356 / 657
獣人国
魔王の謎
しおりを挟む
「ともかく、クズノが動いているなら今後は用心した方がいいわ。これまで以上に気を付けて行動しなさい」
「分かった。色々とありがとうリディア」
「な、何よ……意外と素直に礼を言うのね」
感謝の言葉を告げたルノにリディアは戸惑うが、これまでの道中でルノも彼女の事をそれなりに信頼しており、少なくとも味方でいる間は頼りになる相手だと認識していた。出会いは最悪ではあったが子供が好きな一面や孤児院のために仕送りしていた事を知った事で根は悪い人間ではないと判断した。
(でも、油断は出来ないな。目を離さないようにしないと……)
リディアがルノの味方でいるのは彼女が魔王軍に命を狙われるようになったから仕方なく同行している節があり、もしも何らかの理由で魔王軍がリディアが戻ることを許したのならば彼女が裏切る可能性は否定できない。最も今の所は魔王軍もルノ達の動向に気づいている様子はなく、仮に知られていたとしても魔王軍の中にルノと対抗出来る存在が残っているとは考えにくい。
(そういえば魔王は誰かに自分は作り出されたとか言ってたけど……一体何者だろう?)
ルノは魔王との戦闘を思い返し、魔王は自分がこれまでの歴史上に登場した魔王とは別の存在である事を話していた。その話が事実ならば魔王軍の中にルノが苦戦を強いられた魔王を作り出した存在が居る事になるが、それがクズノだった場合は非常に厄介な事になる。
(魔王は宇宙に飛ばす事は出来たけど、もう一度同じような奴と戦えば今度は不味いかも……ステータスはもう上昇しないから成長の異能に頼れないし、もう一度戦闘法を見直してみようかな?)
先日にルノが対立した「スライム」の魔王は「魔法を吸収し、内部で反芻して何倍にも威力を上昇させて放つ」という非常に厄介な能力を持っていた。だが、後になって考えれば魔王はルノに対して妙なまでに相性の悪い相手であり、不自然さが残っていた。
(まるで俺のような魔術師と戦うことを予測していたような能力だな……魔法が使えない相手には何の役にも立たない能力というのも気になるし)
魔王の能力はあくまでも対魔術師との戦闘に特化した能力であり、例えばダンテやギリョウのような魔法が扱えない戦闘職の人間には何の意味もない能力である(最も魔王自身の身体能力もルノに匹敵する程に高いが)。仮に魔王の能力がルノを倒すために作り出された能力だとした場合、魔王を作り出した存在はルノを恐れて彼に対抗するためだけの能力を作り出した可能性も否定できない。
(仮に魔王を作り出せる存在が残っていたらまたあんな面倒な相手と戦う事になるのか……そう考えると今度は確実に相手を倒す方法か封じる手段を見つけないと)
再び魔王のような存在が現れた時の場合に備え、ルノは用心のために魔法以外の対抗手段を身に着ける事を決めた。一応は四天王から護身術程度の戦闘技術は教わって入るが、素の身体能力が高すぎるルノの場合は魔法無しでも魔物を圧倒出来る程の高い運動能力を持っているので本格的に格闘技を学ぶ必要はなかった。
しかし、再び魔王のような存在と戦う事態に陥った場合に備え、今度は宇宙に放り出さずとも倒せる手段を身に着けるためにルノは魔法以外の戦闘技術も学ぶ事に決めた。だが、現状は住民達を救い出し、横暴を行う獣人国の軍隊に鉄槌を下すために行動する事に集中する。
「さてと……そろそろミルさんの所に行こうか。これぐらいのお金があれば回復薬も作ってくれるんだよね?」
「そうね。でも、本当にあの婆さんに回復薬を作ってもらうの?腕は確かだけど、流石に一人だけだと作れる量も限られているわよ」
「大丈夫、その点についてもケンさんと相談してミルさん以外の薬師にも声を掛けてる。無理やり兵士に連行されて回復薬の制作を強要されていた他の村の薬師さんも結構居たらしいからその人たちにも協力を頼んであるんだ」
「あら、意外と抜け目ないわね……というか、それならミルに頼む必要もなかったんじゃない?」
「ううん、回復薬を作れる人は一人でも多い方がいいよ。薬師の人達も生活があるから無償で手伝って貰う訳にはいかないし、ちゃんと後で作った分の料金は払う約束はしてある」
「変なところで真面目よねあんたって……いきなり駐屯所に殴り込んだ奴の台詞とは思えないわ」
『シャアアッ……』
自分の知らない間にミル以外の薬師にも仕事を依頼していた事にリディアは戸惑いながらも感心し、考え無しで行動しているように思えて裏では計算して動いていたルノの評価を見直す。何となくではあるがお互いに認め合って少しだけ距離が縮んだように感じた二人は早速ミルの元に向かい、まずは回復薬の制作を依頼する事にした。
「分かった。色々とありがとうリディア」
「な、何よ……意外と素直に礼を言うのね」
感謝の言葉を告げたルノにリディアは戸惑うが、これまでの道中でルノも彼女の事をそれなりに信頼しており、少なくとも味方でいる間は頼りになる相手だと認識していた。出会いは最悪ではあったが子供が好きな一面や孤児院のために仕送りしていた事を知った事で根は悪い人間ではないと判断した。
(でも、油断は出来ないな。目を離さないようにしないと……)
リディアがルノの味方でいるのは彼女が魔王軍に命を狙われるようになったから仕方なく同行している節があり、もしも何らかの理由で魔王軍がリディアが戻ることを許したのならば彼女が裏切る可能性は否定できない。最も今の所は魔王軍もルノ達の動向に気づいている様子はなく、仮に知られていたとしても魔王軍の中にルノと対抗出来る存在が残っているとは考えにくい。
(そういえば魔王は誰かに自分は作り出されたとか言ってたけど……一体何者だろう?)
ルノは魔王との戦闘を思い返し、魔王は自分がこれまでの歴史上に登場した魔王とは別の存在である事を話していた。その話が事実ならば魔王軍の中にルノが苦戦を強いられた魔王を作り出した存在が居る事になるが、それがクズノだった場合は非常に厄介な事になる。
(魔王は宇宙に飛ばす事は出来たけど、もう一度同じような奴と戦えば今度は不味いかも……ステータスはもう上昇しないから成長の異能に頼れないし、もう一度戦闘法を見直してみようかな?)
先日にルノが対立した「スライム」の魔王は「魔法を吸収し、内部で反芻して何倍にも威力を上昇させて放つ」という非常に厄介な能力を持っていた。だが、後になって考えれば魔王はルノに対して妙なまでに相性の悪い相手であり、不自然さが残っていた。
(まるで俺のような魔術師と戦うことを予測していたような能力だな……魔法が使えない相手には何の役にも立たない能力というのも気になるし)
魔王の能力はあくまでも対魔術師との戦闘に特化した能力であり、例えばダンテやギリョウのような魔法が扱えない戦闘職の人間には何の意味もない能力である(最も魔王自身の身体能力もルノに匹敵する程に高いが)。仮に魔王の能力がルノを倒すために作り出された能力だとした場合、魔王を作り出した存在はルノを恐れて彼に対抗するためだけの能力を作り出した可能性も否定できない。
(仮に魔王を作り出せる存在が残っていたらまたあんな面倒な相手と戦う事になるのか……そう考えると今度は確実に相手を倒す方法か封じる手段を見つけないと)
再び魔王のような存在が現れた時の場合に備え、ルノは用心のために魔法以外の対抗手段を身に着ける事を決めた。一応は四天王から護身術程度の戦闘技術は教わって入るが、素の身体能力が高すぎるルノの場合は魔法無しでも魔物を圧倒出来る程の高い運動能力を持っているので本格的に格闘技を学ぶ必要はなかった。
しかし、再び魔王のような存在と戦う事態に陥った場合に備え、今度は宇宙に放り出さずとも倒せる手段を身に着けるためにルノは魔法以外の戦闘技術も学ぶ事に決めた。だが、現状は住民達を救い出し、横暴を行う獣人国の軍隊に鉄槌を下すために行動する事に集中する。
「さてと……そろそろミルさんの所に行こうか。これぐらいのお金があれば回復薬も作ってくれるんだよね?」
「そうね。でも、本当にあの婆さんに回復薬を作ってもらうの?腕は確かだけど、流石に一人だけだと作れる量も限られているわよ」
「大丈夫、その点についてもケンさんと相談してミルさん以外の薬師にも声を掛けてる。無理やり兵士に連行されて回復薬の制作を強要されていた他の村の薬師さんも結構居たらしいからその人たちにも協力を頼んであるんだ」
「あら、意外と抜け目ないわね……というか、それならミルに頼む必要もなかったんじゃない?」
「ううん、回復薬を作れる人は一人でも多い方がいいよ。薬師の人達も生活があるから無償で手伝って貰う訳にはいかないし、ちゃんと後で作った分の料金は払う約束はしてある」
「変なところで真面目よねあんたって……いきなり駐屯所に殴り込んだ奴の台詞とは思えないわ」
『シャアアッ……』
自分の知らない間にミル以外の薬師にも仕事を依頼していた事にリディアは戸惑いながらも感心し、考え無しで行動しているように思えて裏では計算して動いていたルノの評価を見直す。何となくではあるがお互いに認め合って少しだけ距離が縮んだように感じた二人は早速ミルの元に向かい、まずは回復薬の制作を依頼する事にした。
1
お気に入りに追加
11,316
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。