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忌み子と呼ばれた少年
第20話 お前は強い子だ
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――アルが山から戻ってくると、家の中にナイがいない事に気付き、彼は不思議に思う。家の留守番を任せていたのだが、外に出て村の子供達と遊んでいるのかと思ったアルは村の中でナイを探していた。
だが、どこの家を尋ねてもナイの姿は見つからず、子供達に聞いてもそもそもナイと遊ぶ事など最近はなかったという。アルはナイが普段から子供達と遊んでいると聞いていたのだが、ここでナイが嘘を吐いていた事を知った。
村中を探してもナイがいない事に不安を覚えたアルは、村の出入口へと向かう。村の防衛のために出入口には見張り台と村の若者が存在し、暇そうに欠伸をしながら見張り台の上に立っていた。
「おい!!うちのガキを知らんか?」
「ん?何だ、アルさんか……あんたの所のガキは見てないぞ。というか、今日はあんた以外は誰も外に出てないよ」
「本当か!?」
「ああ、本当だ」
話しかけられた青年はアルに言葉を返すと、その返答を聞いてアルは村の外にナイが出ていない事に安堵するが、それならば何処に消えたのかと戸惑う。
(ナイ、何処へ行った?俺が見落としているだけか?)
もう一度アルは自分の家に戻り、ナイを探す事にした。だが、最初に帰ってきたときと家の様子が違う事に彼は気づき、最初に異変を感じたのはアルの家の扉が開け開かれている事だった。
(扉が開いている?ちゃんと閉めていたはずだが……ナイが戻ってきたのか?)
自分の家の扉が開け開かれている事にアルは気づき、慌てて彼は開けっ放しの扉を潜り抜ける。すると、そこには血塗れの状態でナイが倒れていた。
最初に血塗れのナイを見てアルは驚愕のあまりに声も出せず、最初は死んでいるのかと思ったが、倒れているナイの身体が僅かに震えている事から生きている事を理解したアルはナイの身体を抱き上げる。
「ナイ!?どうした、何があった!?」
「うっ……」
「怪我をしたのか!?こんなに血を流して……んっ!?」
「すぅっ……すぅっ……」
ナイを抱き上げたアルはナイが寝息を立てている事に気付き、どうやら眠っている様子だった。血塗れだと思っていた身体もよくよく観察すると服の部分が血に染まっているだけで肉体の方は怪我をしていない。
「な、何だ……びっくりさせやがって、けど何があったんだ?」
「んんっ……強く、なるんだ……」
「ナイ……?」
ナイの寝言を聞いたアルは驚いた表情を浮かべ、すぐに彼が倒れている場所に刃が折れた短剣と、大量の一角兎の角が落ちている事に気付く。
「こ、こいつは……まさか、一人で一角兎を殺したのか!?しかも、こんな数の角まで……」
落ちていた短剣と角を拾い上げ、アルは信じられない表情を浮かべる。角の数は10本は存在し、少なくともナイが一人で一角兎を10匹も倒した事の証明だった。
一か月前にナイは一角兎を倒したが、その時は色々な幸運が重なった偶然の勝利だった。だが、アルの前に存在する10本の角はただの幸運だけで手に入る代物ではなく、暗にナイが10匹の一角獣を倒す力を手に入れた事を示している。
「ナイ、お前ひとりで村の外に……しかも、たった一人で一角兎を狩ってきたのか?」
「すぅっ……すぅっ……」
アルの呟きにナイは答えず、ひどく疲れているのかしばらくは目を覚ます様子がない。アルはそんな彼を見て頭を掻き、拾い上げた一角兎の角と折れた短剣に視線を向けた。
「……儂が魔物を倒したのは10代後半だ。なのにこいつはまだ10才も迎えていないのにこんな数の一角兎を……大した奴だよ、お前は」
「ううんっ……」
「全く、心配かけさせやがって……いや、儂が少し過保護過ぎたか」
一か月前、ナイが一角兎を倒した日の晩に倒れた事をアルは思い出す。ナイの「貧弱」の技能の効果で折角上げたレベルが下がる光景を目にしたアルは、もうナイを戦わせる事を止めさせようとした。
いくら戦闘の技術を身に付けさせ、魔物を倒させようとナイは日付が変更する事にレベルがリセットされてしまう。それならばどれだけ魔物を倒そうと彼は強くなれず、それならば狩人などという危険な仕事は任せられないとアルは考え、狩猟に連れていく事を止める。
だが、そんなアルの予想に反してナイはたった一人で村の外に出かけ、見事に大量の一角兎を狩ってきた。しかも武器として使用したのは解体用の小さな短剣であり、そんな道具で魔物を倒した彼にアルは感動していた。
「ナイ、やっぱりお前は俺の息子だな……親の言う事を碌に聞かねえ」
子供の頃、アルは両親に逆らって狩人として生きていく道を選んだ。両親は「器用」の異能を持つアルが鍛冶師になる事を望んだが、彼は自分が望む仕事を選んだ。
今のナイは昔のアルと同じであり、アルの気遣いを無視してナイは自ら進んで魔物と戦う技術を身に付け、見事に誰の助けも借りずに倒した。その事実にアルは認めざるを得ず、彼はナイの頭を撫でながら呟く。
「ナイ……お前は立派な男になったんだな」
男なら強く生きろ、陽光教会から抜け出す時にアルはナイにそう告げた。そして彼の期待に応えるようナイは「結果」を出した。ならば自分もそれに応える必要があると判断し、アルは本格的にナイを鍛え上げる事を決めた――
だが、どこの家を尋ねてもナイの姿は見つからず、子供達に聞いてもそもそもナイと遊ぶ事など最近はなかったという。アルはナイが普段から子供達と遊んでいると聞いていたのだが、ここでナイが嘘を吐いていた事を知った。
村中を探してもナイがいない事に不安を覚えたアルは、村の出入口へと向かう。村の防衛のために出入口には見張り台と村の若者が存在し、暇そうに欠伸をしながら見張り台の上に立っていた。
「おい!!うちのガキを知らんか?」
「ん?何だ、アルさんか……あんたの所のガキは見てないぞ。というか、今日はあんた以外は誰も外に出てないよ」
「本当か!?」
「ああ、本当だ」
話しかけられた青年はアルに言葉を返すと、その返答を聞いてアルは村の外にナイが出ていない事に安堵するが、それならば何処に消えたのかと戸惑う。
(ナイ、何処へ行った?俺が見落としているだけか?)
もう一度アルは自分の家に戻り、ナイを探す事にした。だが、最初に帰ってきたときと家の様子が違う事に彼は気づき、最初に異変を感じたのはアルの家の扉が開け開かれている事だった。
(扉が開いている?ちゃんと閉めていたはずだが……ナイが戻ってきたのか?)
自分の家の扉が開け開かれている事にアルは気づき、慌てて彼は開けっ放しの扉を潜り抜ける。すると、そこには血塗れの状態でナイが倒れていた。
最初に血塗れのナイを見てアルは驚愕のあまりに声も出せず、最初は死んでいるのかと思ったが、倒れているナイの身体が僅かに震えている事から生きている事を理解したアルはナイの身体を抱き上げる。
「ナイ!?どうした、何があった!?」
「うっ……」
「怪我をしたのか!?こんなに血を流して……んっ!?」
「すぅっ……すぅっ……」
ナイを抱き上げたアルはナイが寝息を立てている事に気付き、どうやら眠っている様子だった。血塗れだと思っていた身体もよくよく観察すると服の部分が血に染まっているだけで肉体の方は怪我をしていない。
「な、何だ……びっくりさせやがって、けど何があったんだ?」
「んんっ……強く、なるんだ……」
「ナイ……?」
ナイの寝言を聞いたアルは驚いた表情を浮かべ、すぐに彼が倒れている場所に刃が折れた短剣と、大量の一角兎の角が落ちている事に気付く。
「こ、こいつは……まさか、一人で一角兎を殺したのか!?しかも、こんな数の角まで……」
落ちていた短剣と角を拾い上げ、アルは信じられない表情を浮かべる。角の数は10本は存在し、少なくともナイが一人で一角兎を10匹も倒した事の証明だった。
一か月前にナイは一角兎を倒したが、その時は色々な幸運が重なった偶然の勝利だった。だが、アルの前に存在する10本の角はただの幸運だけで手に入る代物ではなく、暗にナイが10匹の一角獣を倒す力を手に入れた事を示している。
「ナイ、お前ひとりで村の外に……しかも、たった一人で一角兎を狩ってきたのか?」
「すぅっ……すぅっ……」
アルの呟きにナイは答えず、ひどく疲れているのかしばらくは目を覚ます様子がない。アルはそんな彼を見て頭を掻き、拾い上げた一角兎の角と折れた短剣に視線を向けた。
「……儂が魔物を倒したのは10代後半だ。なのにこいつはまだ10才も迎えていないのにこんな数の一角兎を……大した奴だよ、お前は」
「ううんっ……」
「全く、心配かけさせやがって……いや、儂が少し過保護過ぎたか」
一か月前、ナイが一角兎を倒した日の晩に倒れた事をアルは思い出す。ナイの「貧弱」の技能の効果で折角上げたレベルが下がる光景を目にしたアルは、もうナイを戦わせる事を止めさせようとした。
いくら戦闘の技術を身に付けさせ、魔物を倒させようとナイは日付が変更する事にレベルがリセットされてしまう。それならばどれだけ魔物を倒そうと彼は強くなれず、それならば狩人などという危険な仕事は任せられないとアルは考え、狩猟に連れていく事を止める。
だが、そんなアルの予想に反してナイはたった一人で村の外に出かけ、見事に大量の一角兎を狩ってきた。しかも武器として使用したのは解体用の小さな短剣であり、そんな道具で魔物を倒した彼にアルは感動していた。
「ナイ、やっぱりお前は俺の息子だな……親の言う事を碌に聞かねえ」
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今のナイは昔のアルと同じであり、アルの気遣いを無視してナイは自ら進んで魔物と戦う技術を身に付け、見事に誰の助けも借りずに倒した。その事実にアルは認めざるを得ず、彼はナイの頭を撫でながら呟く。
「ナイ……お前は立派な男になったんだな」
男なら強く生きろ、陽光教会から抜け出す時にアルはナイにそう告げた。そして彼の期待に応えるようナイは「結果」を出した。ならば自分もそれに応える必要があると判断し、アルは本格的にナイを鍛え上げる事を決めた――
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