貧弱の英雄

カタナヅキ

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王都での騒動

第207話 大混乱

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『グゥウッ……!!』
「くぅっ……!?」
「ナ、ナイ君!?そんな、私のせいで!?」
「早く引き剥がさないと!!」
「ナイから離れろっ!!」


ガーゴイルに右腕を噛み付かれたナイは苦痛の表情を浮かべ、このままでは食いちぎられてしまう。それを見た他の者はナイを助けるために動き出そうとするが、ここでガーゴイルの様子が変化する。

このままナイの腕を噛み千切ろうとしたガーゴイルだったが、どういう事か思うように牙が食い込まず、それどころか逆に押し返される感覚に陥る。この時にナイは「剛力」を発動させ、右腕の筋力を強化すると力任せにガーゴイルを振り払う。


「このっ!!」
『ッ――!?』
「えええっ!?」


右腕に嚙り付かれた状態でナイはガーゴイルを床に叩きつけ、その際の衝撃でガーゴイルは口を開く。叩きつけられた体内の核も壊れたのか、腹の部分が一瞬だけ紫色に光り輝くと、やがて動けなくなった。

肘の部分に牙の跡が食い込みながらもナイはため息を吐き出し、その様子を見たモモは涙目で謝罪する。


「ご、ごめんね!!私のせいでこんな酷い怪我……」
「いや、平気だって……大丈夫、すぐに治すから」
「治すって……そういえばさっきも腕を怪我していたはずなのにどうやって」


ヒナはここでナイが最初にガーゴイルと戦った時に受けた傷が消えている事に気付いて疑問を抱く。先ほどは腕は腫れていたがはずだが、今は腫れは引いており、噛み傷だけしか残っていない。

あまり人前では見せない様に心掛けていたが、緊急時なので仕方がないと思ったナイは意識を集中させ、マホから教わった「魔操術」を利用して怪我を治す。


「これぐらいの傷なら……ほら、もう治った」
「嘘っ!?」
「これ……回復魔法?」
「でも、回復魔法は自分に使えないんだよね!?これってまさか……」
「説明は後でするから、今は早くここから離れよう」


傷跡の部分が光り輝き、次の瞬間には傷が治る光景を見てミイナ達は驚愕するが、今は説明する暇はないのでナイは早くこの場から離れる事を提案する。既に目的は達成しており、バーリを捕まえてノイを連れて帰れば彼の悪事は全て発覚する。


「他の警備兵が来る前に早くここを離れよう。ノイさん、一緒に来てください。この男が行っていた事を悪行を警備兵に話してください」
「は、はい……分かりました」
「この男を殺して復讐したいと思っているでしょうけど、そんな事をしたら貴方も捕まってしまうわ。それならこいつを監獄に送り込んで死ぬまで惨めな生活を送らせましょう?」
「そう、ですね……」


ヒナの言葉にノイは色々と思う所はあったが、ここでバーリを殺しても彼女の人生が狂わされてしまうだけである。それならばバーリは一生監獄に閉じ込める方が良い、そう説得したヒナはバーリをナイに任せ、自分達も逃げるために指示を出す。


「さあ、早くこんな場所から離れましょう!!外で待っているヒイロと合流して逃げましょう!!」
「……それが、ちょっと問題がある」
「問題?何かあったの?」


ミイナはヒナの言葉を聞いて言いにくそうな表情を浮かべ、彼女の告げる問題とは何かとモモが不思議そうに問い質すと、ここで屋敷のあちこちから悲鳴が響き渡る。

屋敷の窓が破壊される音や、外にいる兵士達の怒号、屋敷の中からも悲鳴が響き渡り、その事に気付いたナイは嫌な予感を抱く。


「まさか……」
「……ガーゴイルはこいつだけじゃない、あちこちでガーゴイルが現れて暴れている」
「そんなっ!?」
「まさか……この豚男のせい!?」


ここまで逃げてきたミイナによると既に屋敷内の至る箇所に設置されていた石像は目を覚まし、既に屋敷の中どころか敷地内まで出てきて暴れまわっているという。

先ほどから聞こえてくる悲鳴はどうやら兵士や使用人がガーゴイルに襲われている声らしく、ナイ達が倒したガーゴイル以外にも暴れまわっているガーゴイルがいることを証明していた――





――屋敷の外で待機していたヒイロとモウタツも屋敷から現れたガーゴイルを確認し、ヒイロは魔剣「烈火」を掲げて対応を行う。モウタツの方は怯えて馬車の中に隠れ込み、その様子を伺う。


「このっ……いい加減にくたばって下さい!!火炎剣!!」
『ギャウッ!!』
「ひいいっ!?」


ヒイロは火炎を纏わせた刃でガーゴイルに攻撃を仕掛けるが、その攻撃に対してガーゴイルは鋭い爪で弾き返す。生身の生物と違って石の肉体を持つガーゴイルには炎は相性が悪く、致命傷は与えられない。


「くっ、なんて硬さ……そもそもどうしてガーゴイルがここにいるのですか!?」
「し、知らねえ!!俺もこんな奴等知らねえんだよ!!」
「情けない人ですね!!隠れてないで手伝ってくれませんか!?」
「無茶を言うなよ!?」
『ギャギャッ!!』


魔剣を手にしたヒイロが相手でもガーゴイルは怯む事もなく、彼女に襲い掛かる。いくら剣で斬りつけてもガーゴイルの頑丈な肉体には弾かれ、ヒイロは劣勢に立たされる。
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