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最終章 〈魔王と初級魔術師〉

変形の弱点

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「要するにこいつが変形している間は攻撃が通じるかもしれないという事ですよ!!意味分かりましたか!?」
「なら、最初からそう言えやっ!!」
「なるほど……変形する際は物質の硬度を変化させて柔らかくなり、攻撃と防御を仕掛ける際は硬度を硬くして戦っていたのですね」


リーリスの説明にやっと理解したダンテに対し、ドリアとギリョウは鎧武者の弱点とまでは言い切れぬ物の能力の正体を見抜く。変形の際に鎧武者は全身の金属を軟質化させ、攻防の際には逆に硬質化する事で動いているらしい。だが、変形の際に柔らかくなると言ってもリーリスが投擲した薬瓶を破壊出来る程度の硬度は存在するらしく、決して油断はできない。


(さっきはドリアさんの魔法を吸収して反撃を仕掛けましたが、最初に私が投げた爆発瓶の時はまともに攻撃を受けたのも気になりますね……私の爆発瓶も元を正せば火属性の魔石を原料にした物、つまりは魔法の力で生み出した火炎に変わりないのに吸収出来なかった。もしかしたらそこに本当の弱点があるのかもしれません)


これまでの戦闘中、鎧武者は「変形」「硬度変換」「魔法吸収」「反撃(光線)」の4つの能力を使いこなして戦闘を優位に立っていた。だが、この中の変形と硬度変換の能力は見抜いたが、残りの魔法吸収と吸収した魔力を光線に変換させて反撃を行う能力に関しては疑問点がある。


(単純に魔力を吸収して放出する能力でもないのか、あるいは魔石の類で生み出した魔法は吸収出来ないのか……もしくは吸収しているけど私達には分からない方法で発散させていた……?)


リーリスは鎧武者の行動を全て思い返し、あらゆる予測を立てる。彼女が薬師でありながら将軍に選ばれたのは他の将軍のように秀でた武力や魔法が扱えるわけではなく、その優れた分析力によってあらゆる状況を乗り越える術を導き出すからだった。


(……最初に私が爆発瓶を投げた時に既に魔法の力は吸収されていた?火属性の魔力を吸収していたにも関わらずに戦闘では使わなかった。いや、使えなかった?反撃を試みるには力がまだ足りなかった……?そういえばあの時、確か『蓄積完了』とか言っていたような……)


少しずつではあるが手掛かりを頼りにリーリスは鎧武者の能力の秘密に辿り着く感覚に陥り、あと少しで真実に辿りつけそうな予感を抱く。


(あの鎧武者の中身は存在しませんが、生物のように自己意識を持っているはず……そして機械的に自分の行動を口にしている。それならドリアさんの雷属性の魔法を吸収した時に「充電」という言葉を使わずに「蓄積」という表現を口にしたのか……そういえばあの時に撃ち返した光線、あれは本当に雷属性の魔法だけで生み出したんでしょうか?)


頭を抑えながらリーリスは考え、考え抜いた末に遂にある仮説を立てた。


(まさか……あの時に撃ち返した光線はドリアさんの魔法だけではなく、私の与えた爆発瓶の火属性の魔力も含まれていた?もしもそうだとしたら炎と雷の共通点は……どちらも熱エネルギーを帯びているという事!!つまり、あの化物は熱エネルギーを吸収して攻撃に利用したんです!!それなら熱以外の攻撃なら……!?)


リーリスは鎧武者が魔法を吸収して反撃に転じていたので無意識に魔法は通じないと判断していたが、よくよく考えれば今の時点で鎧武者に攻撃を仕掛けた魔法は「火属性」と「雷属性」の二つだけである。このまま普通に戦った所で勝ち目があるとは思えず、一か八かの賭けになるがリーリスはドリアに指示を出す。


「ドリアさん!!私が合図したら同時に魔法を発動させてください!!」
「えっ!?いや、しかし……」
「おい、話し合っている暇はないぞ!?」
『斬』


ドリアがリーリスの言葉に驚愕の表情を浮かべる中、自分に攻撃を仕掛けたギリョウを優先して鎧武者はデュランダルを振り翳し、地面に刃を叩きつける。単純な攻撃ではあるがその力と速度は油断ならず、ギリョウは足場を崩す勢いで放たれる斬撃を紙一重で回避する。


「ぐう、ぬうっ……こ奴、これほどの巨体で何という身のこなしじゃ……!!」
「年寄りばっかり狙うんじゃねえっ!!おい、こっちだ!!」
『排除』


後方から盾を翳して接近してきたダンテに対して鎧武者は振り返りもせずに腕を伸ばし、掌を変形させて黒棘を生み出す。その攻撃に対してダンテは盾を構えて突出された黒色の棘を防ぐが、今回は次々と黒棘が掌から生み出されてダンテを執拗に狙う。


「うおおっ!?ちょ、やべぇっ……防ぎきれるかこんなもん!!」
「ダンテ!!もう少し踏ん張れ……ぬうっ!?」
『全方位、一斉攻撃』


鎧武者はデュランダルを手放すとギリョウの方にも掌を向け、複数の黒棘を生み出して攻撃を行う。大振りの攻撃に対して相手の行動を読み切って回避していたがギリョウだが、掌から無数に放たれる黒棘を全て回避する事は難しく、徐々に避けきれずに身体に掠り傷が走り、やがて右足に黒棘が突き刺さってしまう。


「ぐぅっ……!?」
「爺さん!?」
「老将軍!?このっ……!!」
「水属性です!!水属性の魔法で狙ってください!!」


ギリョウが負傷したのを確認したドリアは我慢できずに杖を構えた時、リーリスが掌を構えて指示を出す。先ほどの攻防で鎧武者は「高熱」を帯びた魔法は吸収されると判断し、ならば逆に熱ではなく冷気の塊を生み出す攻撃ならば通用するのではないかと考えたがリーリスはドリアに助言した。





※おまけ

ルノ「お気に入り数が不遇職に抜かれた!?そ、そんな……(; ゚Д゚)」
カタナヅキ「まあ、コミカライズの影響もあると思うから……(;´・ω・)/ヨシヨシ」
リーリス「……始末せねば( ・`д・´)ノ毒薬」
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