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王都の異変
第609話 富豪区の見回り
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「まあ、あくまでも私の勘にしか過ぎませんけど……それよりも見回りに集中しましょう。私は愛馬がありますけど、そういえばナイさんは乗馬の経験はあるのですか?」
「馬は誰かと一緒にしか乗った事しかありませんけど、乗狼なら得意です」
「乗……狼?」
ナイの言葉にドリスは戸惑うが、王城内の敷地にてナイは犬笛を取り出して吹く。すると敷地内に待機させていたビャクが現れ、嬉しそうにナイの元へ駆けつける。
「ウォンッ!!」
「おっ、ちゃんと反応した。よしよし、偉いぞビャク」
「ああ、なるほど……狼だから、乗狼ですのね」
犬笛を吹くと真っ先に反応して駆けつけたビャクをナイは褒め称え、ここでドリスはナイの言葉の意味を悟る。実はナイはクロとコクが犬笛ですぐに駆けつけるように教育されているのを知り、この際にビャクも同じように自分の犬笛に反応する様に特訓した。
アルトの協力でナイは特製の犬笛を作ってもらい、ビャクはその犬笛に反応して駆けつける様に訓練を行う。そして現在では犬笛を吹いただけでビャクはナイが呼び出している事に気付き、駆け出してくる。
「ほら、ビャク。ドリスさんだよ、ちゃんと顔を覚えるんだよ」
「クゥ~ンッ?」
「きゃ、近いですわ!?」
ビャクはナイの言葉を聞いてドリスに振り返り、臭いを嗅ぐために近寄る。ドリスは白狼種を間近に見たのは初めてなので驚いたが、改めてナイが白狼種を手懐けている事に驚く。
(白狼種は知能が高く、誇り高い魔獣種だから人に懐く事はないと聞いてましたが……ナイさんには随分と懐いてますわね。魔物に好かれる才能もあるのでしょうか……)
ナイがビャクと戯れる姿を見てドリスは増々ナイが只者ではないと悟り、彼を自分達の騎士団に入団させれば大きな戦力となると確信した。しかし、同時にある恐れを抱いてしまう。
(これほどの力を持つナイさんがもしも敵になれば……いえ、私は何を考えているんですの)
自分の考えを振り払い、改めてドリスはナイに自分にしっかりとついてくるように促す。
「さあ、ナイさん!!見回りの時間ですわ、しっかりと付いて来て下さい!!」
「あれ?バッシュ王子……いや、団長は?」
「基本的に見回りの時は私達が行う事になりますわ。王子は騎士団の仕事だけではなく、王子としての責務もありますので基本は富豪区の管理は私達が行います」
「なるほど……分かりました。じゃあ、行こうかビャク」
「ウォンッ!!」
バッシュは騎士団の団長以外にも王子として色々と仕事を抱えているらしく、基本的には富豪区の管理はドリスと彼女の配下に任されている事を知り、ナイはドリスの補佐役として同行する――
――アルトの屋敷が富豪区にある事からナイは富豪区に訪れる事自体はよくあった。しかし、富豪区を探索する事自体はあまりなく、この場所はそもそも一般人は滅多に近づかない。
富豪区に暮らすのは貴族という高い身分の人間達であるため、一般人は滅多に富豪区には近づかない。過去に富豪区に興味本位で立ち寄った人間が貴族の不興を買って逮捕されたという実例もあり、そのせいでこの地区には一般人は殆ど立ち寄る事はなかった。
「……ここの地区、あんまり外を歩いている人はいませんね」
「当然ですわ。基本的に貴族が外に出る時は徒歩でななく、馬車を利用しますから」
「あ、なるほど……」
「仮に徒歩で外を出歩く時も必ず護衛を同行させますわ。最近は物騒ですから、護衛を増やす貴族も多いそうですわ」
「そうなんですね」
ドリスの言葉を聞いてナイは富豪区ではあまり歩いている人間を見かけなかった理由を悟り、人通りが少ない理由を知る。しかし、人通りが少ないからこそ事件を発見しやすいという面もある。
「仮に富豪区で貴族以外の人間が出歩いている時はほぼ確実に犯罪を犯そうとしている類の人間ですわ。だから誰かを発見したらすぐに知らせてください」
「なるほど……分かりました。ビャクも何か気付いたら教えてね」
「ウォンッ!!」
「しっ……静かに。あまり大きな音を立てると苦情が来ますわ」
「ウォンッ(小声)」
ビャクはドリスに注意されて落ち込んだように顔を伏せ、そんなビャクの頭をナイは撫でると、不意に視界の端に誰かが通り過ぎたような気がした。
「今、あそこに人影が……」
「人影!?追いかけますわよ!!」
「えっ!?」
ドリスはナイの言葉を聞いて即座に馬を駆け出し、慌ててナイもビャクに後を追わせる。そしてナイが見かけた相手は貴族のような格好をした男であり、急に駆けつけてきたドリス達に気付いて驚いた声を上げる。
「な、何だね君達は!?」
「あ、えっと……」
「確保!!」
「「「はっ!!」」」
格好を見てナイは相手が貴族だと思ったが、ドリスは即座に団員に指示すると、歩いていた男を取り囲む。男は自分が囲まれた事に戸惑い、怒鳴り散らす。
「馬は誰かと一緒にしか乗った事しかありませんけど、乗狼なら得意です」
「乗……狼?」
ナイの言葉にドリスは戸惑うが、王城内の敷地にてナイは犬笛を取り出して吹く。すると敷地内に待機させていたビャクが現れ、嬉しそうにナイの元へ駆けつける。
「ウォンッ!!」
「おっ、ちゃんと反応した。よしよし、偉いぞビャク」
「ああ、なるほど……狼だから、乗狼ですのね」
犬笛を吹くと真っ先に反応して駆けつけたビャクをナイは褒め称え、ここでドリスはナイの言葉の意味を悟る。実はナイはクロとコクが犬笛ですぐに駆けつけるように教育されているのを知り、この際にビャクも同じように自分の犬笛に反応する様に特訓した。
アルトの協力でナイは特製の犬笛を作ってもらい、ビャクはその犬笛に反応して駆けつける様に訓練を行う。そして現在では犬笛を吹いただけでビャクはナイが呼び出している事に気付き、駆け出してくる。
「ほら、ビャク。ドリスさんだよ、ちゃんと顔を覚えるんだよ」
「クゥ~ンッ?」
「きゃ、近いですわ!?」
ビャクはナイの言葉を聞いてドリスに振り返り、臭いを嗅ぐために近寄る。ドリスは白狼種を間近に見たのは初めてなので驚いたが、改めてナイが白狼種を手懐けている事に驚く。
(白狼種は知能が高く、誇り高い魔獣種だから人に懐く事はないと聞いてましたが……ナイさんには随分と懐いてますわね。魔物に好かれる才能もあるのでしょうか……)
ナイがビャクと戯れる姿を見てドリスは増々ナイが只者ではないと悟り、彼を自分達の騎士団に入団させれば大きな戦力となると確信した。しかし、同時にある恐れを抱いてしまう。
(これほどの力を持つナイさんがもしも敵になれば……いえ、私は何を考えているんですの)
自分の考えを振り払い、改めてドリスはナイに自分にしっかりとついてくるように促す。
「さあ、ナイさん!!見回りの時間ですわ、しっかりと付いて来て下さい!!」
「あれ?バッシュ王子……いや、団長は?」
「基本的に見回りの時は私達が行う事になりますわ。王子は騎士団の仕事だけではなく、王子としての責務もありますので基本は富豪区の管理は私達が行います」
「なるほど……分かりました。じゃあ、行こうかビャク」
「ウォンッ!!」
バッシュは騎士団の団長以外にも王子として色々と仕事を抱えているらしく、基本的には富豪区の管理はドリスと彼女の配下に任されている事を知り、ナイはドリスの補佐役として同行する――
――アルトの屋敷が富豪区にある事からナイは富豪区に訪れる事自体はよくあった。しかし、富豪区を探索する事自体はあまりなく、この場所はそもそも一般人は滅多に近づかない。
富豪区に暮らすのは貴族という高い身分の人間達であるため、一般人は滅多に富豪区には近づかない。過去に富豪区に興味本位で立ち寄った人間が貴族の不興を買って逮捕されたという実例もあり、そのせいでこの地区には一般人は殆ど立ち寄る事はなかった。
「……ここの地区、あんまり外を歩いている人はいませんね」
「当然ですわ。基本的に貴族が外に出る時は徒歩でななく、馬車を利用しますから」
「あ、なるほど……」
「仮に徒歩で外を出歩く時も必ず護衛を同行させますわ。最近は物騒ですから、護衛を増やす貴族も多いそうですわ」
「そうなんですね」
ドリスの言葉を聞いてナイは富豪区ではあまり歩いている人間を見かけなかった理由を悟り、人通りが少ない理由を知る。しかし、人通りが少ないからこそ事件を発見しやすいという面もある。
「仮に富豪区で貴族以外の人間が出歩いている時はほぼ確実に犯罪を犯そうとしている類の人間ですわ。だから誰かを発見したらすぐに知らせてください」
「なるほど……分かりました。ビャクも何か気付いたら教えてね」
「ウォンッ!!」
「しっ……静かに。あまり大きな音を立てると苦情が来ますわ」
「ウォンッ(小声)」
ビャクはドリスに注意されて落ち込んだように顔を伏せ、そんなビャクの頭をナイは撫でると、不意に視界の端に誰かが通り過ぎたような気がした。
「今、あそこに人影が……」
「人影!?追いかけますわよ!!」
「えっ!?」
ドリスはナイの言葉を聞いて即座に馬を駆け出し、慌ててナイもビャクに後を追わせる。そしてナイが見かけた相手は貴族のような格好をした男であり、急に駆けつけてきたドリス達に気付いて驚いた声を上げる。
「な、何だね君達は!?」
「あ、えっと……」
「確保!!」
「「「はっ!!」」」
格好を見てナイは相手が貴族だと思ったが、ドリスは即座に団員に指示すると、歩いていた男を取り囲む。男は自分が囲まれた事に戸惑い、怒鳴り散らす。
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