貧弱の英雄

カタナヅキ

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ゴブリンキングの脅威

第539話 濡れ衣

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「そこのお前、いったい何をしている!?」
「動くな!!下手な真似をすれば捕まえるぞ!!」
「なっ……違う、私は……!?」


駆けつけてきたのは王都の警備兵であり、ルナは周囲の惨状を見て非常にまずい事態だと気付く。戦闘の際中に彼女はいくつもの建物の壁を破壊し、更には彼女の戦斧は近くの建物に突き刺さったままである。

この状況下で捕まれば彼女が犯罪者扱いされるのは目に見えており、慌てて彼女は言い訳を行おうとした。しかし、その前に建物から人が出てきて警備兵に訴えた。


「兵士さん!!そ、その女が急に暴れ始めたんです!!」
「そうだ、人の家をぶっ壊しやがって……」
「早く捕まえてください!!」
「うっ……!?」


次々と建物から人々が姿を現し、ルナによって建物を破壊された者達は彼女を非難した。このままではまずいと判断したルナは戦斧に視線を向け、捕まる前に逃げ出す。


「……くそっ!!」
「あ、待て!!」
「逃がすと思っているのか!?」


壁に突き刺さった戦斧を引き抜くとルナは駆け出し、警備兵達は彼女を捕まえようと追いかける。しかし、獣人族級の跳躍力でルナは建物の屋根の上に移動を行うと、兵士達は唖然とした表情を浮かべた。そんな彼等にルナは堂々と言い放つ。


「私は……犯人じゃない!!襲われたから戦っただけだ!!これは正当防衛だ!!」
「な、何を言って……」
「だから今ここでお前達に捕まるわけには行かない!!でも、必ずこの罪を晴らす!!私を襲った連中を捕まえてお前達の元へ行く!!それだけは忘れるな!!」
「待て、逃がすと思ってるのか!?」
「捕まえろ!!」


ルナは一方的に自分が犯人ではない事を言い放ち、必ず自分を嵌めた犯人二人を捕まえる事を告げると、駆け出す。その光景を見ていた警備兵は後を追う――





――こうして元聖女騎士団のルナは街で破壊行為を行った事で警備兵から追われる立場となり、その事実を知ったテン達は衝撃を受けた。確かに彼女は昔から問題児ではあったが、よりにもよって民家を破壊するなど信じられなかった。

すぐにルナの捜索が開始されるが、彼女は自分を嵌めた犯人を捕まえるまでは警備兵や聖女騎士団に捕まるわけにはいかず、姿を隠した。結局は一日が経過してもルナの手掛かりすら掴めず、そんな状況で王都から討伐隊が帰還を果たす。

王都へ到着後、国王はリノの無事を喜び、他の者も称賛した。しかし、テンはナイ達が戻ってきた事を知ると、彼女はすぐに呼び出してルナの捜索の手伝いを頼み込む。


「あんたらに頼みたいことがある……すまないが、うちの騎士団の小娘を探し出してくれないかい!?」
「えっ……どういう意味ですか?」
「私達、戻って来たばかりなんですけど……」
「疲れた、眠い……」


王城から一旦アルトの屋敷にもどってきたナイ、ヒイロ、ミイナの3人はテンに呼び出され、彼女からルナの捜索を頼まれる。今は一人でも人手が欲しいため、彼女は既にアルトに許可を貰っている事は伝えた。


「アルト王子からあんたら二人を貸し出してくれるようには頼んでるんだよ。だから、頼む!!帰ってきて疲れているだろうけどうちの馬鹿娘を探し出してくれよ!!」
「その、馬鹿娘って誰の事ですか?」
「こいつさ、しっかりと顔を覚えておいてくれ」


ナイの言葉を聞いてテンは羊皮紙を差し出すと、そこにはルナの似顔絵と彼女が身に着けている武器まで描かれていた。ルナの顔を見るのは三人も初めてであり、テンは頭を掻きながら事情を説明してくれた。


「こいつは今、民家を破壊した容疑で指名手配されてるんだよ。実際に住民の話によるとこいつが建物を破壊する場面を見た人間も多い」
「どうしてそんな事を……」
「本人が逃げる前に自分は嵌められたと訴えたそうだけど、状況的に考えても警備兵はただの言い訳にしか聞こえなかったらしくてね。そのまま捕まえようとしたんだけど逃げ出したそうなんだ」
「……それは凄い」


ルナの似顔絵を見てミイナは呟き、ナイとヒイロも似顔絵を覗き込む。見た目は少女にしか見えないが、こう見えても年齢は20代後半らしく、民家を簡単に破壊する程の力を誇る。

テン達も仲間と共に探し回ったそうだが手がかりさえ見つからず、困っていた所にナイ達が戻って来たという。ナイ達も遠征から戻って来たばかりで疲れてはいるが、テンは三人に頼み込む。


「頼む、あんたらにしかこんな事は頼めないんだ!!ルナの奴を無理やり捕まえる事が出来るのはあんたらぐらいしかいないんだよ!!」
「そう言われても……」
「人探しとなると難しいですね……」
「私達よりも人探しが得意な人に頼んだ方が良いと思う」
「そんな奴に心当たりがあったらあんた等にこうして頭なんて下げてないよ……」


ミイナの言葉にテンはため息を吐き出し、正直に言えば人手が足りていなければ彼女だってナイ達に頼み込む事はなかった。だが、ここでナイはこういう時に役立ちそうな人材を思い出す。
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