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忌み子と呼ばれた少年
第62話 山の主
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ナイの意識が現実へと戻ると、彼の目の前には倒れ込んだオークの姿があった。両腕を切り落とされたオークは自分を見下ろすナイに恐怖の表情を浮かべ、必死に逃走を開始する。
「フゴォッ……!?」
「あっ……」
逃げ出したオークの姿を見てナイは追いかけようとしたが、その前に自分の腕の確認を行う。攻撃の際にナイは「剛力」を発動させ、全力を越えた一撃を繰り出した。
剛力を使うのは久しぶりだったので不安はあったが、2年前の時と違って身体が動けない程の筋肉痛に襲われる様子はなく、せいぜい腕が少し痺れた程度だった。
(よし、これならまだ戦える。ちゃんと毎日鍛えたお陰だ!!)
昔のナイならば一瞬でも剛力を発動させれば倒れていただろうが、現在のナイは身体を鍛えたお陰で2年前よりも筋力が身に着いており、剛力を発動させた時に肉体の負荷も耐え切れる。
それどころか2年前よりも筋力が身に着いたおかげで予想を超える攻撃を繰り出す事に成功し、今のナイならば2年前に苦戦したホブゴブリンでも倒せる実力は身に着けていた。
(オークは……放っておこう、それよりもビャクは!?)
逃げ出したオークを追いかける事はせず、先ほど樹木に叩きつけられたビャクを心配したナイは彼が倒れた場所へ振り返る。そこには弱々しい鳴き声をあげながらも立ち上がるビャクの姿が存在した。
「ク、クゥ~ンッ……」
「ビャク、大丈夫!?」
「ウォンッ……」
ナイの元にビャクはよろけながらも移動すると、彼の前で倒れ込む。その様子を見てナイは慌てて彼を抱き上げ、怪我の具合を確かめる。
「ビャク、大丈夫か……待ってろ、すぐに治療してやるからな!!」
「ワフッ……」
逃走したオークなど無視してナイはビャクを一刻も早く助けるため、手持ちの傷薬を取り出す。ナイが常備している傷薬は回復効果が高い薬草を材料にしているため、魔物にも効果はあった。
子供の頃はナイは粉末状の薬しか持ち合わせていなかったが、2年ほど前からナイはちょくちょく街に出向いており、アルの知り合いの医者の元で様々な薬の調合法を学んでいた。
「動くなよ、この薬を塗ればよくなるからな……」
「クゥ~ンッ……」
樹木に叩きつけられた際にビャクの背中には血が滲んでおり、その傷跡にナイは薬草と他に数種類の野草を組み合わせた塗薬を傷口に塗り込む。この薬は止血効果もあり、傷口を塞ぐように塗り込むとビャクも顔色が良くなる。
「よし、これで大丈夫……といっても、しばらくしたら痛みも引いて動けるようになるからな」
「ウォンッ……」
「今度からは戦う時は気を付けないと駄目だぞ。それにしてもこんな村の近くまでオークが現れるなんて……」
ナイは山の中にオークと遭遇した事に疑問を抱き、少し前まではこの辺でオークなどは見かけなかった。今後の狩猟の時はより一層に気を付ける必要があり、今日の所はナイは怪我をしたビャクを連れて村へ帰る事にした。
「ビャク、怪我が治るまで一緒にいよう。村の皆にもちゃんと説明するから、いい子にするんだぞ」
「ウォンッ?」
怪我をしたビャクをナイは抱き上げ、村に連れ帰る事にした。このまま怪我をした彼を放置したら山の魔物に殺される可能性も高く、それぐらいなれば連れ帰って村の皆を説得して彼を村で飼えないのか相談する事にした――
――同時刻、両腕を切られて逃げていたオークは小川が流れている場所まで辿り着き、疲れ果てた表情で夢中に川の中に顔を突っ込む。
「フガァッ……ブフゥッ!!」
水を飲み込んだ事で少しは落ち着いたのか、オークはその場にへたり込み、切られた両腕に視線を向ける。両腕を失ったオークは先ほどの人間の少年の事を思い出し、恐怖で身体を震わせる。
「プギィイイッ……!!」
オークの鳴き声が周囲へ響き渡り、両腕を失った事の悲しみの咆哮を放つ。だが、その声に反応するようにオークの後方から大きな足音が近付いてきた。
足音を耳にしたオークは身体を硬直させ、どんどんと大きくなってくる足音を耳にして今度は身体を震わせる。ゆっくりと振り返ると、木々の間から身の丈が3メートル近くは存在する巨大な熊が出現した。
――グゥウウウッ……!!
木々を潜り抜けて姿を現したのは全身が血の様に赤黒い毛皮に覆われた魔獣であり、その外見は熊と酷似しているが、普通の熊よりも体格が大きい。しかも異様なまでに手足に生えている爪が鋭く尖っていた。
この魔獣の名前は「赤毛熊」と呼ばれ、この山の生態系の頂点に立つ存在だった。外見は熊と似ている事から名付けられ、名前の通りに赤毛に覆われた魔獣である。
普通の熊程度であれば両腕を失っていてもオークにとっては脅威にはなり得ないが、この赤毛熊の場合は逆にオークを捕食対象にするほどの驚異的な戦闘力を誇り、しかも一度目を付けられると絶対に獲物を諦めない習性を持つ。
「ガァアアアアッ!!」
「プギャアアアッ……!?」
赤毛熊の咆哮とオークの悲鳴が山の中に響き渡り、小川の流れる水が血に染まった――
「フゴォッ……!?」
「あっ……」
逃げ出したオークの姿を見てナイは追いかけようとしたが、その前に自分の腕の確認を行う。攻撃の際にナイは「剛力」を発動させ、全力を越えた一撃を繰り出した。
剛力を使うのは久しぶりだったので不安はあったが、2年前の時と違って身体が動けない程の筋肉痛に襲われる様子はなく、せいぜい腕が少し痺れた程度だった。
(よし、これならまだ戦える。ちゃんと毎日鍛えたお陰だ!!)
昔のナイならば一瞬でも剛力を発動させれば倒れていただろうが、現在のナイは身体を鍛えたお陰で2年前よりも筋力が身に着いており、剛力を発動させた時に肉体の負荷も耐え切れる。
それどころか2年前よりも筋力が身に着いたおかげで予想を超える攻撃を繰り出す事に成功し、今のナイならば2年前に苦戦したホブゴブリンでも倒せる実力は身に着けていた。
(オークは……放っておこう、それよりもビャクは!?)
逃げ出したオークを追いかける事はせず、先ほど樹木に叩きつけられたビャクを心配したナイは彼が倒れた場所へ振り返る。そこには弱々しい鳴き声をあげながらも立ち上がるビャクの姿が存在した。
「ク、クゥ~ンッ……」
「ビャク、大丈夫!?」
「ウォンッ……」
ナイの元にビャクはよろけながらも移動すると、彼の前で倒れ込む。その様子を見てナイは慌てて彼を抱き上げ、怪我の具合を確かめる。
「ビャク、大丈夫か……待ってろ、すぐに治療してやるからな!!」
「ワフッ……」
逃走したオークなど無視してナイはビャクを一刻も早く助けるため、手持ちの傷薬を取り出す。ナイが常備している傷薬は回復効果が高い薬草を材料にしているため、魔物にも効果はあった。
子供の頃はナイは粉末状の薬しか持ち合わせていなかったが、2年ほど前からナイはちょくちょく街に出向いており、アルの知り合いの医者の元で様々な薬の調合法を学んでいた。
「動くなよ、この薬を塗ればよくなるからな……」
「クゥ~ンッ……」
樹木に叩きつけられた際にビャクの背中には血が滲んでおり、その傷跡にナイは薬草と他に数種類の野草を組み合わせた塗薬を傷口に塗り込む。この薬は止血効果もあり、傷口を塞ぐように塗り込むとビャクも顔色が良くなる。
「よし、これで大丈夫……といっても、しばらくしたら痛みも引いて動けるようになるからな」
「ウォンッ……」
「今度からは戦う時は気を付けないと駄目だぞ。それにしてもこんな村の近くまでオークが現れるなんて……」
ナイは山の中にオークと遭遇した事に疑問を抱き、少し前まではこの辺でオークなどは見かけなかった。今後の狩猟の時はより一層に気を付ける必要があり、今日の所はナイは怪我をしたビャクを連れて村へ帰る事にした。
「ビャク、怪我が治るまで一緒にいよう。村の皆にもちゃんと説明するから、いい子にするんだぞ」
「ウォンッ?」
怪我をしたビャクをナイは抱き上げ、村に連れ帰る事にした。このまま怪我をした彼を放置したら山の魔物に殺される可能性も高く、それぐらいなれば連れ帰って村の皆を説得して彼を村で飼えないのか相談する事にした――
――同時刻、両腕を切られて逃げていたオークは小川が流れている場所まで辿り着き、疲れ果てた表情で夢中に川の中に顔を突っ込む。
「フガァッ……ブフゥッ!!」
水を飲み込んだ事で少しは落ち着いたのか、オークはその場にへたり込み、切られた両腕に視線を向ける。両腕を失ったオークは先ほどの人間の少年の事を思い出し、恐怖で身体を震わせる。
「プギィイイッ……!!」
オークの鳴き声が周囲へ響き渡り、両腕を失った事の悲しみの咆哮を放つ。だが、その声に反応するようにオークの後方から大きな足音が近付いてきた。
足音を耳にしたオークは身体を硬直させ、どんどんと大きくなってくる足音を耳にして今度は身体を震わせる。ゆっくりと振り返ると、木々の間から身の丈が3メートル近くは存在する巨大な熊が出現した。
――グゥウウウッ……!!
木々を潜り抜けて姿を現したのは全身が血の様に赤黒い毛皮に覆われた魔獣であり、その外見は熊と酷似しているが、普通の熊よりも体格が大きい。しかも異様なまでに手足に生えている爪が鋭く尖っていた。
この魔獣の名前は「赤毛熊」と呼ばれ、この山の生態系の頂点に立つ存在だった。外見は熊と似ている事から名付けられ、名前の通りに赤毛に覆われた魔獣である。
普通の熊程度であれば両腕を失っていてもオークにとっては脅威にはなり得ないが、この赤毛熊の場合は逆にオークを捕食対象にするほどの驚異的な戦闘力を誇り、しかも一度目を付けられると絶対に獲物を諦めない習性を持つ。
「ガァアアアアッ!!」
「プギャアアアッ……!?」
赤毛熊の咆哮とオークの悲鳴が山の中に響き渡り、小川の流れる水が血に染まった――
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