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王国の闇
第838話 白猫亭に迫る危機
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――その頃、白猫亭の方ではモモは警護を行うビャクに餌を与えていた。彼の好きなオークの干し肉を与えると、大きな皿に水を入れて飲ませる。
「はい、ビャク君。いっぱいあるからたくさん食べてね」
「ウォンッ♪」
ビャクは嬉しそうに肉に喰らいつき、皿の水を飲む。そんな彼の姿を見てモモは微笑み、彼の身体を撫でようとした時、不意にビャクは何かに気付いた様に顔を上げた。
「ウォンッ!?」
「えっ、どうしたの?」
「グルルルッ……!!」
唐突にビャクはモモを庇うように彼女の傍に寄り添うと、白猫亭の屋根の上に向けて唸り声をあげる。ビャクの様子に不安を抱いたモモは白猫亭の屋根を見上げると、そこには見覚えのある人物が立っていた。
白猫亭の屋根の上に立っていたのは「青年」であり、最初に見た時はモモは誰だか分からなかったが、すぐに顔をよく見て思い出した。少し前にモモ達を襲った吸血鬼の少年とよく似ており、その背中には蝙蝠のような羽根を生やしていた。
「えっ!?」
「ふふふっ……一人目、見つけた」
「ウォオオンッ!!」
満月によって「真の姿」を取り戻した吸血鬼はモモに視線を向けて舌なめずりを行い、そんな彼に対してビャクは咆哮を放つ。白狼種であるビャクの姿を見て吸血鬼は眉をしかめ、余計な邪魔者が居る事にため息を吐き出す。
「ちっ……面倒そうなのがいるな。まあ、だけど……今の僕の敵じゃないけどね!!」
「わわっ!?ヒ、ヒナちゃ~ん!!変な人がいるよ!!」
「誰が変な人だ!!」
モモの言葉に激高した吸血鬼は屋根の上から飛び降りると、蝙蝠の羽根を広げて滑空し、地面にゆっくりと降りたつ。ビャクは吸血鬼と向かい合い、全身の毛を逆立てながら向かい合う。
「グルルルッ!!」
「ふんっ……僕の邪魔をする気か?魔獣の癖に人間の味方をするつもりか?」
「ビャ、ビャク君は魔獣じゃないもん!!私達の友達だよ!!」
「笑わせるな!!人間が魔獣と友達になれるはずがないだろうがっ!!」
青年の姿に戻った吸血鬼は言葉も荒々しく変わり果て、やがて背中の羽根を広げてビャクとモモの元に近付く。咄嗟にビャクは吸血に目掛けて前脚を振りかざし、爪で切りかかろうとした。
「ガアッ!!」
「ふんっ!!」
「わああっ!?」
ビャクが前脚の爪を振り下ろした瞬間、吸血鬼はその行動を先読みしていたかのように羽根を折りたたんで全身を覆い込む。ビャクの爪は鋼鉄の盾を切り裂く切れ味を誇るが、吸血鬼の羽根に衝突した途端に弾き返されてしまう。
「ウォンッ!?」
「馬鹿めっ!!吸血鬼を舐めるなよ!!」
満月を迎えた時の吸血鬼は羽根の硬さを魔法金属並に強化させる事ができた。ビャクの爪を弾き返しただけではなく、今度は羽根を広げてビャクの身体に切りかかった。
「死ねっ!!」
「ギャインッ!?」
「ビャク君!?」
吸血鬼が振り払った羽根はまるで刃物如き切れ味を誇り、ビャクはモモを庇って攻撃を受けてしまう。毛皮が切れて血が滲み、さらに吸血鬼は容赦なく羽根を繰り出して切り付ける。
「そらそらそらっ!!」
「ガアアッ!?」
「や、止めて……止めてよ!!」
ビャクの身体が吸血鬼の羽根に切り刻まれ、血飛沫が舞い上がる。その様子を見てモモは必死に止めるように促すが、吸血鬼は聞く耳を持たない。
このままではビャクが殺されると思ったモモは、彼のために用意した皿を思い出し、地面に置いた大皿を持ち上げて彼女は吸血鬼に投げつける。
「止めてってば!!」
「ふん、こんな物……うおっ!?」
投げつけられた大皿を吸血鬼は羽根で弾き返そうとした瞬間、予想以上の衝撃を受けて身体が仰け反り、大皿はそのまま近くの建物の壁へと突き刺さった。
――実はこの大皿は以前にナイがドリスの誕生日の時にリンダに勝利した報酬として受け取った代物であり、非常に頑丈な素材で作り出された代物だった。しかもそれを投げたのが王都内では指折りの魔力を持ち合わせるモモであった。
ビャクを傷つけられたモモは怒り心頭で白猫亭の扉に手を伸ばし、彼女は無意識に魔力で自分の肉体を強化させ、力ずくで扉の片側を引き剥がすと、吸血鬼に向けて放り込む。
「てやぁっ!!」
「うおおっ!?」
可愛らしい掛け声とは裏腹に扉は凄まじい勢いで吸血鬼に放り込まれ、それに対して吸血鬼は頭を下げて扉を回避する。先ほどの大皿のように向かい側の建物の壁に扉はめり込み、それを見た吸血鬼は信じられない表情を浮かべた。
(な、何だこいつ……こんなのまともにくらったらやばい!!)
外見に見合わずにとんでもない怪力を誇るモモに対して恐怖を抱き、ビャクよりも先に彼女を始末するため、吸血鬼は自分の牙と爪を伸ばす。
吸血鬼の牙と爪は白狼種にも勝るとも劣らぬ切れ味を誇り、人の肉体ならば牙で噛みつくだけで肉が引きちぎれ、骨を引き裂く。その爪で切られれば真っ二つに切り裂かれ、確実に致命傷を与えられる。
「はい、ビャク君。いっぱいあるからたくさん食べてね」
「ウォンッ♪」
ビャクは嬉しそうに肉に喰らいつき、皿の水を飲む。そんな彼の姿を見てモモは微笑み、彼の身体を撫でようとした時、不意にビャクは何かに気付いた様に顔を上げた。
「ウォンッ!?」
「えっ、どうしたの?」
「グルルルッ……!!」
唐突にビャクはモモを庇うように彼女の傍に寄り添うと、白猫亭の屋根の上に向けて唸り声をあげる。ビャクの様子に不安を抱いたモモは白猫亭の屋根を見上げると、そこには見覚えのある人物が立っていた。
白猫亭の屋根の上に立っていたのは「青年」であり、最初に見た時はモモは誰だか分からなかったが、すぐに顔をよく見て思い出した。少し前にモモ達を襲った吸血鬼の少年とよく似ており、その背中には蝙蝠のような羽根を生やしていた。
「えっ!?」
「ふふふっ……一人目、見つけた」
「ウォオオンッ!!」
満月によって「真の姿」を取り戻した吸血鬼はモモに視線を向けて舌なめずりを行い、そんな彼に対してビャクは咆哮を放つ。白狼種であるビャクの姿を見て吸血鬼は眉をしかめ、余計な邪魔者が居る事にため息を吐き出す。
「ちっ……面倒そうなのがいるな。まあ、だけど……今の僕の敵じゃないけどね!!」
「わわっ!?ヒ、ヒナちゃ~ん!!変な人がいるよ!!」
「誰が変な人だ!!」
モモの言葉に激高した吸血鬼は屋根の上から飛び降りると、蝙蝠の羽根を広げて滑空し、地面にゆっくりと降りたつ。ビャクは吸血鬼と向かい合い、全身の毛を逆立てながら向かい合う。
「グルルルッ!!」
「ふんっ……僕の邪魔をする気か?魔獣の癖に人間の味方をするつもりか?」
「ビャ、ビャク君は魔獣じゃないもん!!私達の友達だよ!!」
「笑わせるな!!人間が魔獣と友達になれるはずがないだろうがっ!!」
青年の姿に戻った吸血鬼は言葉も荒々しく変わり果て、やがて背中の羽根を広げてビャクとモモの元に近付く。咄嗟にビャクは吸血に目掛けて前脚を振りかざし、爪で切りかかろうとした。
「ガアッ!!」
「ふんっ!!」
「わああっ!?」
ビャクが前脚の爪を振り下ろした瞬間、吸血鬼はその行動を先読みしていたかのように羽根を折りたたんで全身を覆い込む。ビャクの爪は鋼鉄の盾を切り裂く切れ味を誇るが、吸血鬼の羽根に衝突した途端に弾き返されてしまう。
「ウォンッ!?」
「馬鹿めっ!!吸血鬼を舐めるなよ!!」
満月を迎えた時の吸血鬼は羽根の硬さを魔法金属並に強化させる事ができた。ビャクの爪を弾き返しただけではなく、今度は羽根を広げてビャクの身体に切りかかった。
「死ねっ!!」
「ギャインッ!?」
「ビャク君!?」
吸血鬼が振り払った羽根はまるで刃物如き切れ味を誇り、ビャクはモモを庇って攻撃を受けてしまう。毛皮が切れて血が滲み、さらに吸血鬼は容赦なく羽根を繰り出して切り付ける。
「そらそらそらっ!!」
「ガアアッ!?」
「や、止めて……止めてよ!!」
ビャクの身体が吸血鬼の羽根に切り刻まれ、血飛沫が舞い上がる。その様子を見てモモは必死に止めるように促すが、吸血鬼は聞く耳を持たない。
このままではビャクが殺されると思ったモモは、彼のために用意した皿を思い出し、地面に置いた大皿を持ち上げて彼女は吸血鬼に投げつける。
「止めてってば!!」
「ふん、こんな物……うおっ!?」
投げつけられた大皿を吸血鬼は羽根で弾き返そうとした瞬間、予想以上の衝撃を受けて身体が仰け反り、大皿はそのまま近くの建物の壁へと突き刺さった。
――実はこの大皿は以前にナイがドリスの誕生日の時にリンダに勝利した報酬として受け取った代物であり、非常に頑丈な素材で作り出された代物だった。しかもそれを投げたのが王都内では指折りの魔力を持ち合わせるモモであった。
ビャクを傷つけられたモモは怒り心頭で白猫亭の扉に手を伸ばし、彼女は無意識に魔力で自分の肉体を強化させ、力ずくで扉の片側を引き剥がすと、吸血鬼に向けて放り込む。
「てやぁっ!!」
「うおおっ!?」
可愛らしい掛け声とは裏腹に扉は凄まじい勢いで吸血鬼に放り込まれ、それに対して吸血鬼は頭を下げて扉を回避する。先ほどの大皿のように向かい側の建物の壁に扉はめり込み、それを見た吸血鬼は信じられない表情を浮かべた。
(な、何だこいつ……こんなのまともにくらったらやばい!!)
外見に見合わずにとんでもない怪力を誇るモモに対して恐怖を抱き、ビャクよりも先に彼女を始末するため、吸血鬼は自分の牙と爪を伸ばす。
吸血鬼の牙と爪は白狼種にも勝るとも劣らぬ切れ味を誇り、人の肉体ならば牙で噛みつくだけで肉が引きちぎれ、骨を引き裂く。その爪で切られれば真っ二つに切り裂かれ、確実に致命傷を与えられる。
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