66 / 1,110
忌み子と呼ばれた少年
第66話 魔法金属と魔道具
しおりを挟む
「はっ……?」
「えっ……今の、何が起きたの?」
「な、何だこの盾!?」
「クゥ~ンッ……」
吹き飛んだホブゴブリンの姿を見てナイ達は動揺を隠せず、ゴマン自身も何が起きたのか分からない様子で家宝の盾に視線を向ける。ナイ達が見た限りではゴマンがホブゴブリンに目掛けて盾で身を庇いながら体当たりした瞬間、衝撃波が発生してホブゴブリンが吹き飛んだようにしか見えなかった。
ナイ達は地べたに座り込むゴマンの元に駆けつけ、アルはゴマンが手にしている盾を掴む。彼は改めて盾を調べるために無理やりゴマンから取り上げる。
「ちょ、ちょっと見せてみろ!!」
「うわっ!?な、何だよ急に……」
「ゴマン、大丈夫?怪我をしてない?」
「あ、ああ……平気だよ」
ホブゴブリンを吹き飛ばした時にゴマンも後ろに転んだが、服が汚れた程度で彼自身は特に怪我はなかった。その様子を見てアルはゴマンから取り上げた盾を軽く指で叩き、続いて近くにある石を拾い上げる。
「こいつはもしかしたら……悪ガキ!!こいつを持って立て!!」
「こ、今度は何だよ!?」
「爺ちゃん、何をする気なの?」
「ウォンッ?」
アルはゴマンを立ち上がらせると、彼に盾を返して自分は少し離れた位置に移動を行う。そして小石を握りしめると、ゴマンに目掛けて放り込む。
「しっかりそいつを持ってろよ……うおらぁっ!!」
「ひいっ!?」
「うわっ!?」
「キャインッ!?」
ゴマンに目掛けてアルは全力で小石を投げ込むと、それに対してゴマンは反射的に盾を身構えた瞬間、小石が盾の表面に触れた瞬間に再び衝撃波が発生した。その衝撃波によって小石は派手に吹き飛ばされ、ゴマンの正面に位置した樹木にめり込む。
小石は完全に樹木の中に埋まってしまい、その様子を見届けたナイとアルは信じられない表情を浮かべ、ゴマン自身も激しく動揺する。
「な、何だ!?今、何が起きたんだ!?」
「信じられねえ……こいつは魔道具だ!!」
「魔道……具?」
「そうだ、魔法金属で構成された特殊な道具の事だ!!お前が経験石を壊す時に使う壊裂もそのうちのひとつだ!!」
アルの説明を聞いてナイは経験石を破壊するときに利用する万力のような道具を思い出し、名前は「壊裂」というあの道具も魔道具と呼ばれる特殊道具の一種だと知る。
どうやらゴマンが身に付けている盾は普通の金属で構成された道具ではなく、アルによると魔法金属と呼ばれる特殊な金属で構成された代物らしい。
「魔法金属は普通の金属とは違って特別な力があるんだ。種類はいくつかあるが、魔法金属は希少だから滅多に手に入らねえ……加工自体も難しいから魔道具を作れるのはドワーフぐらいだ」
「で、でも……そんな話、僕は何も聞かされてなかったけど」
「なんで知らないんだよ!!お前の家の家宝だろうが!?」
「魔法金属……爺ちゃん、ならこの剣はどうなの?」
ナイは背中に背負っている旋斧に視線を向け、この旋斧も魔道具の類ではないかと考える。アルの家に伝わる家宝であり、100年以上も前に作り出されているのに一度も壊れた事がない剣だった。
しかし、仮に旋斧が魔法金属で構成されているといってもゴマンが所有する盾のような特別な力は今の所は特に感じられず、彼が所有する盾とは根本的に違う魔法金属が使用されているのかもしれない。
「旋斧に魔法金属が使用されているかは俺にも分からない。普通の金属じゃないのは確かだが、そいつに特別な力があるとは一度も聞いた事がないな」
「そうなんだ……」
「だが、この悪ガキが持っている盾は本物だ。こいつは恐らく、外部から受けた衝撃を跳ね返す機能を持っている。しかも普通に跳ね返すだけじゃない、倍ぐらいの威力に増加させて吹き飛ばすんだ」
「そ、そんな力があったのか!?凄い、これなら僕も冒険者に……あいたぁっ!?」
「馬鹿野郎、こいつは今のお前には扱い切れないだろうが……敵を吹き飛ばすどころか自分も倒れ込むようなら宝の持ち腐れだ」
調子に乗ったゴマンにアルは彼の頭を小突き、確かに彼が所持する盾は優れた代物である事は間違いないが、肝心の使い手が未熟では意味を為さない。
今回はホブゴブリンを吹き飛ばす事に成功したが、この盾の本来の使い方は相手の方から攻撃を仕掛けた際、それを跳ね返す使い方が正しい。ゴマンの場合は盾で自ら突っ込み、それが上手く反発して相手を吹き飛ばしたに過ぎない。
「こいつは滅多な事に使うんじゃないぞ。だいたい、盾がない時に魔物に襲われたらおどうやって戦うつもりだ?ちゃんと盾に頼る以外の戦い方も覚えろ!!」
「うぐぐっ……頭をぐりぐりするなよ!!」
「まあまあ……でも、ホブゴブリンがこんな場所にまでいるなんて思わなかったよ」
「クゥンッ……」
ナイの言葉を聞いてその点はアルも気になっていた。この森にはナイも頻繁に立ち寄っているが、ホブゴブリンと遭遇したのは初めての出来事だった。以前からゴブリンは見かける事はあったが、ホブゴブリンのような上位種までいるとは思いもしなかった。
「えっ……今の、何が起きたの?」
「な、何だこの盾!?」
「クゥ~ンッ……」
吹き飛んだホブゴブリンの姿を見てナイ達は動揺を隠せず、ゴマン自身も何が起きたのか分からない様子で家宝の盾に視線を向ける。ナイ達が見た限りではゴマンがホブゴブリンに目掛けて盾で身を庇いながら体当たりした瞬間、衝撃波が発生してホブゴブリンが吹き飛んだようにしか見えなかった。
ナイ達は地べたに座り込むゴマンの元に駆けつけ、アルはゴマンが手にしている盾を掴む。彼は改めて盾を調べるために無理やりゴマンから取り上げる。
「ちょ、ちょっと見せてみろ!!」
「うわっ!?な、何だよ急に……」
「ゴマン、大丈夫?怪我をしてない?」
「あ、ああ……平気だよ」
ホブゴブリンを吹き飛ばした時にゴマンも後ろに転んだが、服が汚れた程度で彼自身は特に怪我はなかった。その様子を見てアルはゴマンから取り上げた盾を軽く指で叩き、続いて近くにある石を拾い上げる。
「こいつはもしかしたら……悪ガキ!!こいつを持って立て!!」
「こ、今度は何だよ!?」
「爺ちゃん、何をする気なの?」
「ウォンッ?」
アルはゴマンを立ち上がらせると、彼に盾を返して自分は少し離れた位置に移動を行う。そして小石を握りしめると、ゴマンに目掛けて放り込む。
「しっかりそいつを持ってろよ……うおらぁっ!!」
「ひいっ!?」
「うわっ!?」
「キャインッ!?」
ゴマンに目掛けてアルは全力で小石を投げ込むと、それに対してゴマンは反射的に盾を身構えた瞬間、小石が盾の表面に触れた瞬間に再び衝撃波が発生した。その衝撃波によって小石は派手に吹き飛ばされ、ゴマンの正面に位置した樹木にめり込む。
小石は完全に樹木の中に埋まってしまい、その様子を見届けたナイとアルは信じられない表情を浮かべ、ゴマン自身も激しく動揺する。
「な、何だ!?今、何が起きたんだ!?」
「信じられねえ……こいつは魔道具だ!!」
「魔道……具?」
「そうだ、魔法金属で構成された特殊な道具の事だ!!お前が経験石を壊す時に使う壊裂もそのうちのひとつだ!!」
アルの説明を聞いてナイは経験石を破壊するときに利用する万力のような道具を思い出し、名前は「壊裂」というあの道具も魔道具と呼ばれる特殊道具の一種だと知る。
どうやらゴマンが身に付けている盾は普通の金属で構成された道具ではなく、アルによると魔法金属と呼ばれる特殊な金属で構成された代物らしい。
「魔法金属は普通の金属とは違って特別な力があるんだ。種類はいくつかあるが、魔法金属は希少だから滅多に手に入らねえ……加工自体も難しいから魔道具を作れるのはドワーフぐらいだ」
「で、でも……そんな話、僕は何も聞かされてなかったけど」
「なんで知らないんだよ!!お前の家の家宝だろうが!?」
「魔法金属……爺ちゃん、ならこの剣はどうなの?」
ナイは背中に背負っている旋斧に視線を向け、この旋斧も魔道具の類ではないかと考える。アルの家に伝わる家宝であり、100年以上も前に作り出されているのに一度も壊れた事がない剣だった。
しかし、仮に旋斧が魔法金属で構成されているといってもゴマンが所有する盾のような特別な力は今の所は特に感じられず、彼が所有する盾とは根本的に違う魔法金属が使用されているのかもしれない。
「旋斧に魔法金属が使用されているかは俺にも分からない。普通の金属じゃないのは確かだが、そいつに特別な力があるとは一度も聞いた事がないな」
「そうなんだ……」
「だが、この悪ガキが持っている盾は本物だ。こいつは恐らく、外部から受けた衝撃を跳ね返す機能を持っている。しかも普通に跳ね返すだけじゃない、倍ぐらいの威力に増加させて吹き飛ばすんだ」
「そ、そんな力があったのか!?凄い、これなら僕も冒険者に……あいたぁっ!?」
「馬鹿野郎、こいつは今のお前には扱い切れないだろうが……敵を吹き飛ばすどころか自分も倒れ込むようなら宝の持ち腐れだ」
調子に乗ったゴマンにアルは彼の頭を小突き、確かに彼が所持する盾は優れた代物である事は間違いないが、肝心の使い手が未熟では意味を為さない。
今回はホブゴブリンを吹き飛ばす事に成功したが、この盾の本来の使い方は相手の方から攻撃を仕掛けた際、それを跳ね返す使い方が正しい。ゴマンの場合は盾で自ら突っ込み、それが上手く反発して相手を吹き飛ばしたに過ぎない。
「こいつは滅多な事に使うんじゃないぞ。だいたい、盾がない時に魔物に襲われたらおどうやって戦うつもりだ?ちゃんと盾に頼る以外の戦い方も覚えろ!!」
「うぐぐっ……頭をぐりぐりするなよ!!」
「まあまあ……でも、ホブゴブリンがこんな場所にまでいるなんて思わなかったよ」
「クゥンッ……」
ナイの言葉を聞いてその点はアルも気になっていた。この森にはナイも頻繁に立ち寄っているが、ホブゴブリンと遭遇したのは初めての出来事だった。以前からゴブリンは見かける事はあったが、ホブゴブリンのような上位種までいるとは思いもしなかった。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
娘と二人、異世界に来たようです……頑張る母娘の異世界生活……ラブ少し!
十夜海
ファンタジー
母一人、子一人。
天涯孤独でたった二人の家族。
でも、高校の入学式へ向かう途中に居眠り運転のダンプカーに突っ込まれて二人仲良く死亡……。
私はどーでもいい、だって娘まで生まれた。でも、娘はまだ16歳なりかけ。なんで?なんで死ななきゃならない。
厳しい受験を乗り越えて、ようやくキャピキャピ楽しい高校生活だ。彼氏だってできるかもしれない。
頑張ったのに。私だって大学までやるために身を粉にして頑張ったのだ。
大学どころか、高校生活までできないなんて!
ひどい。
願ったのは、娘の幸せと恋愛!
気づけば異世界に……。
生きてる?やったね!
ん?でも高校ないじゃん!
え?魔法?あ、使える。
あれ?私がちっさい?
あれ?私……若い???
あれぇ?
なんとか娘を幸せな玉の輿に乗せるために頑張る母。
そんな母娘の異世界生活。
でも……おかしいな?なんで私が子供なんですか?
##R18で『なろう』で投稿中です。
ラブ少なめなので、R15でファンタジー系で手直ししつつ、こちらに投稿させていただきます。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる