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戦姫編

討伐準備

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――治療院を出たレナ達が向かったのは鍛冶屋であり、装備を整える前にレナは「弓魔術」の為に魔石を鏃の形状に加工をして貰うために行きつけの鍛冶職人の店に向かう。この帝都の全ての鍛冶屋は帝都の中央通りに密集しており、職人全員がドワーフ族である。

レナが毎回尋ねているのは無口な事で有名な年老いたドワーフ族の男性の店であり、1人だけで働いており、周囲には腕は確かだが気難しい性格で有名なドワーフ族と噂されている。名前は「ゴア」であり、彼はレナ達が店の中に入ってくるのを確認すると身の丈を超える巨大な鉄槌を肩に抱えて出迎えた。


「……お前か、今日は何の用だ」
「すいません……また魔石の加工をお願いできますか?」
「またか……たまには武器や防具を持ってこい」
「態度が悪いですねこの人……」
「しっ!!」


ゴアは自分の髭を弄りながらレナが用意した大量の魔石を受け取り、彼から鏃の形状に加工するように頼まれ、先に依頼金を受け取る。彼の店は先払い制であり、レナから金貨を十数枚渡されると彼は頷く。


「魔石を矢の鏃に加工するとは……豪勢な使い方をするな。これだけの量だと少し時間が掛かる……明日の夕方に取りに来い」
「分かりました。あ、それと前に頼んでいた奴は……」
「結界石ならまだだ。加工の前に入手自体が難しいからな……早く作ってほしけりゃ素材はお前が用意しろ」
「分かりました……じゃあ、お願いします」


鍛冶職人のゴアの店を立ち去り、レナ達は食事を行うために黒猫亭に向う事にする。宿屋として利用する事はなくなったが、食堂だけの利用は可能であり、アイリィとコトミンには食事は必要はないが彼女達もジュースぐらいなら飲む事は可能であり、久々に主人のバルやバイトのエリナに顔を見せるために3人は宿屋の方角に向かう。用事は食事を終えた後でも問題はなく、序にホノカが立ち去った後の魔道具店の様子を確かめるために向う事にした。


「それにしても……まだ復興されていない場所も多いね」
「結構な被害が生まれましたからね。それでも死傷者の数は少ないのは幸いでしたけど……」


街中を移動中、レナ達はゴブリンの襲撃によって破壊された建物を幾つか通過し、未だに復興作業は終わっていない。王城から出現したゴブリンの群れは街中に拡散し、大きな被害が生まれたが冒険者や警備兵の尽力により、死傷者の数は少なかった。それでも数百人の人間が犠牲になったのは事実であり、レナは自分がゴンゾウを救い出すために王城の地下水路の存在を不用意に他の人間に知らせた事で現在の結果が生まれたのではないかと考えるが、そんな彼にアイリィが肩に手を伸ばす。


「何を考えているのか分かりますけど、あまり思い込まない方がいいですよ。レナさんがいなければゴブリンロードの被害は抑えられなかったんですから……それにミラさんの件に関しては何となくですけど気になるんですよね」
「気になるって?」
「……カトレアの事ですよ。あの人、何時の間にか消えちゃったことが気になるんですよね。結果的にカトレアがミラさんを殺さなければゴブリンロードは誕生しなかったと思うんです。何と言えばいいのか……あの事件自体が本当に誰かが計画して生み出された事じゃないかと思うんです。まあ、あくまでも私の推測ですけど……」
「確かに……」


ミラが死亡したのはカトレアが魅了の能力で彼女に「自殺」を命じたからであり、仮にゴブリンキングが誤って殺さなかったとしても彼女は自分の手で命を絶っていたのは間違いなく、しかもミラが目の前で死亡した事でゴブリンキングが「進化」を果たした。レナは冷静に考えれば全ての出来事が偶然だとは考えられず、何者かが裏で手引きをしていたのではないかと考えるが、証拠はない。


「……レナ、魔道具店が見えて来た」
「あ、本当だ……あれ?開店してる……ホノカさんがいないのに」
「新しい従業員が入ったんじゃないですか?ちょっと立ち寄ってみます?」


店主のホノカがいないはずの魔道具店は今日も開店しており、不思議に思ったレナ達は中に入ると出迎えたのは三人の知らない顔の人間であり、この世界では珍しい黒髪の青年だった。


「いらっしゃいませ……お客様は三名ですか?」
「見ての通りですよ……貴方は誰ですか?ここの店主はホノカさんですよね?」
「おや、ホノカ様の事をご存知でしたか。私はホノカ様の執事を任されているコウと申します」
「……ひつじ?」
「執事ですよ。可愛いお嬢さん」


魔道具店に存在したのはホノカに仕える執事と名乗る青年であり、端正な顔立ちなのでレナは最初は女性かと思ったが、声音は完全に男性であり、コトミンの定番のボケを冷静に対応を行い、彼は3人に笑い掛ける。
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