貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
216 / 1,110
王都での騒動

第215話 反撃開始!!

しおりを挟む
「失せろっ!!」
『ギャアアアッ!?』
「わあっ……ナ、ナイ君、凄~い!!」


モモに襲い掛かろうとした三匹のガーゴイルをナイは蹴散らすと、それを見ていたモモは驚いた表情を浮かべる。その一方でナイの方も自分の身体に視線を向け、咄嗟の事とは言え、三匹のガーゴイルを吹き飛ばした事に驚く。


(何だ、今の……剛力も使ってないのに)


剛力も使用せずにナイは三匹のガーゴイルを同時に吹き飛ばした事に戸惑い、心なしか身体が異様に軽い。恐らくはモモの魔力の影響で肉体の身体機能が強化されており、強化薬を飲んだ時と似た感覚を覚える。

この状態ならば普段以上に戦えると思ったナイは両手の旋斧と退魔刀に視線を向け、今ならばこの二つも武器も片腕で扱える気がした。ナイは三匹のガーゴイルと向き直り、大きく踏み込む。


「はあああっ!!」
『ギャウッ!?』
『アガァッ!?』
『グゲェッ!?』


左右に挟み込むようにナイは両手の剣を振り払うと、三匹のガーゴイルはお互いの身体を衝突させて倒れ込み、それを見たナイは旋斧を手放して両手で退魔刀に持ち換えると、身体を回転させながら刃を叩き込む。


「うおおおおっ!!」
『ギャアアアアッ!?』


円斧の要領でナイは退魔刀を振り払うと、同時に三匹のガーゴイルの胴体を切り裂き、上半身と下半身を切り裂かれたガーゴイル達は倒れ込む。その様子を確認したナイは驚きを隠せず、今までにない程に力が漲っていた。


(凄い、これがモモの魔力か……今なら赤毛熊でも片手で倒せそうだ)


現在のナイの肉体は絶好調どころではなく、自分の身体とは思えない程に力が溢れていた。だが、身体を切り裂かれたガーゴイル達はまだ死んではおらず、切り裂かれた上半身と下半身が悶えるように振るえていた。


『ギャウウッ……!?』
『アガァッ……!?』
『アアッ……!?』
「ま、まだ生きてるの!?」
「そうか……こいつらは核を破壊しないと倒せないんだっけ」


ナイは退魔刀を床に突き刺すと、旋斧を拾い上げる。粉々に破壊するのならば退魔刀よりも旋斧の方が向いており、倒れ込んでいる3体にナイは容赦なく旋斧を振り下ろす。

旋斧を叩きつけられたガーゴイル達の肉体は砕け散り、上半身に埋め込まれていた紫色の魔石も破壊される。今度こそガーゴイル達も完全に動かなくなり、それを確認したナイは今度こそガーゴイル亜種の元へ向かうためにモモに告げた。


「じゃあ、行ってくるよ」
「う、うん……頑張ってね、負けちゃ駄目だよ!!」


モモの言葉にナイは無言で頷き、旋斧と退魔刀を両手に抱えて駆け出す――





――時は少し前に遡り、ビャクとミイナとヒイロはガーゴイル亜種を相手に追い込まれていた。


『シャアアッ!!』
「ギャウンッ!?」
「くっ……!?」
「このっ……いい加減にくたばって下さい!!」


ガーゴイル亜種は棍棒代わりに利用している樹木をビャクの身体に叩きつけ、遂にビャクも倒れ込む。それを見たミイナとヒイロは動き出し、ヒイロはガーゴイル亜種が手にする樹木に向けて剣を放つ。


「はああっ!!」
『ッ……!?』


烈火を突き刺した瞬間に樹木全体に炎で焼け崩れる。武器を失ったガーゴイル亜種は呆気に取られるが、すぐに気を取り直して樹木を放り捨てると、腕を振り払ってヒイロを吹き飛ばす。


『シャアアッ!!』
「きゃああっ!?」
「ヒイロ!?よくも……もう、許さない!!」


ヒイロが殴り飛ばされた姿を見てミイナは目つきを鋭くさせ、彼女は如意斧の柄を伸ばすと、身体を回転させる。

今回は一回転には収まらず、何度も回転を加える事で加速させ、最大限まで遠心力を加えた一撃を放つ。結果から言えば彼女の放った如意斧の刃は見事にガーゴイル亜種の左足に叩き込まれた。


「ふにゃっ!!」
『アガァッ!?』


左足に強烈な衝撃を加えられたガーゴイル亜種は体勢を崩し、僅かにではあるが左足に亀裂が走る。この程度の傷ならば通常種のガーゴイルならばすぐに再生するはずだが、何故かガーゴイル亜種は左膝を抑えて立ち上がる事もままならない。


(まさか……再生能力が衰えている?)


ミイナはガーゴイル亜種が傷を負って立ち上がれない様子を見て疑問を抱き、ここで彼女はガーゴイル亜種の背後へと移動し、先ほどナイが吹き飛ばされる前に与えた傷の確認を行う。

背中には僅かにではあるがナイが与えた傷が残っており、徐々に再生はしているようだが、通常種のガーゴイルと比べても再生速度が非常に遅い。この事からミイナはガーゴイル亜種の弱点を見抜く。


(このガーゴイル……硬度は通常種よりも高いけど、再生能力は低い。もっと早く気付ければ……)


傷の再生が遅い事を知っていればミイナは傷口を集中的に攻撃し、ガーゴイル亜種を倒せる事ができたのかもしれないと思う。しかし、先ほどの一撃でミイナも限界近くまで体力を使い、もう走る余力も残っていなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...