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冒険者の試験
第20話 三大ギルドからの推薦状
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――試験が開始されてから三日後、レノ達以外に試験を受けていた者達も王都へ帰還した。だが、殆どの人間が戻ってきた時のレノ達よりも疲労困憊で酷い怪我を負っていた。
レノと行動を共にしていた人間達は彼のお陰で余計な荷物を背負わずに移動できたが、他の者は荷物は自分で管理しなければならない。戦闘中に荷物を奪われる危険性もあり、実際に今回の試験では魔物に食料を奪われた生徒も少なくなかった。
魔物との戦闘は訓練と実戦は全くと言っていいほどに異なり、訓練に用意された魔物よりも野生の魔物の方が厄介な存在だった。訓練で倒した事がある相手だからといって高を括ると後悔する羽目になり、試験中に油断して大怪我を負った生徒も少なくはない。
「学園長、今年の生徒の中で試験に合格した者はこれだけです」
「……昨年の半分以下か」
第一学園にてダガンはイーシャンに報告を行い、試験を合格を果たした生徒の確認を行う。今年は昨年よりも試験を受けた人間が多いにも関わらず、合格者の数は昨年よりも減少していた。
「今年の試験はそれほど難しかったのか?」
「それは私では判断できかねます。ですが、帰還した生徒達の話を聞く限りでは野生の魔物との遭遇率が非常に高かったそうです」
「ふむ、今年も魔物どもが増えたという事か……」
原因は不明だがここ数年で世界中の魔物が増え続けており、これまでは魔物が出現しなかった地域にまで魔物が現れる話もよく耳にする。今年の試験は昨年よりも魔物との遭遇率が高く、そのせいで試験の合格者は減ってしまった。
「第二学園の方でも例年よりも合格者の数は少ないそうです。そのため、今年は規定の合格者数に達しないので再試験を行うべきか第二学園の学園長が協議したいそうですが……」
「やれやれ、あちらも相当に焦っているようじゃな……」
第二学園は第一学園よりも優秀な生徒が多いと自負しており、実際に高名な冒険者の多くは第二学園の出身者が多い。第二学園は国以外からも三大ギルドからも援助を受けており、彼等の期待に応えるためにも冒険者の育成に力を注いでいる。
第一学園と比べて第二学園の環境と設備が整っているのは多くの人間から援助を受けているからであり、その代わりに彼等の期待に応える成果を出さなければならない。そのために優秀な人材を引き抜き、彼等を鍛え上げる事で一流の冒険者を育て上げようとしている。しかし、今年に限っては第一学園の生徒が最も優秀な成績を残していた。
「学園長……やはり、レノが目を付けられました」
「……最高評価か」
試験を受けた人間の中で最も評価されたのは案の定というべきかレノだった。普段の訓練では実力を隠していたレノだったが、今回の試験で彼は他の人間を救うために収納魔法を応用した戦闘法を使ってしまう。
「既に氷雨、黒虎、金色からの推薦状が届いています。どのギルドも冒険者の資格を与えられたらすぐに招き入れる準備は整えているとの事です」
「やはりそうなかったか……しかし、随分と早いな」
予想はしていたとはいえ、三大ギルドがレノの存在に勘付いた事にイーシャンは疑問を抱く。試験の結果が届いたのは今日だというのに三大ギルドはどうやってレノの情報を掴んだのか気にかかる。
「どうやらレノの班を尾行していた冒険者が三大ギルドに情報を漏らしたようです。これまでも試験の際に生徒達を尾行する冒険者が有能な才能を持つ人間を見出し、自分が所属する冒険者ギルドに報告する事もありました」
「なるほどな……しかし、何故三大ギルドから同時に推薦状が届く?レノを尾行した冒険者は自分が所属するギルド以外にも彼の情報を流したという事か?」
「どうやらレノを尾行していた冒険者は他のギルドにも情報交換の取引を持ち掛けたようで……大金に目が眩んで情報を売ったのでしょう」
「やれやれ、冒険者の質も落ちたな……」
レノを尾行した冒険者は彼の実力を高く評価し、自分が所属するギルド以外にも彼の情報を流す事で大金を得た事が発覚した。そのせいでレノは三大ギルドに目を付けられ、推薦状が送られてきた。
「レノの実力は知られた以上、三大ギルドは何としても彼を引き込もうとするでしょう。無論、それは悪い事ではないのですが……」
「うむ、我が学園の卒業生が三大ギルドに所属するとなれば評価も高まる。しかし、よりにもよってレノか……マリアに何と説明すればいいやら」
「学園長?」
ダガンはマリアの事を知らないので彼の呟きを聞いて不思議に思うが、ダガンはレノ宛の推薦状を確認して悩む。
「とりあえずはこの推薦状は本人に渡しておけ。いくら儂等が悩んだ所で決めるのは本人の意志じゃ」
「分かりました……しかし、まさかあのレノが三大ギルドから推薦状を送られるとは」
「入学当初は訓練も碌に付いてこれなかったひよっこがここまで成長するとは夢にも思わなかったか?」
「……そうですね」
ダガンはレノが一年生の頃を思い出し、当時の彼は他の生徒と比べても落ちこぼれの部類だった。しかし、今では第一学園の生徒の中でも一、二を誇る程の人材へと成長した事に嬉しく思う。
教師としてはダガンはレノの将来を心配する一方、彼がどんな冒険者になるのか興味はあった。何時の日かレノが有名な冒険者に成った時、ダガンは教え子にレノを冒険者にさせたのは自分だと自慢する日が訪れる事を期待しながら彼に推薦状を渡しに向かう――
レノと行動を共にしていた人間達は彼のお陰で余計な荷物を背負わずに移動できたが、他の者は荷物は自分で管理しなければならない。戦闘中に荷物を奪われる危険性もあり、実際に今回の試験では魔物に食料を奪われた生徒も少なくなかった。
魔物との戦闘は訓練と実戦は全くと言っていいほどに異なり、訓練に用意された魔物よりも野生の魔物の方が厄介な存在だった。訓練で倒した事がある相手だからといって高を括ると後悔する羽目になり、試験中に油断して大怪我を負った生徒も少なくはない。
「学園長、今年の生徒の中で試験に合格した者はこれだけです」
「……昨年の半分以下か」
第一学園にてダガンはイーシャンに報告を行い、試験を合格を果たした生徒の確認を行う。今年は昨年よりも試験を受けた人間が多いにも関わらず、合格者の数は昨年よりも減少していた。
「今年の試験はそれほど難しかったのか?」
「それは私では判断できかねます。ですが、帰還した生徒達の話を聞く限りでは野生の魔物との遭遇率が非常に高かったそうです」
「ふむ、今年も魔物どもが増えたという事か……」
原因は不明だがここ数年で世界中の魔物が増え続けており、これまでは魔物が出現しなかった地域にまで魔物が現れる話もよく耳にする。今年の試験は昨年よりも魔物との遭遇率が高く、そのせいで試験の合格者は減ってしまった。
「第二学園の方でも例年よりも合格者の数は少ないそうです。そのため、今年は規定の合格者数に達しないので再試験を行うべきか第二学園の学園長が協議したいそうですが……」
「やれやれ、あちらも相当に焦っているようじゃな……」
第二学園は第一学園よりも優秀な生徒が多いと自負しており、実際に高名な冒険者の多くは第二学園の出身者が多い。第二学園は国以外からも三大ギルドからも援助を受けており、彼等の期待に応えるためにも冒険者の育成に力を注いでいる。
第一学園と比べて第二学園の環境と設備が整っているのは多くの人間から援助を受けているからであり、その代わりに彼等の期待に応える成果を出さなければならない。そのために優秀な人材を引き抜き、彼等を鍛え上げる事で一流の冒険者を育て上げようとしている。しかし、今年に限っては第一学園の生徒が最も優秀な成績を残していた。
「学園長……やはり、レノが目を付けられました」
「……最高評価か」
試験を受けた人間の中で最も評価されたのは案の定というべきかレノだった。普段の訓練では実力を隠していたレノだったが、今回の試験で彼は他の人間を救うために収納魔法を応用した戦闘法を使ってしまう。
「既に氷雨、黒虎、金色からの推薦状が届いています。どのギルドも冒険者の資格を与えられたらすぐに招き入れる準備は整えているとの事です」
「やはりそうなかったか……しかし、随分と早いな」
予想はしていたとはいえ、三大ギルドがレノの存在に勘付いた事にイーシャンは疑問を抱く。試験の結果が届いたのは今日だというのに三大ギルドはどうやってレノの情報を掴んだのか気にかかる。
「どうやらレノの班を尾行していた冒険者が三大ギルドに情報を漏らしたようです。これまでも試験の際に生徒達を尾行する冒険者が有能な才能を持つ人間を見出し、自分が所属する冒険者ギルドに報告する事もありました」
「なるほどな……しかし、何故三大ギルドから同時に推薦状が届く?レノを尾行した冒険者は自分が所属するギルド以外にも彼の情報を流したという事か?」
「どうやらレノを尾行していた冒険者は他のギルドにも情報交換の取引を持ち掛けたようで……大金に目が眩んで情報を売ったのでしょう」
「やれやれ、冒険者の質も落ちたな……」
レノを尾行した冒険者は彼の実力を高く評価し、自分が所属するギルド以外にも彼の情報を流す事で大金を得た事が発覚した。そのせいでレノは三大ギルドに目を付けられ、推薦状が送られてきた。
「レノの実力は知られた以上、三大ギルドは何としても彼を引き込もうとするでしょう。無論、それは悪い事ではないのですが……」
「うむ、我が学園の卒業生が三大ギルドに所属するとなれば評価も高まる。しかし、よりにもよってレノか……マリアに何と説明すればいいやら」
「学園長?」
ダガンはマリアの事を知らないので彼の呟きを聞いて不思議に思うが、ダガンはレノ宛の推薦状を確認して悩む。
「とりあえずはこの推薦状は本人に渡しておけ。いくら儂等が悩んだ所で決めるのは本人の意志じゃ」
「分かりました……しかし、まさかあのレノが三大ギルドから推薦状を送られるとは」
「入学当初は訓練も碌に付いてこれなかったひよっこがここまで成長するとは夢にも思わなかったか?」
「……そうですね」
ダガンはレノが一年生の頃を思い出し、当時の彼は他の生徒と比べても落ちこぼれの部類だった。しかし、今では第一学園の生徒の中でも一、二を誇る程の人材へと成長した事に嬉しく思う。
教師としてはダガンはレノの将来を心配する一方、彼がどんな冒険者になるのか興味はあった。何時の日かレノが有名な冒険者に成った時、ダガンは教え子にレノを冒険者にさせたのは自分だと自慢する日が訪れる事を期待しながら彼に推薦状を渡しに向かう――
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