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王都の異変
第584話 黒炎
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(――何だ!?何が起きているんだ!?)
クノに突き飛ばされたナイは身体を起き上げると、視界には信じられない光景が広がっていた。全身に火傷を負い、自ら心臓を突き刺したイゾウの身体は全身から黒色の泥のような物を生み出していた。
黒い泥の正体が闇属性の魔力だと気付くのにそれほど時間は掛からず、ナイは闇属性の魔法剣を発動させる時に味わう嫌な感覚を覚え、即座に距離を取る。
「な、何だい!?何が起きてるんだい!?」
「こ、こいつは……!?」
「これはいったい……!?」
「グルルルッ……!!」
イゾウの変化に戸惑っているのは他の者達も一緒であり、情報屋であるネズミも忍者のクノもイゾウの変化には心当たりがなかった。だが、テンだけは何か心当たりがあるのか顔色を変える。
「こいつ、まさか……ナイ、こいつを早く仕留めるんだ!!でないと取り返しの付かない事態になるよ!?」
「えっ!?」
『もう遅い』
テンの言葉にナイは彼女に振り返ると、この時に何処かから別の声が聞こえてきた。驚いたナイは声のした方向に振り返るが、そこには誰も存在せず、代わりに石柱の影の中で黒い物が沈んでいく光景を目撃した。
『ウウッ……アァアアアアッ!!』
「なっ!?ま、まだ動けたのでござるか!?」
イゾウは絶叫しながら立ち上がると、全身が黒に染まっていく。泥の様に身体がから放出されていた闇属性の魔力が覆い込み、それを見たナイはある事を思い出す。
強化術など発動させるとき、体内の聖属性の魔力を活性化させる事で全身に白色の炎のような魔力に包まれる。これは「白炎」と呼ばれ、聖属性の魔力その物である。この白炎は本当の炎のような性質はなく、触れても特に身体に害はない。だが、目の前のイゾウの場合は闇属性の魔力に包まれており、この状態で触れるとまずそうな気がした。
(闇属性の魔法剣は生物に触れると生命力を奪う力を持っていたはず……あれに触れるのはまずい!!)
何度かナイは闇属性の魔法剣を使用した事はあるが、生物が相手の場合は闇属性の魔法剣は絶大な効果を発揮した。実際に火竜との戦闘では闇属性の魔法剣のお陰で火竜を追い詰め、弱体化させる事に成功した。
しかし、そんな絶大な力を持つ闇属性の魔法剣をナイが多用しなかった理由、それは彼の本能が恐れたからとしか言いようがない。頭では闇属性の魔法剣が凄い効果を発揮する事が分かっていても、発動する度にナイは闇属性の魔法剣を恐れを抱いてしまう。
(嫌な感じだ……こうして目の前に立つだけで辛い)
これまでに火竜やゴブリンキングという圧倒的な存在と戦い続けたナイだが、強大な力を持つ生物と対峙する時とは異なる恐怖に襲われる。イゾウと対峙するだけでナイは不安を抱き、心が落ち着かない。
「ナイ、しっかりしな!!取り乱すんじゃないよ、あんたなら平気だ!!」
「テンさん!?」
「あんたの抱えている不安は闇属性の魔力の影響を受けているだけだ!!気をしっかり持て、恐怖に負けるんじゃないよ!!」
テンの激励にナイは頷き、不安に襲われながらもナイは旋斧を構えた。だが、身体が無意識に震えてしまい、思うように動けない。
その一方でイゾウの方は全身に纏わせていた魔力が徐々に彼の身体に吸い込まれるように消え去り、やがて黒色の炎のように変化を果たす。そして落ちている風魔を拾い上げると、風魔の全体にも「黒炎」が流れ込む。
『フウッ……フウッ……コロス、コロシテヤル!!ミナゴロシダァアアアッ!!』
「うっ!?」
「ナイ殿、気を付けて!!」
ナイはイゾウの気迫に気圧されるが、クノの言葉を聞いて旋斧を構えると、黒炎を纏った風魔と衝突する。その結果、風魔に纏った黒炎に反応したのか旋斧が変化する。
『ウオオオッ!!』
「くっ……うわっ!?」
「な、何だ!?どうしたんだい!?」
「ナ、ナイ殿の剣が!?」
風魔に纏った闇属性の魔力に反応したのか、旋斧の全体が漆黒へと染まり、咄嗟にナイはイゾウから離れる。どうやら勝手に旋斧が闇属性の魔力を吸収したらしく、しかも火竜の魔力を反応して黒炎を生み出す。
(まずい、このままだと抑えきれない!?)
黒炎を纏った旋斧を見て危険だと判断したナイはイゾウに視線を向け、イゾウは風魔を片手にナイの元へ迫る。それに対してナイは咄嗟に旋斧で受けるのはまずいと判断し、刃に纏った炎を放つ。
「このぉっ!!」
『ウガアアアッ!?』
「うひぃっ!?」
「まずいっ!?」
「キャインッ!?」
旋斧を突き出した瞬間、刃に纏っていた黒炎が放出され、イゾウの身体を吹き飛ばす。その際に他の者は巻き込まれない様に伏せると、イゾウは廃墟の壁に叩きつけられた。
魔力を放出した事で旋斧の刃の色は元に戻るが、ナイは嫌な汗を流しながらイゾウの様子を伺う。現在のイゾウは全身に黒炎が纏い、何時までも消える様子がない。それを見たナイは倒したのかと思ったが、イゾウは目を見開く。
クノに突き飛ばされたナイは身体を起き上げると、視界には信じられない光景が広がっていた。全身に火傷を負い、自ら心臓を突き刺したイゾウの身体は全身から黒色の泥のような物を生み出していた。
黒い泥の正体が闇属性の魔力だと気付くのにそれほど時間は掛からず、ナイは闇属性の魔法剣を発動させる時に味わう嫌な感覚を覚え、即座に距離を取る。
「な、何だい!?何が起きてるんだい!?」
「こ、こいつは……!?」
「これはいったい……!?」
「グルルルッ……!!」
イゾウの変化に戸惑っているのは他の者達も一緒であり、情報屋であるネズミも忍者のクノもイゾウの変化には心当たりがなかった。だが、テンだけは何か心当たりがあるのか顔色を変える。
「こいつ、まさか……ナイ、こいつを早く仕留めるんだ!!でないと取り返しの付かない事態になるよ!?」
「えっ!?」
『もう遅い』
テンの言葉にナイは彼女に振り返ると、この時に何処かから別の声が聞こえてきた。驚いたナイは声のした方向に振り返るが、そこには誰も存在せず、代わりに石柱の影の中で黒い物が沈んでいく光景を目撃した。
『ウウッ……アァアアアアッ!!』
「なっ!?ま、まだ動けたのでござるか!?」
イゾウは絶叫しながら立ち上がると、全身が黒に染まっていく。泥の様に身体がから放出されていた闇属性の魔力が覆い込み、それを見たナイはある事を思い出す。
強化術など発動させるとき、体内の聖属性の魔力を活性化させる事で全身に白色の炎のような魔力に包まれる。これは「白炎」と呼ばれ、聖属性の魔力その物である。この白炎は本当の炎のような性質はなく、触れても特に身体に害はない。だが、目の前のイゾウの場合は闇属性の魔力に包まれており、この状態で触れるとまずそうな気がした。
(闇属性の魔法剣は生物に触れると生命力を奪う力を持っていたはず……あれに触れるのはまずい!!)
何度かナイは闇属性の魔法剣を使用した事はあるが、生物が相手の場合は闇属性の魔法剣は絶大な効果を発揮した。実際に火竜との戦闘では闇属性の魔法剣のお陰で火竜を追い詰め、弱体化させる事に成功した。
しかし、そんな絶大な力を持つ闇属性の魔法剣をナイが多用しなかった理由、それは彼の本能が恐れたからとしか言いようがない。頭では闇属性の魔法剣が凄い効果を発揮する事が分かっていても、発動する度にナイは闇属性の魔法剣を恐れを抱いてしまう。
(嫌な感じだ……こうして目の前に立つだけで辛い)
これまでに火竜やゴブリンキングという圧倒的な存在と戦い続けたナイだが、強大な力を持つ生物と対峙する時とは異なる恐怖に襲われる。イゾウと対峙するだけでナイは不安を抱き、心が落ち着かない。
「ナイ、しっかりしな!!取り乱すんじゃないよ、あんたなら平気だ!!」
「テンさん!?」
「あんたの抱えている不安は闇属性の魔力の影響を受けているだけだ!!気をしっかり持て、恐怖に負けるんじゃないよ!!」
テンの激励にナイは頷き、不安に襲われながらもナイは旋斧を構えた。だが、身体が無意識に震えてしまい、思うように動けない。
その一方でイゾウの方は全身に纏わせていた魔力が徐々に彼の身体に吸い込まれるように消え去り、やがて黒色の炎のように変化を果たす。そして落ちている風魔を拾い上げると、風魔の全体にも「黒炎」が流れ込む。
『フウッ……フウッ……コロス、コロシテヤル!!ミナゴロシダァアアアッ!!』
「うっ!?」
「ナイ殿、気を付けて!!」
ナイはイゾウの気迫に気圧されるが、クノの言葉を聞いて旋斧を構えると、黒炎を纏った風魔と衝突する。その結果、風魔に纏った黒炎に反応したのか旋斧が変化する。
『ウオオオッ!!』
「くっ……うわっ!?」
「な、何だ!?どうしたんだい!?」
「ナ、ナイ殿の剣が!?」
風魔に纏った闇属性の魔力に反応したのか、旋斧の全体が漆黒へと染まり、咄嗟にナイはイゾウから離れる。どうやら勝手に旋斧が闇属性の魔力を吸収したらしく、しかも火竜の魔力を反応して黒炎を生み出す。
(まずい、このままだと抑えきれない!?)
黒炎を纏った旋斧を見て危険だと判断したナイはイゾウに視線を向け、イゾウは風魔を片手にナイの元へ迫る。それに対してナイは咄嗟に旋斧で受けるのはまずいと判断し、刃に纏った炎を放つ。
「このぉっ!!」
『ウガアアアッ!?』
「うひぃっ!?」
「まずいっ!?」
「キャインッ!?」
旋斧を突き出した瞬間、刃に纏っていた黒炎が放出され、イゾウの身体を吹き飛ばす。その際に他の者は巻き込まれない様に伏せると、イゾウは廃墟の壁に叩きつけられた。
魔力を放出した事で旋斧の刃の色は元に戻るが、ナイは嫌な汗を流しながらイゾウの様子を伺う。現在のイゾウは全身に黒炎が纏い、何時までも消える様子がない。それを見たナイは倒したのかと思ったが、イゾウは目を見開く。
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