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王国の闇
第826話 聖女騎士団VS白面
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――同時刻、聖女騎士団の方は他の騎士団の誰よりも早くに下水道の白面の施設に繋がる抜け道を発見していた。事前にイリアから聞き出した情報によると、一般区に存在する建物の一つに抜け道が存在し、皮肉にもそこはかつてテンが一人で壊滅させた闇ギルドの建物だった。
「まさかこんな場所に抜け道があるなんてね……よし、いくよ!!」
「「「おうっ!!」」」
地下施設に繋がる螺旋階段を発見したテン達は降りていくと、やがて階段の終わりに扉を発見した。この扉の向こう側が白面の施設であり、イシ達の話によればこちらでは毒薬の開発を行われている。
王都の施設では毒薬の素材となる毒草の栽培を行い、それぞれに毒草を栽培したり、それを調合する施設などに分かれている。テン達が発見したのは他の施設で育成した素材を集め、それらを調合して毒薬を作り出す施設だった。
「テン!!この扉、開かないぞ!!」
「ちっ、しょうがないね……よし、ここは派手に行くよ!!ルナ、ランファン!!」
「よっしゃあっ!!」
「……仕方ないか」
聖女騎士団の中でも怪力を誇るテン、ルナ、ランファンの三人が扉に向けて駆け出し、勢いよく体当たりを行う。すると鋼鉄製の扉は呆気なく凹み、そのまま左右に押し開かれて中に入り込む。
「あいたぁっ!?」
「いててっ……何だい、思ったより呆気なかったね」
「二人とも……周りを見ろ」
扉がわりとあっさりと開いた事にルナとテンは拍子抜けしてしまうが、ランファンの言葉を聞いて顔を上げると、そこには十数名の白面が待ち構えていた。彼等全員がテン達を待ち構えていたらしく、その手には煙玉らしき物を握りしめていた。
「……侵入者か」
「へっ……あんたらは普通に喋るんだね。そっちの方がいいよ、誰だい?あんな変な掛け声を考案したのは?」
「黙れ!!」
テンの軽口に対して白面は激高し、全員が煙玉を放り込む。それらに対してテンは口元を覆うが、すぐにランファンはルナとテンの身体を掴んで後ろに下がった。
「待て、テン!!様子がおかしいぞ!?」
「あん!?」
「わわっ!?」
「もう遅い……毒で死ね!!」
白面が投げ込んだ煙玉はただの煙を発生させるのではなく、毒性を含んだ煙を放出する。部屋の中に緑色の煙が充満し、煙は螺旋階段の方にまで広がる。
煙の進行速度は早く、螺旋階段を登って地上まで逃げる暇すらない。毒煙に包まれるテン達の姿を見て白面は勝利を確信したが、ここで煙の中から大剣を振り払ってテンが姿を現す。
『しゃおらぁっ!!』
『なっ!?』
テンはあろう事か、白面の仮面を身に付けた状態で踏み込み、煙を振り払いながら白面の元へ向かう。彼等は自分達の仮面を身に付けたテンを見て動揺し、しかも彼女だけではなく、他の騎士団も仮面を身に付けた状態で踏み込む。
『おらぁっ!!』
『ふんっ!!』
『せいやぁっ!!』
『ぐはぁあああっ!?』
団員全員が防毒作用のある白面の仮面を身に付け、彼等の放った毒薬を無効化して踏み込む。完全に油断していた白面は抵抗する暇もなく、蹴散らされた。
『ば、馬鹿な……何故、お前等が我々の仮面を!?』
『イリアの奴から聞いてたんだよ!!この仮面を身に付ければあんたらの扱う毒の殆どは防げるんだろう!?』
『イリア!?誰だ!?』
白面はイリアの存在を知らされておらず、彼女が白面を縛り付ける毒薬を製作している事は宰相は秘匿にしていた。仮に白面がイリアの存在を知れば復讐されるかもしれず、テンはイリアの名前を耳にした相手の頭を小突く。
『おっと、こいつは内緒だったね……忘れな!!』
『ふげぇっ!?』
白面の頭部に強烈な衝撃が走り、いつの間にか他の白面も倒されていた。これによって聖女騎士団の活躍によって白面の地下施設の一つは潰されたが、残念ながらこの施設にはシャドウの姿はなく、外れだと判明した。
テン達からすればジャンヌの仇であるシャドウだけは自分の手で討ちたいが、目的を果たした以上は地上へ引き返すしかない。だが、ここで倒した白面を置いていくわけには行かず、彼女達は連れ帰る。
『なあ、テン……こいつら、悪い奴等だろ?どうして助けるんだ?』
『悪い奴といっても、こいつらだって毒で無理やり従わされてたんだよ。あんた、可哀想に思わないのかい?』
『でも、こいつらだって酷い事をいっぱいしてきたんだろう?』
『だから真っ当に表の世界で罪を償わせるのさ。殺して楽にさせようなんて甘いんだよ』
『ふっ……団長らしいな』
ルナは悪事を行った白面を助け出す事に不満はあったが、テンは誰一人として見捨てず、彼等を救うために地上へと連れて行く――
「まさかこんな場所に抜け道があるなんてね……よし、いくよ!!」
「「「おうっ!!」」」
地下施設に繋がる螺旋階段を発見したテン達は降りていくと、やがて階段の終わりに扉を発見した。この扉の向こう側が白面の施設であり、イシ達の話によればこちらでは毒薬の開発を行われている。
王都の施設では毒薬の素材となる毒草の栽培を行い、それぞれに毒草を栽培したり、それを調合する施設などに分かれている。テン達が発見したのは他の施設で育成した素材を集め、それらを調合して毒薬を作り出す施設だった。
「テン!!この扉、開かないぞ!!」
「ちっ、しょうがないね……よし、ここは派手に行くよ!!ルナ、ランファン!!」
「よっしゃあっ!!」
「……仕方ないか」
聖女騎士団の中でも怪力を誇るテン、ルナ、ランファンの三人が扉に向けて駆け出し、勢いよく体当たりを行う。すると鋼鉄製の扉は呆気なく凹み、そのまま左右に押し開かれて中に入り込む。
「あいたぁっ!?」
「いててっ……何だい、思ったより呆気なかったね」
「二人とも……周りを見ろ」
扉がわりとあっさりと開いた事にルナとテンは拍子抜けしてしまうが、ランファンの言葉を聞いて顔を上げると、そこには十数名の白面が待ち構えていた。彼等全員がテン達を待ち構えていたらしく、その手には煙玉らしき物を握りしめていた。
「……侵入者か」
「へっ……あんたらは普通に喋るんだね。そっちの方がいいよ、誰だい?あんな変な掛け声を考案したのは?」
「黙れ!!」
テンの軽口に対して白面は激高し、全員が煙玉を放り込む。それらに対してテンは口元を覆うが、すぐにランファンはルナとテンの身体を掴んで後ろに下がった。
「待て、テン!!様子がおかしいぞ!?」
「あん!?」
「わわっ!?」
「もう遅い……毒で死ね!!」
白面が投げ込んだ煙玉はただの煙を発生させるのではなく、毒性を含んだ煙を放出する。部屋の中に緑色の煙が充満し、煙は螺旋階段の方にまで広がる。
煙の進行速度は早く、螺旋階段を登って地上まで逃げる暇すらない。毒煙に包まれるテン達の姿を見て白面は勝利を確信したが、ここで煙の中から大剣を振り払ってテンが姿を現す。
『しゃおらぁっ!!』
『なっ!?』
テンはあろう事か、白面の仮面を身に付けた状態で踏み込み、煙を振り払いながら白面の元へ向かう。彼等は自分達の仮面を身に付けたテンを見て動揺し、しかも彼女だけではなく、他の騎士団も仮面を身に付けた状態で踏み込む。
『おらぁっ!!』
『ふんっ!!』
『せいやぁっ!!』
『ぐはぁあああっ!?』
団員全員が防毒作用のある白面の仮面を身に付け、彼等の放った毒薬を無効化して踏み込む。完全に油断していた白面は抵抗する暇もなく、蹴散らされた。
『ば、馬鹿な……何故、お前等が我々の仮面を!?』
『イリアの奴から聞いてたんだよ!!この仮面を身に付ければあんたらの扱う毒の殆どは防げるんだろう!?』
『イリア!?誰だ!?』
白面はイリアの存在を知らされておらず、彼女が白面を縛り付ける毒薬を製作している事は宰相は秘匿にしていた。仮に白面がイリアの存在を知れば復讐されるかもしれず、テンはイリアの名前を耳にした相手の頭を小突く。
『おっと、こいつは内緒だったね……忘れな!!』
『ふげぇっ!?』
白面の頭部に強烈な衝撃が走り、いつの間にか他の白面も倒されていた。これによって聖女騎士団の活躍によって白面の地下施設の一つは潰されたが、残念ながらこの施設にはシャドウの姿はなく、外れだと判明した。
テン達からすればジャンヌの仇であるシャドウだけは自分の手で討ちたいが、目的を果たした以上は地上へ引き返すしかない。だが、ここで倒した白面を置いていくわけには行かず、彼女達は連れ帰る。
『なあ、テン……こいつら、悪い奴等だろ?どうして助けるんだ?』
『悪い奴といっても、こいつらだって毒で無理やり従わされてたんだよ。あんた、可哀想に思わないのかい?』
『でも、こいつらだって酷い事をいっぱいしてきたんだろう?』
『だから真っ当に表の世界で罪を償わせるのさ。殺して楽にさせようなんて甘いんだよ』
『ふっ……団長らしいな』
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