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忌み子と呼ばれた少年
第25話 経験石
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「爺ちゃん、僕も戦えるよ……だから、一緒に戦わせてよ」
「お前って奴は……いったいどうやってこんな力を身に付けたんだ?」
「それは……」
アルはナイの言葉に焦り、自分がどのような経緯で「迎撃」の技能を身に付けたか話すのかを悩む。別に正直に言ってもアルは怒らないだろうが、ナイがこっそりと陽光教会から水晶板と呼ばれた道具の破片を持ちだした事を説明しなければならない。
ナイが何から話すべきか困っていると、ここでアルは何かを思い出したようにゴブリンの死骸へと振り返り、彼はナイが倒したゴブリンの死骸を確認して手斧を振りかざす。
「まあいい、それよりもナイ……よく見ておけ」
「えっ……な、何をするつもりなの?」
「いいから見ておくんだ。目を逸らしたら駄目だぞ」
ゴブリンの死骸に対してアルは手斧を振りかざし、一気に振り下ろす。その光景を見たナイは咄嗟に目を逸らそうとしたが、アルの言葉に従って一部始終を見届ける。
「うぷっ……!?」
「我慢しろ、最後まで見るんだ!!」
死骸の胸元の部分を手斧の刃で切り裂くと、アルは躊躇なく腕を突っ込み、胸元の部分をまさぐる。その光景にナイは口元を抑え、彼が何をしようとしているのか理解できなかった。
やがてアルは死骸から手を引き抜くと、彼の手元には小さな赤色に光り輝く水晶のような物が握りしめられていた。それを見届けたナイは耐え切れずにその場で嘔吐すると、その様子を見てアルはナイの背中を摩る。
「大丈夫か?」
「うえっ……な、なにそれ……?」
「こいつはな、経験石と呼ばれている魔石だ」
「魔石……?」
魔石という単語はナイも聞いた事があり、魔術師が魔法を扱う際に利用する代物だと聞いている。アルによると全ての魔物は体内に「経験石」が存在するという。
「魔物は心臓が存在しない生き物なんだ。心臓の代わりにこの「経験石」と呼ばれる水晶が体内にあるんだ。この経験石はな、破壊すれば経験値……つまりはレベルを上げる時に必要な成長力の塊なんだよ」
「せ、成長力?」
「レベルを上げる手っ取り早い方法は魔物を倒すのが一番だ。だが、魔物と戦うのは危険が多すぎる。そういう時はこの経験石を破壊してレベルを上げるのが一番だ」
説明しながらアルはナイに経験石と呼ばれる赤色の水晶を差し出すと、ナイは恐る恐る受け取る。この経験石が先ほどまでゴブリンの死骸の中にあった事を考えると再び吐き気を覚えるが、どうにか堪える。
「これ……なんか生暖かいね」
「こいつを壊せば経験値は手に入るが、壊すためには専用の道具を使わないと無理だな」
「あれ?爺ちゃんでも壊せないの?」
「ああ、俺の力でも壊す事はできない」
ゴブリンから摘出した経験石の大きさはビー玉程度だが、この小さな水晶でもアルの力では壊すどころか傷一つ付かないらしい。だが、その言葉にナイは本当なのかと疑う。
「本当に壊せないの?」
「無理だ、こいつは硬すぎて並の武器じゃ壊す事も出来ない……ちょっと貸してみろ」
「あっ」
ナイの掌からアルは水晶を摘まみ取ると、地面に下す。そして右手に握りしめた手斧を振りかざすと、勢いよく水晶に叩き込む。
「ふんっ!!」
「うわっ!?」
アルが水晶に向けて手斧を振り下ろすと、水晶は派手に弾かれて近くの樹木にめり込み、その様子を見てナイは驚愕の表情を浮かべる。
樹木に埋まった水晶をアルは引き抜くと、改めてナイの掌の上に置く。アルが全力で手斧を振り下ろしたにも関わらず、水晶には表面の部分が少しだけ凹んだ程度で砕けてはいなかった。
「どうだ?これで分かっただろう。こいつは馬鹿みたいに硬い、俺の力でもこの程度が限界だ」
「う、うん……」
「しかもこいつは厄介な事に力の強い魔物ほどでかくて硬い水晶を宿している。ゴブリン程度でもこの硬さだ、一角兎程度の経験石なら壊せない事はないが……武器が駄目になっちまうな」
「……凄いね」
アルは村の中では一番の怪力を誇るが、その彼ですらもゴブリンの経験石は破壊できず、ナイは手元に置かれた水晶に視線を向ける。そんな彼にアルは語り掛ける。
「こいつにはいわば生き物が生きるための力の塊みたいなもんだ。だからこいつを破壊すれば、その生き物の力を吸収して強くなれる……でも、生き物を殺すという事は簡単な事じゃない」
「生きる力の塊……」
「そうだ。この経験石はな、実を言えば魔物が生きている間はこんなに硬くなる事はないんだ」
「え、そうなの?」
「ああ、生きている間は経験石はそれほど硬くはない。さっきも言ったがこいつは魔物にとっては心臓よりも大事な物だ。だから生きている間に経験石の居所を掴んで壊しさえすれば簡単に魔物は死ぬぞ」
「そ、そうなんだ……」
「経験石は生きている魔物にとっては鍛えられない弱点みたいなもんだ。まあ、体内に宿している経験石の正確な位置を探る方法なんてあるかは知らないがな……」
経験石を手にしたアルはナイに差し出し、その彼の行動にナイは戸惑うが、アルは当たり前のように告げた。
「これから魔物を倒す時、余裕があればこの経験石でも回収しておけ。ゴブリンの場合は胸元にあるからな。さあ、やってみろ」
「えっ……」
「こいつは持って帰れば高く売れるんだ。他の素材より一番高く買い取ってくれるからな、なにしろこいつを壊せばわざわざ魔物と戦わずにレベルを上げられるんだからな。さあ、1匹残さず回収するんだ」
「ええっ!?」
ゴブリンの死骸から経験石を回収するようにアルは指示を出すと、ナイは自分が死骸の中から経験石を回収する事に戸惑うが、そんな彼にアルは怒鳴りつけた。
「俺達は狩人だ!!なら、獲物を殺せば解体するのは当たり前だ!!殺した以上は自分の手で素材を回収して持ち帰るんだ!!」
「う、うん……わ、分かったよ」
「さあ、急げ。血の臭いを嗅ぎつけて他の動物や魔物に気付かれる前に離れるぞ!!」
急かされるままにナイはアルの指示通りに従い、今日初めて彼はゴブリンを殺し、同時に魔物の死骸を解体した――
「お前って奴は……いったいどうやってこんな力を身に付けたんだ?」
「それは……」
アルはナイの言葉に焦り、自分がどのような経緯で「迎撃」の技能を身に付けたか話すのかを悩む。別に正直に言ってもアルは怒らないだろうが、ナイがこっそりと陽光教会から水晶板と呼ばれた道具の破片を持ちだした事を説明しなければならない。
ナイが何から話すべきか困っていると、ここでアルは何かを思い出したようにゴブリンの死骸へと振り返り、彼はナイが倒したゴブリンの死骸を確認して手斧を振りかざす。
「まあいい、それよりもナイ……よく見ておけ」
「えっ……な、何をするつもりなの?」
「いいから見ておくんだ。目を逸らしたら駄目だぞ」
ゴブリンの死骸に対してアルは手斧を振りかざし、一気に振り下ろす。その光景を見たナイは咄嗟に目を逸らそうとしたが、アルの言葉に従って一部始終を見届ける。
「うぷっ……!?」
「我慢しろ、最後まで見るんだ!!」
死骸の胸元の部分を手斧の刃で切り裂くと、アルは躊躇なく腕を突っ込み、胸元の部分をまさぐる。その光景にナイは口元を抑え、彼が何をしようとしているのか理解できなかった。
やがてアルは死骸から手を引き抜くと、彼の手元には小さな赤色に光り輝く水晶のような物が握りしめられていた。それを見届けたナイは耐え切れずにその場で嘔吐すると、その様子を見てアルはナイの背中を摩る。
「大丈夫か?」
「うえっ……な、なにそれ……?」
「こいつはな、経験石と呼ばれている魔石だ」
「魔石……?」
魔石という単語はナイも聞いた事があり、魔術師が魔法を扱う際に利用する代物だと聞いている。アルによると全ての魔物は体内に「経験石」が存在するという。
「魔物は心臓が存在しない生き物なんだ。心臓の代わりにこの「経験石」と呼ばれる水晶が体内にあるんだ。この経験石はな、破壊すれば経験値……つまりはレベルを上げる時に必要な成長力の塊なんだよ」
「せ、成長力?」
「レベルを上げる手っ取り早い方法は魔物を倒すのが一番だ。だが、魔物と戦うのは危険が多すぎる。そういう時はこの経験石を破壊してレベルを上げるのが一番だ」
説明しながらアルはナイに経験石と呼ばれる赤色の水晶を差し出すと、ナイは恐る恐る受け取る。この経験石が先ほどまでゴブリンの死骸の中にあった事を考えると再び吐き気を覚えるが、どうにか堪える。
「これ……なんか生暖かいね」
「こいつを壊せば経験値は手に入るが、壊すためには専用の道具を使わないと無理だな」
「あれ?爺ちゃんでも壊せないの?」
「ああ、俺の力でも壊す事はできない」
ゴブリンから摘出した経験石の大きさはビー玉程度だが、この小さな水晶でもアルの力では壊すどころか傷一つ付かないらしい。だが、その言葉にナイは本当なのかと疑う。
「本当に壊せないの?」
「無理だ、こいつは硬すぎて並の武器じゃ壊す事も出来ない……ちょっと貸してみろ」
「あっ」
ナイの掌からアルは水晶を摘まみ取ると、地面に下す。そして右手に握りしめた手斧を振りかざすと、勢いよく水晶に叩き込む。
「ふんっ!!」
「うわっ!?」
アルが水晶に向けて手斧を振り下ろすと、水晶は派手に弾かれて近くの樹木にめり込み、その様子を見てナイは驚愕の表情を浮かべる。
樹木に埋まった水晶をアルは引き抜くと、改めてナイの掌の上に置く。アルが全力で手斧を振り下ろしたにも関わらず、水晶には表面の部分が少しだけ凹んだ程度で砕けてはいなかった。
「どうだ?これで分かっただろう。こいつは馬鹿みたいに硬い、俺の力でもこの程度が限界だ」
「う、うん……」
「しかもこいつは厄介な事に力の強い魔物ほどでかくて硬い水晶を宿している。ゴブリン程度でもこの硬さだ、一角兎程度の経験石なら壊せない事はないが……武器が駄目になっちまうな」
「……凄いね」
アルは村の中では一番の怪力を誇るが、その彼ですらもゴブリンの経験石は破壊できず、ナイは手元に置かれた水晶に視線を向ける。そんな彼にアルは語り掛ける。
「こいつにはいわば生き物が生きるための力の塊みたいなもんだ。だからこいつを破壊すれば、その生き物の力を吸収して強くなれる……でも、生き物を殺すという事は簡単な事じゃない」
「生きる力の塊……」
「そうだ。この経験石はな、実を言えば魔物が生きている間はこんなに硬くなる事はないんだ」
「え、そうなの?」
「ああ、生きている間は経験石はそれほど硬くはない。さっきも言ったがこいつは魔物にとっては心臓よりも大事な物だ。だから生きている間に経験石の居所を掴んで壊しさえすれば簡単に魔物は死ぬぞ」
「そ、そうなんだ……」
「経験石は生きている魔物にとっては鍛えられない弱点みたいなもんだ。まあ、体内に宿している経験石の正確な位置を探る方法なんてあるかは知らないがな……」
経験石を手にしたアルはナイに差し出し、その彼の行動にナイは戸惑うが、アルは当たり前のように告げた。
「これから魔物を倒す時、余裕があればこの経験石でも回収しておけ。ゴブリンの場合は胸元にあるからな。さあ、やってみろ」
「えっ……」
「こいつは持って帰れば高く売れるんだ。他の素材より一番高く買い取ってくれるからな、なにしろこいつを壊せばわざわざ魔物と戦わずにレベルを上げられるんだからな。さあ、1匹残さず回収するんだ」
「ええっ!?」
ゴブリンの死骸から経験石を回収するようにアルは指示を出すと、ナイは自分が死骸の中から経験石を回収する事に戸惑うが、そんな彼にアルは怒鳴りつけた。
「俺達は狩人だ!!なら、獲物を殺せば解体するのは当たり前だ!!殺した以上は自分の手で素材を回収して持ち帰るんだ!!」
「う、うん……わ、分かったよ」
「さあ、急げ。血の臭いを嗅ぎつけて他の動物や魔物に気付かれる前に離れるぞ!!」
急かされるままにナイはアルの指示通りに従い、今日初めて彼はゴブリンを殺し、同時に魔物の死骸を解体した――
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