262 / 657
帝国の危機
傷ついた魔獣達
しおりを挟む
「ウォンッ!!」
「はいはい、そんなに引っ張らなくてもちゃんと付いて行きますよ」
イチとニイに連れられるままにナオとリーリスは白原を移動すると2匹は丘の前で立ち止まる。二人は丘を見下ろしても特に何も見えなかったが、狼達は斜面を降りて鳴き声を上げる。
「「ウォンッ!!」」
「降りろと言っているようですね」
「急にどうしたんだろう。ん?もしかして……」
二人も続いて丘を駆け降りると、上からでは確認できなかったが洞穴が存在する事に気付き、狼達は中へ入り込む。リーリスは洞穴を調べると違和感を抱く。
「これは……どうやら元から存在する洞穴じゃないようですね。最近に掘り起こされた様子があります」
「掘り起こしたって……こんな大きな穴を?」
「ルノさんの土塊の魔法なら出来ない事もないでしょうけど、この洞穴は魔法で作り出された様子はありませんね」
「クゥ~ンッ」
洞穴の出入口で立ち止まる二人をイチとニイは呼び寄せるように鳴き声を上げ、二人は洞穴に入り込む。奥までかなり続いているらしく、二人は光球の魔法を発動させて洞穴内を照らしながら進む。
「結構奥まで進みますね。それに気のせいかどんどんと道が斜面になっているような……」
「足元に気を付けて進まないと……」
徐々に斜面となる地面を進みながら二人は狼達の案内で奥に進み、やがて一軒家が建てられる程の広大な空間が広がる空洞へ辿り着いた。
「ここは……?」
「待って……何か気配がする」
「ウォンッ!!」
リーリスが足を勧めようとしたのを直央が制止すると、イチとニイが先に鳴き声を上げた瞬間、暗闇に覆われた空洞内に無数の気配が誕生する。直央は咄嗟に戦闘態勢に入ろうとしたが、二人の前に現れたのは青色の鱗で覆われた一つ目の巨人だった。
「キュロロロッ!!」
「うわっ!?何だっ!?」
「ちょ、待ってください!!その子は敵じゃありませんから!!」
鳴き声を上げて出現したサイクロプスの「ロプス」に直央は慌てて銅貨を握りしめるが、リーリスが間に入って彼を止める。ロプスはリーリスの顔を見ると嬉しそうに鳴き声を上げ、彼女の身体を後ろから持ち上げる。
「キュロッ、キュロロッ!!」
「うわわっ……もう、嬉しいのは分かりましたから降ろしてくださいよ!!」
「キュロロッ……」
「……サイクロプス?こんな魔獣までルノ君は飼ってたのか」
リーリスの言葉にロプスは素直に従い、直央は動揺しながらもロプスを覗く。一方でロプスも初めて見る人間に不思議そうに首を傾げ、リーリスの肩を指先で叩く。
「キュルルッ?」
「ああ、その人は大丈夫です。味方ですから警戒しないでいいですよ」
「キュロッ」
「ど、どうも……」
ロプスはリーリスの言葉を聞いて頭を下げると、直央も慌てて頭を下げる。外見は恐ろしいがサイクロプスは心優しく、知能も高いので無暗に興奮させなければ大人しい生物だと直央も聞いた事はあるが、ロプスの場合はさらに人間のような動作を行う事に驚く。
「このロプスはルノさんの屋敷で家政婦として働いていたんですよ。だから大抵の人間の言葉は理解できます」
「それは凄いな……いや、このロプス君を家政婦にするルノ君が凄い」
「キュロロッ」
照れ臭そうに頭を掻く動作まで行うロプスに直央は感心するが、ロプスは思い出したようにリーリスの手を掴んで奥へと誘う。
「キュロロロッ……」
「あだだだっ!?ちょ、私はルノさんと違って普通の人間ですからそんなに強く掴まないで下さい!!ちゃんと付いてきますからもう……」
「ウォンッ!!」
「こっちに行けばいいの?分かった」
ロプスとイチ達に誘われ、二人は更に奥に進むと前方に黒色の毛皮で覆われた巨体が横たわっている事に気付く。それを見たリーリスは真っ先に正体を見抜き、慌てて駆け寄る。
「ルウ!?ルウじゃないですか!?どうしたんですか!?」
「ッ……?」
「ルウ……?」
倒れていたのは黒狼種の成体である巨狼のルウであり、リーリスは倒れているルウに近づくと、臭いで彼女に気付いたのかルウが鳴き声を上げた。
「クゥンッ……」
「これは……酷い怪我ですね。誰にやられたんですか?」
「キュロロッ……」
倒れているルウの背中には刃物で切られたような大きな傷跡が存在し、それを確認したリーリスは眉を顰めながらも傷の状態を確認する。ロプスが治療を施したのか背中にはいくつもの薬草が張り付けられていたが、傷口はかなり深く、地面に血の跡が染み渡っていた。
「これは不味い状態ですね……応急処置はしていますが、このままだと死んでしまいます。すぐに治療しないと!!」
「俺も手伝うよ!!」
「ならまずは傷口を覆っている薬草を剥がしてください!!それと水で傷口を洗い流す必要があります!!急いで!!」
「キ、キュロロッ!!」
リーリスの指示に直央とロプスは従い、ルウの傷口に張り付いた薬草を引き剥がし、直央が普段から異空間に収納して置いた飲み水用の水筒の水で血を洗い流し、回復魔法を施す。
「はいはい、そんなに引っ張らなくてもちゃんと付いて行きますよ」
イチとニイに連れられるままにナオとリーリスは白原を移動すると2匹は丘の前で立ち止まる。二人は丘を見下ろしても特に何も見えなかったが、狼達は斜面を降りて鳴き声を上げる。
「「ウォンッ!!」」
「降りろと言っているようですね」
「急にどうしたんだろう。ん?もしかして……」
二人も続いて丘を駆け降りると、上からでは確認できなかったが洞穴が存在する事に気付き、狼達は中へ入り込む。リーリスは洞穴を調べると違和感を抱く。
「これは……どうやら元から存在する洞穴じゃないようですね。最近に掘り起こされた様子があります」
「掘り起こしたって……こんな大きな穴を?」
「ルノさんの土塊の魔法なら出来ない事もないでしょうけど、この洞穴は魔法で作り出された様子はありませんね」
「クゥ~ンッ」
洞穴の出入口で立ち止まる二人をイチとニイは呼び寄せるように鳴き声を上げ、二人は洞穴に入り込む。奥までかなり続いているらしく、二人は光球の魔法を発動させて洞穴内を照らしながら進む。
「結構奥まで進みますね。それに気のせいかどんどんと道が斜面になっているような……」
「足元に気を付けて進まないと……」
徐々に斜面となる地面を進みながら二人は狼達の案内で奥に進み、やがて一軒家が建てられる程の広大な空間が広がる空洞へ辿り着いた。
「ここは……?」
「待って……何か気配がする」
「ウォンッ!!」
リーリスが足を勧めようとしたのを直央が制止すると、イチとニイが先に鳴き声を上げた瞬間、暗闇に覆われた空洞内に無数の気配が誕生する。直央は咄嗟に戦闘態勢に入ろうとしたが、二人の前に現れたのは青色の鱗で覆われた一つ目の巨人だった。
「キュロロロッ!!」
「うわっ!?何だっ!?」
「ちょ、待ってください!!その子は敵じゃありませんから!!」
鳴き声を上げて出現したサイクロプスの「ロプス」に直央は慌てて銅貨を握りしめるが、リーリスが間に入って彼を止める。ロプスはリーリスの顔を見ると嬉しそうに鳴き声を上げ、彼女の身体を後ろから持ち上げる。
「キュロッ、キュロロッ!!」
「うわわっ……もう、嬉しいのは分かりましたから降ろしてくださいよ!!」
「キュロロッ……」
「……サイクロプス?こんな魔獣までルノ君は飼ってたのか」
リーリスの言葉にロプスは素直に従い、直央は動揺しながらもロプスを覗く。一方でロプスも初めて見る人間に不思議そうに首を傾げ、リーリスの肩を指先で叩く。
「キュルルッ?」
「ああ、その人は大丈夫です。味方ですから警戒しないでいいですよ」
「キュロッ」
「ど、どうも……」
ロプスはリーリスの言葉を聞いて頭を下げると、直央も慌てて頭を下げる。外見は恐ろしいがサイクロプスは心優しく、知能も高いので無暗に興奮させなければ大人しい生物だと直央も聞いた事はあるが、ロプスの場合はさらに人間のような動作を行う事に驚く。
「このロプスはルノさんの屋敷で家政婦として働いていたんですよ。だから大抵の人間の言葉は理解できます」
「それは凄いな……いや、このロプス君を家政婦にするルノ君が凄い」
「キュロロッ」
照れ臭そうに頭を掻く動作まで行うロプスに直央は感心するが、ロプスは思い出したようにリーリスの手を掴んで奥へと誘う。
「キュロロロッ……」
「あだだだっ!?ちょ、私はルノさんと違って普通の人間ですからそんなに強く掴まないで下さい!!ちゃんと付いてきますからもう……」
「ウォンッ!!」
「こっちに行けばいいの?分かった」
ロプスとイチ達に誘われ、二人は更に奥に進むと前方に黒色の毛皮で覆われた巨体が横たわっている事に気付く。それを見たリーリスは真っ先に正体を見抜き、慌てて駆け寄る。
「ルウ!?ルウじゃないですか!?どうしたんですか!?」
「ッ……?」
「ルウ……?」
倒れていたのは黒狼種の成体である巨狼のルウであり、リーリスは倒れているルウに近づくと、臭いで彼女に気付いたのかルウが鳴き声を上げた。
「クゥンッ……」
「これは……酷い怪我ですね。誰にやられたんですか?」
「キュロロッ……」
倒れているルウの背中には刃物で切られたような大きな傷跡が存在し、それを確認したリーリスは眉を顰めながらも傷の状態を確認する。ロプスが治療を施したのか背中にはいくつもの薬草が張り付けられていたが、傷口はかなり深く、地面に血の跡が染み渡っていた。
「これは不味い状態ですね……応急処置はしていますが、このままだと死んでしまいます。すぐに治療しないと!!」
「俺も手伝うよ!!」
「ならまずは傷口を覆っている薬草を剥がしてください!!それと水で傷口を洗い流す必要があります!!急いで!!」
「キ、キュロロッ!!」
リーリスの指示に直央とロプスは従い、ルウの傷口に張り付いた薬草を引き剥がし、直央が普段から異空間に収納して置いた飲み水用の水筒の水で血を洗い流し、回復魔法を施す。
1
お気に入りに追加
11,316
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。