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結婚作戦

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「話は分かりました。不本意ですが、貴方達の計画に乗ってあげましょう。正妻と側室の件に関しては後日話し合いましょう」
「うむ……」
「では、まずはアリア様とマリア様の協力を申し込む前に、まずは我々だけで計画を話し合いましょう」
「計画?」
「まずはレオ様の身辺を調査した所、どうやら数多くの女性が彼に好意を抱いているようです。冒険者ギルドの女性冒険者、受付嬢、さらには街の住民も数多く慕われています」
「そんなにかっ!?」
「当然ではないですか、あれほどの力を持ちながら決して驕らず、面倒見も良く、優れた指導者として誰よりも活躍しているのです」
「なるほど、人の上に立つ人間として相応しい人望と求心力も持ち合わせているのですね」


家臣の説明にマイラは満足そうに頷き、自分の娘の相手に相応しいと考えた。それだけにもっと早い段階で勇者である彼を引き入れる事が出来れば良かったのだが、今更考えても仕方がない。


「しかし、それほど慕われているのならば何故、奴は誰とも結婚しなかった?やはり、アリア嬢の事を忘れられなかったのか?」
「その点に関してなのですが、実はレオ殿は何度か見合いを申し込まれた事があります。中には直接本人に告白を行う者も少なくはなかったようですが、それらを全て断わっています」
「恋愛にはもう興味を無くしたのでは?」
「いえ、そうとは断定出来ません。彼が交際を申し込まれたときに拒否する理由は「未熟者の自分が他人を幸せに出来るとは思えない」と語っています。もしも仮にアリア殿を思っているとしたら、このような言葉を使うのはおかしいのではないでしょうか?」
「そうか?別にそれほどおかしい言葉とは思えんが……」
「そうとは言い切れません。実はレオ様は魔王退治の旅の道中でも不特定多数の女性から好意を抱かれています。その際に彼が交際を申し込まれたときに告げた断わりの言葉はこうです。レオ様は必ず「自分には好きな人がいる。だから貴女の気持ちには応えられない」とはっきり告げています」
「……その想い人がアリアであるのは間違いないですが、確かに旅を終えてからの彼の交際を断わる時の言葉が変わっていますね」


マイラは家臣の言葉を聞いて眉を顰め、もしもレオが未だにアリアの事を思い続けているのならば「未熟者の自分が……」等という言葉を使う必要がない。最も振られたにも関わらずに未練がましくアリアの事を想い続けている事を知られないように言い方を変えたとも考えられなくはないが、それならば既にアリアと再会して一か月も経過しているのに関係が発展していないのは疑問が残る。


「恐らくですがレオ様は既にアリア様の事は諦めている、という言葉はどうかと思いますが……既に振られた相手だと認識しています。それでも彼が誰とも交際を行っていないのは心の何処かではアリア殿の事を忘れられずにいると考えているのでは?」
「それでは我が娘はどうなる!?」
「落ち着いてください。今の言葉はあくまでも我々の予測にしか過ぎません。仮にアリア殿の事を現在まで思い続けたとしても関係が何の発展もしないのはおかしな話です。そこで二人の関係を後押しするためにマリア様に協力して貰うのです!!マリア様ならば素直にレオ様に好意を伝えられますし、共に過ごした仲間ならばレオ様も無下にはマリア様の好意を扱う事は出来ないでしょう。そしてアリア様も一人では何も行動できなくとも、他の人間に後押しさせる事で覚悟を決めさせるのです」
「なるほど、敢えて三角関係を構築するのですか」
「ちょっと待て、それでもしもマリアが振られたらどうするのだ!?」
「だからこそここで御二方に協力関係を結んでもらうのです。まず、この計画は御二方から自分の娘に話してください。そして万が一にもレオ殿が片方を選んだ場合、この計画の事を暴露するのです。そして両国のためにどうか二人を受け入れるように頼み込むのです」
「それで上手く行くのですか?」
「レオ様は慈悲深き御方……きっと最初は憤られるでしょうが、お二人の立場を理解すればきっと受け入れてくれるはずです。それに冒険者ギルド側としてもバルカン王国とアトラス大森林の後ろ盾を得られるのですから文句はないはずです」
「そうでしょうか?正直、穴だらけな作戦だと思いますが……」
「何だか騙されている気がするが……」


家臣の自信に満ちた言葉に国王とマイラは胡散臭い表情を浮かべるが、現状では関係が発展しない事は目に見えており、彼の作戦を受け入れるしかなかった――
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