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王都での騒動
第269話 特殊技能「心眼」
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先ほどリンダがナイに近付いた時に打撃を食らわせたのも発勁による無駄な体力の消費を抑えるためであり、あの時点で既に限界が近かった。それに気づいたナイは敢えてわざと彼女の攻撃を受ける事にした。
結果的にはナイは派手に吹き飛ばされたが、やはり発勁の威力は弱まっており、耐え切れない程ではなかった。その一方で体力を大幅に消耗したリンダの方がナイよりも深刻な状態に追い込まれる。
「まだ……戦いますか?」
「と、当然です……!!」
「リンダ、もう無理ですわ!!」
「いいえ、お嬢様……ここで退くわけにはいきません」
明らかにリンダは体力の限界を迎えようとしており、もう走り回る事は出来ないだろう。だが、彼女は試合を放棄するつもりはなく、改めて身構える。
この試合はリンダが敗北を認めるか、あるいは戦闘不能に陥る、もしくは彼女を闘技台の下に叩き落さない限りは続く。だからこそリンダにもまだ勝機は残っていた。
(相手が近付きさえすれば……)
リンダがナイに勝つ方法は二つに限られ、彼を戦闘不能に追い込むか場外に叩き落すしかない。それに遠距離からの攻撃を持たないナイは自分に必ず近付く必要がある。
規則に助けられる形ではあるが、接近戦であれば格闘家のリンダの方が分がある。最初の攻防では彼女自身も油断していたが、最初からナイが掴みにかかる事を知ればいくらでも対処法は合った。
(さあ、どう来ますか!?)
仮にナイが近付こうとしなければリンダの体力は回復するため、時間が経過するごとに有利になる。一件は追い込まれているように見えるがリンダにも勝機はあり、ナイもこれ以上に時間はかけられないことを理解していた。
(やるしかない!!)
このまま膠着状態に陥っても自分の不利になると判断したナイは、リンダに向けてゆっくりと近づく。ナイ自身もこれまでの戦闘で体力を消耗しており、先ほど吹き飛ばされた時に攻撃を受けた左腕の方は痺れて動けない。
お互いに次んお相手の攻撃を受ければ倒れる事は理解しており、先に相手に有効打を食らわせた方が試合の勝者となる。ナイはこれまでの試合の攻防を思い返し、リンダの発勁の弱点を考える。
(もしかしたら……)
ナイは発勁を繰り出す際のリンダの攻撃の動作を思い返し、彼女が発勁を繰り出す際に必ず行う動作を思い出す。覚悟を決めたナイはリンダに向けて掌を伸ばす。
(ここだ!!)
距離が離れているにも関わらず、リンダに掌を伸ばしたナイの行動に誰もが訝しむが、ここで彼の戦い方を知っている者達は目元を咄嗟に隠す。その次の瞬間、ナイは回復魔法を発動させて目眩ましを行う。
「ヒール!!」
「くっ!?」
「うわっ!?」
「な、何だ!?」
ナイが掌を翳した瞬間に手元から聖属性の魔力の光が放たれ、強い光を目に浴びた招待客は目元を覆い込む。回復魔法の応用でナイは聖属性の魔力を発して瞬間的に強い光を放つ事が出来る。
聖属性の魔力の光で相手の目を眩ませ、その隙に相手を攻撃する。この戦法はナイが得意とする戦法の一つであり、リンダも目を閉じた。
(今だ!!)
彼女が目を閉じたのを確認するとナイはリンダに向けて接近し、攻撃を繰り出そうとした。もう彼女を投げ飛ばす余裕はなく、拳を握りしめて気合の雄叫びを放つ。
「はぁあああっ!!」
「……甘いっ!!」
しかし、攻撃の寸前にリンダは近付いてくるナイに対し、目を閉じた状態で正確に位置を把握していたのか、彼に向けて掌を構える。彼女は視界を封じられようと、聴覚のみでナイの何処から近付いているのかを察する。
森人族は普通の人間よりも聴覚が優れており、しかもリンダは目が封じられた状態でも戦えるように訓練を行っている。さらに彼女は格闘家の中でも一部の人間しか身に付けていない「心眼」と呼ばれる特殊技能を身に付けていた。
心眼の技能は視覚以外の五感を鋭くさせる事で相手の位置を捉え、まるで心の眼を開いたかのように相手の動作を正確に把握できる優れた技能である。この技能を覚えている人間は国内でも片手を数える程しかおらず、その内の一人がリンダであった。
(これで終わりです!!)
接近してくるナイに対してリンダは腕を構え、彼の顔面に向けて掌底を繰り出そうとした。この一撃を当てる事が出来ればリンダの勝利は確実だったが、ここでナイは雄たけびを上げる。
「うおおおっ!!」
「なぁっ……!?」
ナイはここへきて剛力を発動させ、両足の筋力を強化させると通常以上の速度で「跳躍」の技能を発動させて突っ込む。この際にリンダの掌がナイの頭に触れるが、彼女は発勁を繰り出す事は出来なかった。
――リンダの発勁は大地を力強く踏み込んだ状態でしか発動できず、攻撃のタイミングをずらされた事で彼女の発勁は不発に終わる。それどころかナイの体当たりでリンダの身体は浮き上がり、二人は共に闘技台から転げ落ちた。
結果的にはナイは派手に吹き飛ばされたが、やはり発勁の威力は弱まっており、耐え切れない程ではなかった。その一方で体力を大幅に消耗したリンダの方がナイよりも深刻な状態に追い込まれる。
「まだ……戦いますか?」
「と、当然です……!!」
「リンダ、もう無理ですわ!!」
「いいえ、お嬢様……ここで退くわけにはいきません」
明らかにリンダは体力の限界を迎えようとしており、もう走り回る事は出来ないだろう。だが、彼女は試合を放棄するつもりはなく、改めて身構える。
この試合はリンダが敗北を認めるか、あるいは戦闘不能に陥る、もしくは彼女を闘技台の下に叩き落さない限りは続く。だからこそリンダにもまだ勝機は残っていた。
(相手が近付きさえすれば……)
リンダがナイに勝つ方法は二つに限られ、彼を戦闘不能に追い込むか場外に叩き落すしかない。それに遠距離からの攻撃を持たないナイは自分に必ず近付く必要がある。
規則に助けられる形ではあるが、接近戦であれば格闘家のリンダの方が分がある。最初の攻防では彼女自身も油断していたが、最初からナイが掴みにかかる事を知ればいくらでも対処法は合った。
(さあ、どう来ますか!?)
仮にナイが近付こうとしなければリンダの体力は回復するため、時間が経過するごとに有利になる。一件は追い込まれているように見えるがリンダにも勝機はあり、ナイもこれ以上に時間はかけられないことを理解していた。
(やるしかない!!)
このまま膠着状態に陥っても自分の不利になると判断したナイは、リンダに向けてゆっくりと近づく。ナイ自身もこれまでの戦闘で体力を消耗しており、先ほど吹き飛ばされた時に攻撃を受けた左腕の方は痺れて動けない。
お互いに次んお相手の攻撃を受ければ倒れる事は理解しており、先に相手に有効打を食らわせた方が試合の勝者となる。ナイはこれまでの試合の攻防を思い返し、リンダの発勁の弱点を考える。
(もしかしたら……)
ナイは発勁を繰り出す際のリンダの攻撃の動作を思い返し、彼女が発勁を繰り出す際に必ず行う動作を思い出す。覚悟を決めたナイはリンダに向けて掌を伸ばす。
(ここだ!!)
距離が離れているにも関わらず、リンダに掌を伸ばしたナイの行動に誰もが訝しむが、ここで彼の戦い方を知っている者達は目元を咄嗟に隠す。その次の瞬間、ナイは回復魔法を発動させて目眩ましを行う。
「ヒール!!」
「くっ!?」
「うわっ!?」
「な、何だ!?」
ナイが掌を翳した瞬間に手元から聖属性の魔力の光が放たれ、強い光を目に浴びた招待客は目元を覆い込む。回復魔法の応用でナイは聖属性の魔力を発して瞬間的に強い光を放つ事が出来る。
聖属性の魔力の光で相手の目を眩ませ、その隙に相手を攻撃する。この戦法はナイが得意とする戦法の一つであり、リンダも目を閉じた。
(今だ!!)
彼女が目を閉じたのを確認するとナイはリンダに向けて接近し、攻撃を繰り出そうとした。もう彼女を投げ飛ばす余裕はなく、拳を握りしめて気合の雄叫びを放つ。
「はぁあああっ!!」
「……甘いっ!!」
しかし、攻撃の寸前にリンダは近付いてくるナイに対し、目を閉じた状態で正確に位置を把握していたのか、彼に向けて掌を構える。彼女は視界を封じられようと、聴覚のみでナイの何処から近付いているのかを察する。
森人族は普通の人間よりも聴覚が優れており、しかもリンダは目が封じられた状態でも戦えるように訓練を行っている。さらに彼女は格闘家の中でも一部の人間しか身に付けていない「心眼」と呼ばれる特殊技能を身に付けていた。
心眼の技能は視覚以外の五感を鋭くさせる事で相手の位置を捉え、まるで心の眼を開いたかのように相手の動作を正確に把握できる優れた技能である。この技能を覚えている人間は国内でも片手を数える程しかおらず、その内の一人がリンダであった。
(これで終わりです!!)
接近してくるナイに対してリンダは腕を構え、彼の顔面に向けて掌底を繰り出そうとした。この一撃を当てる事が出来ればリンダの勝利は確実だったが、ここでナイは雄たけびを上げる。
「うおおおっ!!」
「なぁっ……!?」
ナイはここへきて剛力を発動させ、両足の筋力を強化させると通常以上の速度で「跳躍」の技能を発動させて突っ込む。この際にリンダの掌がナイの頭に触れるが、彼女は発勁を繰り出す事は出来なかった。
――リンダの発勁は大地を力強く踏み込んだ状態でしか発動できず、攻撃のタイミングをずらされた事で彼女の発勁は不発に終わる。それどころかナイの体当たりでリンダの身体は浮き上がり、二人は共に闘技台から転げ落ちた。
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