49 / 207
スラム編
格上との戦闘
しおりを挟む
「くそっ!!」
「ありっ?」
レナは「魅了耐性」のスキルの効果で相手の魅了の能力に抗い、少女と向かい合う。彼は相手の少女に鑑定のスキルを発動した事で相手が「サキュバス」と呼ばれる魔人族だと見抜き、硬貨を取り出して前回のヴァンパイア戦の時の様に先に目晦ましを仕掛けようとした時、蝙蝠の翼を背中に生やした少女の姿が消え去る。
「やっほ~」
「っ!?」
後方から少女の声が響き、レナは背後を振り返るが既に少女の姿は見えず、左側の方向から再び少女の声が聞こえてきた。
「こっちこっち~」
「何時の間に……!?」
左に視線を向けると少女が煙突の上に座り込んでおり、笑顔を浮かべたままレナに視線を向ける。目にも止まらぬ速度で移動を行った事は分かるが、唐突に現れたサキュバスの少女に対し、レナは硬貨を握りしめたまま身構える。相手が先に魅了のスキルを仕掛けてきたのは事実だが、もしも相手が殺す気ならば既にレナは何度も少女に命を落とす機会を与えている。
「ふ~んっ……可愛い男の子だから僕にしてあげようと思ったけど、魅了耐性を持っているなんて……もしかしてサキュバスの御友達がいるの?」
「……ヴァンパイアの知り合いは居たよ」
「ヴァンパイア……?」
レナの返答にサキュバスの「カトレア」は首を傾げ、一方でレナは前回のヴァンパイアは油断していたからこそ勝利を掴めたが、今回の相手は余裕を保ったままレ彼を見下ろしていた。相手がヴァンパイアではない事から聖属性の付与魔法が弱点なのかも分からず、今現在のレナの熟練度が低い鑑定の能力では相手の弱点までは見抜けない。
「くそっ!!」
「逃がさないよ~」
既にレナは聖属性の付与魔法は肉体に発動しており、身体能力は限界まで強化されているので逃走を計ろうとしたが、少女は翼を羽ばたかせて接近する。明らかに物理法則を無視した速度で接近するカトレアに対し、レナは跳躍しながら硬貨を握りしめた掌を構える。
「聖属性!!」
「わあっ!?」
空中を浮揚中に硬貨から閃光を放ち、少女は驚いた声を上げて空中で停止すると、レナは別の建物に着地して急いで距離を取る。今回の相手はヴァンパイアとの戦闘のように勝てる保証はなく、本能が逃走を誘導する。相手が視界を奪われている間に距離を取ろうとするが、レナの気配感知のスキルが発動する。
「なっ!?」
「待て待て~」
背後を振り返るとカトレアが瞼を抑えながら近づいており、どういう事なのかレナの正確な位置を把握して接近してくる。視力が復活した訳ではなさそうだが、少女はレナの居場所を確実に見抜いているのかのように接近し、僅かに彼女の鼻が動いている事をレナは気付き、相手が犬のように嗅覚を頼りに自分の居場所を把握している事を見抜く。
「ひっさつ~……回転蹴り!!」
「うわぁっ!?」
戦技なのか、それとも彼女がふざけて名付けただけなのかは不明だが、カトレアは空中で回転しながら踵落としを放つ。咄嗟にレナは「回避」を発動して攻撃を躱すが、カトレアの足が建物の屋根に衝突し、派手に土煙を舞い上げながら屋根の一部を崩壊させる。
「なんて馬鹿力……!?」
「あ、そこだぁっ!!」
「うひゃっ!?」
今度は声に気付いてカトレアが掌を伸ばし、咄嗟にレナは後方に移動して彼女の腕を避ける。もしも捕まっていたら外見からは想像できない握力で肉体の一部が握り潰されていた可能性が高く、視界が塞がれてもカトレアは聴覚と嗅覚を頼りに彼の正確な位置を把握し、攻撃を仕掛ける。
「このっ、このぉっ」
「くそっ!!」
掛け声は子供の様に可愛らしいが、確実に急所に狙い定めて攻撃を仕掛けてくるカトレアにレナは回避と幸運のスキルだけを頼りに攻撃を躱し続ける。普通ならば反応すら出来ない速度の攻撃なのだが、スキルのお蔭で何とか対応する。しかし、幸運は何度も続かず、遂にカトレアの手がレナの右足を掴み、片腕だけで持ち上げる。
「捕まえたぁっ!!」
「うわぁっ!?」
右足首を掴まれ、空中に浮き上がったレナは悲鳴を上げ、カトレアは腕を振り回す。遠心力を加えて投げ飛ばすつもりのようだが、レナは反対の足で先ほど習得した戦技の「反撃」を発動し、カトレアの首に蹴り付ける。
「このぉっ!!」
「あうっ!?」
予想外の反撃にカトレアはレナの右足首を離してしまい、彼の身体が空中に浮揚する。飛ばされた先には別の建物の壁が存在し、レナは建物の窓を突き破って室内に吹き飛ばされる。
「ぐあっ!?」
窓の硝子の破片が身体に食い込みながらレナは床に転がり込み、同時に聖属性の付与魔法が切れたのか身体に疲労感と激痛が走り、苦痛の表情を浮かべながら自分の鞄から「聖水」を取り出す。カトレアに掴まれていた右足首が異様な方向に曲がっており、すぐに治療を施さなければならない。
「くっ……あぐぅうううっ!?」
聖水を傷口に降り注ぎ、激痛を我慢して傷の治療を施す。この世界の回復薬は消毒の役割も存在し、傷口の負傷を治療するのと同時に生き残る手段を考える。
「ありっ?」
レナは「魅了耐性」のスキルの効果で相手の魅了の能力に抗い、少女と向かい合う。彼は相手の少女に鑑定のスキルを発動した事で相手が「サキュバス」と呼ばれる魔人族だと見抜き、硬貨を取り出して前回のヴァンパイア戦の時の様に先に目晦ましを仕掛けようとした時、蝙蝠の翼を背中に生やした少女の姿が消え去る。
「やっほ~」
「っ!?」
後方から少女の声が響き、レナは背後を振り返るが既に少女の姿は見えず、左側の方向から再び少女の声が聞こえてきた。
「こっちこっち~」
「何時の間に……!?」
左に視線を向けると少女が煙突の上に座り込んでおり、笑顔を浮かべたままレナに視線を向ける。目にも止まらぬ速度で移動を行った事は分かるが、唐突に現れたサキュバスの少女に対し、レナは硬貨を握りしめたまま身構える。相手が先に魅了のスキルを仕掛けてきたのは事実だが、もしも相手が殺す気ならば既にレナは何度も少女に命を落とす機会を与えている。
「ふ~んっ……可愛い男の子だから僕にしてあげようと思ったけど、魅了耐性を持っているなんて……もしかしてサキュバスの御友達がいるの?」
「……ヴァンパイアの知り合いは居たよ」
「ヴァンパイア……?」
レナの返答にサキュバスの「カトレア」は首を傾げ、一方でレナは前回のヴァンパイアは油断していたからこそ勝利を掴めたが、今回の相手は余裕を保ったままレ彼を見下ろしていた。相手がヴァンパイアではない事から聖属性の付与魔法が弱点なのかも分からず、今現在のレナの熟練度が低い鑑定の能力では相手の弱点までは見抜けない。
「くそっ!!」
「逃がさないよ~」
既にレナは聖属性の付与魔法は肉体に発動しており、身体能力は限界まで強化されているので逃走を計ろうとしたが、少女は翼を羽ばたかせて接近する。明らかに物理法則を無視した速度で接近するカトレアに対し、レナは跳躍しながら硬貨を握りしめた掌を構える。
「聖属性!!」
「わあっ!?」
空中を浮揚中に硬貨から閃光を放ち、少女は驚いた声を上げて空中で停止すると、レナは別の建物に着地して急いで距離を取る。今回の相手はヴァンパイアとの戦闘のように勝てる保証はなく、本能が逃走を誘導する。相手が視界を奪われている間に距離を取ろうとするが、レナの気配感知のスキルが発動する。
「なっ!?」
「待て待て~」
背後を振り返るとカトレアが瞼を抑えながら近づいており、どういう事なのかレナの正確な位置を把握して接近してくる。視力が復活した訳ではなさそうだが、少女はレナの居場所を確実に見抜いているのかのように接近し、僅かに彼女の鼻が動いている事をレナは気付き、相手が犬のように嗅覚を頼りに自分の居場所を把握している事を見抜く。
「ひっさつ~……回転蹴り!!」
「うわぁっ!?」
戦技なのか、それとも彼女がふざけて名付けただけなのかは不明だが、カトレアは空中で回転しながら踵落としを放つ。咄嗟にレナは「回避」を発動して攻撃を躱すが、カトレアの足が建物の屋根に衝突し、派手に土煙を舞い上げながら屋根の一部を崩壊させる。
「なんて馬鹿力……!?」
「あ、そこだぁっ!!」
「うひゃっ!?」
今度は声に気付いてカトレアが掌を伸ばし、咄嗟にレナは後方に移動して彼女の腕を避ける。もしも捕まっていたら外見からは想像できない握力で肉体の一部が握り潰されていた可能性が高く、視界が塞がれてもカトレアは聴覚と嗅覚を頼りに彼の正確な位置を把握し、攻撃を仕掛ける。
「このっ、このぉっ」
「くそっ!!」
掛け声は子供の様に可愛らしいが、確実に急所に狙い定めて攻撃を仕掛けてくるカトレアにレナは回避と幸運のスキルだけを頼りに攻撃を躱し続ける。普通ならば反応すら出来ない速度の攻撃なのだが、スキルのお蔭で何とか対応する。しかし、幸運は何度も続かず、遂にカトレアの手がレナの右足を掴み、片腕だけで持ち上げる。
「捕まえたぁっ!!」
「うわぁっ!?」
右足首を掴まれ、空中に浮き上がったレナは悲鳴を上げ、カトレアは腕を振り回す。遠心力を加えて投げ飛ばすつもりのようだが、レナは反対の足で先ほど習得した戦技の「反撃」を発動し、カトレアの首に蹴り付ける。
「このぉっ!!」
「あうっ!?」
予想外の反撃にカトレアはレナの右足首を離してしまい、彼の身体が空中に浮揚する。飛ばされた先には別の建物の壁が存在し、レナは建物の窓を突き破って室内に吹き飛ばされる。
「ぐあっ!?」
窓の硝子の破片が身体に食い込みながらレナは床に転がり込み、同時に聖属性の付与魔法が切れたのか身体に疲労感と激痛が走り、苦痛の表情を浮かべながら自分の鞄から「聖水」を取り出す。カトレアに掴まれていた右足首が異様な方向に曲がっており、すぐに治療を施さなければならない。
「くっ……あぐぅうううっ!?」
聖水を傷口に降り注ぎ、激痛を我慢して傷の治療を施す。この世界の回復薬は消毒の役割も存在し、傷口の負傷を治療するのと同時に生き残る手段を考える。
0
お気に入りに追加
3,645
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる