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逃れられぬ運命
第148話 シノビ兄妹
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「兄者、拙者達の名前も何時の間にか有名になっているようでござる」
「忍は本来は忍ばねばならぬが……まあ、名前が売れればそれだけ仕事の依頼も来る。悪くはないな」
「そうか、お前達があの噂の兄妹で冒険者をやっているという二人組か……王都にも噂は届いているぞ」
どうやら現れた二人組は本当の兄妹らしく、男の方が兄で女の方が妹らしい。ちなみに男の方は顔の目元の部分を仮面で隠しており、女の方は口元をマフラーで覆い隠している。
二人とも昼間から黒装束という目立つ格好をしているにも関わらず、何故か気配が一切感じられず、目の前にいるはずなのに一瞬でも気を逸らせば消えたような錯覚に陥る。この事から二人が「隠密」を発動させて存在感を薄くしているのは間違いなかった。
(この二人、やっぱり只者じゃない……)
ナイは二人と相対しているだけでも緊張感を抱き、もしもこの二人がその気になれば存在を悟られずにナイを始末する事も出来ると思われた。
ビャクがいなければナイは絶対にこの二人の存在を気付けず、赤毛熊のような圧倒的な暴力のような敵ならばともかく、ここまで存在感を消すような相手にはナイは対抗する手段は持ち合わせていない。
(さっき、王都にも噂が届いているとか言っていたけど……きっと、凄い冒険者なんだろうな)
心の中でナイは二人が凄腕の冒険者だろうと思い込んで見つめていると、妹の方が唐突に照れ臭そうな表情を浮かべてナイに告げる。
「別にそれほどでもないでござるよ」
「えっ!?」
「……クノ、少年が驚いているだろう。読唇術を使うな」
「はっ!?しまった、つい癖で……驚かせてしまって申し訳ないでござる」
「い、いえ……あの、どうして考えている事が分かったんですか?」
クノと呼ばれた女性は慌てて謝罪するが、ナイとしては彼女が自分の考えを読み取った事に動揺を隠せず、素直に聞いてみる。すると女性は優しく答えてくれた。
「拙者は読唇術の技能も扱えるでござる。この技能は相手の顔を見て何を考えているのかを察する事ができるでござる。本来は唇の動きを見て何を話しているのか察する技術でござるが、読唇術を極めれば何を考えているのか見抜く事も……」
「クノ、ぺらぺらと自分の能力を明かすな」
「はっ!?しまったでござる!!つい癖で……今のは忘れて欲しいでござる」
「は、はあっ……」
兄に注意されたクノは申し訳なさそうな表情を浮かべるが、一方でナイは読唇術なる技能が存在する事を初めて知り、まさか他人の考えている事まで見抜く能力があるとは思いもしなかった。
クノの口調によると読唇術は本来は唇の動きを呼んで相手が何を話しているのかを察する技能のようだが、読唇術を極めると相手の考えまで読み解けるらしい。ナイは自分も覚えられるだろうかと考えていると、ここで騎士団長が口を挟む。
「そんな事よりもお前達がこの街に派遣された冒険者で間違いないのか?ならば頼みがある、我々の代わりにこの街の警備を協力してくれ」
「断る。我々の依頼主に頼まれたのは街中に侵入した魔物の討伐、部外者に指図される謂れはない」
「貴様!!誰に向かってそのような口を!!」
「勘違いするな、我々は冒険者だ。そちらの部下ではない」
「兄者、喧嘩は駄目でござるよ」
仮にも王国騎士団である銀狼騎士団の団長に対してクノの兄は態度も改めず、堂々と彼の頼みを断る。その態度に配下の騎士が激高するが、それに対してクノが慌てて兄を宥めた。
どうやら王国の騎士団といっても冒険者を指図する程の権力はないらしく、それは騎士団長も理解しているのか怒りを抱く騎士を抑えて二人に頼む。
「部下の非礼を詫びよう、確かに君達に依頼したのは私ではない。君達が私のいう事を聞く道理はないが……この街の現状を見てくれ。未だに街の住民は不安を抱いている。だからこれは命令ではなく、頼み事だと思ってくれ。この街の人たちの事をどうか気にかけてくれ……」
「言われずともそのつもりだ。我々もこの街の人間のために全力を尽くす、これで話は終わりだ。一足先に我々は冒険者ギルドへ向かわせてもらうぞ」
「あ、兄者!?待ってほしいでござる!!」
騎士団長の言葉に兄の方は頷き、音も立てずに駆け出す。その兄を追うためにクノも駆け出し、この時に二人は途轍もない速度で駆け出す。
(な、なんて足の速さだ……馬に乗ってもあんなに速く走れるか分からないぞ)
目に留まらぬ速度で駆け抜ける二人組に対してナイは驚き、まるでコボルト亜種や獣化したガロに匹敵する移動速度だった。二人の姿が見えなくなると、騎士団長は改めてナイ達と向かい合う。
「忍は本来は忍ばねばならぬが……まあ、名前が売れればそれだけ仕事の依頼も来る。悪くはないな」
「そうか、お前達があの噂の兄妹で冒険者をやっているという二人組か……王都にも噂は届いているぞ」
どうやら現れた二人組は本当の兄妹らしく、男の方が兄で女の方が妹らしい。ちなみに男の方は顔の目元の部分を仮面で隠しており、女の方は口元をマフラーで覆い隠している。
二人とも昼間から黒装束という目立つ格好をしているにも関わらず、何故か気配が一切感じられず、目の前にいるはずなのに一瞬でも気を逸らせば消えたような錯覚に陥る。この事から二人が「隠密」を発動させて存在感を薄くしているのは間違いなかった。
(この二人、やっぱり只者じゃない……)
ナイは二人と相対しているだけでも緊張感を抱き、もしもこの二人がその気になれば存在を悟られずにナイを始末する事も出来ると思われた。
ビャクがいなければナイは絶対にこの二人の存在を気付けず、赤毛熊のような圧倒的な暴力のような敵ならばともかく、ここまで存在感を消すような相手にはナイは対抗する手段は持ち合わせていない。
(さっき、王都にも噂が届いているとか言っていたけど……きっと、凄い冒険者なんだろうな)
心の中でナイは二人が凄腕の冒険者だろうと思い込んで見つめていると、妹の方が唐突に照れ臭そうな表情を浮かべてナイに告げる。
「別にそれほどでもないでござるよ」
「えっ!?」
「……クノ、少年が驚いているだろう。読唇術を使うな」
「はっ!?しまった、つい癖で……驚かせてしまって申し訳ないでござる」
「い、いえ……あの、どうして考えている事が分かったんですか?」
クノと呼ばれた女性は慌てて謝罪するが、ナイとしては彼女が自分の考えを読み取った事に動揺を隠せず、素直に聞いてみる。すると女性は優しく答えてくれた。
「拙者は読唇術の技能も扱えるでござる。この技能は相手の顔を見て何を考えているのかを察する事ができるでござる。本来は唇の動きを見て何を話しているのか察する技術でござるが、読唇術を極めれば何を考えているのか見抜く事も……」
「クノ、ぺらぺらと自分の能力を明かすな」
「はっ!?しまったでござる!!つい癖で……今のは忘れて欲しいでござる」
「は、はあっ……」
兄に注意されたクノは申し訳なさそうな表情を浮かべるが、一方でナイは読唇術なる技能が存在する事を初めて知り、まさか他人の考えている事まで見抜く能力があるとは思いもしなかった。
クノの口調によると読唇術は本来は唇の動きを呼んで相手が何を話しているのかを察する技能のようだが、読唇術を極めると相手の考えまで読み解けるらしい。ナイは自分も覚えられるだろうかと考えていると、ここで騎士団長が口を挟む。
「そんな事よりもお前達がこの街に派遣された冒険者で間違いないのか?ならば頼みがある、我々の代わりにこの街の警備を協力してくれ」
「断る。我々の依頼主に頼まれたのは街中に侵入した魔物の討伐、部外者に指図される謂れはない」
「貴様!!誰に向かってそのような口を!!」
「勘違いするな、我々は冒険者だ。そちらの部下ではない」
「兄者、喧嘩は駄目でござるよ」
仮にも王国騎士団である銀狼騎士団の団長に対してクノの兄は態度も改めず、堂々と彼の頼みを断る。その態度に配下の騎士が激高するが、それに対してクノが慌てて兄を宥めた。
どうやら王国の騎士団といっても冒険者を指図する程の権力はないらしく、それは騎士団長も理解しているのか怒りを抱く騎士を抑えて二人に頼む。
「部下の非礼を詫びよう、確かに君達に依頼したのは私ではない。君達が私のいう事を聞く道理はないが……この街の現状を見てくれ。未だに街の住民は不安を抱いている。だからこれは命令ではなく、頼み事だと思ってくれ。この街の人たちの事をどうか気にかけてくれ……」
「言われずともそのつもりだ。我々もこの街の人間のために全力を尽くす、これで話は終わりだ。一足先に我々は冒険者ギルドへ向かわせてもらうぞ」
「あ、兄者!?待ってほしいでござる!!」
騎士団長の言葉に兄の方は頷き、音も立てずに駆け出す。その兄を追うためにクノも駆け出し、この時に二人は途轍もない速度で駆け出す。
(な、なんて足の速さだ……馬に乗ってもあんなに速く走れるか分からないぞ)
目に留まらぬ速度で駆け抜ける二人組に対してナイは驚き、まるでコボルト亜種や獣化したガロに匹敵する移動速度だった。二人の姿が見えなくなると、騎士団長は改めてナイ達と向かい合う。
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