312 / 1,110
旋斧の秘密
第303話 まだ終わっていない
しおりを挟む
「な、何!?いったい何の騒ぎ!?」
「泥棒が現れたのビャク君!?」
「何事ですか!?まさか賊が……!?」
寝間着姿のヒナ、モモ、他に屋敷の使用人たちが裏庭に駆けつけると、ナイに刃を押し込むテンを見て全員が驚愕の表情を浮かべた。見方によっては彼女がナイを襲っている様にしか見えず、モモが焦った声を上げる。
「お、女将さん!?何をしてるの!?」
「あんた等、手を出すんじゃないよ!!こいつは勝負だ、もしも邪魔をすればモモ、ヒナ、あんた達でも許さないからね!!」
「そ、そんな事を言われても……」
「いったい何が……」
テンの言葉を聞いて止めようとしたヒナとモモは足を止め、使用人は何事が起きているのか理解できずに呆然と立ち尽くす。
その一方でナイはテンの注意が他の者に向いた隙にどうにか押し返そうとしたが、やはり純粋な力ではテンに敵わない。ナイもこれまでに力を身に付けてきたが、やはり伝説の女騎士団の副団長となると今まで戦った敵とは格が違う。
(強い……バッシュ王子やリンダさんも強かったけど、この人は格が違う!?)
これまでにナイは人間の中でも優れた武芸者とは何人か戦ってきた。最近だと傭兵のダンやバッシュ、フレア公爵家の親衛隊のリンダとも戦っている。しかし、テンの場合はこの3人と比べても別格だった。
(魔物以外で力で勝てない相手なんて……けど、このまま何もできずに負けるなんて嫌だ!!)
正攻法では勝てない相手だとナイも理解しているが、このまま成す術もなく破れる事にナイは我慢できず、意識を集中させて奥の手を使う。
「ぐっ……な、何だ!?」
「うおおおおっ!!」
「「ナイ君!?」」
気合の雄叫びと共にナイは全身から「白炎」を纏うと、倒れ込んだ状態からテンの退魔刀を押し返し、ゆっくりと立ち上がる。テンは剣越しに感じるナイの圧倒的な力に戸惑う。
「まさかあんた……!?」
「はあああっ!!」
「うあっ!?」
ナイの変化を見てテンは何かを察したように声を上げるが、そんな彼女に対してナイは蹴りを繰り出す。先ほどの仕返しとばかりにナイは全力で蹴り込むと、今度はテンの方が吹き飛ばされる。
蹴りつけられたテンは巨人族以上の力を感じ取り、彼女は地面に転がり込む。その様子を見ていた他の者達は呆気に取られ、特にヒナとモモは信じられない表情を浮かべた。
「あ、あの女将さんが……蹴り飛ばされた!?」
「ナ、ナイ君……!?」
「ふうっ、ふうっ……!!」
興奮した様子のナイは旋斧を構えた状態で不用意に動かず、その一方でテンの方は起き上がると、彼女は口元から血を流しながら笑みを浮かべる。
「はっ……久々だね、この感覚。あんたがそう来るのなら、こっちだって全力で行くよ!!」
「女将さん!?」
「まずい、皆は離れて!!」
『えっ!?』
テンの様子を見てヒナとモモは本能的に危険を感じ取り、全員に避難する様に促す。その直後、テンはナイと同様に白炎を身に纏う。
白炎の正体は本物の炎ではなく、ましてや火属性の魔力でもない。白炎は聖属性の魔力が体内から溢れ出ている状態を意味しており、現在のナイとテンは体内の魔力を活性化させて肉体を限界以上に強化していた。
(やっぱりテンさんも全身強化を使えたのか……けど、長続きはしないはず)
いくらテンが強者だと言っても全身強化の負荷に関してはナイもよく知っており、ナイよりも強靭な肉体を持つテンであろうと長時間の維持は出来ない。だが、純粋な戦闘力はテンが上回るのは間違いなく、彼女は退魔刀を振り下ろす。
「がああっ!!」
「くぅっ!?」
テンが退魔刀を振り下ろした瞬間、強烈な衝撃が地面に走り、地割れが発生した。衝撃はナイの元にまで伝わり、彼が体勢を崩すとテンは突っ込む。
「うおらぁっ!?」
「うわっ!?」
「ウォンッ!?」
横向きにテンは退魔刀を振り払うと、咄嗟にナイは体勢を下げて回避する事に成功した。しかし、彼女が振り抜いた退魔刀は風圧が発生し、そのままビャクの元にまで届く。
退魔刀の風圧のみでビャクは倒れ込み、その様子を見たナイはもしもまともに受ければ命の危機を迎える。そう判断したナイは必死に避けようとしたが、それに対してテンは蹴りを繰り出す。
「逃がすかぁっ!!」
「っ……!!」
「ナイ君、危ない!?」
迫りくる蹴りに対してナイは動かず、その様子を見ていたモモは声を上げるが、ここでナイは遂に「迎撃」の技能を発動させ、反撃に出た。
「ここだぁああっ!!」
「ぐはぁっ!?」
「嘘っ!?」
迎撃を発動させたナイはテンが繰り出した蹴りを躱すと、身体を回転させながら右手に手にしていた旋斧の柄をテンの脇腹に叩き込む。強烈な一撃を受けたテンは白目を剥き、身体をふらつかせた。
「泥棒が現れたのビャク君!?」
「何事ですか!?まさか賊が……!?」
寝間着姿のヒナ、モモ、他に屋敷の使用人たちが裏庭に駆けつけると、ナイに刃を押し込むテンを見て全員が驚愕の表情を浮かべた。見方によっては彼女がナイを襲っている様にしか見えず、モモが焦った声を上げる。
「お、女将さん!?何をしてるの!?」
「あんた等、手を出すんじゃないよ!!こいつは勝負だ、もしも邪魔をすればモモ、ヒナ、あんた達でも許さないからね!!」
「そ、そんな事を言われても……」
「いったい何が……」
テンの言葉を聞いて止めようとしたヒナとモモは足を止め、使用人は何事が起きているのか理解できずに呆然と立ち尽くす。
その一方でナイはテンの注意が他の者に向いた隙にどうにか押し返そうとしたが、やはり純粋な力ではテンに敵わない。ナイもこれまでに力を身に付けてきたが、やはり伝説の女騎士団の副団長となると今まで戦った敵とは格が違う。
(強い……バッシュ王子やリンダさんも強かったけど、この人は格が違う!?)
これまでにナイは人間の中でも優れた武芸者とは何人か戦ってきた。最近だと傭兵のダンやバッシュ、フレア公爵家の親衛隊のリンダとも戦っている。しかし、テンの場合はこの3人と比べても別格だった。
(魔物以外で力で勝てない相手なんて……けど、このまま何もできずに負けるなんて嫌だ!!)
正攻法では勝てない相手だとナイも理解しているが、このまま成す術もなく破れる事にナイは我慢できず、意識を集中させて奥の手を使う。
「ぐっ……な、何だ!?」
「うおおおおっ!!」
「「ナイ君!?」」
気合の雄叫びと共にナイは全身から「白炎」を纏うと、倒れ込んだ状態からテンの退魔刀を押し返し、ゆっくりと立ち上がる。テンは剣越しに感じるナイの圧倒的な力に戸惑う。
「まさかあんた……!?」
「はあああっ!!」
「うあっ!?」
ナイの変化を見てテンは何かを察したように声を上げるが、そんな彼女に対してナイは蹴りを繰り出す。先ほどの仕返しとばかりにナイは全力で蹴り込むと、今度はテンの方が吹き飛ばされる。
蹴りつけられたテンは巨人族以上の力を感じ取り、彼女は地面に転がり込む。その様子を見ていた他の者達は呆気に取られ、特にヒナとモモは信じられない表情を浮かべた。
「あ、あの女将さんが……蹴り飛ばされた!?」
「ナ、ナイ君……!?」
「ふうっ、ふうっ……!!」
興奮した様子のナイは旋斧を構えた状態で不用意に動かず、その一方でテンの方は起き上がると、彼女は口元から血を流しながら笑みを浮かべる。
「はっ……久々だね、この感覚。あんたがそう来るのなら、こっちだって全力で行くよ!!」
「女将さん!?」
「まずい、皆は離れて!!」
『えっ!?』
テンの様子を見てヒナとモモは本能的に危険を感じ取り、全員に避難する様に促す。その直後、テンはナイと同様に白炎を身に纏う。
白炎の正体は本物の炎ではなく、ましてや火属性の魔力でもない。白炎は聖属性の魔力が体内から溢れ出ている状態を意味しており、現在のナイとテンは体内の魔力を活性化させて肉体を限界以上に強化していた。
(やっぱりテンさんも全身強化を使えたのか……けど、長続きはしないはず)
いくらテンが強者だと言っても全身強化の負荷に関してはナイもよく知っており、ナイよりも強靭な肉体を持つテンであろうと長時間の維持は出来ない。だが、純粋な戦闘力はテンが上回るのは間違いなく、彼女は退魔刀を振り下ろす。
「がああっ!!」
「くぅっ!?」
テンが退魔刀を振り下ろした瞬間、強烈な衝撃が地面に走り、地割れが発生した。衝撃はナイの元にまで伝わり、彼が体勢を崩すとテンは突っ込む。
「うおらぁっ!?」
「うわっ!?」
「ウォンッ!?」
横向きにテンは退魔刀を振り払うと、咄嗟にナイは体勢を下げて回避する事に成功した。しかし、彼女が振り抜いた退魔刀は風圧が発生し、そのままビャクの元にまで届く。
退魔刀の風圧のみでビャクは倒れ込み、その様子を見たナイはもしもまともに受ければ命の危機を迎える。そう判断したナイは必死に避けようとしたが、それに対してテンは蹴りを繰り出す。
「逃がすかぁっ!!」
「っ……!!」
「ナイ君、危ない!?」
迫りくる蹴りに対してナイは動かず、その様子を見ていたモモは声を上げるが、ここでナイは遂に「迎撃」の技能を発動させ、反撃に出た。
「ここだぁああっ!!」
「ぐはぁっ!?」
「嘘っ!?」
迎撃を発動させたナイはテンが繰り出した蹴りを躱すと、身体を回転させながら右手に手にしていた旋斧の柄をテンの脇腹に叩き込む。強烈な一撃を受けたテンは白目を剥き、身体をふらつかせた。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
物語のようにはいかない
わらびもち
恋愛
転生したら「お前を愛することはない」と夫に向かって言ってしまった『妻』だった。
そう、言われる方ではなく『言う』方。
しかも言ってしまってから一年は経過している。
そして案の定、夫婦関係はもうキンキンに冷え切っていた。
え? これ、どうやって関係を修復したらいいの?
いや、そもそも修復可能なの?
発言直後ならまだしも、一年も経っているのに今更仲直りとか無理じゃない?
せめて失言『前』に転生していればよかったのに!
自分が言われた側なら、初夜でこんな阿呆な事を言う相手と夫婦関係を続けるなど無理だ。諦めて夫に離婚を申し出たのだが、彼は婚姻継続を望んだ。
夫が望むならと婚姻継続を受け入れたレイチェル。これから少しずつでも仲を改善出来たらいいなと希望を持つのだが、現実はそう上手くいかなかった……。
かわいそうな旦那様‥
みるみる
恋愛
侯爵令嬢リリアのもとに、公爵家の長男テオから婚約の申し込みがありました。ですが、テオはある未亡人に惚れ込んでいて、まだ若くて性的魅力のかけらもないリリアには、本当は全く異性として興味を持っていなかったのです。
そんなテオに、リリアはある提案をしました。
「‥白い結婚のまま、三年後に私と離縁して下さい。」
テオはその提案を承諾しました。
そんな二人の結婚生活は‥‥。
※題名の「かわいそうな旦那様」については、客観的に見ていると、この旦那のどこが?となると思いますが、主人公の旦那に対する皮肉的な意味も込めて、あえてこの題名にしました。
※小説家になろうにも投稿中
※本編完結しましたが、補足したい話がある為番外編を少しだけ投稿しますm(_ _)m
少年売買契約
眠りん
BL
殺人現場を目撃した事により、誘拐されて闇市場で売られてしまった少年。
闇オークションで買われた先で「お前は道具だ」と言われてから自我をなくし、道具なのだと自分に言い聞かせた。
性の道具となり、人としての尊厳を奪われた少年に救いの手を差し伸べるのは──。
表紙:右京 梓様
※胸糞要素がありますがハッピーエンドです。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました
ユユ
恋愛
毎夜天使が私を犯す。
それは王家から婚約の打診があったときから
始まった。
体の弱い父を領地で支えながら暮らす母。
2人は私の異変に気付くこともない。
こんなこと誰にも言えない。
彼の支配から逃れなくてはならないのに
侯爵家のキングは私を放さない。
* 作り話です
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
別れた婚約者が「俺のこと、まだ好きなんだろう?」と復縁せまってきて気持ち悪いんですが
リオール
恋愛
婚約破棄して別れたはずなのに、なぜか元婚約者に復縁迫られてるんですけど!?
※ご都合主義展開
※全7話
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる