「……それならば受け取った魔石の量の二倍ほどのミスリル鉱石を引き渡す、といったらどうだ?」
「ミスリル鉱石……だと!?」
「そ、それは本当ですかい?」
「馬鹿な、そんな量のミスリル鉱石を用意できるはずが……」
「おい、ナイに例の物を運ぶように伝えてくれ」
「はっ!!」
バッシュの言葉に鍛冶師達は驚愕の表情を浮かべるが、バッシュは側近の騎士に命じてナイを呼び出す。しばらくすると両手に巨大なミスリル鉱石を抱えたナイが部屋の中に入り込む。
「失礼しま~す」
「うおっ!?」
「な、何じゃ!?」
「こ、これは……ミスリル鉱石か!?」
恐らくは100キロ以上はあると思われるミスリル鉱石をナイは軽々と持ち上げながら部屋の中に入ると、床の上に置いて鍛冶師達に見せつける。あまりの重量に床が軋むが、鍛冶師達は信じられない大きさのミスリル鉱石を見て動揺を隠せない。
「な、何と巨大な鉱石じゃ……こ、これを何処で手に入れた!?」
「そこまで教えるつもりはない。だが、これだけのミスリル鉱石があれば色々な物が作り出せるだろう?」
「む、むうっ……」
火属性の魔石とミスリル鉱石の価値はややミスリル鉱石が勝り、しかもバッシュの要求は自分達が用意したミスリル鉱石の半分の量の魔石の要求である。その事を考えれば鍛冶師達にとっては悪くない条件だが、話が上手すぎて怪しく感じてしまう。
しかし、今回の取引相手はこの国の王子であるため、商人や貴族などよりもずっと信頼における相手である。そもそも王族の権限を使えば強制的にグツグ火山に暮らす鍛冶師から資源を回収する事も不可能ではない。それにも関わらずにバッシュは鍛冶師達と対等な取引を持ちかけてきた事に鍛冶師達は思い悩む。
(おい、どうする?取引を引き受けるか?)
(馬鹿を言え、こんな都合の良い取引があるか。きっと裏があるんだろ……)
(だが、王族がわざわざ俺達の所まで訪れて騙そうなんてあり得るのかな?俺達を騙して得する事なんてないだろう)
(う、う~ん……)
ドワーフ達は今回の取引の件について話し合うがまとまらず、どうするべきか思い悩む。そんな彼等の様子を見てバッシュはまた側近の兵士に指示を出す。
「ハマーンを連れて来い」
「はっ!!」
「ハマーン?それってまさか……あの王都の鍛冶師か!?」
ハマーンの名前を耳にした途端にグツグ火山の鍛冶師達は動揺を示し、やがてハマーンが部屋の中に訪れると彼を見て鍛冶師達は戸惑う。
「これはこれは久しぶりじゃな、グツグ火山の鍛冶師の諸君。儂の事を覚えているか」
「お、お前は……昔、ここに来たことがあるな」
「まさか、お前が王都で有名な鍛冶師の?」
「いったいどうしてお前がここに……」
「まあまあ、落ち着いて……それよりも儂の話を聞いてくれんか?」
かつてハマーンはグツグ火山の鍛冶師達と顔を合わせた事があり、彼の事を覚えていた鍛冶師達は王族のバッシュと行動を共にしている事に驚く。しかし、ハマーンはそんな彼等に対して取引の交渉を行う。
「儂が王都で鍛冶師をしておることは噂で聞いた事はあるだろう?ここへ訪れるのに利用した飛行船の設計も実は儂が関わっておる」
「な、何だと!?」
「あの飛行船を作ったというのか?」
「うむ、儂の生涯最高の作品といっても過言ではない」
「し、信じられない……!!」
飛行船を実際に目撃した鍛冶師達はハマーンが飛行船の開発に関わっていた事に驚きを隠せず、嫉妬と羨望の視線をハマーンに向ける。それほどまでに彼等にとって飛行船は素晴らしい作品だった。
「……飛行船の設計には他の鍛冶師の方も関わっていたのでは?」
「ああ、特に魔導大砲などの兵器の内臓はイリアの提案だったと聞いているが……」
「ま、まあまあ……話も上手くいきそうですし、ここは黙っておきましょう」
ハマーンの発言にドリスとバッシュはこそこそと話し合うが、グツグ火山の鍛冶師達はハマーンの話を信じ込んで彼等はその場で膝を着いて懇願する。
「た、頼む!!是非、俺達に飛行船を作った時の事を詳しく話してくれ!!」
「鍛冶師なら……いや、職人なら死ぬ前に歴史に名前を刻むような大作を残したいんだ!!」
「いったいどんな発想があればあんなに立派な船を作れるんだ!!」
「うむ、まあ話すのもやぶさかではないが……本題を忘れてはならんぞ」
「あ、ああ……魔石とミスリル鉱石の交換だな?本当に渡した分の魔石の倍の量のミスリル鉱石を用意してくれるのなら俺達に文句はねえ!!」
鍛冶師達は一刻も早くにハマーンが飛行船を設計した時の話を聞くため、魔石とミスリル鉱石の交換の取引を承諾した。
彼等からすればいつでも採掘できる魔石よりも、色々な用途に扱えるミスリル鉱石の方が貴重であり、討伐隊にとっても飛行船に必要な燃料になる火属性の魔石を余分に手に入る。しかも鍛冶師に引き渡すミスリル鉱石は先の戦闘で倒したポイズンタートルから採取した代物であるため、帰りにマル湖に立ち寄れば採取できなかった分のミスリル鉱石も手に入る。
「では儂が飛行船の開発を国王陛下に頼まれた時の話からしようか」
「こ、国王が直々に飛行船の依頼を!?」
「す、すげぇっ……あんた、大した奴だよ!!」
「色々と聞かせてくれ!!あ、おい!!お茶を持ってこい!!」
鍛冶師達は王子であるバッシュよりもハマーンの方を丁重に持て成し、彼から飛行船の開発に至るまでの経緯を詳しく尋ねる。その様子を他の者は何とも言えない表情で見守るが、バッシュはため息を吐いて船に一足先に戻る事にした。
「ここでの用事は住んだ……燃料を積み次第、すぐに出発するぞ」
「そうですわね……」
「全く、これだからドワーフは……」
「あははっ……」
この場はハマーンに任せてナイ達は一足先に飛行船へ戻り、グツグ火山の鍛冶師達が約束通りに火属性の魔石を運び出すまで待つ事にした――
――翌日の朝、ハマーンは大分酒に酔った状態で戻ってきた。どうやらグツグ火山の鍛冶師達に盛大に歓迎されたらしく、彼は酔っ払った状態ながらも約束通りに大量の火属性の魔石を持ち返ってきた。
「ひっくっ……いやぁっ、あいつら中々話の分かる奴等でしてな。ほれ、予定の数よりも倍近くの魔石を渡してくれたぞ」
「それは大手柄だったな、ハマーンよ……だが、その調子でお前は飛行船を運転できるのか?」
「うぃっくっ……大丈夫、この程度の酒なんて飲んだうちにも入らない。それにドワーフにとって酒なんて水と大して変わらない……うぷぅっ!?」
「ちょっ……師匠!?」
戻ってきたハマーンは昨日の夜に深酒した影響か戻ってきて早々に嘔吐してしまい、その後は意識を失って治療室に運び込まれる。どうやら鍛冶師達に飛行船の話をするために余程飲まされたらしく、この状態ではとても運転は任せられない。
この飛行船の運転を行えるのはハマーンしかおらず、彼の部下達も飛行船を動かす事はできない。そのためにハマーンが目覚めるまでは飛行船は動かす事はできず、バッシュは頭を抱えてしまう。
「全く……飲み過ぎだ」
「バッシュ王子、我々はどうすれば……」
「どうすればもなにもハマーンがこんな状態では飛行船は飛ばせられない……目が覚めるまで出発を遅らせるしかあるまい」
「え~っ……ここ、何もないから飽きたのに」
「仕方ありませんわね……」
ハマーンが酒の影響で寝入ってしまい、この状態ではしばらくは目に覚ませそうにないためにバッシュは飛行船の出発時間を変更する。尤も飛行船の移動速度ならばすぐに後れを取り戻せるため、焦らずにいつでも出発できるように船に待機する。
しかし、飛行船の待機中に昨日の交渉の場に存在した鍛冶師達が慌てた様子で訪れ、彼等はバッシュの面会を申し込んできた。飛行船に訪れたドワーフ達はただならぬ雰囲気だったため、見張りの兵士はバッシュに鍛冶師達の事を伝えると、彼はすぐに面会に応じた。
「バ、バッシュ王子!!良かった、まだここに居られましたか!!」
「お前達は昨日の……まだ我々に用事か?」
「そ、それが大変なんです!!グツグ火山の方に見た事もない魔物が現れて……鉱山に採掘に向かった俺達の仲間が酷い怪我をしたんです!!」
「怪我だと?」
「王子、イリアさんに診てもらいましょう!!」
「分かった、許可しよう」
鍛冶師達の話を聞いて怪我人がいると聞きつけたドリスは飛行船に乗っている薬師のイリアに治療をさせるようにバッシュに促し、彼もすぐに許可した――
飛行船から降りてきたバッシュは自分達が王都から訪れた事、そして現在は飛行船でアチイ砂漠に向かっている最中だと伝える。彼はグツグ火山で採掘される火属性の魔石を分けてほしい事を伝えると、鍛冶師達は最初は難色を示した。
「いくらこの国の王子様の頼みと言えど、この火山で採れた物は俺達の物ですよ」
「確かに俺達はこの国に住まわせてもらっているが、こっちだって命懸けで火山から魔石を採掘してるんだ。そんな苦労して手に入れた魔石を無償で引き渡す事はできませんね」
「悪いんだが俺達の魔石が欲しければそれ相応の対価を支払ってもらいたい」
「ふむ……」
話し合いの場にてバッシュは厳つい顔つきのドワーフの鍛冶師達に囲まれ、彼等は相手が王族だからといって遠慮はせず、魔石を引き渡す代わりに相応の対価を求めた。
仮にも一国の王子に対して無礼な態度を取る彼等に王国騎士達は苛立つが、ドワーフという種族は相手が目上の者であろうと自分に利益を与える相手で無ければ敬う事はしない。それを知った上でバッシュは交渉材料として用意した代物を引き渡す。
「……それならば受け取った魔石の量の二倍ほどのミスリル鉱石を引き渡す、といったらどうだ?」
「ミスリル鉱石……だと!?」
「そ、それは本当ですかい?」
「馬鹿な、そんな量のミスリル鉱石を用意できるはずが……」
「おい、ナイに例の物を運ぶように伝えてくれ」
「はっ!!」
バッシュの言葉に鍛冶師達は驚愕の表情を浮かべるが、バッシュは側近の騎士に命じてナイを呼び出す。しばらくすると両手に巨大なミスリル鉱石を抱えたナイが部屋の中に入り込む。
「失礼しま~す」
「うおっ!?」
「な、何じゃ!?」
「こ、これは……ミスリル鉱石か!?」
恐らくは100キロ以上はあると思われるミスリル鉱石をナイは軽々と持ち上げながら部屋の中に入ると、床の上に置いて鍛冶師達に見せつける。あまりの重量に床が軋むが、鍛冶師達は信じられない大きさのミスリル鉱石を見て動揺を隠せない。
「な、何と巨大な鉱石じゃ……こ、これを何処で手に入れた!?」
「そこまで教えるつもりはない。だが、これだけのミスリル鉱石があれば色々な物が作り出せるだろう?」
「む、むうっ……」
火属性の魔石とミスリル鉱石の価値はややミスリル鉱石が勝り、しかもバッシュの要求は自分達が用意したミスリル鉱石の半分の量の魔石の要求である。その事を考えれば鍛冶師達にとっては悪くない条件だが、話が上手すぎて怪しく感じてしまう。
しかし、今回の取引相手はこの国の王子であるため、商人や貴族などよりもずっと信頼における相手である。そもそも王族の権限を使えば強制的にグツグ火山に暮らす鍛冶師から資源を回収する事も不可能ではない。それにも関わらずにバッシュは鍛冶師達と対等な取引を持ちかけてきた事に鍛冶師達は思い悩む。
(おい、どうする?取引を引き受けるか?)
(馬鹿を言え、こんな都合の良い取引があるか。きっと裏があるんだろ……)
(だが、王族がわざわざ俺達の所まで訪れて騙そうなんてあり得るのかな?俺達を騙して得する事なんてないだろう)
(う、う~ん……)
ドワーフ達は今回の取引の件について話し合うがまとまらず、どうするべきか思い悩む。そんな彼等の様子を見てバッシュはまた側近の兵士に指示を出す。
「ハマーンを連れて来い」
「はっ!!」
「ハマーン?それってまさか……あの王都の鍛冶師か!?」
ハマーンの名前を耳にした途端にグツグ火山の鍛冶師達は動揺を示し、やがてハマーンが部屋の中に訪れると彼を見て鍛冶師達は戸惑う。
「これはこれは久しぶりじゃな、グツグ火山の鍛冶師の諸君。儂の事を覚えているか」
「お、お前は……昔、ここに来たことがあるな」
「まさか、お前が王都で有名な鍛冶師の?」
「いったいどうしてお前がここに……」
「まあまあ、落ち着いて……それよりも儂の話を聞いてくれんか?」
かつてハマーンはグツグ火山の鍛冶師達と顔を合わせた事があり、彼の事を覚えていた鍛冶師達は王族のバッシュと行動を共にしている事に驚く。しかし、ハマーンはそんな彼等に対して取引の交渉を行う。
「儂が王都で鍛冶師をしておることは噂で聞いた事はあるだろう?ここへ訪れるのに利用した飛行船の設計も実は儂が関わっておる」
「な、何だと!?」
「あの飛行船を作ったというのか?」
「うむ、儂の生涯最高の作品といっても過言ではない」
「し、信じられない……!!」
飛行船を実際に目撃した鍛冶師達はハマーンが飛行船の開発に関わっていた事に驚きを隠せず、嫉妬と羨望の視線をハマーンに向ける。それほどまでに彼等にとって飛行船は素晴らしい作品だった。
「……飛行船の設計には他の鍛冶師の方も関わっていたのでは?」
「ああ、特に魔導大砲などの兵器の内臓はイリアの提案だったと聞いているが……」
「ま、まあまあ……話も上手くいきそうですし、ここは黙っておきましょう」
ハマーンの発言にドリスとバッシュはこそこそと話し合うが、グツグ火山の鍛冶師達はハマーンの話を信じ込んで彼等はその場で膝を着いて懇願する。
「た、頼む!!是非、俺達に飛行船を作った時の事を詳しく話してくれ!!」
「鍛冶師なら……いや、職人なら死ぬ前に歴史に名前を刻むような大作を残したいんだ!!」
「いったいどんな発想があればあんなに立派な船を作れるんだ!!」
「うむ、まあ話すのもやぶさかではないが……本題を忘れてはならんぞ」
「あ、ああ……魔石とミスリル鉱石の交換だな?本当に渡した分の魔石の倍の量のミスリル鉱石を用意してくれるのなら俺達に文句はねえ!!」
鍛冶師達は一刻も早くにハマーンが飛行船を設計した時の話を聞くため、魔石とミスリル鉱石の交換の取引を承諾した。
彼等からすればいつでも採掘できる魔石よりも、色々な用途に扱えるミスリル鉱石の方が貴重であり、討伐隊にとっても飛行船に必要な燃料になる火属性の魔石を余分に手に入る。しかも鍛冶師に引き渡すミスリル鉱石は先の戦闘で倒したポイズンタートルから採取した代物であるため、帰りにマル湖に立ち寄れば採取できなかった分のミスリル鉱石も手に入る。
「では儂が飛行船の開発を国王陛下に頼まれた時の話からしようか」
「こ、国王が直々に飛行船の依頼を!?」
「す、すげぇっ……あんた、大した奴だよ!!」
「色々と聞かせてくれ!!あ、おい!!お茶を持ってこい!!」
鍛冶師達は王子であるバッシュよりもハマーンの方を丁重に持て成し、彼から飛行船の開発に至るまでの経緯を詳しく尋ねる。その様子を他の者は何とも言えない表情で見守るが、バッシュはため息を吐いて船に一足先に戻る事にした。
「ここでの用事は住んだ……燃料を積み次第、すぐに出発するぞ」
「そうですわね……」
「全く、これだからドワーフは……」
「あははっ……」
この場はハマーンに任せてナイ達は一足先に飛行船へ戻り、グツグ火山の鍛冶師達が約束通りに火属性の魔石を運び出すまで待つ事にした――
――翌日の朝、ハマーンは大分酒に酔った状態で戻ってきた。どうやらグツグ火山の鍛冶師達に盛大に歓迎されたらしく、彼は酔っ払った状態ながらも約束通りに大量の火属性の魔石を持ち返ってきた。
「ひっくっ……いやぁっ、あいつら中々話の分かる奴等でしてな。ほれ、予定の数よりも倍近くの魔石を渡してくれたぞ」
「それは大手柄だったな、ハマーンよ……だが、その調子でお前は飛行船を運転できるのか?」
「うぃっくっ……大丈夫、この程度の酒なんて飲んだうちにも入らない。それにドワーフにとって酒なんて水と大して変わらない……うぷぅっ!?」
「ちょっ……師匠!?」
戻ってきたハマーンは昨日の夜に深酒した影響か戻ってきて早々に嘔吐してしまい、その後は意識を失って治療室に運び込まれる。どうやら鍛冶師達に飛行船の話をするために余程飲まされたらしく、この状態ではとても運転は任せられない。
この飛行船の運転を行えるのはハマーンしかおらず、彼の部下達も飛行船を動かす事はできない。そのためにハマーンが目覚めるまでは飛行船は動かす事はできず、バッシュは頭を抱えてしまう。
「全く……飲み過ぎだ」
「バッシュ王子、我々はどうすれば……」
「どうすればもなにもハマーンがこんな状態では飛行船は飛ばせられない……目が覚めるまで出発を遅らせるしかあるまい」
「え~っ……ここ、何もないから飽きたのに」
「仕方ありませんわね……」
ハマーンが酒の影響で寝入ってしまい、この状態ではしばらくは目に覚ませそうにないためにバッシュは飛行船の出発時間を変更する。尤も飛行船の移動速度ならばすぐに後れを取り戻せるため、焦らずにいつでも出発できるように船に待機する。
しかし、飛行船の待機中に昨日の交渉の場に存在した鍛冶師達が慌てた様子で訪れ、彼等はバッシュの面会を申し込んできた。飛行船に訪れたドワーフ達はただならぬ雰囲気だったため、見張りの兵士はバッシュに鍛冶師達の事を伝えると、彼はすぐに面会に応じた。
「バ、バッシュ王子!!良かった、まだここに居られましたか!!」
「お前達は昨日の……まだ我々に用事か?」
「そ、それが大変なんです!!グツグ火山の方に見た事もない魔物が現れて……鉱山に採掘に向かった俺達の仲間が酷い怪我をしたんです!!」
「怪我だと?」
「王子、イリアさんに診てもらいましょう!!」
「分かった、許可しよう」
鍛冶師達の話を聞いて怪我人がいると聞きつけたドリスは飛行船に乗っている薬師のイリアに治療をさせるようにバッシュに促し、彼もすぐに許可した――
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