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忌み子と呼ばれた少年
第83話 赤毛熊の住処
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――強化薬をドルトンから盗み出した後、ナイは家の倉庫に戻る。アルが生きていた頃は共に家で暮らしていたが、彼が死んでからは倉庫で過ごす事が多い。
理由としては倉庫には彼が赤毛熊を倒すために用意してきた代物が揃えられており、その中には毒物の類も存在した。調合の技能を利用し、山で採取できる毒草などを利用して毒薬などの製作も行う。
いくら調合の技能があるとはいえ、薬学の知識がないはずのナイが毒薬を製作できたのかというと、それは街に暮らしているアルの友人で医者でもあるイーシャンから受け取った書物のお陰だった。
(イーシャンさんが薬草の調合も記されているから貰っておいて良かった……薬草以外にも色々な薬の調合法も記されている)
イーシャンが貸してくれた薬学の書物には回復薬以外にも様々な薬の調合法が記されており、この書物は彼が独学で研究して作り出した本である。イーシャン本人は書物に書かれている全ての薬の調合法を記憶しているのでナイに貸し与えてくれた。
ナイが借りた本には回復薬の調合法だけではなく、その他にも滋養強壮の効果のある薬や、植物系の毒を抜く解毒剤なども記されていた。しかし、中には魔物避けのための毒薬の製造法までも記されていた。
本を貸した時はイーシャンがナイが毒薬などを作るはずがないと思い込んで渡し、そもそも毒薬を作り出す素材を子供のナイが簡単に用意できるはずがないと考えていた。だが、彼はナイが普通の子供ではない事を知らず、ナイは目的のためならば毒薬でも利用する事を決める。
「よし、出来たぞ……これならあいつでも効くはずだ」
数種類の毒草を組み合わせ、それを磨り潰した後は刃物に塗り込む。この毒は肌に触れるだけでは特に害はないが、もしも体内に混入すればオーク程度の相手ならば身体が麻痺して動かなくなる。
即効性の高い毒ではあるが、この毒の特徴は相手を殺すためではなく、麻痺させて動けなくさせるための毒である。この毒を使う時があれば、アルが作ってくれた「刺剣」に毒を塗り込み、それを相手に向けて刺す時になるだろう。
(赤毛熊は毒に耐性があるらしいから、この程度の武器じゃ倒せない。でも、一瞬でもあいつの動きを止められたら……)
赤毛熊を倒すためにナイは赤毛熊の生態も調べ上げ、魔物に関する図鑑やアルから教わった知識を思い返す。赤毛熊は毒物にもある程度の耐性を持つため、ナイが用意した毒は効かない可能性もある。
だが、もしも毒を撃ち込んでほんの僅かな時間でも身体を麻痺させる事が出来れば十分であり、全ての刺剣に毒を塗り込むと今度は強化薬と回復薬の準備を行う。この時にナイは家の前の花壇に向かう。
「よし、薬草も育ってきてるな……栽培の技能を覚えておいて良かった」
この二年の間にナイは山で採取した薬草の栽培を行い、最初の内は上手くいかずに何度も薬草を枯らしてしまった。しかし、魔物を倒してSPを獲得した際にナイは「栽培」の技能を習得し、その結果は薬草の栽培に成功した。
現在のナイの庭には何種類かの野草が生えており、その中には満月のような葉の形をした薬草が存在する。名前は満月草と呼ばれ、自然界でも滅多に手に入らない代物であり、通常よりも高い回復効果を誇る。
「これを使えば上等な回復薬が出来るはず……」
栽培の技能で薬草を育て上げ、それを利用してナイは回復薬を調合する。余った分の回復薬は街に売りに出して金銭を稼ぎ、その金を使って更に色々な道具を取りそろえた。
結果としてナイの倉庫には魔物を倒すための道具が保管され、調合器具も取りそろえられていた。これらはナイが二年も費やして集めた代物であり、赤毛熊を倒すためだけにナイは万全の準備を整えた。
「これで準備万端た。後はあいつを呼び寄せる方法か……」
赤毛熊と戦う準備が出来ても肝心の赤毛熊が何処にいるのかが問題であり、赤毛熊の居場所を探し出すか、あるいは誘き寄せる必要がある。
深淵の森に赤毛熊が暮らしている事は確かだが、赤毛熊は時折外にも出向くため、そこを狙うという手もある。だが、こちらの方法だと何時何処で赤毛熊が現れるのか分からず、待ち伏せするにしても時間が掛かり過ぎた。
しかし、深淵の森に乗り込むとしても広大な森の中で赤毛熊を見つけ出すのも至難であるため、どちらの方法も難しい。以前に赤毛熊と遭遇した時は運が悪かっただけであり、広大な深淵の森で何の手掛かりもなし赤毛熊を探し出すのは難しい。
(奴を誘き寄せる方法があれば……)
赤毛熊だけを深淵の森から引き寄せる方法など簡単には思い浮かばず、どうするべきかとナイは悩むと、この時に彼の脳裏にビャクの姿が思い浮かぶ。ビャクならば鋭い嗅覚で赤毛熊の居場所を探し出せるかもしれない。
(ビャクに協力してもらえば……でも、それだとビャクを巻き込むかもしれない)
ビャクを味方に付ければ赤毛熊を見つけ出せるだろうが、その場合はビャクも赤毛熊との戦闘に巻き込む可能性が高い。できる事ならばナイは自分だけの力でアルの仇を討ちたいと思っているが、どんな方法でも赤毛熊を討てるのであれば手段は選ばない事は決めていた。
理由としては倉庫には彼が赤毛熊を倒すために用意してきた代物が揃えられており、その中には毒物の類も存在した。調合の技能を利用し、山で採取できる毒草などを利用して毒薬などの製作も行う。
いくら調合の技能があるとはいえ、薬学の知識がないはずのナイが毒薬を製作できたのかというと、それは街に暮らしているアルの友人で医者でもあるイーシャンから受け取った書物のお陰だった。
(イーシャンさんが薬草の調合も記されているから貰っておいて良かった……薬草以外にも色々な薬の調合法も記されている)
イーシャンが貸してくれた薬学の書物には回復薬以外にも様々な薬の調合法が記されており、この書物は彼が独学で研究して作り出した本である。イーシャン本人は書物に書かれている全ての薬の調合法を記憶しているのでナイに貸し与えてくれた。
ナイが借りた本には回復薬の調合法だけではなく、その他にも滋養強壮の効果のある薬や、植物系の毒を抜く解毒剤なども記されていた。しかし、中には魔物避けのための毒薬の製造法までも記されていた。
本を貸した時はイーシャンがナイが毒薬などを作るはずがないと思い込んで渡し、そもそも毒薬を作り出す素材を子供のナイが簡単に用意できるはずがないと考えていた。だが、彼はナイが普通の子供ではない事を知らず、ナイは目的のためならば毒薬でも利用する事を決める。
「よし、出来たぞ……これならあいつでも効くはずだ」
数種類の毒草を組み合わせ、それを磨り潰した後は刃物に塗り込む。この毒は肌に触れるだけでは特に害はないが、もしも体内に混入すればオーク程度の相手ならば身体が麻痺して動かなくなる。
即効性の高い毒ではあるが、この毒の特徴は相手を殺すためではなく、麻痺させて動けなくさせるための毒である。この毒を使う時があれば、アルが作ってくれた「刺剣」に毒を塗り込み、それを相手に向けて刺す時になるだろう。
(赤毛熊は毒に耐性があるらしいから、この程度の武器じゃ倒せない。でも、一瞬でもあいつの動きを止められたら……)
赤毛熊を倒すためにナイは赤毛熊の生態も調べ上げ、魔物に関する図鑑やアルから教わった知識を思い返す。赤毛熊は毒物にもある程度の耐性を持つため、ナイが用意した毒は効かない可能性もある。
だが、もしも毒を撃ち込んでほんの僅かな時間でも身体を麻痺させる事が出来れば十分であり、全ての刺剣に毒を塗り込むと今度は強化薬と回復薬の準備を行う。この時にナイは家の前の花壇に向かう。
「よし、薬草も育ってきてるな……栽培の技能を覚えておいて良かった」
この二年の間にナイは山で採取した薬草の栽培を行い、最初の内は上手くいかずに何度も薬草を枯らしてしまった。しかし、魔物を倒してSPを獲得した際にナイは「栽培」の技能を習得し、その結果は薬草の栽培に成功した。
現在のナイの庭には何種類かの野草が生えており、その中には満月のような葉の形をした薬草が存在する。名前は満月草と呼ばれ、自然界でも滅多に手に入らない代物であり、通常よりも高い回復効果を誇る。
「これを使えば上等な回復薬が出来るはず……」
栽培の技能で薬草を育て上げ、それを利用してナイは回復薬を調合する。余った分の回復薬は街に売りに出して金銭を稼ぎ、その金を使って更に色々な道具を取りそろえた。
結果としてナイの倉庫には魔物を倒すための道具が保管され、調合器具も取りそろえられていた。これらはナイが二年も費やして集めた代物であり、赤毛熊を倒すためだけにナイは万全の準備を整えた。
「これで準備万端た。後はあいつを呼び寄せる方法か……」
赤毛熊と戦う準備が出来ても肝心の赤毛熊が何処にいるのかが問題であり、赤毛熊の居場所を探し出すか、あるいは誘き寄せる必要がある。
深淵の森に赤毛熊が暮らしている事は確かだが、赤毛熊は時折外にも出向くため、そこを狙うという手もある。だが、こちらの方法だと何時何処で赤毛熊が現れるのか分からず、待ち伏せするにしても時間が掛かり過ぎた。
しかし、深淵の森に乗り込むとしても広大な森の中で赤毛熊を見つけ出すのも至難であるため、どちらの方法も難しい。以前に赤毛熊と遭遇した時は運が悪かっただけであり、広大な深淵の森で何の手掛かりもなし赤毛熊を探し出すのは難しい。
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赤毛熊だけを深淵の森から引き寄せる方法など簡単には思い浮かばず、どうするべきかとナイは悩むと、この時に彼の脳裏にビャクの姿が思い浮かぶ。ビャクならば鋭い嗅覚で赤毛熊の居場所を探し出せるかもしれない。
(ビャクに協力してもらえば……でも、それだとビャクを巻き込むかもしれない)
ビャクを味方に付ければ赤毛熊を見つけ出せるだろうが、その場合はビャクも赤毛熊との戦闘に巻き込む可能性が高い。できる事ならばナイは自分だけの力でアルの仇を討ちたいと思っているが、どんな方法でも赤毛熊を討てるのであれば手段は選ばない事は決めていた。
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