貧弱の英雄

カタナヅキ

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旋斧の秘密

第324話 未成年者が冒険者に入れる条件

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「代わりとなる武器を調達しないと試合にも出れないが……参ったな、手紙によるとリーナはすぐにでも君と戦いたいみたいなんだ」
「と言われても……流石に本物の武器で戦うわけにはいかないし」
「そういえばあんた、あのリンを相手にそこそこやりあったんだろう?なら、リーナともいい勝負になるんじゃないのかい?」
「リーナちゃんか……久しぶりに会いたいね」
「そうね、最近まで旅をしていたんでしょう?」
「えっ……二人ともリーナさんの事を知ってるの?」


リーナの話題が出るとヒナとモモも彼女の事を知っているらしく、どうやらこの場に存在する人間の中でリーナと面識がないのはナイだけの様子だった。


「リーナの父親のアッシュ公爵とは昔からの付き合いでね。リーナの奴の面倒をあたしが見た事もあったよ。母親が早くになくなったせいか、あいつはあたしに懐いててね。ヒナとモモを拾う前からよく白猫亭に遊びに来てたんだよ」
「最近は冒険者活動が忙しくて会えなかったけど、ここへ戻って来たのなら顔ぐらいみせればいいのに……」
「きっとリーナちゃんの事だから訓練に励んでるんだよ。でも、そういえばリーナちゃんのお父さんがアッシュ公爵だったんだ。すっかり忘れてたよ~」


テンはアッシュ公爵とは古い仲らしく、彼の娘であるリーナとはヒナとモモは親友のような間柄だが、リーナは公爵家の令嬢である事を忘れるぐらいに親しい仲らしい。

普通の貴族の娘は一般人とは関りを持つ機会が少なく、しかも公爵家となれば普通ならば幼い頃から貴族の仕来りを叩き込まれるため、そもそも一般人と交流する機会が与えられない。それでもリーナは一般人であるはずのヒナとモモと普通に接し、それどころか彼女は冒険者の職に就いている。


「そういえばリーナさんは冒険者だって言っていたけど……どうして公爵家の娘なのに冒険者なの?」
「そこら辺は色々と事情があってね……父親の推薦であいつは14才で冒険者になったんだ」
「14才!?そんなに若い時に冒険者になったの!?あれ、でも冒険者に慣れるのは18才からじゃ……」


冒険者に就職できるのはこの国の成人指定年齢である18才を迎えなければならず、普通ならば14才の少女が冒険者稼業に就く事はあり得ない。しかも公爵家の令嬢ならば尚更だが、とある条件を果たせば未成年でも冒険者になれる方法がある事をアルトは語る。


「確かに普通なら14才の子供が冒険者になる事はない。だが、確かな実績を人脈を持つ人間ならば未成年でも冒険者になれる事はあるんだ」
「実績と人脈?」
「例えば一人で凶悪な魔物や賞金首指定された悪党を倒している場合、それと貴族や王族などの有力者からの推薦があれば冒険者になれるんだ。そしてリーナの場合はこの二つの条件を達成して冒険者になれたよ」
「えっ!?」


アルトによればリーナは14才の時に父親に冒険者になる事を伝えた。それに対してアッシュ公爵はリーナが冒険者になるために条件を突き出す。その内容はリーナが一人で賞金首指定されたとある犯罪者を捕まえるという内容だった。

当時は王都内に高額賞金首の犯罪者が潜り込んできたという噂が流れ、その噂を知ったアッシュ公爵はあろうことか大切な一人娘のリーナに捕縛を命じる。実の娘に犯罪者を探させるなど普通ならば考えられないが、当時からリーナの実力は並の王国騎士と比べても抜きんでていたという。

リーナは父親との約束通りに高額指定されていた賞金首を捕まえ、彼の前に突き出す。アッシュは約束を守ってリーナを冒険者ギルドに推薦した。

冒険者ギルド側としてはアッシュ公爵家の推薦と高額の賞金首を捕えたという実績があるリーナの受け入れを拒否できるはずがなく、彼女は見事に冒険者になった。そして僅か2年の間に彼女は最高階級の黄金級冒険者に上り詰めたという。この記録は歴代の冒険者の中でも最短記録を誇り、史上最年少の黄金級冒険者として彼女の名前は知れ渡った。


「14才で冒険者になって16才で黄金級冒険者になるなんて後にも先にもリーナだけだろうね」
「へ、へえっ……そんなに凄い人なんだ」
「最も僕からすれば君の方もリーナに負けていないと思うよ。君の場合は10才の時から魔物を倒してるんだろう?それにガーゴイル亜種やミノタウロス、それどころかリン副団長やテンさんと渡り合える実力を持っているんだ。君なら冒険者になればリーナよりも早くに黄金級冒険者になれるかもしれないよ」
「冒険者か……」


ナイは前々から冒険者という職業には興味を抱いており、これまでは年齢の問題で冒険者にはなれないと思っていたが、実績と貴族などから推薦状があれば冒険者になれる事を初めて知る。

実績に関しては既にナイは赤毛熊を筆頭にガーゴイル亜種やミノタウロスを倒しているため問題はないため、後は誰かが推薦してくれれば冒険者に成れる可能性は十分にあった。
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