4 / 15
王国の王女
しおりを挟む
――結局、アリアは結婚の話を言い出せずにレオと共に街に向かう。彼女としては20年前に振った相手に今更結婚して欲しいという言葉を言い切れず、彼への罪悪感と忘れかけていた恋心が蘇る。確かに昔と比べるとレオは年齢を重ねたが、それでも彼の魅力は一切衰えておらず、アリアはレオの内面に惚れていた。
アリアは魔王討伐のパーティのメンバーの中でも一番の古株であり、最初は彼女とレオと他に3人の男性が居た。最初の頃は5人で行動していたが、魔王の送り出した刺客に他の3人は殺され、その後に他の仲間たちと巡り合う。つまり彼女は最もレオと付き合いの長い人間ではあるが、20年以上も離れていた事で現在の彼は自分が予想したよりも立派な大人になっていた事に少なからず動揺していた。
昔は自分の弟分のように可愛がっていた相手が、今では死んでしまった自分の父親のように頼りがいのある男性に成長しており、アリアはエルフの自分と人間の彼の寿命の違いに寂しさを覚える。もしも自分が20年前の告白を断らなければ共にアトラス大森林に赴き、彼と共に幸せな家庭を築けたのではないかと考えてしまう。
「どうしたアリア?さっきから俺の顔を見て……」
「い、いや……何でもない」
「そうか、それで何時までここに居られる?」
「そうだな……しばらくはここで宿を取る。あ、もしも良かったらお前の家に世話になれないか?」
「俺の家……」
レオはアリアの唐突な申し出に黙り込み、彼女は流石に厚かましいかと考えたが、この後の彼の返答でアリアはレオが自分に対して現在はどのような感情を抱いているのか確かめられるのではないかと考える。もしも受け入れてくれたのなら自分の事を少しは意識しているのではないかと考えたが、レオは難しい表情を浮かべる。
「悪いが俺は冒険者ギルドに世話になっている。家は既に友人に貸し与えているんだ」
「冒険者ギルド?」
「ああ、俺は現在は冒険者ギルドの職員なんだ。そこで冒険者に剣の指導を行っている。これが意外と面白くてな……」
「ほう、お前が剣の指導を……」
剣の話になると途端に二人とも話が弾みだし、20年前の頃のように距離を縮めて語り合う。どれだけ年齢を重ねようと剣の事になると子供のように楽しそうな表情を浮かべるレオに対し、アリアは少し安心してしまう。やがて二人は街に辿り着くと、門番を行っていた兵士がレオ達の存在に気付いて慌てて駆け寄ってくる。
「あ、レオ様!!お戻りになられたのですね!!」
「どうかしたのか?」
「そ、それが……冒険者ギルドにバルカン王国の使者が訪れました!!」
「バルカン王国……!?」
兵士の言葉にレオとアリアは動揺を隠せず、バルカン王国はレオが最初に仕えていた国家であり、魔王討伐後に立ち去った国でもある。どうして今更王国の人間が訪れた事にレオは疑問を抱くが、すぐにギルドに戻る必要があった。
「すまないアリア、俺はギルドに戻る!!」
「あ、ああ……後で私も顔を出すぞ」
「分かった!!」
レオはその場を走り出し、取り残されたアリアは今日の宿を探すために移動する。出来れば今日一日ぐらいはレオとゆっくりと再会の喜びを味わいたかったが、王国の人間が訪れたのならば仕方がない。
「それにしても王国か……そういえばあの親馬鹿王とマリアは元気にしているのか?」
アリアは20年前に一時期だけ行動を共にした王国の王女のマリアを思い返し、彼女を溺愛していた国王を思い出す。
「そういえばあの国王、レオがマリアと仲が良くなる度に不機嫌そうにしていたな。まさかマリアに触れただけで抜刀して襲い掛かった時は驚いたが……」
昔の事を思い返し、アリアは笑みを浮かべる。マリアは非常に可愛らしい容姿なので他国の王子から人気があったが、父親の国王は彼女を溺愛しており、見合い話を全て断っていた。だが、国王の世継ぎは彼女しか存在せず、もしもマリアが結婚して誰かの子供を授からなければ王国は彼女の代で終わりを迎えてしまう。
「まあ、流石に20年も経過しているからな……マリアも誰かと結婚して幸せな家庭を築いているだろう」
エルフの自分と違い、流石に人間であるマリアが現在も結婚していないとは彼女は思わなかった――
――その一方、冒険者ギルドに光の速さで戻ってきたレオは応接室で国王の使者と対面すると、彼等から予想外の言葉を告げられる。
「お願いします!!どうか、どうかマリア様とご結婚してください!!」
「はあっ……?」
「これは国王様からの書状です!!どうかお読みください!!」
レオは王国の使者達に土下座され、彼等の仕えている王国の王女であるマリアとの結婚を要求される。唐突な彼等の発言に彼は戸惑うが、使者から差し出された国王からの書状を受け取る。その内容は20年前の娘を溺愛していた国王を知っている人間からは信じれない内容であり、レオは激しく動揺した。
『頼む、娘と結婚してくれ。お前以外にマリアは結婚したくないと言うのだ。過去に私がお前に対して仕出かした事は覚えている。しかし、それをどうか水に流して娘と結婚して欲しい。どうか私に初孫の顔を見せてくれ』
手紙の内容に何度もレオは読み返し、過去にマリアと近づいたという理由で「刺客」まで送り込んだ国王が書き記した書状とは思えなかった。
アリアは魔王討伐のパーティのメンバーの中でも一番の古株であり、最初は彼女とレオと他に3人の男性が居た。最初の頃は5人で行動していたが、魔王の送り出した刺客に他の3人は殺され、その後に他の仲間たちと巡り合う。つまり彼女は最もレオと付き合いの長い人間ではあるが、20年以上も離れていた事で現在の彼は自分が予想したよりも立派な大人になっていた事に少なからず動揺していた。
昔は自分の弟分のように可愛がっていた相手が、今では死んでしまった自分の父親のように頼りがいのある男性に成長しており、アリアはエルフの自分と人間の彼の寿命の違いに寂しさを覚える。もしも自分が20年前の告白を断らなければ共にアトラス大森林に赴き、彼と共に幸せな家庭を築けたのではないかと考えてしまう。
「どうしたアリア?さっきから俺の顔を見て……」
「い、いや……何でもない」
「そうか、それで何時までここに居られる?」
「そうだな……しばらくはここで宿を取る。あ、もしも良かったらお前の家に世話になれないか?」
「俺の家……」
レオはアリアの唐突な申し出に黙り込み、彼女は流石に厚かましいかと考えたが、この後の彼の返答でアリアはレオが自分に対して現在はどのような感情を抱いているのか確かめられるのではないかと考える。もしも受け入れてくれたのなら自分の事を少しは意識しているのではないかと考えたが、レオは難しい表情を浮かべる。
「悪いが俺は冒険者ギルドに世話になっている。家は既に友人に貸し与えているんだ」
「冒険者ギルド?」
「ああ、俺は現在は冒険者ギルドの職員なんだ。そこで冒険者に剣の指導を行っている。これが意外と面白くてな……」
「ほう、お前が剣の指導を……」
剣の話になると途端に二人とも話が弾みだし、20年前の頃のように距離を縮めて語り合う。どれだけ年齢を重ねようと剣の事になると子供のように楽しそうな表情を浮かべるレオに対し、アリアは少し安心してしまう。やがて二人は街に辿り着くと、門番を行っていた兵士がレオ達の存在に気付いて慌てて駆け寄ってくる。
「あ、レオ様!!お戻りになられたのですね!!」
「どうかしたのか?」
「そ、それが……冒険者ギルドにバルカン王国の使者が訪れました!!」
「バルカン王国……!?」
兵士の言葉にレオとアリアは動揺を隠せず、バルカン王国はレオが最初に仕えていた国家であり、魔王討伐後に立ち去った国でもある。どうして今更王国の人間が訪れた事にレオは疑問を抱くが、すぐにギルドに戻る必要があった。
「すまないアリア、俺はギルドに戻る!!」
「あ、ああ……後で私も顔を出すぞ」
「分かった!!」
レオはその場を走り出し、取り残されたアリアは今日の宿を探すために移動する。出来れば今日一日ぐらいはレオとゆっくりと再会の喜びを味わいたかったが、王国の人間が訪れたのならば仕方がない。
「それにしても王国か……そういえばあの親馬鹿王とマリアは元気にしているのか?」
アリアは20年前に一時期だけ行動を共にした王国の王女のマリアを思い返し、彼女を溺愛していた国王を思い出す。
「そういえばあの国王、レオがマリアと仲が良くなる度に不機嫌そうにしていたな。まさかマリアに触れただけで抜刀して襲い掛かった時は驚いたが……」
昔の事を思い返し、アリアは笑みを浮かべる。マリアは非常に可愛らしい容姿なので他国の王子から人気があったが、父親の国王は彼女を溺愛しており、見合い話を全て断っていた。だが、国王の世継ぎは彼女しか存在せず、もしもマリアが結婚して誰かの子供を授からなければ王国は彼女の代で終わりを迎えてしまう。
「まあ、流石に20年も経過しているからな……マリアも誰かと結婚して幸せな家庭を築いているだろう」
エルフの自分と違い、流石に人間であるマリアが現在も結婚していないとは彼女は思わなかった――
――その一方、冒険者ギルドに光の速さで戻ってきたレオは応接室で国王の使者と対面すると、彼等から予想外の言葉を告げられる。
「お願いします!!どうか、どうかマリア様とご結婚してください!!」
「はあっ……?」
「これは国王様からの書状です!!どうかお読みください!!」
レオは王国の使者達に土下座され、彼等の仕えている王国の王女であるマリアとの結婚を要求される。唐突な彼等の発言に彼は戸惑うが、使者から差し出された国王からの書状を受け取る。その内容は20年前の娘を溺愛していた国王を知っている人間からは信じれない内容であり、レオは激しく動揺した。
『頼む、娘と結婚してくれ。お前以外にマリアは結婚したくないと言うのだ。過去に私がお前に対して仕出かした事は覚えている。しかし、それをどうか水に流して娘と結婚して欲しい。どうか私に初孫の顔を見せてくれ』
手紙の内容に何度もレオは読み返し、過去にマリアと近づいたという理由で「刺客」まで送り込んだ国王が書き記した書状とは思えなかった。
0
お気に入りに追加
1,143
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
勇者に大切な人達を寝取られた結果、邪神が目覚めて人類が滅亡しました。
レオナール D
ファンタジー
大切な姉と妹、幼なじみが勇者の従者に選ばれた。その時から悪い予感はしていたのだ。
田舎の村に生まれ育った主人公には大切な女性達がいた。いつまでも一緒に暮らしていくのだと思っていた彼女らは、神託によって勇者の従者に選ばれて魔王討伐のために旅立っていった。
旅立っていった彼女達の無事を祈り続ける主人公だったが……魔王を倒して帰ってきた彼女達はすっかり変わっており、勇者に抱きついて媚びた笑みを浮かべていた。
青年が大切な人を勇者に奪われたとき、世界の破滅が幕を開く。
恐怖と狂気の怪物は絶望の底から生まれ落ちたのだった……!?
※カクヨムにも投稿しています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
彼女の浮気相手からNTRビデオレターが送られてきたから全力で反撃しますが、今さら許してくれと言われてももう遅い
うぱー
恋愛
彼女の浮気相手からハメ撮りを送られてきたことにより、浮気されていた事実を知る。
浮気相手はサークルの女性にモテまくりの先輩だった。
裏切られていた悲しみと憎しみを糧に社会的制裁を徹底的に加えて復讐することを誓う。
■一行あらすじ
浮気相手と彼女を地獄に落とすために頑張る話です(●´艸`)ィヒヒ
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる