553 / 1,110
ゴブリンキングの脅威
第539話 濡れ衣
しおりを挟む
「そこのお前、いったい何をしている!?」
「動くな!!下手な真似をすれば捕まえるぞ!!」
「なっ……違う、私は……!?」
駆けつけてきたのは王都の警備兵であり、ルナは周囲の惨状を見て非常にまずい事態だと気付く。戦闘の際中に彼女はいくつもの建物の壁を破壊し、更には彼女の戦斧は近くの建物に突き刺さったままである。
この状況下で捕まれば彼女が犯罪者扱いされるのは目に見えており、慌てて彼女は言い訳を行おうとした。しかし、その前に建物から人が出てきて警備兵に訴えた。
「兵士さん!!そ、その女が急に暴れ始めたんです!!」
「そうだ、人の家をぶっ壊しやがって……」
「早く捕まえてください!!」
「うっ……!?」
次々と建物から人々が姿を現し、ルナによって建物を破壊された者達は彼女を非難した。このままではまずいと判断したルナは戦斧に視線を向け、捕まる前に逃げ出す。
「……くそっ!!」
「あ、待て!!」
「逃がすと思っているのか!?」
壁に突き刺さった戦斧を引き抜くとルナは駆け出し、警備兵達は彼女を捕まえようと追いかける。しかし、獣人族級の跳躍力でルナは建物の屋根の上に移動を行うと、兵士達は唖然とした表情を浮かべた。そんな彼等にルナは堂々と言い放つ。
「私は……犯人じゃない!!襲われたから戦っただけだ!!これは正当防衛だ!!」
「な、何を言って……」
「だから今ここでお前達に捕まるわけには行かない!!でも、必ずこの罪を晴らす!!私を襲った連中を捕まえてお前達の元へ行く!!それだけは忘れるな!!」
「待て、逃がすと思ってるのか!?」
「捕まえろ!!」
ルナは一方的に自分が犯人ではない事を言い放ち、必ず自分を嵌めた犯人二人を捕まえる事を告げると、駆け出す。その光景を見ていた警備兵は後を追う――
――こうして元聖女騎士団のルナは街で破壊行為を行った事で警備兵から追われる立場となり、その事実を知ったテン達は衝撃を受けた。確かに彼女は昔から問題児ではあったが、よりにもよって民家を破壊するなど信じられなかった。
すぐにルナの捜索が開始されるが、彼女は自分を嵌めた犯人を捕まえるまでは警備兵や聖女騎士団に捕まるわけにはいかず、姿を隠した。結局は一日が経過してもルナの手掛かりすら掴めず、そんな状況で王都から討伐隊が帰還を果たす。
王都へ到着後、国王はリノの無事を喜び、他の者も称賛した。しかし、テンはナイ達が戻ってきた事を知ると、彼女はすぐに呼び出してルナの捜索の手伝いを頼み込む。
「あんたらに頼みたいことがある……すまないが、うちの騎士団の小娘を探し出してくれないかい!?」
「えっ……どういう意味ですか?」
「私達、戻って来たばかりなんですけど……」
「疲れた、眠い……」
王城から一旦アルトの屋敷にもどってきたナイ、ヒイロ、ミイナの3人はテンに呼び出され、彼女からルナの捜索を頼まれる。今は一人でも人手が欲しいため、彼女は既にアルトに許可を貰っている事は伝えた。
「アルト王子からあんたら二人を貸し出してくれるようには頼んでるんだよ。だから、頼む!!帰ってきて疲れているだろうけどうちの馬鹿娘を探し出してくれよ!!」
「その、馬鹿娘って誰の事ですか?」
「こいつさ、しっかりと顔を覚えておいてくれ」
ナイの言葉を聞いてテンは羊皮紙を差し出すと、そこにはルナの似顔絵と彼女が身に着けている武器まで描かれていた。ルナの顔を見るのは三人も初めてであり、テンは頭を掻きながら事情を説明してくれた。
「こいつは今、民家を破壊した容疑で指名手配されてるんだよ。実際に住民の話によるとこいつが建物を破壊する場面を見た人間も多い」
「どうしてそんな事を……」
「本人が逃げる前に自分は嵌められたと訴えたそうだけど、状況的に考えても警備兵はただの言い訳にしか聞こえなかったらしくてね。そのまま捕まえようとしたんだけど逃げ出したそうなんだ」
「……それは凄い」
ルナの似顔絵を見てミイナは呟き、ナイとヒイロも似顔絵を覗き込む。見た目は少女にしか見えないが、こう見えても年齢は20代後半らしく、民家を簡単に破壊する程の力を誇る。
テン達も仲間と共に探し回ったそうだが手がかりさえ見つからず、困っていた所にナイ達が戻って来たという。ナイ達も遠征から戻って来たばかりで疲れてはいるが、テンは三人に頼み込む。
「頼む、あんたらにしかこんな事は頼めないんだ!!ルナの奴を無理やり捕まえる事が出来るのはあんたらぐらいしかいないんだよ!!」
「そう言われても……」
「人探しとなると難しいですね……」
「私達よりも人探しが得意な人に頼んだ方が良いと思う」
「そんな奴に心当たりがあったらあんた等にこうして頭なんて下げてないよ……」
ミイナの言葉にテンはため息を吐き出し、正直に言えば人手が足りていなければ彼女だってナイ達に頼み込む事はなかった。だが、ここでナイはこういう時に役立ちそうな人材を思い出す。
「動くな!!下手な真似をすれば捕まえるぞ!!」
「なっ……違う、私は……!?」
駆けつけてきたのは王都の警備兵であり、ルナは周囲の惨状を見て非常にまずい事態だと気付く。戦闘の際中に彼女はいくつもの建物の壁を破壊し、更には彼女の戦斧は近くの建物に突き刺さったままである。
この状況下で捕まれば彼女が犯罪者扱いされるのは目に見えており、慌てて彼女は言い訳を行おうとした。しかし、その前に建物から人が出てきて警備兵に訴えた。
「兵士さん!!そ、その女が急に暴れ始めたんです!!」
「そうだ、人の家をぶっ壊しやがって……」
「早く捕まえてください!!」
「うっ……!?」
次々と建物から人々が姿を現し、ルナによって建物を破壊された者達は彼女を非難した。このままではまずいと判断したルナは戦斧に視線を向け、捕まる前に逃げ出す。
「……くそっ!!」
「あ、待て!!」
「逃がすと思っているのか!?」
壁に突き刺さった戦斧を引き抜くとルナは駆け出し、警備兵達は彼女を捕まえようと追いかける。しかし、獣人族級の跳躍力でルナは建物の屋根の上に移動を行うと、兵士達は唖然とした表情を浮かべた。そんな彼等にルナは堂々と言い放つ。
「私は……犯人じゃない!!襲われたから戦っただけだ!!これは正当防衛だ!!」
「な、何を言って……」
「だから今ここでお前達に捕まるわけには行かない!!でも、必ずこの罪を晴らす!!私を襲った連中を捕まえてお前達の元へ行く!!それだけは忘れるな!!」
「待て、逃がすと思ってるのか!?」
「捕まえろ!!」
ルナは一方的に自分が犯人ではない事を言い放ち、必ず自分を嵌めた犯人二人を捕まえる事を告げると、駆け出す。その光景を見ていた警備兵は後を追う――
――こうして元聖女騎士団のルナは街で破壊行為を行った事で警備兵から追われる立場となり、その事実を知ったテン達は衝撃を受けた。確かに彼女は昔から問題児ではあったが、よりにもよって民家を破壊するなど信じられなかった。
すぐにルナの捜索が開始されるが、彼女は自分を嵌めた犯人を捕まえるまでは警備兵や聖女騎士団に捕まるわけにはいかず、姿を隠した。結局は一日が経過してもルナの手掛かりすら掴めず、そんな状況で王都から討伐隊が帰還を果たす。
王都へ到着後、国王はリノの無事を喜び、他の者も称賛した。しかし、テンはナイ達が戻ってきた事を知ると、彼女はすぐに呼び出してルナの捜索の手伝いを頼み込む。
「あんたらに頼みたいことがある……すまないが、うちの騎士団の小娘を探し出してくれないかい!?」
「えっ……どういう意味ですか?」
「私達、戻って来たばかりなんですけど……」
「疲れた、眠い……」
王城から一旦アルトの屋敷にもどってきたナイ、ヒイロ、ミイナの3人はテンに呼び出され、彼女からルナの捜索を頼まれる。今は一人でも人手が欲しいため、彼女は既にアルトに許可を貰っている事は伝えた。
「アルト王子からあんたら二人を貸し出してくれるようには頼んでるんだよ。だから、頼む!!帰ってきて疲れているだろうけどうちの馬鹿娘を探し出してくれよ!!」
「その、馬鹿娘って誰の事ですか?」
「こいつさ、しっかりと顔を覚えておいてくれ」
ナイの言葉を聞いてテンは羊皮紙を差し出すと、そこにはルナの似顔絵と彼女が身に着けている武器まで描かれていた。ルナの顔を見るのは三人も初めてであり、テンは頭を掻きながら事情を説明してくれた。
「こいつは今、民家を破壊した容疑で指名手配されてるんだよ。実際に住民の話によるとこいつが建物を破壊する場面を見た人間も多い」
「どうしてそんな事を……」
「本人が逃げる前に自分は嵌められたと訴えたそうだけど、状況的に考えても警備兵はただの言い訳にしか聞こえなかったらしくてね。そのまま捕まえようとしたんだけど逃げ出したそうなんだ」
「……それは凄い」
ルナの似顔絵を見てミイナは呟き、ナイとヒイロも似顔絵を覗き込む。見た目は少女にしか見えないが、こう見えても年齢は20代後半らしく、民家を簡単に破壊する程の力を誇る。
テン達も仲間と共に探し回ったそうだが手がかりさえ見つからず、困っていた所にナイ達が戻って来たという。ナイ達も遠征から戻って来たばかりで疲れてはいるが、テンは三人に頼み込む。
「頼む、あんたらにしかこんな事は頼めないんだ!!ルナの奴を無理やり捕まえる事が出来るのはあんたらぐらいしかいないんだよ!!」
「そう言われても……」
「人探しとなると難しいですね……」
「私達よりも人探しが得意な人に頼んだ方が良いと思う」
「そんな奴に心当たりがあったらあんた等にこうして頭なんて下げてないよ……」
ミイナの言葉にテンはため息を吐き出し、正直に言えば人手が足りていなければ彼女だってナイ達に頼み込む事はなかった。だが、ここでナイはこういう時に役立ちそうな人材を思い出す。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。
隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。
婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。
しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
このステータスプレート壊れてないですか?~壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活~
夢幻の翼
ファンタジー
典型的な社畜・ブラックバイトに翻弄される人生を送っていたラノベ好きの男が銀行強盗から女性行員を庇って撃たれた。
男は夢にまで見た異世界転生を果たしたが、ラノベのテンプレである神様からのお告げも貰えない状態に戸惑う。
それでも気を取り直して強く生きようと決めた矢先の事、国の方針により『ステータスプレート』を作成した際に数値異常となり改ざん容疑で捕縛され奴隷へ落とされる事になる。運の悪い男だったがチート能力により移送中に脱走し隣国へと逃れた。
一時は途方にくれた少年だったが神父に言われた『冒険者はステータスに関係なく出来る唯一の職業である』を胸に冒険者を目指す事にした。
持ち前の運の悪さもチート能力で回避し、自分の思う生き方を実現させる社畜転生者と自らも助けられ、少年に思いを寄せる美少女との恋愛、襲い来る盗賊の殲滅、新たな商売の開拓と現実では出来なかった夢を異世界で実現させる自由気ままな異世界生活が始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる