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王都での騒動
第195話 ダンの能力の秘密
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「さあ、どうするお坊ちゃん?降参するなら……今の内だぜ?」
「誰が降参なんて……」
「そうか、なら仕方ない……次は手加減抜きだ」
ダンと向かい合ったナイは彼の気迫を受けて冷や汗を流し、今回は手加減抜きで殺しにかかる事は分かっていた。前回の時はバーリの命令でナイを気絶させようとしたが、その気になればダンはナイを殺す事はできたはずである。
ナイは前回の戦闘を思い返し、ダンが唐突に自分の視界から消え、次の瞬間には首の裏に攻撃を加えられて危うく気絶する所だった。その事を思い返して今回はダンの様子を「観察眼」で捉え、さらに「気配感知」を発動させる。
(人間が本当に消えるわけがない……なら、考えられるとしたらダンの能力はきっとあの技能だ)
ナイはダンが仕掛けるのを待ち、両足に力を込める。そんなナイに対してダンは短剣を構えた状態から彼を見つめ、遂に動き出す。
「――じゃあな」
「っ……!?」
一瞬にしてダンの姿がナイの姿から消え去り、この時にナイは気配感知の技能からもダンの反応が消えたのを確認する。だが、反射的にナイは「跳躍」の技能を発動させて後方へと跳ぶ。
「ここだっ!!」
「っ!?」
「何っ!?」
「きゃっ!?」
「わああっ!?」
後ろに跳んだナイは勢いよく壁に激突してしまい、その様子を見て他の者達は呆気に取られる。だが、ナイは痛みをこらえながら視線を向けると、先ほどまで自分が立っていた場所にダンが短剣を振り抜こうとした状態で立っている姿を捕える。
観察眼を発動していたにも関わらず、ナイはダンの姿を捉える事はできなかった。しかし、事前に後方へ跳ぶ準備はしており、彼が消えたと理解した瞬間にナイは後ろに跳ぶ事で攻撃を回避する事に成功した。
「いててっ……ちょっと力を込め過ぎたかな」
「坊主……お前、何者だ?」
「ナイ君、大丈夫!?怪我してないの!?」
「平気だよ!!さあ、続きだ!!」
ナイはダンに対して退魔刀を構えると、その態度にダンは疑問を抱き、先ほどのナイの行動が気にかかる。だが、すぐに彼は気を取り直したように短剣を構える。
「なるほど、事前に避ける準備をしていれば俺の秘剣から逃れられると思ったのか。だが、甘いな……最初から逃げる事を分かっていればいくらでも対応できる。次は……確実に殺す」
「秘剣?笑わせないでよ……その技の正体はもう掴んでいる」
「……何だと?」
ダンはナイの言葉を聞いて表情を変え、ただのハッタリだと思いたい所だが、ナイが自分の攻撃を避けた事は事実だった。ナイは自分の言葉に明らかに動揺したダンに彼の能力の秘密を語る。
「あんたが消えた様に見える理由……それは「隠密」の技能を習得しているからでしょ?」
「っ……!?」
「攻撃の際に隠密の技能を発動して存在感を消す、すると相手はあんたの事が認識できなくなる。つまり、消えた様に錯覚してしまう。それがあんたの能力の秘密だ」
「隠密……なるほど、そういう事だったのね」
「まさか暗殺者の技能を扱えるなんて……」
「おい、ダン……お前、やばいんじゃないのか?」
どうやらナイの推理は当たっていたらしく、ダンの相方であるゴウが少し心配したように声をかけるが、肝心のダンはナイの話を聞いて冷や汗を流す。しかし、すぐに気を取り直したように首を振った。
「……正解だ、半分だけな。だが、隠密の技能だけだと俺の秘密を全て見抜いたとは言えないだろう?」
「分かっている。隠密を発動しても姿が消える様に見えるのはせいぜい一瞬、だけどその一瞬の間にあんたは敵に近付く術を持っている。その秘密は……「跳躍」でしょ?」
「っ……!?」
ナイの言葉に今度こそダンは狼狽し、まさかそこまで見抜かれているとは思いもしなかった。たった二度の攻撃でナイが自分の戦法を見抜いた事にダンは動揺を隠しきれず、その一方でナイの方も彼の反応から当たっていた事に安堵する。
――ダンの戦法とはまずは相手と向き合い、十分に近づいた後に「隠密」を発動させて相手の意識から一瞬の間だけ自分の存在を消す。その後は跳躍の技能を発動させ、相手が自分の姿を捉えられないうちに近付いて仕留める。これが彼の必勝戦法だった。
タネを明かせば二つの技能を生かした戦法でしかないが、この戦法だけでダンは数々の標的を倒し、いつの間にか「姿が見えない程に素早く敵を討つ」という存在として噂され、彼は「疾風のダン」という異名が付けられた。
実際にはダン自身は異名のように疾風の如き速さで動けるわけではない。彼が消えているように見えるのは目にも止まらぬ速さで動いているわけではなく、実際には相手が自分の姿が見えないように錯覚させているだけに過ぎない。
その秘密をまだ成人年齢にも達していない少年に見抜かれた事にダンは非常に焦り、この秘密を知られた以上はこの場に存在する者は始末しなければならない。その行為がバーリの機嫌を損ねるとしても、彼としては自分の能力の秘密を知られた以上は誰一人生かしておくわけにはいかなかった。
「誰が降参なんて……」
「そうか、なら仕方ない……次は手加減抜きだ」
ダンと向かい合ったナイは彼の気迫を受けて冷や汗を流し、今回は手加減抜きで殺しにかかる事は分かっていた。前回の時はバーリの命令でナイを気絶させようとしたが、その気になればダンはナイを殺す事はできたはずである。
ナイは前回の戦闘を思い返し、ダンが唐突に自分の視界から消え、次の瞬間には首の裏に攻撃を加えられて危うく気絶する所だった。その事を思い返して今回はダンの様子を「観察眼」で捉え、さらに「気配感知」を発動させる。
(人間が本当に消えるわけがない……なら、考えられるとしたらダンの能力はきっとあの技能だ)
ナイはダンが仕掛けるのを待ち、両足に力を込める。そんなナイに対してダンは短剣を構えた状態から彼を見つめ、遂に動き出す。
「――じゃあな」
「っ……!?」
一瞬にしてダンの姿がナイの姿から消え去り、この時にナイは気配感知の技能からもダンの反応が消えたのを確認する。だが、反射的にナイは「跳躍」の技能を発動させて後方へと跳ぶ。
「ここだっ!!」
「っ!?」
「何っ!?」
「きゃっ!?」
「わああっ!?」
後ろに跳んだナイは勢いよく壁に激突してしまい、その様子を見て他の者達は呆気に取られる。だが、ナイは痛みをこらえながら視線を向けると、先ほどまで自分が立っていた場所にダンが短剣を振り抜こうとした状態で立っている姿を捕える。
観察眼を発動していたにも関わらず、ナイはダンの姿を捉える事はできなかった。しかし、事前に後方へ跳ぶ準備はしており、彼が消えたと理解した瞬間にナイは後ろに跳ぶ事で攻撃を回避する事に成功した。
「いててっ……ちょっと力を込め過ぎたかな」
「坊主……お前、何者だ?」
「ナイ君、大丈夫!?怪我してないの!?」
「平気だよ!!さあ、続きだ!!」
ナイはダンに対して退魔刀を構えると、その態度にダンは疑問を抱き、先ほどのナイの行動が気にかかる。だが、すぐに彼は気を取り直したように短剣を構える。
「なるほど、事前に避ける準備をしていれば俺の秘剣から逃れられると思ったのか。だが、甘いな……最初から逃げる事を分かっていればいくらでも対応できる。次は……確実に殺す」
「秘剣?笑わせないでよ……その技の正体はもう掴んでいる」
「……何だと?」
ダンはナイの言葉を聞いて表情を変え、ただのハッタリだと思いたい所だが、ナイが自分の攻撃を避けた事は事実だった。ナイは自分の言葉に明らかに動揺したダンに彼の能力の秘密を語る。
「あんたが消えた様に見える理由……それは「隠密」の技能を習得しているからでしょ?」
「っ……!?」
「攻撃の際に隠密の技能を発動して存在感を消す、すると相手はあんたの事が認識できなくなる。つまり、消えた様に錯覚してしまう。それがあんたの能力の秘密だ」
「隠密……なるほど、そういう事だったのね」
「まさか暗殺者の技能を扱えるなんて……」
「おい、ダン……お前、やばいんじゃないのか?」
どうやらナイの推理は当たっていたらしく、ダンの相方であるゴウが少し心配したように声をかけるが、肝心のダンはナイの話を聞いて冷や汗を流す。しかし、すぐに気を取り直したように首を振った。
「……正解だ、半分だけな。だが、隠密の技能だけだと俺の秘密を全て見抜いたとは言えないだろう?」
「分かっている。隠密を発動しても姿が消える様に見えるのはせいぜい一瞬、だけどその一瞬の間にあんたは敵に近付く術を持っている。その秘密は……「跳躍」でしょ?」
「っ……!?」
ナイの言葉に今度こそダンは狼狽し、まさかそこまで見抜かれているとは思いもしなかった。たった二度の攻撃でナイが自分の戦法を見抜いた事にダンは動揺を隠しきれず、その一方でナイの方も彼の反応から当たっていた事に安堵する。
――ダンの戦法とはまずは相手と向き合い、十分に近づいた後に「隠密」を発動させて相手の意識から一瞬の間だけ自分の存在を消す。その後は跳躍の技能を発動させ、相手が自分の姿を捉えられないうちに近付いて仕留める。これが彼の必勝戦法だった。
タネを明かせば二つの技能を生かした戦法でしかないが、この戦法だけでダンは数々の標的を倒し、いつの間にか「姿が見えない程に素早く敵を討つ」という存在として噂され、彼は「疾風のダン」という異名が付けられた。
実際にはダン自身は異名のように疾風の如き速さで動けるわけではない。彼が消えているように見えるのは目にも止まらぬ速さで動いているわけではなく、実際には相手が自分の姿が見えないように錯覚させているだけに過ぎない。
その秘密をまだ成人年齢にも達していない少年に見抜かれた事にダンは非常に焦り、この秘密を知られた以上はこの場に存在する者は始末しなければならない。その行為がバーリの機嫌を損ねるとしても、彼としては自分の能力の秘密を知られた以上は誰一人生かしておくわけにはいかなかった。
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