56 / 207
ゴブリンキング編
自由冒険者
しおりを挟む
「さっき魔物の素材を剥ぎ取って街で売却してたと言ってましたよね。だけど魔物の素材で金銭に換えれる物なんてたかが知れてると思うんですけど……」
「そうなの?」
「食用の魔物なら別ですけど、魔物の素材を買い取ってくれる商人がそもそも少ないですからね。昔、召喚された勇者が何故か狩り取った魔物の牙や皮を律儀に狩り取って鍛冶屋に持ってきて武器を作るように指示した事もありますよ。魔物の骨や皮で何を作れと言うんですかね……」
「あははっ……そうなんだ」
ゲームなどでは魔物の素材で武器を作る事も珍しくはないが、こちらの世界では魔物の素材は特に大きな価値はない。一応は竜種のような牙や鱗が金属級の硬度を誇る魔物の素材ならば別だが、ゴブリンやスライムの素材は全く価値はない。食用となる魔物も存在するのでそちらの方は比較的に高価で買い取ってくれるらしく、別に全ての魔物の素材が全く価値が無いという訳でもない。
「俺は採取のスキルを持っている……だから薬草も摘み取って金を稼いでいた」
「え!?それを早く言ってくださいよ!!採取のスキルを持っているなんて凄いじゃないですか?」
「採取?」
「薬草や鉱石の遭遇率に関わるスキルですよ。熟練度が高い程、上質な素材が発見しやすくなります」
「薬草という事は……傷を回復させる効果があるの?」
「回復薬の原材料の1つですよ?どんな人間も求める高級品ですよ。しかも天然物の場合は金貨単位で取引されても可笑しくないですよ」
「そんなに!?」
こちらの世界の薬草は非常に希少品であり、高価に取引される代物でもあり、ゴンゾウは度の途中で薬草を見つけて売却する事で路銀を稼いでいた。薬草のような植物を採取する時は彼の「採取」のスキルは非常に役立つスキルのため、商人ならば誰もが求める能力として有名である。
「ゴンゾウさんは商人になる気はないんですか?」
「ない。俺は冒険者以外の職業に就く気はない」
「惜しいですね……でも採取のスキルを持っていると知ったらさっきの冒険者ギルドの対応も違ったと思いますよ。採取のスキル持ちの人間は少ないですからね」
「そうなのか?」
「なら今から戻れば冒険者として認めてもらえるかな?」
「いや、自分で言っておいてなんですけど辞めておいた方がいいでしょうね。採取のスキルを所持していると知られたら、ゴンゾウさんはきっと採取系の仕事だけを任されますよ。先ほどの話だとゴンゾウさんは英雄のような冒険者になりたいんですよね」
「その通りだ」
「なら諦めるしかありませんね。下手に採取のスキルを所持している事を知られたら面倒事に巻き込まれるのは確実ですし、無難に冒険者ギルドの関係者を見つけ出して友好的な関係を築いて身元保証人になって貰うしかないですね」
「そうか……」
アイリィの言葉にゴンゾウは溜息を吐きだし、そんな彼にレナは同情する。やはりホノカに彼の事を紹介して身元保証人を引き受けて貰えないのかとレナは考えたが、先ほどのアイリィの言葉を思い出し、迂闊に彼女を巻き込む事は出来ない。そんな事を考えていると今まで黙ってジュースを飲んでいたコトミンが口を開く。
「……冒険者は冒険者ギルドに入らないとなれないの?」
「え?」
「冒険者ギルドに入らないで冒険者にはなれないの?」
彼女の言葉に沈黙が訪れ、必然的にこの場で冒険者ギルドに最も詳しいアイリィに視線が集中し、彼女は腕を組んで考える素振りを行いながら語り出す。
「……そうですね。絶対になれないという訳ではないですよ。実際に冒険者ギルドに所属していない自由の冒険者も存在しますから」
「え?本当に?」
「但し、その場合だと色々と問題が多いんです。ギルドに所属している冒険者は依頼を失敗した場合、ギルド側が責任を取ります。だからギルドの依頼は成功した場合の報酬の一部は必ずギルド側に譲渡します。それと帝国公認の冒険者ギルドの冒険者は税金を払わずに済みます。一方で自由の冒険者は仕事の責任は全て自己負担になります。依頼が成功すれば報酬は全て受け取れますが、冒険者ギルドに所属していない事を吐いて報酬を渋る人間もいますよ。その点は正式に冒険者ギルドに依頼を行って依頼書の発注を既に終えている場合、指定されている依頼内容の条件に反しない限りは正当な報酬が支払われます。ギルドに依頼した場合、成功後に依頼の報酬金額を変更する事は出来ませんからね。もしも文句を付けたら帝国の法律に従い、相応の対処を要請します」
「取り立て屋みたいだな……」
「あまりにも依頼人との揉め事が多かった事から、仕方なく帝国側が新しい制度を築いたんですよ。その点は昔よりも良かったかも知れませんね」
アイリィの説明にレナは頷き、確かに話を聞く限りでは自由の冒険者よりも帝国公認の冒険者ギルドの冒険者の方が制限も多いが、社会福祉はしっかりとしている。
「そうなの?」
「食用の魔物なら別ですけど、魔物の素材を買い取ってくれる商人がそもそも少ないですからね。昔、召喚された勇者が何故か狩り取った魔物の牙や皮を律儀に狩り取って鍛冶屋に持ってきて武器を作るように指示した事もありますよ。魔物の骨や皮で何を作れと言うんですかね……」
「あははっ……そうなんだ」
ゲームなどでは魔物の素材で武器を作る事も珍しくはないが、こちらの世界では魔物の素材は特に大きな価値はない。一応は竜種のような牙や鱗が金属級の硬度を誇る魔物の素材ならば別だが、ゴブリンやスライムの素材は全く価値はない。食用となる魔物も存在するのでそちらの方は比較的に高価で買い取ってくれるらしく、別に全ての魔物の素材が全く価値が無いという訳でもない。
「俺は採取のスキルを持っている……だから薬草も摘み取って金を稼いでいた」
「え!?それを早く言ってくださいよ!!採取のスキルを持っているなんて凄いじゃないですか?」
「採取?」
「薬草や鉱石の遭遇率に関わるスキルですよ。熟練度が高い程、上質な素材が発見しやすくなります」
「薬草という事は……傷を回復させる効果があるの?」
「回復薬の原材料の1つですよ?どんな人間も求める高級品ですよ。しかも天然物の場合は金貨単位で取引されても可笑しくないですよ」
「そんなに!?」
こちらの世界の薬草は非常に希少品であり、高価に取引される代物でもあり、ゴンゾウは度の途中で薬草を見つけて売却する事で路銀を稼いでいた。薬草のような植物を採取する時は彼の「採取」のスキルは非常に役立つスキルのため、商人ならば誰もが求める能力として有名である。
「ゴンゾウさんは商人になる気はないんですか?」
「ない。俺は冒険者以外の職業に就く気はない」
「惜しいですね……でも採取のスキルを持っていると知ったらさっきの冒険者ギルドの対応も違ったと思いますよ。採取のスキル持ちの人間は少ないですからね」
「そうなのか?」
「なら今から戻れば冒険者として認めてもらえるかな?」
「いや、自分で言っておいてなんですけど辞めておいた方がいいでしょうね。採取のスキルを所持していると知られたら、ゴンゾウさんはきっと採取系の仕事だけを任されますよ。先ほどの話だとゴンゾウさんは英雄のような冒険者になりたいんですよね」
「その通りだ」
「なら諦めるしかありませんね。下手に採取のスキルを所持している事を知られたら面倒事に巻き込まれるのは確実ですし、無難に冒険者ギルドの関係者を見つけ出して友好的な関係を築いて身元保証人になって貰うしかないですね」
「そうか……」
アイリィの言葉にゴンゾウは溜息を吐きだし、そんな彼にレナは同情する。やはりホノカに彼の事を紹介して身元保証人を引き受けて貰えないのかとレナは考えたが、先ほどのアイリィの言葉を思い出し、迂闊に彼女を巻き込む事は出来ない。そんな事を考えていると今まで黙ってジュースを飲んでいたコトミンが口を開く。
「……冒険者は冒険者ギルドに入らないとなれないの?」
「え?」
「冒険者ギルドに入らないで冒険者にはなれないの?」
彼女の言葉に沈黙が訪れ、必然的にこの場で冒険者ギルドに最も詳しいアイリィに視線が集中し、彼女は腕を組んで考える素振りを行いながら語り出す。
「……そうですね。絶対になれないという訳ではないですよ。実際に冒険者ギルドに所属していない自由の冒険者も存在しますから」
「え?本当に?」
「但し、その場合だと色々と問題が多いんです。ギルドに所属している冒険者は依頼を失敗した場合、ギルド側が責任を取ります。だからギルドの依頼は成功した場合の報酬の一部は必ずギルド側に譲渡します。それと帝国公認の冒険者ギルドの冒険者は税金を払わずに済みます。一方で自由の冒険者は仕事の責任は全て自己負担になります。依頼が成功すれば報酬は全て受け取れますが、冒険者ギルドに所属していない事を吐いて報酬を渋る人間もいますよ。その点は正式に冒険者ギルドに依頼を行って依頼書の発注を既に終えている場合、指定されている依頼内容の条件に反しない限りは正当な報酬が支払われます。ギルドに依頼した場合、成功後に依頼の報酬金額を変更する事は出来ませんからね。もしも文句を付けたら帝国の法律に従い、相応の対処を要請します」
「取り立て屋みたいだな……」
「あまりにも依頼人との揉め事が多かった事から、仕方なく帝国側が新しい制度を築いたんですよ。その点は昔よりも良かったかも知れませんね」
アイリィの説明にレナは頷き、確かに話を聞く限りでは自由の冒険者よりも帝国公認の冒険者ギルドの冒険者の方が制限も多いが、社会福祉はしっかりとしている。
5
お気に入りに追加
3,645
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
追放からはじまる異世界終末キャンプライフ
ネオノート
ファンタジー
「葉山樹」は、かつて地球で平凡な独身サラリーマンとして過ごしていたが、40歳のときにソロキャンプ中に事故に遭い、意識を失ってしまう。目が覚めると、見知らぬ世界で生意気な幼女の姿をした女神と出会う。女神は、葉山が異世界で新しい力を手に入れることになると告げ、「キャンプマスター」という力を授ける。ぼくは異世界で「キャンプマスター」の力でいろいろなスキルを獲得し、ギルドを立ち上げ、そのギルドを順調に成長させ、商会も設立。多数の異世界の食材を扱うことにした。キャンプマスターの力で得られる食材は珍しいものばかりで、次第に評判が広がり、商会も大きくなっていった。
しかし、成功には必ず敵がつくもの。ライバルギルドや商会から妬まれ、陰湿な嫌がらせを受ける。そして、王城の陰謀に巻き込まれ、一文無しで国外追放処分となってしまった。そこから、ぼくは自分のキャンプの知識と経験、そして「キャンプマスター」の力を活かして、この異世界でのサバイバル生活を始める!
死と追放からはじまる、異世界サバイバルキャンプ生活開幕!
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる