貧弱の英雄

カタナヅキ

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ゴブリンキングの脅威

第487話 ナイ&ビャクVS巨人

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『グオオオオッ!!』
「ウォオオオオンッ!!」
「……行くぞ、ビャク!!」


巨人と向かい合ったビャクとナイは、そのあまりの気迫に気圧されそうになるが、負けじとビャクも咆哮を返す。ナイも旋斧を構えてビャクに指示を出す。


「ビャク、まずはこいつを攪乱しろ!!動き回って隙を探せっ!!」
「ウォンッ!!」


ナイの指示に従い、ビャクは持ち前の素早さと身軽さを利用し、巨人の周囲を動き回る。白狼種の移動速度は火竜やゴーレムキングでさえも追いつけず、巨人さえもあまりの速度に見切れない。


『ウオッ……!?』
「ビャク、膝だっ!!」
「ウォンッ!!」


ナイはビャクの言葉に従い、巨人の右膝に目掛けて突っ込む。この際にナイは旋斧を振りかざし、火属性の魔法剣を発動させた。


(火力を最大まで高めれば……!!)


岩砕剣の一撃でさえも巨人には大した損傷は与えられなかった。しかし、旋斧の刃に炎を纏わせ、限界まで金属の温度を上昇させる。


「うおおおおっ!!」
「ガアアッ!!」
『オアアッ!?』


巨人の右膝に目掛けてナイは過熱した旋斧を放った瞬間、高熱と衝撃によって皮膚は焼かれてしまう。魔法金属級の硬度を誇る皮膚だとしても、超高温で焼かれれば無事では済まない。

いくら化物のような存在でも巨人が生身の生物ならば炎で焼かれれば無事では済まない。しかもナイの魔法剣は火竜の魔力を宿しており、瞬間的に引き出す火力ならばヒイロやドリスの所有する魔剣と魔槍よりも勝る。


『オオッ……!?』
「よし、離れろっ!!」
「ウォンッ!!」


右膝を負傷した巨人は態勢を崩し、火傷を起こした右膝を抑え込む。これで巨人もまともには動けないはずであり、ナイはもう片方の膝を狙う。


(足を負傷させればきっと先生の予知夢も……)


ヨウが見た予知夢の内容は巨人がナイを足で押し潰す光景であり、仮に両足を負傷させて動けなくさせれば予知夢は成り立たない。ナイは運命に抗うため、もう片方の膝を狙う。


「ビャク、今度は左膝を……うわっ!?」
「ウォンッ!?」
『ガアアッ!!』


右膝を負傷しながらも巨人はナイとビャクに向けて腕を振り払い、慌ててビャクは跳躍して攻撃を躱す。もしも判断が少しでも遅ければビャクとナイは殴り飛ばされており、戦闘不能に陥っていたかもしれない。

右膝を抱えながらも巨人はナイとビャクから視線は反らさず、二人の動向を伺う。それに対してナイは冷や汗を流し、旋斧を強く握りしめる。


(ゴーレムキングよりも動きが早い……けど、右足がまともに動かせないなら動作は制限される)


先ほどの攻撃によって巨人は右足を動かせないらしく、攻撃を受けた箇所を抑えた状態で立ち上がろうともしない。ナイは隙を伺い、次はどのように攻撃するべきか考えていると、ここで街の方角から声が響く。


「はああっ!!」
「せりゃっ」
『オアッ……!?』


突如として巨人の頬が切れ、何処からか伸びてきた斧が巨人の右膝の脛に叩きつけられる。その光景を見たナイは驚愕するが、白馬に跨ったリンとその背中で如意斧を掲げるミイナの姿が存在した。


「ちっ……何という硬さだ、この距離で掠り傷程度しか与えられないか」
「硬い……私の力でも切れない」
「リンさん、それにミイナも……」
「私達も居ますわよ!!」
「突撃ぃっ!!」


リンとミイナの他にも真紅を構えたドリスが現れ、その後ろにはアッシュの姿も存在した。彼は王国騎士に指示を出すと、数十騎の王国騎士達が巨人へ向かう。

遅れてやってきた援軍の姿に飛行船で地上の様子を見ていた者達も続き、ガオウとリーナとゴンザレスも地上へと降りて巨人の元へ向かう。


「エルマ!!マホを頼んだぞ!!」
「は、はい!!」
「僕達も行こう!!」
「おい、爺さん!!聞こえてるならさっさと来いよっ!!」


広域魔法の発動によってマホは動けず、彼女の介抱をエルマに頼むとゴンザレスは地上へ降り立ち、ガオウとリーナも後に続く。ガオウは飛び降りる際に船内のハマーンに声を掛けるが、先ほどまで拡音石で聞こえていた彼の声も静かになっていた。


「老師、大丈夫ですか!?」
「……大丈夫、とは言えんな」
「ほら、魔力回復薬ですよ!!これを飲ませてください!!」
「あ、ありがとう……」


イリアが渡した魔力回復薬をエルマは受け取り、それをマホに飲み込ませる。彼女の作り出す魔力回復薬は特別なので市販の物よりも回復効果は高いが、マホ程の魔力容量が大きい人間が回復するには時間があまりにもかかり過ぎてしまう。

魔導士であるマホは常人とは比べ物にならない魔力量を誇るが、その反面に魔力を消耗すると回復までには時間が掛かり過ぎてしまう。魔力が大きくても回復速度は普通の魔術師とは大差はなく、この戦闘ではマホはもう魔法を使えないと思われた。
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