782 / 1,110
王国の闇
第768話 光の世界に拒まれた人間
しおりを挟む
――シャドウはとある廃墟の中で座り込み、身体を震わせていた。長い間日光を浴び続けていた事で彼は頭を抑え、憔悴していた。
「はあ、はあっ……くそっ、流石に光の中で戦いすぎたか……!!」
シャドウは自分の全身を闇属性の魔力で包み込む事もできない程に憔悴し、暗い空間の中で身体を横たわらせる。彼が扱う闇属性の魔法は光が強い場所で発動させると、魔力が掻き消されてしまう弱点があった。
強い光が当たらない場所ならば問題はないのだが、今回の場合は日中のしかも明るい場所で戦い続けたせいでシャドウは疲弊していた。もしもあれ以上に戦闘を続けていた場合、彼の命は危ない。
死霊魔術師の才能を持って生まれたシャドウではあるが、彼は小さい頃から日光を浴びると身体が衰弱する体質であり、そのせいで弟のように表の世界で生きていく事はできなかった。だからこそ父親の手によって裏社会に送り込まれて現在へと至る。
「くそ、忌々しい……しばらくは休まないと無理だな」
暗闇の中でシャドウは身体を休ませ、夜になるまでは自分は動けない事を悟る。闇属性の魔力を回復するには暗闇などの空間で身体を休ませるしかなく、実は闇属性の魔力だけは魔力回復薬などでは回復する事はできない。
全属性の中でも闇属性だけは異質であり、シャドウは普段から日の光が当たる場所に姿を現さないのは常に闇属性の魔力の消耗を抑えるためでもある。彼は表の世界では生きていけぬ肉体として生まれ、その事に本人は幾度も自分をこんな肉体に産んだ親を恨んだ。
母親の方は生前はシャドウの事を気にかけてくれたが、父親の方はシャドウは表の世界に出せぬ身体だと知ると、彼を裏社会で生きていける様に教育を施す。結果としてはそのお陰でシャドウは裏社会でも恐れられる存在まで育ったが、本人は父親の事を心底に憎んでいた。
(くそ親父が……)
昔の事を思い出してしまったシャドウは悪態をつき、気に入らなそうに暗闇の中で座禅を行う。今は魔力を回復させる事に専念し、その一方で彼は自分の魔力の大半を費やして作り出した「切札」の確認を行う。
彼は立ち上がって歩くと、ある場所に辿り着く。そこは完全な暗闇に覆われた空間であり、その場所には二つの棺桶が存在した。この棺桶の中身こそがシャドウの最後の切り札であり、これを使えばどんな敵が現れようと勝つ事が出来ると確信を抱く。
「お前等の出番も近そうだな……悪く思うなよ、相棒」
棺桶の上にシャドウは座り込み、彼はこの二つの棺桶の中に眠る存在をいつ蘇らせる事ができるのかと楽しみだった――
――同時刻、シンは王城の一室にて横たわる国王の姿を確認する。国王は安らか寝息を立てて眠っており、一見すると普通に休んでいる様にしか見えないが、彼が今日一日は目を覚ます事はない。
シンは国王に薬を盛って眠らせ、今日中に全ての問題を解決した後、シャドウの力で自分の父親を偽装し、公衆の面前で自殺させるように仕向ける。幸いにも父親とシンは瓜二つの容姿であり、見破られる可能性は限りなく低い。
「申し訳ございませぬ、国王様……貴方の傍で支えきれない私をお許しください」
国王に対してシンは謝罪を行い、この数十年の間、シンは国のために尽くしてきた。しかし、彼が忠義を尽くすのは王族ではなく、あくまでも国その物が彼にとって一番の存在だった。
邪魔者である国王を薬で眠らせたシンはその場を後にすると、ここで彼の元に兵士が駆けつける。兵士はシンの前に跪くと、状況の説明を行う。
「大変でございます!!アルト王子が盗賊の人質に取られ、現在は南の城門にて捕らえられています!」
「何?王子は無事なのか?」
「それが盗賊に腹部を刺されたという報告が……しかし、今の所は生きているそうです。それと盗賊の仲間が市街地に侵入し、姿を眩ませました!!」
「……なるほど、そう来たか」
シンはすぐにアルトを捕まえた盗賊の正体が彼の仲間だと悟り、王子という立場を利用して城壁を突破して中に入り込んだ事を察する。昔からアルトは頭の回転が速く、バッシュに万が一の場合が起きた時は彼がこの国を率いる立場という事でシンも目を掛けていた。
しかし、アルトが王都へ戻って来たという報告を受けてシンは考え込み、当然ではあるが彼に手を出す事は有りえない。この国では二人しかいない王子であり、片方に万が一の事態が陥ればもう片方が王位を引き継がなければならない。しかし、アルトの側近とあれば別であり、シンは命令を下す。
「すぐに盗賊の仲間を探し出して始末せよ。もしもアルト王子の側近の王国騎士が見つかった場合、そやつらも拘束せよ」
「えっ……拘束、ですか?王国騎士を?」
「当然じゃ、王子を守る立場でありながらのうのうと盗賊に王子を人質に取られるなど騎士の恥、現時点を以てアルト王子に仕えるヒイロとミイナの両名は王国騎士の称号を剥奪とする。最も二人とも正式な王国騎士ではないがな……」
「は、はい!!」
王国騎士を拘束するという前代未聞の命令に兵士は戸惑うが、シンの命令ならば従うしかなく、すぐに行動に移した――
「はあ、はあっ……くそっ、流石に光の中で戦いすぎたか……!!」
シャドウは自分の全身を闇属性の魔力で包み込む事もできない程に憔悴し、暗い空間の中で身体を横たわらせる。彼が扱う闇属性の魔法は光が強い場所で発動させると、魔力が掻き消されてしまう弱点があった。
強い光が当たらない場所ならば問題はないのだが、今回の場合は日中のしかも明るい場所で戦い続けたせいでシャドウは疲弊していた。もしもあれ以上に戦闘を続けていた場合、彼の命は危ない。
死霊魔術師の才能を持って生まれたシャドウではあるが、彼は小さい頃から日光を浴びると身体が衰弱する体質であり、そのせいで弟のように表の世界で生きていく事はできなかった。だからこそ父親の手によって裏社会に送り込まれて現在へと至る。
「くそ、忌々しい……しばらくは休まないと無理だな」
暗闇の中でシャドウは身体を休ませ、夜になるまでは自分は動けない事を悟る。闇属性の魔力を回復するには暗闇などの空間で身体を休ませるしかなく、実は闇属性の魔力だけは魔力回復薬などでは回復する事はできない。
全属性の中でも闇属性だけは異質であり、シャドウは普段から日の光が当たる場所に姿を現さないのは常に闇属性の魔力の消耗を抑えるためでもある。彼は表の世界では生きていけぬ肉体として生まれ、その事に本人は幾度も自分をこんな肉体に産んだ親を恨んだ。
母親の方は生前はシャドウの事を気にかけてくれたが、父親の方はシャドウは表の世界に出せぬ身体だと知ると、彼を裏社会で生きていける様に教育を施す。結果としてはそのお陰でシャドウは裏社会でも恐れられる存在まで育ったが、本人は父親の事を心底に憎んでいた。
(くそ親父が……)
昔の事を思い出してしまったシャドウは悪態をつき、気に入らなそうに暗闇の中で座禅を行う。今は魔力を回復させる事に専念し、その一方で彼は自分の魔力の大半を費やして作り出した「切札」の確認を行う。
彼は立ち上がって歩くと、ある場所に辿り着く。そこは完全な暗闇に覆われた空間であり、その場所には二つの棺桶が存在した。この棺桶の中身こそがシャドウの最後の切り札であり、これを使えばどんな敵が現れようと勝つ事が出来ると確信を抱く。
「お前等の出番も近そうだな……悪く思うなよ、相棒」
棺桶の上にシャドウは座り込み、彼はこの二つの棺桶の中に眠る存在をいつ蘇らせる事ができるのかと楽しみだった――
――同時刻、シンは王城の一室にて横たわる国王の姿を確認する。国王は安らか寝息を立てて眠っており、一見すると普通に休んでいる様にしか見えないが、彼が今日一日は目を覚ます事はない。
シンは国王に薬を盛って眠らせ、今日中に全ての問題を解決した後、シャドウの力で自分の父親を偽装し、公衆の面前で自殺させるように仕向ける。幸いにも父親とシンは瓜二つの容姿であり、見破られる可能性は限りなく低い。
「申し訳ございませぬ、国王様……貴方の傍で支えきれない私をお許しください」
国王に対してシンは謝罪を行い、この数十年の間、シンは国のために尽くしてきた。しかし、彼が忠義を尽くすのは王族ではなく、あくまでも国その物が彼にとって一番の存在だった。
邪魔者である国王を薬で眠らせたシンはその場を後にすると、ここで彼の元に兵士が駆けつける。兵士はシンの前に跪くと、状況の説明を行う。
「大変でございます!!アルト王子が盗賊の人質に取られ、現在は南の城門にて捕らえられています!」
「何?王子は無事なのか?」
「それが盗賊に腹部を刺されたという報告が……しかし、今の所は生きているそうです。それと盗賊の仲間が市街地に侵入し、姿を眩ませました!!」
「……なるほど、そう来たか」
シンはすぐにアルトを捕まえた盗賊の正体が彼の仲間だと悟り、王子という立場を利用して城壁を突破して中に入り込んだ事を察する。昔からアルトは頭の回転が速く、バッシュに万が一の場合が起きた時は彼がこの国を率いる立場という事でシンも目を掛けていた。
しかし、アルトが王都へ戻って来たという報告を受けてシンは考え込み、当然ではあるが彼に手を出す事は有りえない。この国では二人しかいない王子であり、片方に万が一の事態が陥ればもう片方が王位を引き継がなければならない。しかし、アルトの側近とあれば別であり、シンは命令を下す。
「すぐに盗賊の仲間を探し出して始末せよ。もしもアルト王子の側近の王国騎士が見つかった場合、そやつらも拘束せよ」
「えっ……拘束、ですか?王国騎士を?」
「当然じゃ、王子を守る立場でありながらのうのうと盗賊に王子を人質に取られるなど騎士の恥、現時点を以てアルト王子に仕えるヒイロとミイナの両名は王国騎士の称号を剥奪とする。最も二人とも正式な王国騎士ではないがな……」
「は、はい!!」
王国騎士を拘束するという前代未聞の命令に兵士は戸惑うが、シンの命令ならば従うしかなく、すぐに行動に移した――
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
娘と二人、異世界に来たようです……頑張る母娘の異世界生活……ラブ少し!
十夜海
ファンタジー
母一人、子一人。
天涯孤独でたった二人の家族。
でも、高校の入学式へ向かう途中に居眠り運転のダンプカーに突っ込まれて二人仲良く死亡……。
私はどーでもいい、だって娘まで生まれた。でも、娘はまだ16歳なりかけ。なんで?なんで死ななきゃならない。
厳しい受験を乗り越えて、ようやくキャピキャピ楽しい高校生活だ。彼氏だってできるかもしれない。
頑張ったのに。私だって大学までやるために身を粉にして頑張ったのだ。
大学どころか、高校生活までできないなんて!
ひどい。
願ったのは、娘の幸せと恋愛!
気づけば異世界に……。
生きてる?やったね!
ん?でも高校ないじゃん!
え?魔法?あ、使える。
あれ?私がちっさい?
あれ?私……若い???
あれぇ?
なんとか娘を幸せな玉の輿に乗せるために頑張る母。
そんな母娘の異世界生活。
でも……おかしいな?なんで私が子供なんですか?
##R18で『なろう』で投稿中です。
ラブ少なめなので、R15でファンタジー系で手直ししつつ、こちらに投稿させていただきます。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
追放された美少女を助けた底辺おっさんが、実は元”特級冒険者”だった件について。
いちまる
ファンタジー
【毎週木曜日更新!】
採取クエストしか受けない地味なおっさん冒険者、ダンテ。
ある日彼は、ひょんなことからA級冒険者のパーティーを追放された猫耳族の少女、セレナとリンの面倒を見る羽目になってしまう。
最初は乗り気でなかったダンテだが、ふたりの夢を聞き、彼女達の力になると決意した。
――そして、『特級冒険者』としての実力を隠すのをやめた。
おっさんの正体は戦闘と殺戮のプロ!
しかも猫耳少女達も実は才能の塊だった!?
モンスターと悪党を物理でぶちのめす、王道冒険譚が始まる――!
※本作はカクヨム、小説家になろうでも掲載しています。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる