貧弱の英雄

カタナヅキ

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ゴブリンキングの脅威

第475話 イチノ到着

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『――見えてきたぞ、あれがイチノか!!』
『よし、着陸だ!!』


船内にハマーンの声とアッシュの声が響き渡り、遂に窓からイチノを視界に捉える距離まで近づいた。船は地上へ向けて降下し、丁度大きさの丘の上に着地した。

本来は湖や川などに着地した方が安全なのだが、イチノの周辺には船が着地できるほどの大きな川や湖は存在せず、仕方なく地上へと胴体着陸する。地上へ降りる際は船が傾かない様に船の側面に設置さされている噴射口から風の魔力が放出される。


『着地成功!!』
『よし、全員甲板に移動しろ!!』


船が無事に降りたつとアッシュは指示を下し、全員を甲板へと移動させる。ナイ達が甲板に辿り着いた時には全員が揃っており、アッシュが改めて指示を出す。


「予定通り、この船の守護は冒険者達に任せる!!他の者達はイチノへ出発するぞ!!」
『はっ!!』


船の守備は黄金級冒険者であるリーナ、ハマーン、ガオウの3人と兵士達に任せ、他の王国騎士団とナイ達はイチノへ向けて出発を開始する。

ナイは即座に地上で先に待機していたビャクの背中に乗り込み、他の者達も馬に乗り込んで後を追う。この際に一番足が速いビャクが先頭を走る事になり、真っ先にナイはイチノの異変に気付いた。


(城門が壊されている!?という事はもう魔物は中に……!!)


飛行船で上空を確認した時から嫌な予感はしていたが、既にイチノの城門は破壊されており、既にゴブリンの軍勢が街中まで侵入していた。それを確認したナイは歯を食いしばり、希望を捨てずにビャクに街へ突入する様に告げた。


「行こう、ビャク!!」
「ウォオオンッ!!」
「ナイさん、一人で行くのは危険です!?」
「私達が追いかければいい……今のナイは止められそうにない」


ビャクに命じてナイは街の中に入り込み、他の者達も慌てて後を追う。街は酷い状態であり、一人も住民の姿を見かけず、間に合わなかったのかとナイは思いかけた時、不意に魔物の声が響く。


「ガアアッ!?」
「ギギィッ!?」
「こいつら……!!」


街中をファングに乗り込んだゴブリンが歩いている事に気付き、どうやら先の戦闘で生き延びたゴブリンとファングがまだ残っていたらしく、ビャクの背中の上でナイは旋斧を引き抜く。

ファングに乗り込んだゴブリンは唐突に現れた白狼種と人間の少年に戸惑うが、すぐに敵だと判断して慌てて逃げ出そうとした。しかし、白狼種の移動速度はファングの比ではなく、ナイはその背中に目掛けて容赦なく旋斧を放つ。


「邪魔だぁっ!!」
「ウォンッ!!」
「ギィアアアッ!?」
「ギャインッ!?」


旋斧の一撃によってゴブリンとファングの胴体は切り裂かれ、地面に倒れ込む。その様子を確認したナイは怒りの表情を浮かべ、街をこんな酷い状態に追い込んだゴブリンの軍勢を絶対に許さないと誓う。


「ビャク、ドルトンさんの屋敷へ……いや、教会の方へ向かおう!!もしも生き残っている人がいたらそこに集まるはずだ!!」
「ウォンッ!!」


ナイは最初はドルトンの屋敷へ向かおうとしたが、すぐに陽光教会の存在を思い出す。前に魔物が街を襲った時も陽光教会は被害を免れており、教会内ならば魔物は入ってこれない。

ビャクはナイの指示に従い、陽光教会が存在する方向へ駆け出す。この際にナイの後には馬に乗ったヒイロやミイナが続き、彼を見失わない様に注意する。


「な、何て速さ……このままだと置いて行かれますよ!?」
「弱音を言わない、見失わない様にしっかりとついていくしかない」
「あの白狼種、素晴らしい足の速さですわね」
「ああ、うちの隊に欲しいぐらいだ」


ヒイロとミイナ以外にもナイの後には王国騎士団が続き、本来であれば分散して街中の探索を行うのが無難なのだが、この街の事を良く知っているのはナイだけである。そのナイが向かう先に生存者がいる可能性が大きく、王国騎士団はナイの後を追う。

全体の指揮を執るはずのアッシュはこの場には存在せず、彼は別働隊を率いて街の周りを確認した後にイチノに突入する手はずだった。はた目から見ればナイが王国騎士団を率いているように見えなくもない。


「スンスンッ……ウォンッ!!」
「ビャク、見つけたか!?」


移動の際中にビャクは鼻を鳴らし、遂に敵の存在を感知する。それからしばらく街道を移動すると、破壊された家具が散乱し、建物が焼け焦げた場所へ辿り着く。

この場所は生き残った人間が築いた最初の防衛網であり、建物を燃やすことでゴブリンの侵攻を防いだ。そこを通過すると遂にナイはホブゴブリンの大群が街道を移動する姿を発見した――
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