貧弱の英雄

カタナヅキ

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王都の異変

第631話 巨大昆虫

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「キィイイイッ!!」
「うわっ!?」
「ナイ君!?」
「……蜘蛛、か!?」


カマキリの次は今度は巨大な蜘蛛が現れ、ナイに目掛けて尻から糸を放ち、反射的に後方に跳んで攻撃を躱す。回避する際に忘れずに刺剣だけは回収しておく。

巨大蜘蛛は今までナイ達の動向を木の上から確認していたらしく、ナイに糸を躱されるとすぐに標的を変更し、今度はゴウカに向けて糸を放つ。


「キイイッ!!」
『ぬおっ!?』
「ゴウカさん!?」


蜘蛛の放出した糸に対してゴウカは咄嗟に防御しようとするが、発射された糸はゴウカの身体に触れる寸前に拡散して彼を拘束する。ゴウカは力ずくで引き剥がそうとするが、糸は粘着性が高いのかゴウカの怪力でも簡単には引き剥がせない。


『ぐぬぬっ……こんな糸程度で俺を拘束したつもりか!?』
「ゴウカさん、無茶をしないで!!今助けに……わあっ!?」
「危ない!!避けてください!!」
「キイイッ!!」


巨大蜘蛛は上空から次々と糸を発射し、他の者達を狙い撃つ。どうやら糸で獲物を拘束して動けなくなった後、巣に運び込んで止めを刺すつもりらしい。

蜘蛛の巣には既に餌食となった魔物達が捕まっており、その中には異様に痩せ細ったオークも含まれてていた。オークは全身を糸で絡めとられ、首筋には噛まれた傷跡が存在し、顔の色に紫に変色していた。


「ギチギチギチッ……!!」
「こ、こいつ……」
「気を付けてください、蜘蛛型の昆虫種は毒を持っている事が多いです!!」
「なら、捕まったら終わりという事か……うおっ!?」
「ゴンザレス君!?」


エルマの言葉に気を取られたゴンザレスは糸で片足を拘束され、巨大蜘蛛は糸を引き寄せて自分の巣に運び込もうとする。巨人族であるゴンザレスを軽々と引き寄せる程の力を誇るらしく、咄嗟にゴンザレスを助けようとナイは腕を伸ばす。


「掴まって!!」
「くっ!?」
「キイイッ!?」


ナイはゴンザレスの腕を掴むと、どうにか引き寄せられないように踏ん張る。剛力の技能を発動させて彼を抑え込み、その間にエルマが糸に向けて矢を放つ。


「はあっ!!」
「ギアッ!?」
「うおっ!?」
「うわっ!?」


エルマが放った矢によって糸は弾け飛び、どうにかゴンザレスは引きずり込まれずに済んだ。だが、落ちてきたゴンザレスにナイは巻き込まれてしまい、二人は地面に倒れ込む。

その一方でリーナは蒼月を振りかざし、魔力を集中させて刃先を氷の刃へと変化させる。一方でマリンの方も杖を構えると、火球を作り上げて蜘蛛の巣に放つ。


「やああっ!!」
「っ……!!」
「ギアアアアッ!?」


蜘蛛の巣はマリンの魔法によって焼き払われ、空中から落ちてきた巨大蜘蛛をリーナは真っ二つに切り裂く。そのまま蜘蛛の巣は炎によって灰と化し、地面に落下した巨大蜘蛛は動かなくなった。


「ううっ……た、助かったのか?」
「お、重い……退いてくれる?」
「うおっ、すまない……だ、大丈夫か?」
「いててっ……」
『ふんっ!!やっと千切れたか!!』


巨大蜘蛛を倒すと改めてゴンザレスはナイから離れ、一方でゴウカも力ずくで糸を引き千切る。油断していたとはいえ、予想以上に蜘蛛型の昆虫種苦戦を強いられていた。

地面に横たわる巨大蟷螂と巨大蜘蛛を確認し、もしもナイが心眼で敵の正体を事前に察知していなかったら今頃は誰かが殺されていたかもしれない。想像以上に昆虫種は手ごわく、赤毛熊やミノタウロスのように力任せで倒せる相手ではない。


「ふうっ……ナイ君が気づいてくれたお陰だね。本当に助かったよ」
「いや、偶々だよ……でも、こいつら最初からここに隠れていたのかな?」
「どうやらここは既に昆虫種の縄張りのようですね……ここから先は用心して進みましょう」
『こいつら、俺がいるのに躊躇なく襲い掛かって来たな……はっ、久々に歯ごたえの有りそうな仕事だ!!』
『喜んでいる場合じゃない……危うく死ぬかと思った』


ゴウカは自分を前にしても躊躇なく襲い掛かってきた昆虫種に期待を抱くような発言をするが、そんな彼をマリンが注意する。

ナイ達は昆虫種に気を配りながらも移動を再開し、奥地へ向けて歩み始める。この時にエルマは常に弓を構え、周囲の警戒を怠らずに先に進む。


「くっ……先ほどよりも気配が濃くなりましたね」
「うん……嫌な予感がするよ」
「……ここから先はより一層に注意して進まなければならないな」
『はっはっはっ!!安心しろ、どんな相手が現れようと俺が守ってやる!!』
『さっき、糸に捕まっていたから説得力がない』
「……でも、先に進むしかありませんよ」


常に周囲に気を配りながらナイ達は森の中を歩いていくと、やがて開けた場所へと辿り着く。何故か森の中に殆ど樹木が生えていない場所が存在し、その中心部には巨大な大樹が生えており、そこには信じられない程の大きさの蜂の巣が存在した。
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