貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
814 / 1,110
王国の闇

第798話 宰相と獣人国

しおりを挟む
――宰相のシンが事件の黒幕だと判明した後、彼の協力者だった者達はあっさりと寝返り、これまでの悪事を全て明かす。シンから信頼されていたはずのイシやイリアさえも裏切った以上、他の人間はシンに味方すれば反逆者として捕らえられると判断して観念するしかなかった。。

投降したのは王国側の人間だけではなく、王都で生き残った白面も同様だった。白面はシンに忠誠を誓っているわけではなく、彼等は毒薬を仕込まれているため、逆らえないだけに過ぎない。



そもそも白面という組織はシンが獣人国と結託して作り出した組織であり、獣人国に人間の子供を誘拐して密輸する一方、獣人国の方からも子供を送り込んで貰い、一流の暗殺者に育て上げていた。

シンは無差別に人間の子供を誘拐していたわけではなく、攫われた子供達は将来的に魔法を扱う素質がある者を厳選し、それを送り込んでいた事が発覚する。獣人族は魔法の使い手が少なく、攫った人間の子供を育て上げる事で魔法を扱う兵士を作り出そうとしていた。

逆にシンは人間よりも身体能力が高い獣人族の子供を送り込んでもらい、彼等を暗殺者として育て上げて自分の手元に置く。白面に所属する殆どの暗殺者が幼少期の頃から攫われた子供達ばかりであり、彼等を一流の暗殺者に育て上げる。



王妃の暗殺をシンが企んだのはこの白面が理由であり、聖女騎士団は白面を壊滅させた事によってシンからすれば自分の勢力を削がれた事に等しい。そのため、白面が壊滅される前に彼はシャドウと協力してリョフという最強の刺客をジャンヌに送り込む。

結果から言えばジャンヌとリョフは相打ちという形で死亡し、邪魔者がいなくなった白面は更に規模を拡大化させる。しかし、同時に王国はジャンヌと聖女騎士団を失った。

白面の一件がなければシンとしてもジャンヌは大いに利用価値のある人間だったが、自分の邪魔者になるのならば王妃であろうと彼は躊躇なく殺した。そして時を経てシンは自分が父親を裏切ったように、今度は他の人間に裏切られてしまい、破滅の道を歩んだ――





――時は現在へと戻り、自分の父親の死霊人形を利用して擬態していたという宰相「シン」そして裏社会を牛耳る彼の弟「シャドウ」後は闇ギルドを収める「オロカ」の捜索が行われた。

敵の勢力は大分削っており、何よりもシンの派閥の最大勢力だった猛虎騎士団が王族側に寝返ってしまった。このせいで形成は逆転し、もうこの状況下ではシンの勝ち目は薄いと判断した彼の協力者達も投降する。

そして捜索中の三人の内、オロカの遺体が発見された。彼はある焼け崩れた建物の中で焼死体で発見され、それを確認したのはロランだった。


「ロラン大将軍、間違いありません!!この死体はオロカ本人です!!」
「そうか……」
「愚か者め……」


焼死体と化したオロカの姿を見てロランは眉をしかめ、彼の隣にはアッシュの姿もあった。アッシュはオロカとは敵対関係を築いていたが、彼の死に様を見てシャドウの仕業だと判断する。


「オロカ、昔の貴様は悪党だったが人に利用される小物ではなかった。なのにこんな死に様とは……」
「いいや、こいつは根っからの小悪党だ。強い物の前にはひれ伏し、その上で自分自身の弱さをよく理解していた。だからこそ他の人間に媚びへつらう事しか出来なかったのだ」
「そうだな……」


ロランとアッシュはオロカの死体に視線を向けて憐れむ。結局のところオロカは他人に利用される続けるだけの人生を送り、他に彼に生きる道などなかった。

敵同士ではあったがロランとアッシュはオロカとは数十年前から対立しており、無様に死んだ彼を見て哀れに思わなくはない。だが、気を取り直して彼等は捜索を再開した。


「行くぞ!!残す敵はシンとシャドウのみ!!」
「うむ……」


ロランの言葉にアッシュは頷き、シャドウとリョフの捜索を再開した――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...