貧弱の英雄

カタナヅキ

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ゴブリンキングの脅威

第419話 ナイの肉体の成長

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「はぁあああっ!!」
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
「これは……!?」


雄叫びを上げながらナイは旋斧を振り下ろした瞬間、鎧人形の兜に刃は食い込み、そのまま兜を切断して胴体の鎧部分が石畳に叩きつけられる。兜は完全に砕け、残された胴体の部分も罅割れて石畳の上に倒れ込む。

剛力を使用していないにも関わらず、ミスリル製の兜を叩き割り、更に胴体を破損させたナイの腕力に全員が驚き、ナイ自身も戸惑う。筋力を強化する剛力を使用していないにも関わらず、ナイは今までとは比べ物にならない力を発揮した事に戸惑う。


「えっ……これ、どうして……」
「ナイ君……今のは剛力を使用したのかい?」
「いや、してないはずだけど……」
「これは大したもんですね……特注で作った鎧人形がこの有様ですか」


イリアは変わり果てた姿になった鎧人形を見下ろし、彼女は真っ二つに切り裂かれた兜を拾い上げる。その様子を見てナイは旋斧を見つめ、刃毀れ一つない事に気付く。

魔法金属のミスリルは鋼鉄の数倍は誇る硬度と耐久力を持ち合わせているにも関わらず、それを破壊した旋斧は刃毀れすらしていない。この事からナイは以前よりも旋斧の強度が上がっている事を知り、同時に自分自身も強くなっている事を自覚した。


「これ、俺がやったの?」
「そうですよ。どうやらその様子だと自分の変化に気付いていないようですね……今のナイさんの筋力は明らかに異常なんです」
「異常って……」
「恐らくだが、ナイ君の筋力は剛力の影響で鍛え上げられているんだ」


イリアの言葉にアルトが口を挟み、現在のナイの肉体がどうなっているのかを彼は話す――




――ナイは身体強化系の技能を多数習得しており、彼の強さの秘密はこの技能が関係している。例えば「頑丈」や「受身」は防御力を強化させ、外部の攻撃を受け流す効果を持ち、他にも「脚力強化」や「俊足」は脚力を強化させる。

そして「腕力強化」「怪力」「剛力」などの筋力を強化させる技能がナイの強さの秘密その物であり、この3つの技能の内の「怪力」と「剛力」の場合は腕力以外の他の部位の筋力も強化できることが重要だった。

筋力を強化する事でナイは攻撃以外にも防御や移動を行う時も利用し、これによって無意識にナイは幾度も窮地を乗り超えてきた。例えば相手が攻撃を仕掛けた際は防御する際にナイは筋力を強化させ、強靭な肉体へと変化させる。足を速くしたければ脚力を強化して移動速度を高める事も出来た。

しかし、ここで重要なのはナイの筋力は頻繁に剛力を使用する事によって知らず知らずのうちに筋肉の方も鍛え上げられていた。剛力を使用し過ぎれば肉体に負荷をかけてしまうのは事実だが、その負荷を乗り越えて回復した時は更に筋力はより強くなる。

実際に剛力の技能を使わずともナイは何時の間にか岩砕剣などの重量がある武器を扱えるようになり、昔の彼ならばこれはあり得ない出来事だった。しかも肉体がまだ成長期である事が幸いし、肉体の成長速度が高い時期なのでより筋肉が強くなる。

外見はあまり変化はないがナイの筋肉は他の人間と比べても質が高く、しかも火竜やゴーレムキングとの戦闘を通して更に強くなっていたのだ。



「ナイ君、君は気づいていないだろうが火竜やゴーレムキングを倒した時、君の肉体には大量の経験値が流れ込んだはずだ。それに関しては覚えがあるだろう?」
「え?あっ……」
「そういえばナイ君、帰って来た時は凄く寝込んだわよね。あの時は本当に心配したわ」
「うん、一晩中ずっと苦しそうだったよね……」


討伐隊が帰還した後、ナイはその日の晩にナイは苦しみもがき、モモ達が一晩中彼の治療を行った。この時のナイは火竜ゴーレムキングとの戦闘を経てレベルが信じられない程に上昇していた。

火竜に関してはナイが直接的に止めを刺したわけではないので経験値が入ったのかは分からないが、ゴーレムキングとの戦闘ではナイは胸元の経験石を破壊した。経験石は魔物にとっては心臓よりも大事な器官であり、ここを破壊されれば絶命は免れない。

ゴーレムキングを倒した際にナイは経験石を破壊した事によって今までの中でも信じられない量の経験値を獲得した。そのせいでナイはレベルが急激に上昇した影響により、貧弱の技能によって日付が変更した途端、レベル1に戻った反動で苦しむ。

急激に成長した肉体がレベル1に戻った事で全身が筋肉痛に襲われるような現象を引き起こし、一晩もナイはヒナとモモの治療を受けてどうにか乗り切った。幸いにも意識を取り戻したナイが「自然回復」の技能と再生術を発動した事で肉体は治ったが、あの時は今までの中で一番に苦しんだ記憶があった。


「ナイ君、今の君は大量の経験値を入手した際に身に着けている技能も同時に強化されたんだ。その影響で君の肉体の方も技能を発動しても耐え切れる程の強靭な肉体に変わったんだよ」
「技能に耐え切る肉体……?」
「技能はあくまでも肉体を補助する能力ですからね。だから技能が強化されれば自然と肉体も強くなるという事です」


アルトとイリアの説明にナイは戸惑いを隠せず、いつの間にか自分の肉体が技能の影響を受けて信じられない程に強化している事を知る。
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