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ゴブリンキングの脅威
第498話 アルの弟
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――ドルトンの話によるとアルの弟は「エル」という人物らしく、彼は正確に言えばアルの実の弟ではない。父親の親友が事故で無くなり、その子供を引き取ったという。エルは小髭族ではなく人間の子供で年齢はアルよりも10も年下だったが、家族からは可愛がられていたという。
生まれた時から「器用」の異能を習得していたアルは父親の稼業を継ぐために鍛冶師としての技術を叩き込まれたが、彼は自分の人生を勝手に決められる事に耐え切れず、家を飛び出してしまう。この時にアルは旋斧を勝手に持ち出した。
最初の頃はアルが戻ってくると思っていた家族だったが、数年経過しても何の連絡も寄越さず、十年が経った時には母親は病で亡くなる。母親が死んでからは父親は避けに入り浸り、まともに働かなくなったので弟であるエルは稼業を継ぐ。
だが、残念ながらエルはアルと違って鍛冶師としての才能はなかったらしく、彼には養父や義兄ほどの腕はなかった。父親は母親の死から立ち直れず酒浸りの人生を送り、結局は母親の後を追うように亡くなった。
その後、両親の死を知ってアルは家に戻って来たがエルは彼の事を許さず、二人は大喧嘩したという。エルはアルが稼業を継いでいればこんな事にはならなかったと言い張り、彼を無理やり追い出した。
結局は生前の間にアルはエルとは顔を合わせる事はなく、冒険者稼業もやめてひっそりと山の中で生活を過ごす。そんな時に彼はナイを拾い上げ、麓の村に引っ越して彼と共に暮らす事になったとドルトンは語る。
「最初の頃はアルはエルの元によく足を運んでいたが、エルはアルの事を許さなかった。何時しかアルもエルの元へ訪れるのを止めたが、儂に頼んで定期的にエルの身辺調査しておったよ」
「そうだったんですか……」
「エルはアルを追い出したが、その旋斧だけは取り返そうとしなかった。アルは何度か送り返そうとしたが、エルは頑なに拒否しておった。恐らくは決別の品としてアルに渡したつもりなのじゃろう。だが、この旋斧の事を詳しく知っている人間がいるとすれば、それはエル以外には有り得ん」
「そのエルさんは何処に居るんですか?」
アルの義弟のエルならば旋斧の秘密を知っている可能性もあるため、ナイは出発前に会いに行こうと考えた。ドルトンは頷き、エルの居場所を伝えた。
「エルが暮らしているのはニーノという街じゃ。お主も訪ねた事はあるだろう?」
「ニーノ……」
ナイはニーノという街に聞き覚えがあり、イチノから馬で二日ほどで辿り着ける距離に存在する街だった。イチノを旅立った時に最初に訪れた街でもあるが、あまり印象はない。
ニーノにアルの義弟がいたなど思いもよらなかったが、ナイはエルならば旋斧の正体を知っているかもしれず、会いに行く事を決める。馬で二日かかる距離でも白狼種のビャクならば数時間ほどでニーノに辿り着けると思われた。
「ありがとうございます、ドルトンさん!!僕、ニーノに行ってみます!!」
「うむ、では儂が手紙を書こう。エルとは一応は知らない仲ではないからな……だが、快く歓迎される可能性は低いと思うがな」
「それでも……会ってみたいです」
血は繋がってなくともアルに弟がいた事はナイも初めて知り、どんな人物なのか気になった。そんな彼にドルトンはニーノの地図とエル宛ての手紙を託し、ナイに気を付ける様に注意する。
「ナイ、念のために言っておくがエルはアルにも負けぬ頑固な男だ。もしもお前に尋ねられたとしても何も答えない可能性がある。それでも諦めずに粘り強く尋ねるのだぞ」
「はい、分かりました!!」
「ああ、それとアルの話題はあまり口にしない方が良い。いくらお前さんがアルの息子だとしても、あいつが優しくするとは思えんからな。それとアルの事を馬鹿にするかもしれんが、決して怒ってはいかんぞ」
「……大丈夫です」
アルの事を馬鹿にされても怒るなという言葉だけはナイも即答できなかったが、旋斧の秘密を知るためにナイはドルトンと約束する。エルに会ってどんな事を言われても決して怒らず、彼に頼み込み続ける事を誓う――
――そこから先のナイの行動は素早く、まずは他の人間に事情を説明する。真っ先にナイが会いに向かったのはアッシュ公爵であり、自分がイチノを離れてニーノの街にいる親戚に会いに行く事を伝えると、アッシュは快く了承してくれた。
「なるほど、叔父の元に会いに行きたいか……確かにこの街がこんな状況では他の街も安全かどうか分からないからな。よし、外へ出る事を認めよう!!但し、明日の夜までには戻ってくるんだぞ!!」
「はい、ありがとうございます」
アッシュが与えた時間は明日の夜までであり、明後日には討伐隊は出発するのでナイは今日中に移動して明日の夜までに帰らなければならない。時間があまりないのでナイは他の皆にはアッシュの方から自分が叔父の元へ向かう事を伝える様に頼み、旅の準備を整える。
生まれた時から「器用」の異能を習得していたアルは父親の稼業を継ぐために鍛冶師としての技術を叩き込まれたが、彼は自分の人生を勝手に決められる事に耐え切れず、家を飛び出してしまう。この時にアルは旋斧を勝手に持ち出した。
最初の頃はアルが戻ってくると思っていた家族だったが、数年経過しても何の連絡も寄越さず、十年が経った時には母親は病で亡くなる。母親が死んでからは父親は避けに入り浸り、まともに働かなくなったので弟であるエルは稼業を継ぐ。
だが、残念ながらエルはアルと違って鍛冶師としての才能はなかったらしく、彼には養父や義兄ほどの腕はなかった。父親は母親の死から立ち直れず酒浸りの人生を送り、結局は母親の後を追うように亡くなった。
その後、両親の死を知ってアルは家に戻って来たがエルは彼の事を許さず、二人は大喧嘩したという。エルはアルが稼業を継いでいればこんな事にはならなかったと言い張り、彼を無理やり追い出した。
結局は生前の間にアルはエルとは顔を合わせる事はなく、冒険者稼業もやめてひっそりと山の中で生活を過ごす。そんな時に彼はナイを拾い上げ、麓の村に引っ越して彼と共に暮らす事になったとドルトンは語る。
「最初の頃はアルはエルの元によく足を運んでいたが、エルはアルの事を許さなかった。何時しかアルもエルの元へ訪れるのを止めたが、儂に頼んで定期的にエルの身辺調査しておったよ」
「そうだったんですか……」
「エルはアルを追い出したが、その旋斧だけは取り返そうとしなかった。アルは何度か送り返そうとしたが、エルは頑なに拒否しておった。恐らくは決別の品としてアルに渡したつもりなのじゃろう。だが、この旋斧の事を詳しく知っている人間がいるとすれば、それはエル以外には有り得ん」
「そのエルさんは何処に居るんですか?」
アルの義弟のエルならば旋斧の秘密を知っている可能性もあるため、ナイは出発前に会いに行こうと考えた。ドルトンは頷き、エルの居場所を伝えた。
「エルが暮らしているのはニーノという街じゃ。お主も訪ねた事はあるだろう?」
「ニーノ……」
ナイはニーノという街に聞き覚えがあり、イチノから馬で二日ほどで辿り着ける距離に存在する街だった。イチノを旅立った時に最初に訪れた街でもあるが、あまり印象はない。
ニーノにアルの義弟がいたなど思いもよらなかったが、ナイはエルならば旋斧の正体を知っているかもしれず、会いに行く事を決める。馬で二日かかる距離でも白狼種のビャクならば数時間ほどでニーノに辿り着けると思われた。
「ありがとうございます、ドルトンさん!!僕、ニーノに行ってみます!!」
「うむ、では儂が手紙を書こう。エルとは一応は知らない仲ではないからな……だが、快く歓迎される可能性は低いと思うがな」
「それでも……会ってみたいです」
血は繋がってなくともアルに弟がいた事はナイも初めて知り、どんな人物なのか気になった。そんな彼にドルトンはニーノの地図とエル宛ての手紙を託し、ナイに気を付ける様に注意する。
「ナイ、念のために言っておくがエルはアルにも負けぬ頑固な男だ。もしもお前に尋ねられたとしても何も答えない可能性がある。それでも諦めずに粘り強く尋ねるのだぞ」
「はい、分かりました!!」
「ああ、それとアルの話題はあまり口にしない方が良い。いくらお前さんがアルの息子だとしても、あいつが優しくするとは思えんからな。それとアルの事を馬鹿にするかもしれんが、決して怒ってはいかんぞ」
「……大丈夫です」
アルの事を馬鹿にされても怒るなという言葉だけはナイも即答できなかったが、旋斧の秘密を知るためにナイはドルトンと約束する。エルに会ってどんな事を言われても決して怒らず、彼に頼み込み続ける事を誓う――
――そこから先のナイの行動は素早く、まずは他の人間に事情を説明する。真っ先にナイが会いに向かったのはアッシュ公爵であり、自分がイチノを離れてニーノの街にいる親戚に会いに行く事を伝えると、アッシュは快く了承してくれた。
「なるほど、叔父の元に会いに行きたいか……確かにこの街がこんな状況では他の街も安全かどうか分からないからな。よし、外へ出る事を認めよう!!但し、明日の夜までには戻ってくるんだぞ!!」
「はい、ありがとうございます」
アッシュが与えた時間は明日の夜までであり、明後日には討伐隊は出発するのでナイは今日中に移動して明日の夜までに帰らなければならない。時間があまりないのでナイは他の皆にはアッシュの方から自分が叔父の元へ向かう事を伝える様に頼み、旅の準備を整える。
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