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忌み子と呼ばれた少年
第54話 二年後……
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――ホブゴブリンの襲撃から二年が経過した頃、ナイ達が暮らす村も大きく変化していた。二年前までは存在しなかった木造製の防壁が作り出され、村の周囲の堀もより深く掘られる。
この二年の間に魔物の数が増加した事により、一層に村の防備を強化する必要があった。二年前のホブゴブリンの襲撃の後も何度か魔物が村を押し寄せる事態も起きたため、村人達は一致団結して村の防備を固めた。
村の外には無暗に出てはならず、特に子供に至っては村の外に出す事も禁じられていた。しかし、そんな子供達の中で二人だけ村の外に出入りする事が許された存在がいる。その内の一人は将来は冒険者を志している村長の息子だった。
「ひいいっ!?誰か助けてくれぇっ!!」
「フゴォオオオッ!!」
村の外に広がる草原にて少年の悲鳴が響き渡り、皮鎧を身に付けた小太りした少年が「ボア」という猪のような姿をした魔物に追い掛け回されていた。この少年こそが二年前まではナイの事を虐めていた村長の息子のゴマンである。
ゴマンは今年で13才を迎え、村の子供達の中では一番の年上で体型も大柄である。だから最近は大人の仕事も手伝わされるようになり、今回は狩猟の仕事の手伝いとして呼び出されていた。
「フゴォオオッ!!」
「うわぁあああっ!?こっちくんなぁああっ!!」
小太りしている割にはゴマンは意外と足が速く、本物の猪よりも大柄で足が素早いボアを相手に逃げ回っていた。だが、流石に限界なのか速度が落ち始め、ボアの方も追いついていく。
このままだとゴマンがボアに追いつかれると思われた瞬間、何処からかボアの顔面に目掛けて石が投げつけられ、走行中に顔面に石が当たったボアは怯む。
「フガァッ!?」
「――こっちだ、デカブツ!!」
顔面に石を投げつけられたボアは振り向くと、そこには一人の少年が立っていた。少年の手元には小石が握りしめられ、自分に顔を向けたボアに対して少年は小石を投げ込む。
「ゴマンから離れろっ!!」
「フガァアアッ!?」
「うひぃっ!?」
少年が投げつけた小石は的確にボアの大きな鼻の穴の中に入り込み、狙ってやったのか少年はその姿を見て笑みを浮かべる。鼻の中に入った小石をボアは噴き出すと、怒りを抱いた様に標的をゴマンから唐突に現れた少年に変更した。
「フゴォオオオッ!!」
「うわっ……ナ、ナイ!!そっちに行ったぞぉっ!!」
「大丈夫……後は任せて」
ナイと呼ばれた少年はゴマンの心配する声に対して笑みを浮かべ、迫りくるボアに対して背中に抱えた「旋斧」に手を伸ばす。この二年の間に身長も伸びて筋力も身に付けたナイは迫りくるボアに対しても全く怖気づいた様子はない。
二年前はゴブリンに遭遇した時に恐怖のあまりに碌に身体も動かせなかったナイだが、現在ではゴブリンよりも危険で獰猛なボアを前にしても動じず、余裕の態度を貫く。
「こっちだ!!早く来いっ!!」
「フゴォオオオッ!!」
突進する自分に対して堂々と立ち尽くすナイに対し、ボアは全力で突っ込む。このままでは少年が吹き飛ばされると思われた時、ナイはボアが辿り着く前に後ろに下がる。
「フゴォッ……!?」
「引っかかった!!」
ボアがナイに体当たりを仕掛けようとした瞬間、唐突に足元が崩れ始め、この時にボアは自分が落とし穴に嵌められた事を知る。ナイに刺激されて正気を失っていたボアは足元の地面の異変に気付かず、落とし穴に引っかかった。
事前にナイは落とし穴が存在する場所の手前で待ち構え、ゴマンが囮役として連れてきたボアを罠に嵌めるためにここでずっと隠れていた。そして彼が見事にボアを連れ込むと、小石をぶつけて標的を自分に変更させてボアを誘い込む作戦だった。
「プガァアアッ!?」
「よしっ!!」
「や、やったぁっ……これで今日は猪鍋だぁっ!!」
見事に二人の作戦でボアは落とし穴の中に嵌まり、落ちた際に身体がひっくり返ってしまう。その様子を見たゴマンは喜び勇んで駆けつけ、ナイと共に両手を重ね合わせる。
「ゴマン、よく頑張ったね。まさか本当にボアから逃げ切るなんて……」
「はあっ、はあっ……こ、これぐらいどうってことないんだよ。僕はなんだって、将来は伝説の冒険者になる男だからな」
「はいはい……でも、本当はきついんでしょ?」
「うん、きつい……み、水くれぇっ……」
ボアを誘き寄せるためにずっと草原を駆けていたゴマンはその場にへたり込み、そんな彼にナイは水筒を渡す。ゴマンはナイの水筒をがぶ飲みすると、一息ついたのか穴の中に落ちたボアに視線を向けた。
ボアは落とし穴の底でひっくり返ったまま必死に手足をもがいているが、穴の大きさは事前に底の方が狭くなるように掘っているため、完全に嵌まったボアは抜け出せない。後は村の大人達を呼んできてボアを連れ出すだけであり、これで今日の分の狩猟は終了となる。
この二年の間に魔物の数が増加した事により、一層に村の防備を強化する必要があった。二年前のホブゴブリンの襲撃の後も何度か魔物が村を押し寄せる事態も起きたため、村人達は一致団結して村の防備を固めた。
村の外には無暗に出てはならず、特に子供に至っては村の外に出す事も禁じられていた。しかし、そんな子供達の中で二人だけ村の外に出入りする事が許された存在がいる。その内の一人は将来は冒険者を志している村長の息子だった。
「ひいいっ!?誰か助けてくれぇっ!!」
「フゴォオオオッ!!」
村の外に広がる草原にて少年の悲鳴が響き渡り、皮鎧を身に付けた小太りした少年が「ボア」という猪のような姿をした魔物に追い掛け回されていた。この少年こそが二年前まではナイの事を虐めていた村長の息子のゴマンである。
ゴマンは今年で13才を迎え、村の子供達の中では一番の年上で体型も大柄である。だから最近は大人の仕事も手伝わされるようになり、今回は狩猟の仕事の手伝いとして呼び出されていた。
「フゴォオオッ!!」
「うわぁあああっ!?こっちくんなぁああっ!!」
小太りしている割にはゴマンは意外と足が速く、本物の猪よりも大柄で足が素早いボアを相手に逃げ回っていた。だが、流石に限界なのか速度が落ち始め、ボアの方も追いついていく。
このままだとゴマンがボアに追いつかれると思われた瞬間、何処からかボアの顔面に目掛けて石が投げつけられ、走行中に顔面に石が当たったボアは怯む。
「フガァッ!?」
「――こっちだ、デカブツ!!」
顔面に石を投げつけられたボアは振り向くと、そこには一人の少年が立っていた。少年の手元には小石が握りしめられ、自分に顔を向けたボアに対して少年は小石を投げ込む。
「ゴマンから離れろっ!!」
「フガァアアッ!?」
「うひぃっ!?」
少年が投げつけた小石は的確にボアの大きな鼻の穴の中に入り込み、狙ってやったのか少年はその姿を見て笑みを浮かべる。鼻の中に入った小石をボアは噴き出すと、怒りを抱いた様に標的をゴマンから唐突に現れた少年に変更した。
「フゴォオオオッ!!」
「うわっ……ナ、ナイ!!そっちに行ったぞぉっ!!」
「大丈夫……後は任せて」
ナイと呼ばれた少年はゴマンの心配する声に対して笑みを浮かべ、迫りくるボアに対して背中に抱えた「旋斧」に手を伸ばす。この二年の間に身長も伸びて筋力も身に付けたナイは迫りくるボアに対しても全く怖気づいた様子はない。
二年前はゴブリンに遭遇した時に恐怖のあまりに碌に身体も動かせなかったナイだが、現在ではゴブリンよりも危険で獰猛なボアを前にしても動じず、余裕の態度を貫く。
「こっちだ!!早く来いっ!!」
「フゴォオオオッ!!」
突進する自分に対して堂々と立ち尽くすナイに対し、ボアは全力で突っ込む。このままでは少年が吹き飛ばされると思われた時、ナイはボアが辿り着く前に後ろに下がる。
「フゴォッ……!?」
「引っかかった!!」
ボアがナイに体当たりを仕掛けようとした瞬間、唐突に足元が崩れ始め、この時にボアは自分が落とし穴に嵌められた事を知る。ナイに刺激されて正気を失っていたボアは足元の地面の異変に気付かず、落とし穴に引っかかった。
事前にナイは落とし穴が存在する場所の手前で待ち構え、ゴマンが囮役として連れてきたボアを罠に嵌めるためにここでずっと隠れていた。そして彼が見事にボアを連れ込むと、小石をぶつけて標的を自分に変更させてボアを誘い込む作戦だった。
「プガァアアッ!?」
「よしっ!!」
「や、やったぁっ……これで今日は猪鍋だぁっ!!」
見事に二人の作戦でボアは落とし穴の中に嵌まり、落ちた際に身体がひっくり返ってしまう。その様子を見たゴマンは喜び勇んで駆けつけ、ナイと共に両手を重ね合わせる。
「ゴマン、よく頑張ったね。まさか本当にボアから逃げ切るなんて……」
「はあっ、はあっ……こ、これぐらいどうってことないんだよ。僕はなんだって、将来は伝説の冒険者になる男だからな」
「はいはい……でも、本当はきついんでしょ?」
「うん、きつい……み、水くれぇっ……」
ボアを誘き寄せるためにずっと草原を駆けていたゴマンはその場にへたり込み、そんな彼にナイは水筒を渡す。ゴマンはナイの水筒をがぶ飲みすると、一息ついたのか穴の中に落ちたボアに視線を向けた。
ボアは落とし穴の底でひっくり返ったまま必死に手足をもがいているが、穴の大きさは事前に底の方が狭くなるように掘っているため、完全に嵌まったボアは抜け出せない。後は村の大人達を呼んできてボアを連れ出すだけであり、これで今日の分の狩猟は終了となる。
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