697 / 1,110
王都の異変
第686話 夫婦の再会
しおりを挟む
「馬鹿、な……」
「ゴエモンさん?」
「見つかったら怪しまれますよ!?」
ゴエモンは植物に水を与える人物を見てふらふらと近寄ろうとしたが、慌ててナイ達は止めようとした。だが、彼の女性から視線は離れず、その反応を見てナイ達はすぐに女性の正体に勘付く。
「まさか……!?」
「え、嘘っ……!?」
「あの人が……奥さん?」
「……ヒメ!!」
植物園に広がる程の大声をゴエモンが言い放つと、植物に水を与えていた女性の身体が硬直し、やがて彼女はゆっくりとゴエモンの方を振り返る。ゴエモンは即座に仮面を取ると、女性はその顔を見て立ち尽くす。
「ヒメ、俺だ……ゴエモンだ!!」
「……あなた、本当にあなたなの?」
ヒメと呼ばれた女性は仮面を外して素顔を晒す。少し顔は老けているが整った顔立ちをしており、ゴエモンは顔を見て自分の妻だと確信すると、居ても立っても居られずに走り出す。
お互いに駆け寄って二人は抱き合い、数年ぶりの感動の再会を果たす。二人は涙を流しながら抱きしめ合い、ヒメは信じられない表情で彼を見上げた。
「あなた……本物なのね」
「ああ、すまなかった……本当にすまなかった。俺はお前を守る事ができなかった……」
「いいのよ、そんな事……こうして会えただけでも嬉しいわ」
再会を果たしたゴエモンとヒメは喜び合うが、どうしてこんな場所で拘束もされずにいるのか、そして暗殺者が毒薬として利用する植物の手入れを行っていたのかをゴエモンは問い質す。
「お前、どうしてこんな場所に……てっきり、俺は捕まっているかと思ったぞ」
「そういう貴方こそどうしてここに……それにその恰好、まさかあなたも彼等の仲間に?」
「待て……仲間だと?どういう意味だ?」
ヒメの言い回しにゴエモンは驚いた表情を浮かべるが、そんな彼に対してヒメは申し訳なさそうな表情を浮かべ、自分の身に起きた出来事を話し始める。
「ごめんなさい、あなた……私はとんでもない過ちを犯してしまったわ……」
「ヒメ……?」
「私は――」
――事の発端はヒメが白面の暗殺者に攫われた事が切っ掛けであり、彼女は誘拐された後、この地下の研究所に連れ込まれた。彼女が捕まった理由はゴエモンの妻であり、彼にとっては唯一の大切な人間だからである。
ゴエモンの人質として拘束されたヒメは逃げられない様に監視され、しばらくの間は檻の中に捕まっていたという。しかし、尋問の際に彼女は自分が「栽培」と呼ばれる技能を所持している事を話すと、すぐに対応が変わった。
栽培の技能は文字通りに植物を育てる際に役立つ技能であり、この技能を所持した人間が育てる植物は成長が早く、しかも実りも多くなる。元々はヒメは花屋の娘として生まれ、偶然にもこの技能を覚えていたという。
結婚していた時も花壇を育てていたので彼女の栽培の技能は衰えず、すぐにこの植物園へと配属され、働くように強制された。だが、ここで働けばヒメはある程度の自由は認められ、外に出る事は許されないが彼女が拷問は受けず、ひどい扱いをされる事もなかった。
しかし、ヒメが育てている植物の殆どは毒草であると理解しており、自分が作り出した毒草が暗殺者が扱う毒薬や、自害用の薬になる事を知りながらも彼女はひどい扱いを避けるために育てるしかなかったという。
「ここで作り出された植物のせいで大勢の人間が命を落としていると聞いた時、もう私はあなたに合わせる顔がないと思ったの……だから半年前、あなたに手紙を送るのを辞めたわ。手紙を送らなければあなたは私が死んだと思えば一人で逃げ出してくれると思って」
「そんな……何を言ってるんだ、俺がお前を見捨てるわけないだろう」
「いいえ、見捨ててちょうだい……私は人殺しよ、この手で育て上げた毒草のせいで何人が死んだの?いいえ、何十人、何百人も犠牲になっているかもしれない……もう私は汚れてしまったのよ!!」
「そんな事はない、悪いのは奴らだ!!」
嘆き悲しむヒメの姿を見てゴエモンは彼女を慰めようとするが、ヒメもずっと長い間罪の意識を感じていたらしく、もう彼女は精神が限界だった。そんな時に最愛の夫と再会した事で我慢できずに自分の犯した罪を吐露した。
「死ぬ前にあなたに出会えてよかったわ……さあ、あなたは逃げて。そこにいる人達はあなたの仲間?貴方達も早く逃げた方が良いわ……こんな場所に居たらすぐに見つかってしまう」
「何を言ってるんだ、お前を置いて行けるはずがないだろう!?」
「いいえ、駄目なのよ……私はここから出たら死んでしまうの」
「何だと……どういう意味だ!?」
「まさか……!?」
ヒメの言葉にゴエモンは驚愕し、話を聞いていたナイも嫌な予感を抱き、そんな二人に対してヒメは黙って右腕の袖を捲って見せつける。すると彼女の右腕には髑髏の入れ墨が刻まれていた。
「ゴエモンさん?」
「見つかったら怪しまれますよ!?」
ゴエモンは植物に水を与える人物を見てふらふらと近寄ろうとしたが、慌ててナイ達は止めようとした。だが、彼の女性から視線は離れず、その反応を見てナイ達はすぐに女性の正体に勘付く。
「まさか……!?」
「え、嘘っ……!?」
「あの人が……奥さん?」
「……ヒメ!!」
植物園に広がる程の大声をゴエモンが言い放つと、植物に水を与えていた女性の身体が硬直し、やがて彼女はゆっくりとゴエモンの方を振り返る。ゴエモンは即座に仮面を取ると、女性はその顔を見て立ち尽くす。
「ヒメ、俺だ……ゴエモンだ!!」
「……あなた、本当にあなたなの?」
ヒメと呼ばれた女性は仮面を外して素顔を晒す。少し顔は老けているが整った顔立ちをしており、ゴエモンは顔を見て自分の妻だと確信すると、居ても立っても居られずに走り出す。
お互いに駆け寄って二人は抱き合い、数年ぶりの感動の再会を果たす。二人は涙を流しながら抱きしめ合い、ヒメは信じられない表情で彼を見上げた。
「あなた……本物なのね」
「ああ、すまなかった……本当にすまなかった。俺はお前を守る事ができなかった……」
「いいのよ、そんな事……こうして会えただけでも嬉しいわ」
再会を果たしたゴエモンとヒメは喜び合うが、どうしてこんな場所で拘束もされずにいるのか、そして暗殺者が毒薬として利用する植物の手入れを行っていたのかをゴエモンは問い質す。
「お前、どうしてこんな場所に……てっきり、俺は捕まっているかと思ったぞ」
「そういう貴方こそどうしてここに……それにその恰好、まさかあなたも彼等の仲間に?」
「待て……仲間だと?どういう意味だ?」
ヒメの言い回しにゴエモンは驚いた表情を浮かべるが、そんな彼に対してヒメは申し訳なさそうな表情を浮かべ、自分の身に起きた出来事を話し始める。
「ごめんなさい、あなた……私はとんでもない過ちを犯してしまったわ……」
「ヒメ……?」
「私は――」
――事の発端はヒメが白面の暗殺者に攫われた事が切っ掛けであり、彼女は誘拐された後、この地下の研究所に連れ込まれた。彼女が捕まった理由はゴエモンの妻であり、彼にとっては唯一の大切な人間だからである。
ゴエモンの人質として拘束されたヒメは逃げられない様に監視され、しばらくの間は檻の中に捕まっていたという。しかし、尋問の際に彼女は自分が「栽培」と呼ばれる技能を所持している事を話すと、すぐに対応が変わった。
栽培の技能は文字通りに植物を育てる際に役立つ技能であり、この技能を所持した人間が育てる植物は成長が早く、しかも実りも多くなる。元々はヒメは花屋の娘として生まれ、偶然にもこの技能を覚えていたという。
結婚していた時も花壇を育てていたので彼女の栽培の技能は衰えず、すぐにこの植物園へと配属され、働くように強制された。だが、ここで働けばヒメはある程度の自由は認められ、外に出る事は許されないが彼女が拷問は受けず、ひどい扱いをされる事もなかった。
しかし、ヒメが育てている植物の殆どは毒草であると理解しており、自分が作り出した毒草が暗殺者が扱う毒薬や、自害用の薬になる事を知りながらも彼女はひどい扱いを避けるために育てるしかなかったという。
「ここで作り出された植物のせいで大勢の人間が命を落としていると聞いた時、もう私はあなたに合わせる顔がないと思ったの……だから半年前、あなたに手紙を送るのを辞めたわ。手紙を送らなければあなたは私が死んだと思えば一人で逃げ出してくれると思って」
「そんな……何を言ってるんだ、俺がお前を見捨てるわけないだろう」
「いいえ、見捨ててちょうだい……私は人殺しよ、この手で育て上げた毒草のせいで何人が死んだの?いいえ、何十人、何百人も犠牲になっているかもしれない……もう私は汚れてしまったのよ!!」
「そんな事はない、悪いのは奴らだ!!」
嘆き悲しむヒメの姿を見てゴエモンは彼女を慰めようとするが、ヒメもずっと長い間罪の意識を感じていたらしく、もう彼女は精神が限界だった。そんな時に最愛の夫と再会した事で我慢できずに自分の犯した罪を吐露した。
「死ぬ前にあなたに出会えてよかったわ……さあ、あなたは逃げて。そこにいる人達はあなたの仲間?貴方達も早く逃げた方が良いわ……こんな場所に居たらすぐに見つかってしまう」
「何を言ってるんだ、お前を置いて行けるはずがないだろう!?」
「いいえ、駄目なのよ……私はここから出たら死んでしまうの」
「何だと……どういう意味だ!?」
「まさか……!?」
ヒメの言葉にゴエモンは驚愕し、話を聞いていたナイも嫌な予感を抱き、そんな二人に対してヒメは黙って右腕の袖を捲って見せつける。すると彼女の右腕には髑髏の入れ墨が刻まれていた。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
幼馴染と一緒に勇者召喚されたのに【弱体術師】となってしまった俺は弱いと言う理由だけで幼馴染と引き裂かれ王国から迫害を受けたのでもう知りません
ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
【弱体術師】に選ばれし者、それは最弱の勇者。
それに選ばれてしまった高坂和希は王国から迫害を受けてしまう。
唯一彼の事を心配してくれた小鳥遊優樹も【回復術師】という微妙な勇者となってしまった。
なのに昔和希を虐めていた者達は【勇者】と【賢者】と言う職業につき最高の生活を送っている。
理不尽極まりないこの世界で俺は生き残る事を決める!!
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
君と恋をしたいのに、なかなか始まらなかった君との恋の物語 〜攻略対象の王子様と悪役令嬢(仮)〜
hazuki.mikado
ファンタジー
カートレット王国の第1王子ウィリアムは、赤毛に青い瞳をした精悍な顔の美丈夫で文武両道で魔法の天才と言われる将来有望な王太子候補。だが彼は実は転生者であり、前世の記憶を持つ事を隠したまま生活していた。
彼の婚約者はアーバスノット公爵家の長女シルフィーヌだったのだが諸事情によりそれまで一度も会うことはなく、王子が9歳シルフィーヌが7歳の時王宮の庭園で開かれた茶会が初めての顔合わせだった。
しかしこの時令嬢シルフィーヌは、自らが転生者でありこの乙女ゲームの世界で王太子ルートの当て馬の悪役令嬢でありヒロインに王子を攻略されると、あっさり婚約破棄をされるという事を思い出し気絶する。
それを見て怪訝に思うウィリアムは、秘密裏に訪れた公爵邸の彼女の部屋のバルコニーでお互いの秘密を共有することになり・・・
一方ゲーム開始時期になると突然現れた男爵家の養女であるヒロイン、オリヴィエはウィリアムに徐々に近づいて行く。
トンデモナイ未来を回避しようと四苦八苦するが、ゲームの強制力なのか、面倒事ばかりが起こり始めとうとうブチ切れる王子様。
そして立太子直前の第1王子ウィリアムは王立学園の卒業式の謝恩パーティーで自らの婚約者に向けて言い放った――
『修道院へ自ら赴け!』
ちょこちょこ訂正してあります。しかも不定期更新になります。スイマセン
▲▲▲
何時もの如く何もかもが都合主義なのはお約束(人*´∀`)。*゜+
頭空っぽにしてお読みください~(・∀・)
取扱説明事項〜▲▲▲
作者は誤字脱字変換ミスと投稿ミスを繰り返すという老眼鏡とハズキルーペが手放せない(老)人です(~ ̄³ ̄)~マジでミスをやらかしますが生暖かく見守って頂けると有り難いです(_ _)お気に入り登録や感想動く栞、そして誤字脱字報告という皆様の愛(老人介護)がモチベアップの燃料です(人*´∀`)。*゜+
皆様の愛(誤字脱字報告)を真摯に受け止めております(_ _)
エブリスタでも投稿。
10/22 女性hot 49位ありがとうございます(_ _)
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる