577 / 1,110
王都の異変
第573話 情報屋に頼る
しおりを挟む
「ネズミ……それって、まさか……」
「あ、そういえばネズミ……さんが、テンさんの事を知っているような感じでしたけど、知り合いですか?」
「まさか、あいつの事かい!?あの婆さん、まだ生きてたのかい!?」
「えっ!?」
テンはネズミの名前を聞いて心底驚いた表情を浮かべた。その様子を見てナイは他の聖女騎士団に視線を向けるが、彼女達も心当たりはないのか首を振った。
聖女騎士団の面子でさえもネズミの存在は知らず、テンは何処で知り合ったのかナイ達は気にかかると、彼女は自分とネズミの関係を伝える。
「あの婆さん、まだ生きていたのかい……そいつはあたしの育ての親だよ」
「えっ!?」
「ちょっと待て!!テン、前にお前は育ての親は死んだようなもんだと言っていたじゃないか!?」
「どういう事だ!?」
ネズミがテンの育ての親だと知って驚いたのはナイ達だけではなく、他の者も驚愕した。特に聖女騎士団は彼女がまだ十代の頃からの付き合いだが、テンの育ての親は既に亡くなっていると聞かされていたので動揺を隠せない。
「あたしだってとうの昔に死んだと思い込んでたんだよ!!まだ王妃様に出会う前、あたしはあいつの元で世話になっていたんだ。けど、ある時にへまをして二人とも盗賊に捕まって……その後、あたし達は脱走しようとした時に婆さんは囮になってあたしを逃がした。結局、あたしが街の警備兵を連れて来た時には盗賊達も消えてたし、婆さんの姿もなかった。だから婆さんは殺されたか盗賊に連れて行かれたと思ってたんだよ」
「あ、あのお婆さんが……?」
「ちょっと意外……」
「へえっ……」
ナイ達はテンの話を聞いて驚いた表情を浮かべ、あのネズミが自分の身を危険に晒してまで幼いテンを逃がした人物だとは思わなかった。
その後、テンは聖女騎士団に引き取られた後も彼女の行方を捜したが、結局は何も分からずじまいで探すのを諦めたという。しかし、その育ての親が情報屋として生きていた事に流石の彼女も混乱した。
「あの婆……生きていたのなら連絡の一つぐらい寄越さないかい」
「テンさん……」
「たくっ……まあいい、それよりも情報屋を探し出すよ。そのネズミが本当にあたしの育ての親かどうかは知らないけど、ともかく探し出す必要があるね」
「あ、ちょっと待ってほしいでござる。そういう事なら拙者に任せてほしいでござる」
「クノ?」
ここまで話を聞いていたクノが手を上げると、彼女が口を挟んできた事にテンは驚くが、実はクノは以前にネズミが使役している灰鼠を発見した事を話す。
「実は拙者、そのネズミという情報屋と連絡を取る手段があるでござる」
「本当か!?」
「前にこの屋敷に灰鼠が入り込もうとしていたのを発見して捕まえたら、その情報屋が訪れて灰鼠を返してほしい事を言われたでござる。それで拙者は灰鼠を返す条件としてネズミ殿と連絡の手段を教えてもらったでござる。ネズミ殿も拙者から情報を聞く事もあるかもしれないという事で承諾してくれたでござる」
「なるほど……そう言う事か」
クノの言葉にシノビは驚いたが都合が良かった。クノはすぐに情報屋と連絡を取り、ネズミからイゾウの情報を引き出す事にした――
――翌日、クノはネズミと連絡を取ると、彼女からの返事は直接話がしたいという事で待ち合わせ場所を指定してきた。但し、出向くのはクノとテンだけという条件を加えられる。
「ネズミ殿は拙者とテン殿だけで会いたいそうでござるが、どうするでござる?」
「……あたしを指定したという事は、あっちもあたしに会う覚悟は出来たという事かい?」
「それは分からぬでござるが、もしも他の人物を連れてきたら会うつもりはないそうでござる」
「わざわざテンさんを指名する辺り、やっぱり本当にテンさんのお母さんなのかしら……?」
「お母さんなんて柄じゃないよ。育ててくれた事には感謝してるけどね、あたしが母親のように想っている人物は王妃様だけだよ」
ネズミの伝言を聞いてテンは面倒くさそうな表情を浮かべ、ヒナはネズミがテンの育ての親だから会いたがっているのかと考える。しかし、用心深いシノビだけは怪しむ。
「待て……もしもその情報屋がイゾウと繋がっていたらどうする?テンを指名したのはもしや罠に嵌めるつもりじゃないのか?」
「えっ……でも、ネズミさんはテンさんの育ての親なんですよね?」
「だが、もう何年も会っていないんだろう?それに生きていたならどうして今まで連絡を取らなかった?聖女騎士団の噂を知らないはずがないだろう」
「言われてみれば確かに……」
テンは昔からかなり有名な存在であり、ネズミもテンの事は知っている様子だった。それなのに一度も連絡も取らなかった事にシノビは怪しむ。
「あ、そういえばネズミ……さんが、テンさんの事を知っているような感じでしたけど、知り合いですか?」
「まさか、あいつの事かい!?あの婆さん、まだ生きてたのかい!?」
「えっ!?」
テンはネズミの名前を聞いて心底驚いた表情を浮かべた。その様子を見てナイは他の聖女騎士団に視線を向けるが、彼女達も心当たりはないのか首を振った。
聖女騎士団の面子でさえもネズミの存在は知らず、テンは何処で知り合ったのかナイ達は気にかかると、彼女は自分とネズミの関係を伝える。
「あの婆さん、まだ生きていたのかい……そいつはあたしの育ての親だよ」
「えっ!?」
「ちょっと待て!!テン、前にお前は育ての親は死んだようなもんだと言っていたじゃないか!?」
「どういう事だ!?」
ネズミがテンの育ての親だと知って驚いたのはナイ達だけではなく、他の者も驚愕した。特に聖女騎士団は彼女がまだ十代の頃からの付き合いだが、テンの育ての親は既に亡くなっていると聞かされていたので動揺を隠せない。
「あたしだってとうの昔に死んだと思い込んでたんだよ!!まだ王妃様に出会う前、あたしはあいつの元で世話になっていたんだ。けど、ある時にへまをして二人とも盗賊に捕まって……その後、あたし達は脱走しようとした時に婆さんは囮になってあたしを逃がした。結局、あたしが街の警備兵を連れて来た時には盗賊達も消えてたし、婆さんの姿もなかった。だから婆さんは殺されたか盗賊に連れて行かれたと思ってたんだよ」
「あ、あのお婆さんが……?」
「ちょっと意外……」
「へえっ……」
ナイ達はテンの話を聞いて驚いた表情を浮かべ、あのネズミが自分の身を危険に晒してまで幼いテンを逃がした人物だとは思わなかった。
その後、テンは聖女騎士団に引き取られた後も彼女の行方を捜したが、結局は何も分からずじまいで探すのを諦めたという。しかし、その育ての親が情報屋として生きていた事に流石の彼女も混乱した。
「あの婆……生きていたのなら連絡の一つぐらい寄越さないかい」
「テンさん……」
「たくっ……まあいい、それよりも情報屋を探し出すよ。そのネズミが本当にあたしの育ての親かどうかは知らないけど、ともかく探し出す必要があるね」
「あ、ちょっと待ってほしいでござる。そういう事なら拙者に任せてほしいでござる」
「クノ?」
ここまで話を聞いていたクノが手を上げると、彼女が口を挟んできた事にテンは驚くが、実はクノは以前にネズミが使役している灰鼠を発見した事を話す。
「実は拙者、そのネズミという情報屋と連絡を取る手段があるでござる」
「本当か!?」
「前にこの屋敷に灰鼠が入り込もうとしていたのを発見して捕まえたら、その情報屋が訪れて灰鼠を返してほしい事を言われたでござる。それで拙者は灰鼠を返す条件としてネズミ殿と連絡の手段を教えてもらったでござる。ネズミ殿も拙者から情報を聞く事もあるかもしれないという事で承諾してくれたでござる」
「なるほど……そう言う事か」
クノの言葉にシノビは驚いたが都合が良かった。クノはすぐに情報屋と連絡を取り、ネズミからイゾウの情報を引き出す事にした――
――翌日、クノはネズミと連絡を取ると、彼女からの返事は直接話がしたいという事で待ち合わせ場所を指定してきた。但し、出向くのはクノとテンだけという条件を加えられる。
「ネズミ殿は拙者とテン殿だけで会いたいそうでござるが、どうするでござる?」
「……あたしを指定したという事は、あっちもあたしに会う覚悟は出来たという事かい?」
「それは分からぬでござるが、もしも他の人物を連れてきたら会うつもりはないそうでござる」
「わざわざテンさんを指名する辺り、やっぱり本当にテンさんのお母さんなのかしら……?」
「お母さんなんて柄じゃないよ。育ててくれた事には感謝してるけどね、あたしが母親のように想っている人物は王妃様だけだよ」
ネズミの伝言を聞いてテンは面倒くさそうな表情を浮かべ、ヒナはネズミがテンの育ての親だから会いたがっているのかと考える。しかし、用心深いシノビだけは怪しむ。
「待て……もしもその情報屋がイゾウと繋がっていたらどうする?テンを指名したのはもしや罠に嵌めるつもりじゃないのか?」
「えっ……でも、ネズミさんはテンさんの育ての親なんですよね?」
「だが、もう何年も会っていないんだろう?それに生きていたならどうして今まで連絡を取らなかった?聖女騎士団の噂を知らないはずがないだろう」
「言われてみれば確かに……」
テンは昔からかなり有名な存在であり、ネズミもテンの事は知っている様子だった。それなのに一度も連絡も取らなかった事にシノビは怪しむ。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
物語のようにはいかない
わらびもち
恋愛
転生したら「お前を愛することはない」と夫に向かって言ってしまった『妻』だった。
そう、言われる方ではなく『言う』方。
しかも言ってしまってから一年は経過している。
そして案の定、夫婦関係はもうキンキンに冷え切っていた。
え? これ、どうやって関係を修復したらいいの?
いや、そもそも修復可能なの?
発言直後ならまだしも、一年も経っているのに今更仲直りとか無理じゃない?
せめて失言『前』に転生していればよかったのに!
自分が言われた側なら、初夜でこんな阿呆な事を言う相手と夫婦関係を続けるなど無理だ。諦めて夫に離婚を申し出たのだが、彼は婚姻継続を望んだ。
夫が望むならと婚姻継続を受け入れたレイチェル。これから少しずつでも仲を改善出来たらいいなと希望を持つのだが、現実はそう上手くいかなかった……。
かわいそうな旦那様‥
みるみる
恋愛
侯爵令嬢リリアのもとに、公爵家の長男テオから婚約の申し込みがありました。ですが、テオはある未亡人に惚れ込んでいて、まだ若くて性的魅力のかけらもないリリアには、本当は全く異性として興味を持っていなかったのです。
そんなテオに、リリアはある提案をしました。
「‥白い結婚のまま、三年後に私と離縁して下さい。」
テオはその提案を承諾しました。
そんな二人の結婚生活は‥‥。
※題名の「かわいそうな旦那様」については、客観的に見ていると、この旦那のどこが?となると思いますが、主人公の旦那に対する皮肉的な意味も込めて、あえてこの題名にしました。
※小説家になろうにも投稿中
※本編完結しましたが、補足したい話がある為番外編を少しだけ投稿しますm(_ _)m
少年売買契約
眠りん
BL
殺人現場を目撃した事により、誘拐されて闇市場で売られてしまった少年。
闇オークションで買われた先で「お前は道具だ」と言われてから自我をなくし、道具なのだと自分に言い聞かせた。
性の道具となり、人としての尊厳を奪われた少年に救いの手を差し伸べるのは──。
表紙:右京 梓様
※胸糞要素がありますがハッピーエンドです。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました
ユユ
恋愛
毎夜天使が私を犯す。
それは王家から婚約の打診があったときから
始まった。
体の弱い父を領地で支えながら暮らす母。
2人は私の異変に気付くこともない。
こんなこと誰にも言えない。
彼の支配から逃れなくてはならないのに
侯爵家のキングは私を放さない。
* 作り話です
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
別れた婚約者が「俺のこと、まだ好きなんだろう?」と復縁せまってきて気持ち悪いんですが
リオール
恋愛
婚約破棄して別れたはずなのに、なぜか元婚約者に復縁迫られてるんですけど!?
※ご都合主義展開
※全7話
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる