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王都での騒動
第187話 格闘家モモ
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「いやんっ……ナイ君、そんなに見られると恥ずかしいよ~」
「え、いやっ……」
「……えっち」
「まあ、男の子だから仕方ないでしょ。でも、見惚れている場合じゃないわよ。ほら、敵の位置を教えてくれる?」
ナイが自分の太ももを見ている事に気付いたモモは頬を赤らめるが、それを見ていたミイナが無表情のまま注意する。ヒナもナイをからかいながらも彼の気配感知を頼りに敵の正確な居場所を尋ねる。
ヒナの質問にナイは戸惑いながらも敵のだいたいの位置を伝えると、ヒナとモモはその言葉を聞いて頷き、ゆっくりと扉へ近づく。この時にヒナは扉の内側を確認して鍵が掛けられていない事を把握するとモモに頷く。
「二人とも、いったい何を……」
「いいから黙って見てて……あの二人も只者じゃない」
「えっ?」
ミイナの言葉を聞いてナイはどういう意味かと思ったが、直後にモモとヒナは行動に移す。モモはナイから聞いた敵の位置を頼りに壁に掌を押し当てる。何をするつもりなのかとナイは思ったが、モモは精神を集中させるように瞼を閉じた。
普段のモモとは雰囲気が一変し、彼女は両手を壁際に構えた状態で動かない。何をするつもりなのかとナイは疑問を抱くが、モモが目を開いた瞬間、彼女が触れた壁に亀裂が走る。
「わうっ!!」
『ぐはぁっ!?』
『お、おい!?どうした!?』
恐らくはモモなりの気合の掛け声だと思われるが、彼女が犬のような声を発した瞬間に壁に衝撃が走り、それが通過して壁際の兵士に到達したのか、扉の外側から悲鳴が聞こえてきた。
兵士達の立ち位置は扉を間に挟んで左右に立っているため、片方の兵士が倒れた姿を見てもう一人の兵士は驚いて彼の元へ向かおうとする。しかし、この時に兵士は扉の前を通り過ぎようとした瞬間、ヒナが全力で扉を開いて通り過ぎようとした兵士に叩きつける。
「このっ!!」
「ぐはぁっ!?」
相棒の兵士を助けようとした兵士だったが、唐突に開いた扉に頭からぶつかって地面に倒れ込む。あまりの衝撃に気絶したらしく、それを見たヒナは満足そうにモモに親指を立てる。
「ばっちりよ、モモ!!」
「えへへ、やったね!!」
「い、今のは……」
「格闘家が扱える「発勁」と呼ばれる力……といっても、モモの場合は特別に凄い」
モモが壁を通じて攻撃した技は「発勁」というらしく、ミイナによるとモモの発勁は普通の格闘家が扱う発勁よりも特別に強力で彼女の場合は掌を通じて強烈な衝撃を通す事ができるという。
本来の発勁は相手の体内に放つ技だが、モモの場合は威力が桁違いに高く、壁越しでも衝撃を与える事ができた。一方でヒナの方はそんな彼女の扱いが上手く、二人のお陰で外の見張りは気絶に追い込めた。
「二人ともこんなに強かったなんて……」
「あの二人が力を合わせれば私でも勝てない。だから甘く見ない方が良い」
「よく言うわよ、あたしなんてあんた達と比べれば大した力は持ってないってのに……いや、それはともかく早くこいつらを運びましょう」
見張りの兵士達が気絶している隙に、ナイ達は地下に続く階段の中に移動させて寝かしつけて置く。ここでナイは兵士から装備を奪って変装できないかと考えたが、どちらも慎重と体格の問題で変装するのは難しそうだった。
「兵士に変装して外へ逃げ出すのは無理そうね……そもそも二人分しかないわ」
「なら、どうするの?」
「とりあえず、使えそうな物は拝借しましょう」
兵士が身に付けていた武器は剣だけであり、とりあえずはないよりはマシなので持っていく。この時に剣を手にしたのはナイとヒナであり、モモは素手で戦えるがミイナは地下から持ち出した鉄球で戦うつもりらしい。
「私は普通の剣は苦手だからヒナが使って」
「私も剣なんて持つの久しぶりなんだけど……仕方ないわね」
「う~ん、やっぱり軽すぎるな」
ナイは兵士の剣を手にするとどうしても旋斧と比べて軽く感じ過ぎてしまい、違和感を拭えない。もっと重量のある武器があればよかったのだが、贅沢は言っていられない。
流石に剣の刃を折って短剣のように扱う事は出来ず、とりあえずは腰に剣を差し込んだナイは通路の様子を伺う。ここから先は慎重かつ迅速に動かねばならず、もしも見張りの兵士がいない事に気付かれたらすぐに警戒態勢に入るだろう。
(ヒイロさんとモウタツがまだいればいいけど……)
当初の作戦では女のふりをしてバーリと面会する時に拘束し、その後はバーリを脅してミイナの居場所を吐かせた後、モウタツの馬車で全員逃げる予定だったが、作戦は失敗に終わった。
モウタツとヒイロがまだ残っていればいいのだが、もしかしたら二人とも怪しまれて捕まっている可能性もある。最悪の場合、モウタツを殺すために派遣された暗殺者が屋敷に訪れているかもしれない。
(急いで逃げないと……でも、ここはどこらへんだろう?)
無駄に広い屋敷なのでナイ達は自分達が何処にいるのかも分からず、とりあえずは窓から外を確認する。どうやらナイ達は屋敷の裏側の方にいるらしく、裏庭が見えた。
「え、いやっ……」
「……えっち」
「まあ、男の子だから仕方ないでしょ。でも、見惚れている場合じゃないわよ。ほら、敵の位置を教えてくれる?」
ナイが自分の太ももを見ている事に気付いたモモは頬を赤らめるが、それを見ていたミイナが無表情のまま注意する。ヒナもナイをからかいながらも彼の気配感知を頼りに敵の正確な居場所を尋ねる。
ヒナの質問にナイは戸惑いながらも敵のだいたいの位置を伝えると、ヒナとモモはその言葉を聞いて頷き、ゆっくりと扉へ近づく。この時にヒナは扉の内側を確認して鍵が掛けられていない事を把握するとモモに頷く。
「二人とも、いったい何を……」
「いいから黙って見てて……あの二人も只者じゃない」
「えっ?」
ミイナの言葉を聞いてナイはどういう意味かと思ったが、直後にモモとヒナは行動に移す。モモはナイから聞いた敵の位置を頼りに壁に掌を押し当てる。何をするつもりなのかとナイは思ったが、モモは精神を集中させるように瞼を閉じた。
普段のモモとは雰囲気が一変し、彼女は両手を壁際に構えた状態で動かない。何をするつもりなのかとナイは疑問を抱くが、モモが目を開いた瞬間、彼女が触れた壁に亀裂が走る。
「わうっ!!」
『ぐはぁっ!?』
『お、おい!?どうした!?』
恐らくはモモなりの気合の掛け声だと思われるが、彼女が犬のような声を発した瞬間に壁に衝撃が走り、それが通過して壁際の兵士に到達したのか、扉の外側から悲鳴が聞こえてきた。
兵士達の立ち位置は扉を間に挟んで左右に立っているため、片方の兵士が倒れた姿を見てもう一人の兵士は驚いて彼の元へ向かおうとする。しかし、この時に兵士は扉の前を通り過ぎようとした瞬間、ヒナが全力で扉を開いて通り過ぎようとした兵士に叩きつける。
「このっ!!」
「ぐはぁっ!?」
相棒の兵士を助けようとした兵士だったが、唐突に開いた扉に頭からぶつかって地面に倒れ込む。あまりの衝撃に気絶したらしく、それを見たヒナは満足そうにモモに親指を立てる。
「ばっちりよ、モモ!!」
「えへへ、やったね!!」
「い、今のは……」
「格闘家が扱える「発勁」と呼ばれる力……といっても、モモの場合は特別に凄い」
モモが壁を通じて攻撃した技は「発勁」というらしく、ミイナによるとモモの発勁は普通の格闘家が扱う発勁よりも特別に強力で彼女の場合は掌を通じて強烈な衝撃を通す事ができるという。
本来の発勁は相手の体内に放つ技だが、モモの場合は威力が桁違いに高く、壁越しでも衝撃を与える事ができた。一方でヒナの方はそんな彼女の扱いが上手く、二人のお陰で外の見張りは気絶に追い込めた。
「二人ともこんなに強かったなんて……」
「あの二人が力を合わせれば私でも勝てない。だから甘く見ない方が良い」
「よく言うわよ、あたしなんてあんた達と比べれば大した力は持ってないってのに……いや、それはともかく早くこいつらを運びましょう」
見張りの兵士達が気絶している隙に、ナイ達は地下に続く階段の中に移動させて寝かしつけて置く。ここでナイは兵士から装備を奪って変装できないかと考えたが、どちらも慎重と体格の問題で変装するのは難しそうだった。
「兵士に変装して外へ逃げ出すのは無理そうね……そもそも二人分しかないわ」
「なら、どうするの?」
「とりあえず、使えそうな物は拝借しましょう」
兵士が身に付けていた武器は剣だけであり、とりあえずはないよりはマシなので持っていく。この時に剣を手にしたのはナイとヒナであり、モモは素手で戦えるがミイナは地下から持ち出した鉄球で戦うつもりらしい。
「私は普通の剣は苦手だからヒナが使って」
「私も剣なんて持つの久しぶりなんだけど……仕方ないわね」
「う~ん、やっぱり軽すぎるな」
ナイは兵士の剣を手にするとどうしても旋斧と比べて軽く感じ過ぎてしまい、違和感を拭えない。もっと重量のある武器があればよかったのだが、贅沢は言っていられない。
流石に剣の刃を折って短剣のように扱う事は出来ず、とりあえずは腰に剣を差し込んだナイは通路の様子を伺う。ここから先は慎重かつ迅速に動かねばならず、もしも見張りの兵士がいない事に気付かれたらすぐに警戒態勢に入るだろう。
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当初の作戦では女のふりをしてバーリと面会する時に拘束し、その後はバーリを脅してミイナの居場所を吐かせた後、モウタツの馬車で全員逃げる予定だったが、作戦は失敗に終わった。
モウタツとヒイロがまだ残っていればいいのだが、もしかしたら二人とも怪しまれて捕まっている可能性もある。最悪の場合、モウタツを殺すために派遣された暗殺者が屋敷に訪れているかもしれない。
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