貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
403 / 1,110
グマグ火山決戦編

第393話 ゴーレムキング

しおりを挟む
「み、見てください!!奴の胸元を!!」
「ああっ!?何だい、こんな時に……あれはっ!?」
「……まさか、あの時の!?」


ヒイロの言葉に全員が大型ゴーレムの胸元に視線を向けると、そこには赤く光り輝く宝石が埋め込まれていた。否、埋め込まれていたのではなく露出していたという表現が正しい。

昨夜に現れたレッドゴーレムと同じように胸元に経験石を露出させた大型ゴーレムを見て察しの良い者は気づいた。この大型ゴーレムの正体は昨日に倒したと思われたゴーレムが復活を果たした事を。



――時刻は昨夜まで遡り、ナイ達との戦闘でレッドゴーレムは肉体が崩壊したが、実を言えば破壊される寸前に本体である経験石だけは地中に埋まっていた。



ゴーレムは肉体を砕かれようと経験石が無事ならば何度でも復活できる。土中に埋まった経験石は土砂を練り集めて新たな肉体を作り上げ、そしてグマグ火山へと帰還を果たす。

火山へ帰還後は噴火の際に膨大な火属性の魔力を含んだ溶岩の中に飛び込み、そして十分な量の魔力を吸い上げる。事前にいくつもの魔力を吸い上げた魔石を溶岩の中に浸していたお陰で大量の魔力を吸い上げる事が出来た。

復活を果たしたレッドゴーレムは以前よりも更に巨大化を果たし、遂には火竜を倒した時と同じ状態にまで戻る。



実を言えば火竜を倒した際の大型ゴーレムは火口に落ちた時、身体が粉々に砕けてしまう。その結果、砕けた肉体の一部は火属性の魔力を含んだ溶岩の影響を受け、新たなレッドゴーレムとして生まれ変わってしまう。

火山が噴火した時に大型ゴーレムの破片の一つ一つがレッドゴーレムに変化を果たし、火山の外にまで飛び散った破片もレッドゴーレムと化す。しかし、大型ゴーレムの本体に関しては他の分身とは異なり、最も大きな力を宿していた。


『ゴガァアアアアッ!!』
「こ、こいつ……ここまで大きくなったのかい」
「思い出したぞ……胸元に宝石があるゴーレムは王の証であるという話を」
「こいつの正体はゴーレムの亜種ではない……ゴーレムの最上位種ゴーレムキングか!!」


ゴーレム種の中には胸元に経験石を露出させた存在がおり、その存在は王となる証を持つと言われている。その名前はゴーレムキングと呼ばれ、ゴーレム種の最上位種にして最強のゴーレムだと伝わっていた。

絵本の中に出てくるような伝説上の魔物を見て誰もが戦慄し、バッシュやマジクですらもゴーレムキングと相対してどのように行動すればいいのか分からない。だが、そんな彼等に対してゴーレムキングは容赦なく襲い掛かる。


『ゴガァッ!!』
「王子様、危ない!?」
「ぐぅっ!?」


ゴーレムキングはバッシュに目を付けて彼に向けて片足を振りかざす。バッシュの防魔の盾は外部の衝撃を受け流す機能を持つが、最初の衝撃は防げてもゴーレムキングの圧倒的な力で押し潰される事は目に見えており、バッシュが殺される前にマジクが杖を突き出す。


「ボルト!!」
『オアッ!?』


マジクの杖の先端から電撃が放たれ、ゴーレムキングの振り下ろした足に的中する。並の魔物ならば感電して動けないだろうが、生憎とゴーレムキングの肉体は生身の肉体ではないので感電はしない。

しかし、電撃を受けた衝撃によって攻撃の軌道が僅かに変わり、結果的にはバッシュを助けることには成功した。だが、拳が地面に衝突した瞬間に強烈な衝撃が走り、周囲に振動が走る。


「うわぁっ!?」
「きゃあっ!?」
「何て威力だい……こんなの喰らったら、ひとたまりもないよ!!」
『ゴオオオッ!!』


ゴーレムキングの力は下手をしたら火竜をも上回り、直撃すれば人間などひとたまりもない。しかもゴーレムキングは容赦なく襲い掛かり、今度は踏みつぶそうと右足を振りかざす。


『ゴアアッ!!』
「うぎゃあっ!?」
「ひぎぃっ!?」
「た、助け……ぐああっ!?」


ゴーレムキングが右足を踏みつけた瞬間に数名の王国騎士が巻き込まれ、一撃で絶命してしまう。攻撃を逃れた者も踏みつけられた際に吹っ飛んだ岩石の破片に巻き込まれる。


「こ、この化物が……」
「テンさん、近づいたら危険です!!」
「でも、近づかないと攻撃が当てられない……」


攻撃に巻き込まれた王国騎士を見てテンは怒りを抱くが、迂闊に近づけば彼女が攻撃に巻き込まれてしまう。しかし、遠距離からの攻撃手段を持たない者達ではゴーレムキングに近付かなければどうしようもない。

唯一の希望のマジクでさえもバッシュを助ける際に残されたわずかな魔力を使ってしまい、もう砲撃魔法をあと一度使えるかどうかだった。彼は顔色を青くさせ、膝を突き、もう杖を握りしめる力も弱まっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

処理中です...