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帝国の危機
閑話 〈エルフ王国〉
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――直央とリーリスが日の国に訪れたころ、昆虫種の大群の襲撃を受けたエルフ王国は危機的状況に陥っていた。エルフ王国の領地は殆ど樹海に覆い尽くされておりうが、彼等の首都は「世界樹」という樹齢数千年を誇る巨大な大木の周辺に街を築き、大木の内部を削り取って城代わりに利用して暮らしている。
人間の国家と違って彼等の首都には魔物に対抗するための城壁はそれほど高くはなく、その代わりに城壁には魔物だけが嫌う臭いを発する植物を植え付けている。ユニコーン等の魔物を除き、エルフ王国に生息する魔物の殆どは城壁に植え付けられている植物の香りを嫌うので寄り付くことはなかった。
しかし、二か月ほど前にエルフ王国の城壁にて火災が発生し、城壁に植え付けられていた魔物除けの植物が全て焼き払われるという大事件が勃発する。幸いと言うべきか被害を受けたのは城壁だけで街に被害は広がらなかったが、この日以降から首都の防衛力が格段に落ちてしまう。
先の土竜の襲撃の件でエルフ王国の戦力は落ちており、それでも魔物から首都を守るために大量の兵士を城壁に配備しなければならなかった。しかし、この火災が起きた日の数日後に昆虫種の大群が出現した。
『すぐに住民を世界樹へ避難させよ!!城内の兵士は昆虫種の対応を急げ!!』
国王は即座に城下町の住民を世界樹へ避難させ、首都内の兵力を総動員させて昆虫種の対応を行う。しかし、襲撃を仕掛けてきた昆虫種の数は数百は降らず、更に兵力が低下していた事もあってエルフ王国の軍隊は破れてしまう。
『直央様!!どうか貴方だけでもお逃げください!!』
『そんな……俺も戦います!!』
『駄目です!!今の貴方では奴等には敵いません!!』
エルフ王国で勇者として召喚された直央も首都を守るために昆虫種と戦ったが、元々は戦闘には向いていない「暗殺者」の職業である直央の力では大量の昆虫種に対抗出来ず、恋人であり国の将軍であるリンの力を借りて脱出を計る。
『勇者様をお守りしろ!!包囲網を突破し、帝国への道を切り開け!!』
『うおおおおおっ!!』
リンが先導して数十の騎士と共に首都を取り囲む昆虫種の包囲網を突破すると、彼女は自分を囮にして直央を逃がす。本当ならばナオも彼女達と共に残って戦いたかったが、ここで自分が残っても何の力になれない事は分かり切っており、覚悟を決めて帝国に存在する「ルノ」の力を借りるために向かう。
『必ず……戻ってきます!!』
暗殺者の職業を生かして昆虫種の追跡を振り切った直央は空間移動を利用して最短速度で帝国へ向かう――
――時刻は現在に戻り、大量の城下町の住民を避難させた世界樹の周囲には数百の昆虫種が待機していた。既に何度か世界樹にも襲撃をしかけたが、樹齢が数千年を超える大木の樹皮は非常に硬く、昆虫種の鋭い牙や爪でさえも通さなかった。そのお陰で世界樹に避難している間は昆虫種の脅威は逃れられるが、籠城を強いられたエルフ王国軍はある問題に悩まされていた。
「……そうか、もう食料が底を尽きかけているか」
「はい、計算したところ……今の配給ではもって20日が限度かと……」
「分かった。下がってよい」
痩せほせった兵士の報告を受けたエルフ王国の国王は深いため息を吐きながら玉座に座り込み、頭を抱える。現在の世界樹には1万人近くの住民と数千人の兵士が滞在しており、貯蓄していた食料が付きかけていた。このまま食料が尽きれば自滅は免れず、だからといって外に抜け出しても昆虫種に襲われて殺されてしまう。
「国王様、申し上げにくいのですがやはりここは城を出て戦うしか方法はありません。このままでは我々は餓死してしまいます!!何もせずに時間を無駄に過ごすぐらいなら、この命を懸けて奴等を道連れにしてみます!!」
「おお、そうだ!!」
「私も賛成だ!!」
血気盛んな若手の将軍達が国王に意見するが、そんな彼等の話を聞いて国王は嘆きながら首を振る。
「お主達は餓死よりも名誉な戦死を選ぶというのか?しかし、そんな事をしてしまえば残された住民はどうなる?力のない彼等にも共に戦って死ねというのか?」
「そ、それは……」
「ですが、このままでは我々は何も出来ずに自滅するしかありません!!」
「たわけがっ!!そんな安易な判断で王国を滅亡させる気か!!」
「なんだと貴様!!」
碌に食料の配給も行われていない状況なので空腹で気が立っている人間も多く、将軍同士で言い争いを始めてしまう。その様子を見ながら国王は溜息を吐き出し、不意に大食らいの自分の息子を思い出す。
「そう言えばデブリはどうしておる?今の状況だと、あの子が一番困っているのではないか?」
「父上、私ならさっきからここに居ますが?」
「何?」
国王は声のする方向に視線を向けると、そこには異様にやせ細った少年が存在した。最初は誰かと思ったが、すぐに国王は彼の正体に気付き、驚愕の表情を浮かべた――
※デブリ、まさかのダイエット成功フラグ!!
人間の国家と違って彼等の首都には魔物に対抗するための城壁はそれほど高くはなく、その代わりに城壁には魔物だけが嫌う臭いを発する植物を植え付けている。ユニコーン等の魔物を除き、エルフ王国に生息する魔物の殆どは城壁に植え付けられている植物の香りを嫌うので寄り付くことはなかった。
しかし、二か月ほど前にエルフ王国の城壁にて火災が発生し、城壁に植え付けられていた魔物除けの植物が全て焼き払われるという大事件が勃発する。幸いと言うべきか被害を受けたのは城壁だけで街に被害は広がらなかったが、この日以降から首都の防衛力が格段に落ちてしまう。
先の土竜の襲撃の件でエルフ王国の戦力は落ちており、それでも魔物から首都を守るために大量の兵士を城壁に配備しなければならなかった。しかし、この火災が起きた日の数日後に昆虫種の大群が出現した。
『すぐに住民を世界樹へ避難させよ!!城内の兵士は昆虫種の対応を急げ!!』
国王は即座に城下町の住民を世界樹へ避難させ、首都内の兵力を総動員させて昆虫種の対応を行う。しかし、襲撃を仕掛けてきた昆虫種の数は数百は降らず、更に兵力が低下していた事もあってエルフ王国の軍隊は破れてしまう。
『直央様!!どうか貴方だけでもお逃げください!!』
『そんな……俺も戦います!!』
『駄目です!!今の貴方では奴等には敵いません!!』
エルフ王国で勇者として召喚された直央も首都を守るために昆虫種と戦ったが、元々は戦闘には向いていない「暗殺者」の職業である直央の力では大量の昆虫種に対抗出来ず、恋人であり国の将軍であるリンの力を借りて脱出を計る。
『勇者様をお守りしろ!!包囲網を突破し、帝国への道を切り開け!!』
『うおおおおおっ!!』
リンが先導して数十の騎士と共に首都を取り囲む昆虫種の包囲網を突破すると、彼女は自分を囮にして直央を逃がす。本当ならばナオも彼女達と共に残って戦いたかったが、ここで自分が残っても何の力になれない事は分かり切っており、覚悟を決めて帝国に存在する「ルノ」の力を借りるために向かう。
『必ず……戻ってきます!!』
暗殺者の職業を生かして昆虫種の追跡を振り切った直央は空間移動を利用して最短速度で帝国へ向かう――
――時刻は現在に戻り、大量の城下町の住民を避難させた世界樹の周囲には数百の昆虫種が待機していた。既に何度か世界樹にも襲撃をしかけたが、樹齢が数千年を超える大木の樹皮は非常に硬く、昆虫種の鋭い牙や爪でさえも通さなかった。そのお陰で世界樹に避難している間は昆虫種の脅威は逃れられるが、籠城を強いられたエルフ王国軍はある問題に悩まされていた。
「……そうか、もう食料が底を尽きかけているか」
「はい、計算したところ……今の配給ではもって20日が限度かと……」
「分かった。下がってよい」
痩せほせった兵士の報告を受けたエルフ王国の国王は深いため息を吐きながら玉座に座り込み、頭を抱える。現在の世界樹には1万人近くの住民と数千人の兵士が滞在しており、貯蓄していた食料が付きかけていた。このまま食料が尽きれば自滅は免れず、だからといって外に抜け出しても昆虫種に襲われて殺されてしまう。
「国王様、申し上げにくいのですがやはりここは城を出て戦うしか方法はありません。このままでは我々は餓死してしまいます!!何もせずに時間を無駄に過ごすぐらいなら、この命を懸けて奴等を道連れにしてみます!!」
「おお、そうだ!!」
「私も賛成だ!!」
血気盛んな若手の将軍達が国王に意見するが、そんな彼等の話を聞いて国王は嘆きながら首を振る。
「お主達は餓死よりも名誉な戦死を選ぶというのか?しかし、そんな事をしてしまえば残された住民はどうなる?力のない彼等にも共に戦って死ねというのか?」
「そ、それは……」
「ですが、このままでは我々は何も出来ずに自滅するしかありません!!」
「たわけがっ!!そんな安易な判断で王国を滅亡させる気か!!」
「なんだと貴様!!」
碌に食料の配給も行われていない状況なので空腹で気が立っている人間も多く、将軍同士で言い争いを始めてしまう。その様子を見ながら国王は溜息を吐き出し、不意に大食らいの自分の息子を思い出す。
「そう言えばデブリはどうしておる?今の状況だと、あの子が一番困っているのではないか?」
「父上、私ならさっきからここに居ますが?」
「何?」
国王は声のする方向に視線を向けると、そこには異様にやせ細った少年が存在した。最初は誰かと思ったが、すぐに国王は彼の正体に気付き、驚愕の表情を浮かべた――
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