貧弱の英雄

カタナヅキ

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グマグ火山決戦編

第380話 怪力剣士3人衆

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「ゴガァアアアッ!!」
「危ない、リーナ!!」
「きゃあっ!?」


咄嗟にナイはリーナを突き飛ばすと、レッドゴーレムが振り翳した拳を生身の状態で受けてしまう。ナイは上から叩き落された拳によって地面に叩きつけられ、為す術もなく倒れ込む。


「ぐああっ!?」
「嘘っ……ナイ君!?」
「そんなっ!?」
「何てことを……」
「離れろっ!!」


地面に叩きつけられたナイを見て全員が動揺する中、いち早くミイナだけは反応し、彼女は如意斧を伸ばしながら跳躍すると、レッドゴーレムに叩き込む。


「やああっ!!」
「ゴアッ!?」


レッドゴーレムは柄が伸びた如意斧によって背中を叩きつけられ、驚いた様子でミイナに振り返る。その間に他の者も駆けつけ、レッドゴーレムの注意を引く。


「よくもうちの弟子を!!」
「許しません!!」
「許さない、絶対に壊すっ!!」
「ゴオオオッ……!!」


駆けつけた3人がレッドゴーレムの注意を引いている間、ナイの方は苦痛の表情を浮かべながらも再生術を発動させ、肉体の回復を急ぐ。体内の聖属性の魔力を消耗し、再生機能を強化させて怪我を治す。

この時に再生術を使用するために魔法腕輪の聖属性の魔石から魔力を引き出すが、思っていた以上に怪我が酷く、徐々に魔石の色合いが薄れていく。その間にリーナもナイの元へ急ぎ、彼女も疲労困憊の状態だが、ナイを救うために抱き上げる。


「ナイ君、しっかりして……待ってて、すぐに回復薬を……」
「うぐっ……げほっ、げほっ!!」


リーナは持参していた回復薬を取り出し、ナイの口元に運ぶ。だが、まだ肉体が直り切っていないナイは苦しそうに吐き出してしまい、それを見たリーナは慌てる。


「だ、大丈夫?ごめんね、苦しいよね……でも、少しだけ我慢して」
「かはっ……っ!?」


自分のせいで怪我をしたナイを見てリーナは何としても彼を救うため、口元に回復薬を含むと、今度はナイに口づけして回復薬を流し込む。リーナの行動にナイは目を見開くが、回復薬が口の中に流し込まれた事で一気に身体が楽になった。


「んぅっ……」
「んむぅっ……ぷあっ!?」


リーナが唇を離すとナイはすぐに身体を起き上げ、再生術と回復薬の効果で肉体は全快した。驚いた様子でナイはリーナに振り返ると、彼女は少し頬を赤らめながらも答えた。


「い、今のは……ただの治療行為だからね」
「そ、そう……」
「おい、あんたら!!なにこんな時にいちゃついてんだい!!」


お互いに頬を赤らめて顔を逸らす二人に対し、テンが怒鳴りつける。二人はすぐに振り返ると、そこにはレッドゴーレムを相手に退魔刀を掴まれて押し込まれるテンの姿が見えた。

レッドゴーレムはテンの退魔刀を両手で掴んだ状態で彼女を地面に押し込み、凄まじい熱気を放っていた。テンは必死に両手で退魔刀を抑え込むが、彼女の怪力を以てしてもレッドゴーレムには追い込まれ、それを見たヒイロとミイナが彼女を助けようする。


「この、離れなさい!!」
「退いて!!テンを押し倒すなんて、物好き過ぎ!!」
「どういう意味だい、それは!?」
「ゴオオオオッ!!」


ヒイロとミイナはレッドゴーレムに攻撃を仕掛けても肉体が頑丈過ぎて武器が弾かれてしまい、せいぜい掠り傷程度しか与えられない。ヒイロは魔法剣が使用できないので仕方ないが、ミイナの腕力でさえもレッドゴーレムには通じなかった。

ナイは起き上がると旋斧を掴むが、これまでの戦闘から考えてレッドゴーレムを破壊する一撃を生み出すには岩砕剣の方が良いと判断し、武器を切り替えてレッドゴーレムをに叩き込む。


「これならどうだ!!」
「ゴアッ!?」
「うわっ……た、助かったよ」


岩砕剣に地属性の魔力を流し込み、刃に紅色の魔力を宿したナイはレッドゴーレムの背中に叩き込むと、今度は攻撃が通じたのかレッドゴーレムは仰け反ってテンか離れさせる事に成功した。

旋斧の攻撃ではレッドゴーレムは致命傷は与えられなかったが、岩砕剣ならばレッドゴーレムにも通じると判断したナイは全員を下がらせる。


「ヒイロ、リーナを頼む!!ミイナとテンさんは援護をお願い!!」
「わ、分かりました!!」
「任せて!!」
「よし、三人でやるよ!!」
「ゴアアアッ!!」


王都内に暮らす人間の中でも指折りの「剛剣(一人は斧だが)」の剣士が集まり、それぞれが得意とする全力の一撃を放つ。ミイナは如意斧を回転させて加速させ、テンは全身の筋力を利用し、ナイは岩砕剣の重量を増加させた一撃を放つ。


「「「壊れろっ!!」」」
「ゴガァアアッ!?」


三方向から強烈な攻撃を受けたレッドゴーレムの肉体に遂に亀裂が生じ、あと少しでレッドゴーレムの肉体を破壊できる状態まで追い込む。3人は追撃を加えようとした時、更にここで援軍が駆けつけた。
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