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王都での騒動
第263話 親衛隊の実力
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「ほう、いきなりあの男が出てくるか……」
「え?王子の知り合いなんですか?」
「いや、顔を見たのは今日が初めてだ。だが、噂は耳に届いている……奴の渾名は暴腕のボン、あの悪名高き疾風のダンと並ぶ王都でも有名な傭兵だ」
「へえっ……あいつが暴腕かい」
バッシュやテンも知っているほどの有名な傭兵らしく、彼が前に出ると中庭の雰囲気が一変する。緊張感に包まれ、まるで大型の猛獣のように荒々しい雰囲気を纏っていた。
ボンという名前の巨人族の傭兵は全身に毛皮を着こんでおり、ここで初めてナイは男が着こんでいるのが赤毛熊の毛皮だと知る。赤毛熊はナイが暮らしていた地方では冒険者でも手に負えない相手として恐れられていたが、その赤毛熊の毛皮の装備を着こんでいるボンを見てナイは驚く。
(あの毛皮……自分で狩ったのか?)
ナイは赤毛熊を倒すために相当な鍛錬を積み、更にビャクの力も借りて倒す事が出来た。もしもボンが赤毛熊を自分で狩って倒したとしたら、相当な実力者である事は間違いない。
「公爵家のお嬢ちゃんよ、さっき言った言葉は本当だな?この女どもの誰か一人でも倒せればそこにある賞品は好きに持って行っていいんだな?」
「ええ、構いませんわ。一人でも倒す事が出来たら好きなだけお持ち帰りください。何なら全部持って帰っても構いませんわ」
「……その言葉、忘れるなよ」
ボンを前にしてもドリスは余裕の態度を貫き、その態度にボンは気に入らなそうに彼女を睨みつけるが、すぐに賞品の方を見て笑みを浮かべる。
勝者には好きなだけ賞品を持ち帰る権利が与えられ、これらを全て持ち帰って売るだけでもかなりの金額となる。恐らくは屋敷を一つ立ててもお釣りが帰ってくるほどのお宝ばかりであり、ボウは闘技台へと乗り込む。
「さあ、いつでもいいぜ……まずは誰から来る?」
「そうですわね……では、リンダ。貴女が相手をしてやりなさい、他の者は闘技台から下りて」
「はっ、分かりました」
「何だと!?」
ドリスの言葉を聞いてメイドの中で唯一の金髪の女性だけが残り、その他のメイドは闘技台から退散した。その彼女達の行動にボウは驚愕し、彼はまさかメイド一人を相手にするとは思いもしなかった。
「リンダ、遠慮はいりません。思い切りやりなさい」
「承知しました、お嬢様」
「おいおい……ふざけてるのか?お嬢さんよ、この俺を相手にこんな非力な森人族の娘を相手にさせる気か?」
リンダと呼ばれた女性は森人族らしく、金髪の髪の毛に特徴的な長い耳をしていた。容姿の方はドリスにも負けず劣らずの美女であり、彼女の方が若干年上に思われた。
最も森人族の場合は寿命が人間よりも長いので外見だけでは正確な年齢を計る事はできない。もしかしたら外見以上に年を重ねている可能性もある。魔導士のマホも見た目は子供にしか見えないが、実年齢は100才以上だとナイは聞いている。
闘技台の上にてボウはリンダと向かい合い、自分を相手に本気で一人で挑むつもりなのかと眉をしかめるが、ボウとしては都合がいい。複数人を相手にするよりは一人を相手に戦う方が気が楽であり、彼は両手の指を鳴らす。
「後悔するなよメイドさんよ……恨むなら、そこのお嬢ちゃんを恨みな」
「恨む?馬鹿な事を……例え、この身がどうなろうと私はお嬢様を恨む事はありません。お嬢様は私を信頼し、指名して下さったのです。ならばその期待に応えるのが親衛隊の……いえ、メイドの務めです」
「ちっ、そうかよ……なら遠慮はいらないな!!」
「危ない!?」
まだ開始の合図を告げていないのにボウは右足を振りかざすと、リンダに向けて蹴りをっ繰り出す。その光景を見て周囲の客は悲鳴を上げるが、それに対してリンダは迫りくる蹴りに対して一歩も動かず、両手を前に突き出して気合の雄叫びを放つ。
「はあっ!!」
「うがぁっ!?」
「吹っ飛んだ!?」
「あの暴腕のボウが……!?」
蹴りつけられる寸前、リンダは量の掌を前に差し出すと衝撃波のような物を放ち、逆にボウの蹴り足を吹き飛ばす。何が起きたのか分からぬままボウは吹き飛び、闘技台から落ちてしまう。
「な、何ですか!?何が起きたんですか!?」
「今のは……まさか!?」
「は、発勁だよ!!あの人、発勁を使ったよ!?」
「発勁って……モモが使っていたあの?」
「……あの人、とんでもなく強い」
「へえっ、中々やるじゃないかい」
試合の様子を見ていたナイ達も驚きを隠せず、ヒイロは何が起きたのか理解できなかったが、すぐにヒナはリンダが「発勁」を使用してボウの攻撃を弾いた事を知る。
以前にバーリの屋敷に捕まった際、モモは壁越しに立っている兵士を倒すために「発勁」と呼ばれる技を使用した。本来は相手の内臓などを痛めつける技なのだが、リンダとモモの場合は掌から衝撃波を繰り出すに等しい。しかもリンダの発勁は巨人族の攻撃さえも弾き返せる程の強烈な威力である。
モモも発勁は扱えるがリンダほどの威力はなく、彼女の攻撃によって闘技台の下にまで吹き飛ばされたボウは悲鳴を上げて右足を抑え込む。足首が異様な方向に曲がっており、先ほどの攻防で彼の足は破壊されたらしい。
「え?王子の知り合いなんですか?」
「いや、顔を見たのは今日が初めてだ。だが、噂は耳に届いている……奴の渾名は暴腕のボン、あの悪名高き疾風のダンと並ぶ王都でも有名な傭兵だ」
「へえっ……あいつが暴腕かい」
バッシュやテンも知っているほどの有名な傭兵らしく、彼が前に出ると中庭の雰囲気が一変する。緊張感に包まれ、まるで大型の猛獣のように荒々しい雰囲気を纏っていた。
ボンという名前の巨人族の傭兵は全身に毛皮を着こんでおり、ここで初めてナイは男が着こんでいるのが赤毛熊の毛皮だと知る。赤毛熊はナイが暮らしていた地方では冒険者でも手に負えない相手として恐れられていたが、その赤毛熊の毛皮の装備を着こんでいるボンを見てナイは驚く。
(あの毛皮……自分で狩ったのか?)
ナイは赤毛熊を倒すために相当な鍛錬を積み、更にビャクの力も借りて倒す事が出来た。もしもボンが赤毛熊を自分で狩って倒したとしたら、相当な実力者である事は間違いない。
「公爵家のお嬢ちゃんよ、さっき言った言葉は本当だな?この女どもの誰か一人でも倒せればそこにある賞品は好きに持って行っていいんだな?」
「ええ、構いませんわ。一人でも倒す事が出来たら好きなだけお持ち帰りください。何なら全部持って帰っても構いませんわ」
「……その言葉、忘れるなよ」
ボンを前にしてもドリスは余裕の態度を貫き、その態度にボンは気に入らなそうに彼女を睨みつけるが、すぐに賞品の方を見て笑みを浮かべる。
勝者には好きなだけ賞品を持ち帰る権利が与えられ、これらを全て持ち帰って売るだけでもかなりの金額となる。恐らくは屋敷を一つ立ててもお釣りが帰ってくるほどのお宝ばかりであり、ボウは闘技台へと乗り込む。
「さあ、いつでもいいぜ……まずは誰から来る?」
「そうですわね……では、リンダ。貴女が相手をしてやりなさい、他の者は闘技台から下りて」
「はっ、分かりました」
「何だと!?」
ドリスの言葉を聞いてメイドの中で唯一の金髪の女性だけが残り、その他のメイドは闘技台から退散した。その彼女達の行動にボウは驚愕し、彼はまさかメイド一人を相手にするとは思いもしなかった。
「リンダ、遠慮はいりません。思い切りやりなさい」
「承知しました、お嬢様」
「おいおい……ふざけてるのか?お嬢さんよ、この俺を相手にこんな非力な森人族の娘を相手にさせる気か?」
リンダと呼ばれた女性は森人族らしく、金髪の髪の毛に特徴的な長い耳をしていた。容姿の方はドリスにも負けず劣らずの美女であり、彼女の方が若干年上に思われた。
最も森人族の場合は寿命が人間よりも長いので外見だけでは正確な年齢を計る事はできない。もしかしたら外見以上に年を重ねている可能性もある。魔導士のマホも見た目は子供にしか見えないが、実年齢は100才以上だとナイは聞いている。
闘技台の上にてボウはリンダと向かい合い、自分を相手に本気で一人で挑むつもりなのかと眉をしかめるが、ボウとしては都合がいい。複数人を相手にするよりは一人を相手に戦う方が気が楽であり、彼は両手の指を鳴らす。
「後悔するなよメイドさんよ……恨むなら、そこのお嬢ちゃんを恨みな」
「恨む?馬鹿な事を……例え、この身がどうなろうと私はお嬢様を恨む事はありません。お嬢様は私を信頼し、指名して下さったのです。ならばその期待に応えるのが親衛隊の……いえ、メイドの務めです」
「ちっ、そうかよ……なら遠慮はいらないな!!」
「危ない!?」
まだ開始の合図を告げていないのにボウは右足を振りかざすと、リンダに向けて蹴りをっ繰り出す。その光景を見て周囲の客は悲鳴を上げるが、それに対してリンダは迫りくる蹴りに対して一歩も動かず、両手を前に突き出して気合の雄叫びを放つ。
「はあっ!!」
「うがぁっ!?」
「吹っ飛んだ!?」
「あの暴腕のボウが……!?」
蹴りつけられる寸前、リンダは量の掌を前に差し出すと衝撃波のような物を放ち、逆にボウの蹴り足を吹き飛ばす。何が起きたのか分からぬままボウは吹き飛び、闘技台から落ちてしまう。
「な、何ですか!?何が起きたんですか!?」
「今のは……まさか!?」
「は、発勁だよ!!あの人、発勁を使ったよ!?」
「発勁って……モモが使っていたあの?」
「……あの人、とんでもなく強い」
「へえっ、中々やるじゃないかい」
試合の様子を見ていたナイ達も驚きを隠せず、ヒイロは何が起きたのか理解できなかったが、すぐにヒナはリンダが「発勁」を使用してボウの攻撃を弾いた事を知る。
以前にバーリの屋敷に捕まった際、モモは壁越しに立っている兵士を倒すために「発勁」と呼ばれる技を使用した。本来は相手の内臓などを痛めつける技なのだが、リンダとモモの場合は掌から衝撃波を繰り出すに等しい。しかもリンダの発勁は巨人族の攻撃さえも弾き返せる程の強烈な威力である。
モモも発勁は扱えるがリンダほどの威力はなく、彼女の攻撃によって闘技台の下にまで吹き飛ばされたボウは悲鳴を上げて右足を抑え込む。足首が異様な方向に曲がっており、先ほどの攻防で彼の足は破壊されたらしい。
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