貧弱の英雄

カタナヅキ

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ゴブリンキングの脅威

第430話 聖女騎士団の再結成

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「レイラ、今本気で切りかかったね!?」
「私の目の前で子供に手を出す輩は許さん!!」
「ちょ、こんな場所で何をしてるんですか!?」


アリシアとレイラは互いに武器を向け、慌ててナイは止めようとした。だが、その前に巨人族の女性が二人の間に割って入った。


「二人とも、止めろ……それ以上は冗談では済まなくなるぞ」
「ランファン……」
「……こいつが悪い」
「たく、相変わらずだねあんた等は……」


ランファンと呼ばれた女性が仲裁し、アリシアとレイラは武器を収める。そんな三人を見てテンは頭を掻き、この時に彼女は晴れた頬に手を触れる。


「そ、そういえば聞きそびれてたけど……テンさん、その怪我はどうしたの?」
「ああ、そこにいる二人に叩かれたんだよ。たくっ、手加減なしに叩きやがって……」
「いきなり現れたと思ったら、図々しく戻ってきてほしいと言い出すからだ」
「あんたのせいでうちの傭兵団と別れる羽目になったんだからね」
「私は嬉しかったがな……現役に復帰する良い機会だ」


どうやらテンの頬を叩いたのはアリシアとレイラらしく、彼女達は自分達の傭兵団を抜けてテンの元へ来たらしい。昨日の話を聞いてテンも覚悟を決めたらしく、彼女はナイ達に告げた。


「見ての通り、あたしもやっと覚悟を決めたよ。昔の連中に声を掛けて、あたしは騎士団を再結成する事にした」
「えっ!?本当に!?」
「勿論、白猫亭の事を見捨てるわけじゃないよ。だけどね、あたしの身勝手で一番居心地の良い居場所を失った奴等がいるのなら放ってはおけないからね……という事で、ヒナ!!今日からあんたがあたしの代理として白猫亭を盛り上げな!!」
「えぇええええっ!?」


唐突に話しかけられたヒナは驚愕の声を上げ、テンは自分の代わりに白猫亭の事を彼女に任せる事を告げる。ヒナとしてもいきなりそんな事を言われても困るのだが、テンも色々と考えた末に彼女以外に任せられる人物はいないと思っていた。



――イリアの話を聞いてテンは自分が聖女騎士団を解散した事は間違いだと悟り、王妃の死を理由に自分が逃げたせいで元聖女騎士団の団員の居場所を奪ってしまったのだと気付く。そこで彼女は今更ながら元聖女騎士団に所属していた者達に声を掛け、聖女騎士団を再結成する事を伝える。

今のところは三人しか声を掛けられなかったが、いずれは王都から離れた者達も呼びかけ、人手を集める予定だった。また、新しい人材も募集し、かつて王国最強と謳われた頃の騎士団と同じぐらいの強さを持つ騎士団を作り上げるのが今のテンの目的だった。



「やっと目が覚めたよ……王妃様が死んでからあたしはずっとあの人がいない聖女騎士団なんて何の価値もないと思っていた。けど、イリアの話を聞いて思い出したよ。やっぱり、あたし達が一番輝けるのは聖女騎士団しか有り得ないってね」
「ふん……気付くのが遅すぎなんだよ、あんたは」
「全く……」
「ふふっ……こうして四人が集まるのも久しぶりだな」


昔の事を思い出す様にテン達は空を眺め、この場にはいないが他の聖女騎士団の面子もいずれ戻ってくる事を彼女達は確信していた。彼女達も今頃はそれぞれが新しい居場所を作っているだろうが、きっと他の者も聖女騎士団に未練を抱いている。

テンは退魔刀を手にすると、他の者達もそれぞれの武器を掲げ、それぞれ重ね合わせる。昔は大仕事を前にした時はこのように武器を重ね合わせ、誓いを立てていた事を思い出す。


「懐かしいね、これも……」
「そうだな、昔を思い出す」
「テン、もしもあんたがまた騎士団を辞めるとか言い出したらその時は私があんたをぶっ殺すからね」
「安心しな、あんた等が騎士を辞めろと言うまでは辞めるつもりはないよ……もう、私は逃げない。今日、ここで聖女騎士団は復活だよ!!」


四人は武器を天に掲げると、ここで聖女騎士団の再結成を誓う。その様子を見ていたナイ達は呆然と見つめる事しか出来なかったが、白猫亭の事を一方的に任せられたヒナは呟く。


「……とりあえず、聖女騎士団はうちの宿は出禁ね」


ヒナのささやかな復讐の言葉はテン達の耳には届かず、こうして王国最強と謳われた聖女騎士団は復活を果たした――
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