貧弱の英雄

カタナヅキ

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王国の闇

第717話 シノビ参戦

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「シノビ!?どうしてお前がここに……王女様はどうした!?」
「話は後だ!!まずはこいつを仕留めるぞ!!」
「……その通りだな」
「フウッ……フウッ……!!」


シノビによって火炎を拡散されたリザードマンは血走った目を見開き、二人を睨みつける。二人の風属性の魔剣の使い手を相手にしてもリザードマンは逃げる様子はなく、それどころか興奮した状態で襲い掛かってきた。


「シャアアッ!!」
「リン、俺に合わせろ!!」
「副団長と呼べっ!!」


風魔と暴風を構えた二人は同時に風の斬撃を放ち、正面から迫ってきたリザードマンに放つ。リザードマンはその攻撃に対して再び両腕を交差して防ぐ。やはり竜種と同じ鱗を持つリザードマンには生半可な攻撃は通じず、それを見た二人はシノビはリンに風魔の刃を差し出す。


「こうなったら致し方あるまい……力を貸してくれ」
「何?」
「お前の魔法剣の力を乗せて奴に攻撃を加える。それ以外に奴を倒す手立てはない」
「……そう言う事か」


リンはシノビが何を言いたいのかを理解し、二人が同時に攻撃したとしてもそれは風の斬撃を連続で放つだけでしかなく、リザードマンの頑丈な鱗には通じない。

しかし、仮に二人の魔法剣の攻撃が完全に一致した場合はどうなるか、その結果はすぐに判明する。リンは暴風をシノビの風魔に向けて放ち、風属性の魔力を送り込む。


「やれ!!」
「かあっ!!」
「ガアッ……!?」


風魔と暴風が重なり合うと、暴風から放たれた風属性の魔力を風魔が吸収し、その力を利用してシノビは一際巨大な風の斬撃を放つ。その攻撃に対してリザードマンは避け切れず、正面から受けて派手に吹き飛んだ。

二人の魔法剣の力が合わさった攻撃を受けて流石にリザードマンも無事では済まず、怪我を負わせる事はできなかったが強い衝撃を受けて悲鳴を漏らす。


「ガハァッ……!?」
「これでも仕留めきれないか……流石は魔人族か」
「だが、これで終わらせるぞ」


リンはリザードマンが動けない隙に仕留めるため、彼女は鞘に刃を納めた。この状態からリンは精神を集中させ、魔力を暴風に送り込む。次の一撃で確実に仕留めるために彼女自身も意識を集中させる必要があった。

リンの雰囲気が変化した事に気付いたシノビが彼女の準備を終えるまではリザードマンを食い止めるため、風魔を構えた。その一方でリザードマンの方は立ち上がり、攻撃を受けた胸元の部分を抑えながら口を開く。


「サスガニ、ヤルナ……」
「なっ……!?」
「喋った、だと……!?」


明らかな人語を口にしたリザードマンに対してシノビは目を見開き、リンの方も信じられない表情を浮かべる。魔人族は人間の特徴を併せ持つ存在であり、知能は非常に高い。だからこそ人語を理解できても人語その物を話せる魔人族は滅多にいない。

ミノタウロスなどの魔物は幼少期に人の手で育て上げれば言葉を話せるようになったという例は実在する。しかし、リザードマンが人語を話した例など聞いた事はないが、二人の前に立つリザードマンは片言ではあるが確かに人の言葉をで話しかける。


「ココハ、ヒカセテモラウゾ……」
「待て!?貴様、私達の言葉を理解できるのか!?」
「何故、こんな真似をした」
「コンナマネ、ダト?ヘイワニクラシテイタオレヲ、ココマデツレテキタノハダレダ?オマエタチ、ニンゲンダロウ?」
「そ、それは……」
「オレタチヲ、ミセモノニシテタノシムオマエラヲ……ユルシハシナイ!!」


リザードマンは顎が外れかねない程に口を開くと、再び火炎の吐息を放つ。その攻撃に対してリンとシノビは刀を振って風の斬撃で炎を振り払うが、既にリザードマンの姿は消えていた。


「くっ……逃げられたたか」
「あの一瞬で……」


火炎にシノビとリンが気を取られている隙にリザードマンは逃げ去り、二人は周囲を見渡すがリザードマンらしき影は見えない。すぐに追跡しなければならないが、リザードマンの言葉を思い出したリンは少しだけ同情してしまう。

リザードマンからすればいきなり自分達の前に人間が現れ、捕まったかと思えば闘技場で毎日のように他の魔物や人間と戦わされる生活を強要される。もしもリザードマンが魔人族ではなく、人間だとしたらこのような扱いは許されるはずがない。

しかし、いくら同情の余地があってもリザードマンをこのまま逃がすわけにはいかない。王国騎士としてリンは住民を守るためにリザードマンを始末しなければならないのだ。だが、その前に彼女はシノビに刃を構えた。


「シノビ……お前は今、王女誘拐の容疑を掛けられている。どういう事か説明してもらうぞ」
「……場所を変えろ、ここでは目立ち過ぎる」
「そうだな……だが、逃げられると思うなよ」
「逃げはしない……お前にも事情を説明しておく」


シノビはリンと共に人気のない場所を探し、とりあえずは路地裏へと移動を行う。状況が状況なので長話する余裕はなく、彼は手短に自分と王女の身に何か起きたのかを話す――
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