貧弱の英雄

カタナヅキ

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王都での騒動

第258話 ドリスの誘い

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ヒナはドリスと握手できて感動に打ち震える中、一方でナイの方は他の団員達にまじまじと見つめられて気まずかった。彼等からすれば上司であるバッシュを打ち破ったというナイに興味を抱くのは仕方なく、中にはナイの外見を見てどうしても信じられない者もいた。


「こんな子供がバッシュ様を破っただと……到底信じられん」
「それに聞くところによるとガーゴイルの亜種やミノタウロスを倒したと聞いているが……」
「馬鹿な……あの凶悪な魔人族をこんな子供が一人で倒せるはずがない」


団員達は小声で話しているつもりだろうが、ナイにもしっかりと聞こえていた。ナイとしては早くこの場を離れたいのだが、ヒナがドリスと話し込んだせいで抜け出すタイミングを失う。


(この人達、ずっと俺を見ているよ……こういう時はどうすればいいんだろ)


愛想笑いでも浮かべるしかないのかと思ったナイだが、この時にドリスはナイと団員達のやり取りに気付き、ある事を思いつく。彼女はナイとヒナに視線を向け、思いもよらぬ提案を告げる。


「よろしければ今日の夜、うちの屋敷に来ませんか?実は今日、私の誕生日ですので宴が開かれる予定でしたから、御二人もご招待しますわ。そうだ、なんならお友達も連れてきてください」
「「えっ!?」」


思いもよらぬドリスの言葉にナイとヒナは驚愕するが、彼女は招待状を取り出し、それをナイとヒナに手渡す。


「この招待状を持って行けば屋敷に入れますわ。是非、テンさんにも話を伝えておいてください」
「いや、あの、そんな……私達のような一般人がドリス様の屋敷の宴に参加するなんて……!!」
「あら、それは大丈夫ですわ。今回の宴には私ば貴族ではない友人も大勢招いています。なのでそんな事、気にする必要はありませんわ。それでは今日、迎えの馬車を送るので夕方頃に向かわせますので楽しみにしていますわ」
「迎えの馬車!?」


まだ了承していないにも関わらずに馬車を送るというドリスにナイ達は呆気に取られるが、ドリスは馬に乗ると、団員達を引き連れて立ち去る。

彼女の行動にナイ達は引き留める事も出来ず、唖然と渡された招待状に視線を向ける事しかできなかった――






――白猫亭に戻った後、とりあえずはナイ達は他の者を呼び寄せてドリスから招待状を受け取った事を伝えると、それぞれが別々の反応を示す。


「ドリス様の宴に招待された!?そ、それは本当ですか?」
「公爵家の令嬢の誕生日を祝うとなると、きっと凄い宴が催される」
「おいしい食べ物やお菓子も出るのかな!?」
「どど、どうしましょう……どんなドレスを着ていけばいいの!?」
「落ち着きな、あんたら……それにしてもドリスの奴、相変わらずだね。たくっ、こっちの都合も考えて欲しいもんだね」
「えっと……とりあえず、何を着ていけばいいんですかね」


白猫亭にてヒイロ、ミイナ、モモ、ヒナ、テン、それからナイを含めた全員が机の上に置かれた招待状に視線を向ける。唐突なお誘いとはいえ、招待状を受け取ったからには参加しないわけにはいかない。

ドリスによれば今回の宴には一般人も参加しているらしいが、流石に服装は正装でなければならない。だが、ヒイロやミイナの場合は騎士団の制服があり、基本的には騎士の位にある人間は騎士団の制服が正装と見做される。


「私達はこの格好のまま行く……流石に替えの制服と着替えた方が良いと思うけど」
「そ、そうですね……それにしてもドリス様の宴に参加できるなんて光栄です」
「何言ってんだい、あんた等だって仮にも王国騎士だろうが……立場的にはドリスと変わりないんだよ」
「え、そうなんですか?」
「王国騎士になれば貴族だろうと平民だろうと立場は同格なんだよ。団長だろうと副団長だろうが別の騎士団に所属していれば格上も格下もないんだよ」


テンによると王国騎士になれば全員が平等の立場らしく、一応は団長や副団長などの位はあるが、あくまでも命令できるのは同じ騎士団に所属する団員だけだという。

仮に黒狼騎士団の副団長であるドリスだろうと立場的には王国騎士(見習い)のヒイロとミイナからすれば別の騎士団の騎士であるため、彼女とは同格の立場である。いくら公爵家の令嬢であろうと王国騎士になった以上はヒイロやミイナと同じ立場の人間になるらしい。


「でも、ドリス様は私達と違って数多くの功績も残していますし、何よりも王子様の……」
「え、王子様の……何?」
「ヒイロ、それ以上は機密事項」
「あ、そうでした……す、すいません!!今のは聞かなかった事にしてください!!」
「え~?気になるよ~?」


ヒイロが何か言いかけたが、それをミイナが注意して止めると、ナイ達は不思議に思う。しかし、テンは招待状に手を伸ばすと彼女は面倒臭そうに頭を掻く。
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