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王都での騒動
閑話 〈その頃、村は……〉
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――ナイが育った村は現在は誰も住んでおらず、村人の墓だけが残されていた。最後に生き残った村人のナイも旅に出てしまい、ここを守っていたビャクもナイの後を付いてから誰も訪れる人物はいなかった。
元々は辺境の地に存在するために滅多に人間が通る場所ではなく、一番近くにある街でさえも馬で何時間も移動しなければならない。しかし、この一年の間に村は大きく変化していた。
「……ギギィッ」
村の中に1匹のゴブリンが迷い込む。そのゴブリンは普通のゴブリンとは違い、人間から奪った短剣を身に付けていた。服装の方も人間の子供の衣服を着こんでおり、周囲を警戒する様に辺りを見渡す。
生き物の気配がしない事を確認するとゴブリンは村の中央へと移動し、村人達の墓を発見した。ゴブリンは墓を見て不思議に思うが、特に気にせずに先に進む。
「ギギィッ……!!」
村の中に誰も住んでいない事を確認するとゴブリンは口笛を鳴らす。すると、遠くの方から狼の声が聞こえ、ゴブリンの前に1匹のファングが到着する。
「ガウッ!!」
「ギギィッ!!」
駆け寄ってきたファングにゴブリンは乗り込むと、そのままゴブリンは村を飛び出す。本来、ファングはゴブリンのような力の弱い魔物に懐くような魔獣ではない。それにも関わらずにファングはゴブリンのいう事に従う。
この時にファングの首元には首輪のような物が締め付けられており、ゴブリンはその首輪を掴む。するとファングは苦しむように移動速度を落とし、やがて停止する。
「ギギィッ」
「ウォンッ!?」
ゴブリンはファングを止めると、懐から肉の塊を取り出し、それをファングの口元に放り込む。ファングは驚いた表情を浮かべるが、すぐに肉の塊を飲み込む。
「ギィイッ……」
「ガウッ……」
ファングに餌を与えるとゴブリンは頭を撫でやり、その行動にファングは嬉しそうに尻尾を振る。かつてイチノの街を襲ったファングとゴブリンは群れを収めていたゴブリンメイジが死んだ途端に仲間割れを引き起こしたが、この2匹は仲睦まじそうに餌を分け合う。
改めてファングは走り出すとゴブリンは山へ向かう。この山はかつて赤毛熊が生息していた山だが、現在は新しい主が支配していた――
――山の中に戻ると、1年前までは緑豊かな場所であったが、現在は木々はなぎ倒されて荒れ果てていた。山の中腹には砦のような建物が作られており、そこには大勢のゴブリンとホブゴブリンが存在した。
「グギィイイッ!!」
「ギギィッ!!ギギギッ!!」
「ガウガウッ!!」
砦の出入口に到着すると、見張りを行っていたホブゴブリンがゴブリンとファングに気付き、武器を突き出す。それに対してゴブリンは慌ててファングの背中から下りると、ホブゴブリンに話しかける。
ホブゴブリンは砦に戻って来たゴブリンに近付くと、ゴブリンは背中に抱えていた荷物を差し出す。その中には人間から盗んだ物と思われる武器がまとまっていた。
「ギギィッ……」
「グギィッ……」
武器を確認したホブゴブリンはそれを受け取ると、ゴブリンを褒める様に頭を軽く撫でてやり、砦の中に移動させる。砦の中には100を超えるホブゴブリンが存在し、その他にもファングやゴブリンの姿も多数存在した。
「ギギィッ」
「グギィッ……」
「ガアアッ!!」
砦の中では木材を運ぶホブゴブリンや、ファングに首輪をつけて無理やり引っ張るゴブリンの姿も存在し、他にも人間のように机を挟んで腕相撲を行うホブゴブリン達も居た。かつてこの山を支配していた赤毛熊は彼等によって追い出され、深淵の森に住処を移したのだ。
外を探索していたゴブリンとファングは砦の中に入ると、この時にホブゴブリンと共に木材や石を運び込む人間の姿を確認する。彼等はボロボロな姿で材料を運び込み、中には人間以外の種族も存在する。
「はあっ……はあっ……」
「くそっ、どうしてこんな目に……」
「助けてくれ……誰か、助けてくれぇっ……」
「グギャアッ!!」
弱音を吐く人間に対してホブゴブリンは怒声を放ち、彼等に対して蔓で作り上げた鞭を放つ。その様子を見てゴブリンは痛そうに視線を逸らすが、別の場所では金属を叩く音が鳴り響く。
「はあっ、はあっ……た、頼む。少し休ませてくれ!!」
「もう限界だ……」
「これ以上は腕が……」
「ギギィッ!!」
砦の中には建物が存在し、そこでは小髭族の老人が集められていた。彼等は鍛冶師であり、彼等の傍には出来栄えは悪いが武器や防具が大量に散らばっていた。しかもどれもこれもが人間用ではなく、ホブゴブリンやゴブリンの体型に合わせて作り出されている。
彼等はゴブリンに捕まり、この場所で武器や防具の製作を強制されていた。気が強い小髭族も大量の魔物に囲まれ、何日も不眠不休で働かされて既に限界だった。
その様子を見届けたゴブリンとファングはこっそりと離れ、やがてゴブリンは砦の中に存在する最も大きな建物に視線を向ける。その建物には武装したホブゴブリンが警護しており、この建物の奥にこの砦の――否、赤毛熊に成り代わった山の主が存在する。
――ギアアアアアッ!!
建物の中から咆哮が響き渡り、その声を耳にしただけで砦中のゴブリン達だけではなく、山に暮らす生物は震え上がった。赤毛熊に成り代わった新たな山の主は赤毛熊を遥かに上回る力を持ち、近い将来に国中にその存在が知れ渡る事になる――
元々は辺境の地に存在するために滅多に人間が通る場所ではなく、一番近くにある街でさえも馬で何時間も移動しなければならない。しかし、この一年の間に村は大きく変化していた。
「……ギギィッ」
村の中に1匹のゴブリンが迷い込む。そのゴブリンは普通のゴブリンとは違い、人間から奪った短剣を身に付けていた。服装の方も人間の子供の衣服を着こんでおり、周囲を警戒する様に辺りを見渡す。
生き物の気配がしない事を確認するとゴブリンは村の中央へと移動し、村人達の墓を発見した。ゴブリンは墓を見て不思議に思うが、特に気にせずに先に進む。
「ギギィッ……!!」
村の中に誰も住んでいない事を確認するとゴブリンは口笛を鳴らす。すると、遠くの方から狼の声が聞こえ、ゴブリンの前に1匹のファングが到着する。
「ガウッ!!」
「ギギィッ!!」
駆け寄ってきたファングにゴブリンは乗り込むと、そのままゴブリンは村を飛び出す。本来、ファングはゴブリンのような力の弱い魔物に懐くような魔獣ではない。それにも関わらずにファングはゴブリンのいう事に従う。
この時にファングの首元には首輪のような物が締め付けられており、ゴブリンはその首輪を掴む。するとファングは苦しむように移動速度を落とし、やがて停止する。
「ギギィッ」
「ウォンッ!?」
ゴブリンはファングを止めると、懐から肉の塊を取り出し、それをファングの口元に放り込む。ファングは驚いた表情を浮かべるが、すぐに肉の塊を飲み込む。
「ギィイッ……」
「ガウッ……」
ファングに餌を与えるとゴブリンは頭を撫でやり、その行動にファングは嬉しそうに尻尾を振る。かつてイチノの街を襲ったファングとゴブリンは群れを収めていたゴブリンメイジが死んだ途端に仲間割れを引き起こしたが、この2匹は仲睦まじそうに餌を分け合う。
改めてファングは走り出すとゴブリンは山へ向かう。この山はかつて赤毛熊が生息していた山だが、現在は新しい主が支配していた――
――山の中に戻ると、1年前までは緑豊かな場所であったが、現在は木々はなぎ倒されて荒れ果てていた。山の中腹には砦のような建物が作られており、そこには大勢のゴブリンとホブゴブリンが存在した。
「グギィイイッ!!」
「ギギィッ!!ギギギッ!!」
「ガウガウッ!!」
砦の出入口に到着すると、見張りを行っていたホブゴブリンがゴブリンとファングに気付き、武器を突き出す。それに対してゴブリンは慌ててファングの背中から下りると、ホブゴブリンに話しかける。
ホブゴブリンは砦に戻って来たゴブリンに近付くと、ゴブリンは背中に抱えていた荷物を差し出す。その中には人間から盗んだ物と思われる武器がまとまっていた。
「ギギィッ……」
「グギィッ……」
武器を確認したホブゴブリンはそれを受け取ると、ゴブリンを褒める様に頭を軽く撫でてやり、砦の中に移動させる。砦の中には100を超えるホブゴブリンが存在し、その他にもファングやゴブリンの姿も多数存在した。
「ギギィッ」
「グギィッ……」
「ガアアッ!!」
砦の中では木材を運ぶホブゴブリンや、ファングに首輪をつけて無理やり引っ張るゴブリンの姿も存在し、他にも人間のように机を挟んで腕相撲を行うホブゴブリン達も居た。かつてこの山を支配していた赤毛熊は彼等によって追い出され、深淵の森に住処を移したのだ。
外を探索していたゴブリンとファングは砦の中に入ると、この時にホブゴブリンと共に木材や石を運び込む人間の姿を確認する。彼等はボロボロな姿で材料を運び込み、中には人間以外の種族も存在する。
「はあっ……はあっ……」
「くそっ、どうしてこんな目に……」
「助けてくれ……誰か、助けてくれぇっ……」
「グギャアッ!!」
弱音を吐く人間に対してホブゴブリンは怒声を放ち、彼等に対して蔓で作り上げた鞭を放つ。その様子を見てゴブリンは痛そうに視線を逸らすが、別の場所では金属を叩く音が鳴り響く。
「はあっ、はあっ……た、頼む。少し休ませてくれ!!」
「もう限界だ……」
「これ以上は腕が……」
「ギギィッ!!」
砦の中には建物が存在し、そこでは小髭族の老人が集められていた。彼等は鍛冶師であり、彼等の傍には出来栄えは悪いが武器や防具が大量に散らばっていた。しかもどれもこれもが人間用ではなく、ホブゴブリンやゴブリンの体型に合わせて作り出されている。
彼等はゴブリンに捕まり、この場所で武器や防具の製作を強制されていた。気が強い小髭族も大量の魔物に囲まれ、何日も不眠不休で働かされて既に限界だった。
その様子を見届けたゴブリンとファングはこっそりと離れ、やがてゴブリンは砦の中に存在する最も大きな建物に視線を向ける。その建物には武装したホブゴブリンが警護しており、この建物の奥にこの砦の――否、赤毛熊に成り代わった山の主が存在する。
――ギアアアアアッ!!
建物の中から咆哮が響き渡り、その声を耳にしただけで砦中のゴブリン達だけではなく、山に暮らす生物は震え上がった。赤毛熊に成り代わった新たな山の主は赤毛熊を遥かに上回る力を持ち、近い将来に国中にその存在が知れ渡る事になる――
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